2022年01月25日
【キャリアデザイン】『マーケターのように生きろ―「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動』井上大輔
マーケターのように生きろ―「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本ビジネス書キャンペーン」でも人気の1冊。いわゆるマーケティング理論をキャリアデザインにつなげている点で、多くのビジネスパーソンにとって参考になると思いました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
私はマーケティングを理解することを通じて、仕事の幅を大きく広げることができました。
そして、キャリアプランを見直すこともできました。
のみならず、それを生き方のレベルにまで広げることで、個人としての情報発信や趣味も充実させることができました。
本書ではそんな「生きる知恵」としてのマーケティングを、余すところなくお伝えします。
中古が値崩れ気味ですが、送料を加算するとKindle版が300円弱お買い得です!
Monster Energy Drink / JeepersMedia
【ポイント】
■1.可能な限り大きな市場を選ぶ世界一のYouTuberと言われるPewDiePie(ピューディパイ)の人気コンテンツは、ゲームの実況中継です。日本のYouTuberの第一人者であるHIKAKINさんのチャンネルでも、ゲーム実況は人気ですよね。
コンテンツは独自性が大事だとよく言われますが、「ゲームの実況」自体には、ほぼ独自性はありません。誰にでもできますし、やっている人もすでにたくさんいます。
しかし圧倒的に「市場が大きい」のです。
HIKAKINさんは得意のボイスパーカッション動画からチャンネルをスタートさせましたが、その後、ゲーム実況を含むその他のジャンルに活動の幅を広げてきました。
これは、チャンネル登録数の拡大を考えたときに、「市場の大きさ」を意識した結果なのではないでしょうか。
ボイスパーカッションだけでは、どんなに技を極め動画の質を高めても、きっと登録者数は早い段階で頭打ちしてしまっていたでしょう。
■2.「価値の定義」がビジネスの勝敗を分ける
モンスターエナジーやレッドブルはパッケージをスタイリッシュにし、アスリートやミュージシャンとタイアップすることで、相手にとって「意味がある」という価値をつくりだしています。PART1のCHAPTER2で紹介した「情緒的な価値」です。
それに対し栄養ドリンクは、これまではずっと「疲れがとれる」などの実利と、日光を遮蔽する瓶や製薬会社のブランド名などを使った品質保証を重視してきました。相手にとって「役に立つ」という価値で、この本ではこれらを「機能的な価値」と呼んでいます。
ここで、相手とする顧客が滋養強壮系ドリンクに求めるものが、「機能的な価値」ではなく「情緒的な価値」だったら何が起こるでしょうか。この時点ですでに勝負は決まってしまうのです。この工程でボタンを掛け違えると、そのあといくら「価値の創造」や「価値の伝達」を頑張っても、とり返しがつきません。
つまりこの「価値の定義」のプロセスこそ、まさにマーケティングの心臓部なのです。
■3.相手が重視する価値を知る
【上司1】このプロジェクトは、今後の10年を占う重要なものだ。評価の加点も大きい。そして、分析力に加えチームを引っ張る力が必要という点で、あなたの今後の成長のためにも欠かせない。【上司2】このプロジェクトはデータ分析がカギだ。分析力では誰もあなたには敵わない。他には代わりがいない。頼む、力を貸してくれ。チームをまとめるのは大変かもしれないが、あなたなら絶対にできる。どちらの上司の言葉がより「刺さる」でしょうか。もちろん人によると思いますが、私の場合は断然【上司2】です。(中略)
さて、このとき【上司2】の言葉に心を動かされる人たちは、感情に流されて理を見失ってしまっているのでしょうか?
そうではありません。【上司2】の言葉に、「機能的な価値」ではない、また別の価値を見出しているのです。
【上司1】の言葉が強調しているのは、「評価」や「成長」といった「機能的な価値」です。
それに対し【上司2】は、「情緒的な価値」に語りかけています。
■4.一貫性が偶然を「キャリアアップ」につなげる
たとえば転職の誘いを受ける、異動の打診をされる、興味のあるプロジェクトのメンバーが公募されている──これらはたしかに「偶然」ですが、それに応じるか否かは自分の意思で選択できます。
このように、自分にどんなカードが配られるかはたしかに偶然ですが、その中から1枚を選択するのはあくまで自分の意思です。そして働いている人は、毎日何かしらカードの選択を行っていると言っても過言ではありません。
「偶然」を「キャリアアップの機会」に変えるには、そうしたカードの選択を一貫性を持って行うことが重要です。そして、その一貫性の拠りどころを、これまでの工程で策定した「誰に」「どう貢献するか」に求めるのが、「マーケターのように」自分自身の価値をつくりだすということなのです。
どちらのカードを選択すれば、自分が果たすべき貢献がより大きくなるのか。どちらのカードを選択することが、果たすべき貢献につながる経験を導いてくれるのか。
そう問い続けることは、いつでも正解を保証してくれるわけではありませんが、カードの選択にたしかな一貫性をもたらしてくれます。
■5.出世基準もマーケティングと同じ
完全実力主義だと思っていた欧米のグローバル企業で、目立つことが6割、印象が3割などと言われたときは、とてもがっかりしました。
ただ、そう言われて我に返ってみると、「知名度6割、印象3割、実力1割」という現実は、私にとってそれほど受け入れがたいものでもありませんでした。なぜなら、マーケターとしてマーケティングの視点から考えると、それは至極当然のことだからです。
すでにお気づきかもしれませんが、このPIEは、「覚えてもらう」「好きになってもらう」「選んでもらう」の焼き写しになっています。・エクスポージャー(どれだけ目立っているか):覚えてもらうどんなに優れた商品やサービスでも、それがどんなに優れた価値を持っていても、そもそも覚えられていなければ検討のテーブルにも上がれません。他に無数の競争相手がいれば、好きになってもらっていないブランドには、価値をしっかり伝える機会すら与えられません。
・イメージ(印象):好きになってもらう
・パフォーマンス(仕事の実力):選んでもらう
これと同じことが、社内の人事考課にも当てはまるということです。
【感想】
◆やや引用部分がボリューミーになってしまい、申し訳ございませんでした。ただ、これでも説明不足と言いますか、実際には本書でご確認いただきたい部分が多々ありまして。
というのも、今まで読んできた個人に適用できるマーケティング本は、個人がやっていることが結果的にマーケティング視点だったり、独自のマーケティング仕様のようなものだったところ、本書ではほぼほぼいわゆる企業が行うマーケティング理論が援用されているから。
つまり、元となるマーケティング理論を正しく理解する必要があり、著者の井上さんは、それを本書内で行っています。
さらに理解を深めるための具体的な事例まで収録されていますから、1つのテーマについてどこを抜き出すかが難しくなっている次第。
もちろん内容的に秀逸だからこその、「300件の評価平均が4.4」という読者の声になっているのでしょうが。
◆さて、本書内では結構ばらけてハイライトしているのですが、上記ポイントとして抜き出したのは、特に「個人のキャリアへの適用」を意識した、PART2部分からになっています。
4つのステップがあるうち、最初のステップが「市場を定義する」。
ここで留意したいのが、上記ポイントの1番目の「可能な限り大きな市場を選ぶ」というTIPSです。
HIKAKINさんは、私はたまたまブレイクした当時に、ボイスパーカッションの動画を観たことがあり、知らぬ間にあれだけビッグになっていて驚いたという記憶が。
なるほどあのままボイパに固執していたら、今のポジションはなかったのでしょうね。
かといって、今からウチのムスコが、ゲームの実況中継をしたとしても、「その他多く」に埋もれてしまうのでしょうけど。
◆また2番目のステップである「価値を定義する」から引用したのが、上記ポイントの2番目。
例として挙げられたモンスターエナジーやレッドブルと、従来の栄養ドリンクとどこが違うかを考えると、「価値の定義」の重要性がお分かりいただけると思います。
ちなみにこの考え方は2軸4象限で表すことができ、ここで用いられているのは横軸の「機能的か情緒的か」。
これに縦軸の「顕在的か潜在的か」を組み合わせることによって、
「実利価値」:機能的かつ顕在的の4つに分けられるわけです。
「保証価値」:機能的かつ潜在的
「共感価値」:情緒的かつ潜在的
「評判価値」:情緒的かつ顕在的
ちなみに個人に適用した場合、これら4つをバランスよく発揮できているのが、第40代アメリカ大統領であるロナルド・レーガンであるとのこと。
さらにこの「機能的な価値」と「情緒的な価値」を実際に個人のシーンで活用しているのが、上記ポイントの3番目になります(詳細は本書を)。
◆一方、ステップの3番目は「価値をつくりだす」。
ここではまず、市場に出ている製品の価値を外から分析して、商品の「コンセプト=商品の企画書」を逆算する作業を、天然水「いろはす」で行っています。
コカ・コーラ い・ろ・は・す 天然水 555mlPET×24本
これが結構面白いのですが、かなりのボリュームになってしまうので、泣く泣く割愛。
代わりに「『価値をつくりだす』を個人に仕事、キャリアに生かす」と題したパートから、上記ポイントの4番目を抜き出してみました。
キャリアデザイン本でよく登場する「プランド・ハプンスタンス・セオリー(計画された偶然理論)」も、ここで紹介した選択の一貫性をもってして、初めてキャリアアップにつながるのだな、と。
◆そしてステップの4番目の「価値を伝える」から引用したのが、上記ポイントの5番目。
ここではまさに、企業の行うマーケティングでいうところの「態度変容」である「覚えてもらう」「好きになってもらう」「選んでもらう」が用いられています。
もちろんこの「6:3:1」という比率は、あくまでも「決め手となる割合」であり、出世する上で仕事の実力があるのは当然のこと。
ただし、それを踏まえたとしても、相手に価値を伝えなければ、選ばれるのは難しいでしょう。
なお、前述の「プランド・ハプンスタンス・セオリー」では、「配られるカードを増やす」ことも「偶然」を「キャリアアップの機会」に変える秘訣の1つでした。
そこで本書では、気軽に人と会ったり、機会があれば人前で話すことも推奨しています。
コロナ禍でなかなか実践しにくい部分もありますが、やるだけの価値はあるのではないでしょうか。
マーケティング理論を自分のキャリアで活かすために!
マーケターのように生きろ―「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動
PART1 人の役に立ち、自らの価値を高める「マーケターのように生きる」という思想
CHAPTER1 マーケティングとは「思想」である
CHAPTER2 マーケティングとは「人類の英知の結晶」である
PART2 仕事もキャリアも人生も好転する「マーケターのような生き方」4ステップ
STEP1 市場を定義する:「自分がもっとも輝く場所」が見つかる
STEP2 価値を定義する:「相手が本当に欲するもの」がわかる
STEP3 価値をつくりだす:「自分がやるべきこと」がわかる
STEP4 価値を伝える:「自分を必要とする相手」に見つけてもらう
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話
眠れなくなるほど面白い 図解 人体の不思議
「図解 眠れなくなるほど」シリーズからの2冊は、どちらもKindle版が300円弱お買い得。
無印良品のPDCA 一冊の手帳で常勝経営を仕組み化する! (毎日新聞出版)
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【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本ビジネス書キャンペーン」の東洋経済&扶桑社分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。兵站―重要なのに軽んじられる宿命 (扶桑社BOOKS)
マーケターのように生きろ―「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動
超訳ライフ・シフト―100年時代の人生戦略
クヨクヨしてしまう人のための「強い心」をつくる禅の教え (扶桑社BOOKS文庫)
よろしければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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