2021年12月24日
【サブスク】『サブスクリプションの教科書』佐藤剛
サブスクリプションの教科書
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「Kindle本 年末年始キャンペーン」の中でも人気の高かった1冊。これからのビジネスモデルを考える上でも、大きな勢力になるであろうサブスクリプションについて、詳細、かつ実践的に論じた作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
いままさに急成長を遂げるサブスクリプションの世界では、中小規模の事業者が次々と参入し、大きな成功をつかんでいます。その具体的な事例も詰め込みました。
著者がビジネスの立ち上げで経験したこと、顧客であるさまざまな事業者との関わりを通して学んだ実践的な知識を1冊に凝縮しました。サブスクリプションを基本から学べる、まさに教科書と呼べるバイブルです。
中古価格が定価を大きく上回っていますから、こちらのKindle版が900円弱お買い得となっています!
Subscription / Cerillion
【ポイント】
■1.サブスクを始める上で押さえておくべき2つの理論世の中にはさまざまなマーケティング理論がありますが、サブスクリプションを始めるにあたり、まず押さえていただきたい2つの理論があります。
1つは「1:5の法則」。「新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの5倍かかる」という法則です。(中略)
一方、既存顧客は商品や事業者に対する信用といった心理的なハードルをクリアしている状態です。商品やサービス、事業者への理解もあるため新規購入時に持っていた不安や迷いがなく、再度購入する可能性が高い存在だといえます。
結局のところ1:5の法則が表しているのは「ビジネスを効率的に継続していくには、既存顧客の維持が大切」だということです。(中略)
そして2つ目が「5:25の法則」。これは「顧客離れを5%改善すると、利益率が25%改善される」というもので、既存顧客にリピートしてもらうことが大幅な利益アップにつながるということを表しています。
■2.サブスクに必須の2大スキル「サポート力」と「事務処理能力」
顧客がサブスクリプションを契約する際には、何らかの「期待」があります。この期待が裏切られてしまった時、解約を検討するのです。たとえば「商品やサービスの使い方がわからない」という理由で解約を決められてしまったら、非常にもったいないですね。使い方をレクチャーするサポートがあれば継続できるでしょう。
そして請求関係のトラブルも、顧客の期待を裏切る重大な理由にあたります。契約状況に沿った請求を行う「契約管理」は、サブスクリプションにおける事務処理のカギです。売り切り型のフロー型ビジネスの場合は、お金のやり取りが一度で完結するため、問題に上がることはほぼありません。ところがサブスクリプションは契約が続く限り、一定の間隔で請求が発生するわけです。膨大になる契約管理作業を人海戦術のアナログで行うのはとても非効率。つまり、デジタル化、オンライン化を進めることが不可欠です。
■3.唯一無二のサブスクをつくる3つの理論
(1)スイッチ理論ビジネスの軸を転化し、新しい切り口のサービスをつくりだす。既存ビジネスをサブスク化するためのアイデア出しに効果的。(2)深掘り理論◎美容院の場合 ▼ヘアセットやメイクを「オンライン&教育」へスイッチ→TPOに応じたヘアセットやメイク方法を教える動画配信サービスへ。既存の軸を強化し、付加価値をつける。(3)組み合わせ理論◎スポーツジムの場合 ▼高級マシンの導入やトレーニングルームのレンタル等で、サービスの質を強化する。深掘り理論の応用編。既存サービスの深掘りと他の軸との組み合わせで新たなビジネスモデルをつくる。◎スポーツジムの場合 ▼サービス強化(高級マシン導入等のサービス充実)「ロイヤリティ」を組み合わせる→会員制度を階層化(ロイヤリティ)。会員は階層ごとに異なる特典を設けて特別感を演出。所属欲求を満たすサブスクリプションへと進化させる。
■4.集客手段としてのサブスク
ゴルフクラブを販売するある事業者では、スポンサー契約を結んだプロゴルファーのオンラインサロンを展開しています。月額980円でサロンに参加できるほか、優待料金でプライベートレッスンが受けられるという特典付きのサブスクリプション。会員はプロゴルファーのファンやゴルフの上達をめざす人、つまり「ゴルフ好き」が集まるコミュニティとなります。ですが月額980円という価格設定で収益の柱とするには心もとない気がしませんか? そう、このサブスクリプションの目的はあくまで「集客」。最終的には自社のゴルフクラブを購入する見込み客が増えることを期待しているのです。
オンラインサロンであれば、ロングテール市場の中からコアなファンを獲得できます。そしてファンであれば、ゴルファーと同じブランドの製品を使いたいという人もいるはず。プロゴルファーとのコミュニケーションを通して、ゴルフクラブのブランディングも醸成し購入へつなげる。二次的な収益を狙ったサブスクリプションの好例です。
■5.事業者側の負担が少ない「場の提供」モデル
「場の提供」を行うサブスクリプションとしては「問題解決の場」や「共通の趣味・興味の場」などが考えられます。前者の例としては専門家の紹介サイト。ファイナンシャルプランナー(FP)の紹介サイトを例にご説明します。事業者にとっての顧客は問題を解決する人(FP)。FPは情報掲載料を毎月支払い、自己アピール情報をサイトへ掲載することができます。またサイト内で受注した場合には、成果報酬として手数料を支払います。
まずFPの紹介情報自体がサイトのコンテンツになります。
さらにFPへ相談したいユーザーが紹介サイトへ集まり、質問を登録。FPが回答することで質問がコンテンツとして更新されます。紹介サイトは知名度を高め、本格的な依頼を受けるチャンスを提供するという仕組みです。「場の提供」は事業者側の負担が少ない魅力的な例だと思います。
【感想】
◆サブスクについては、自分自身、分かっているツモリでいましたが、実はそうでもなかったことがよく分かった1冊でした。思わずハイライトも引きまくり。
特に、大企業でもないとサブスクなんて無縁だと思っていた事が、大きな間違いであると認識しました。
そもそも考えてみたら、私のような税理士業もサブスクの1つです。
もちろん私の場合は超アナログで、顧問先も都内しか持っていませんからレバレッジもかけようがありません。
ただし、昨今のコロナ禍でZoomでの打ち合わせが身近なものになると、理論的には全国レベルで集客することも可能です(調査の立ち合いは大変ですが)。
また、ホリエモン氏のようにオンラインサロンを開いたりするならば、まさにサブスクの王道ということに!?
◆それを踏まえて知っておきたいのが、上記ポイントの1番目の2つの理論です。
これはサブスクに限った話ではなく、マーケティング全般に言えることではありますが、既存顧客の重要性がよく分かるかと。
ただし、売り切り商売と違って、サブスクの場合、定期的に料金を徴収する分、その都度顧客の腹は痛みます。
そこで重要なのが、上記ポイントの2番目の2つのスキル。
特に前者の「サポート力」については、特にサービス導入時等にチャットボットで対応させることを、本書では避けるように主張しています。
実際、最後までチャットボット対応のみで解決したことって、私はあまりないような。
また、後者の「事務処理能力」については、たとえば決済方法がクレジットカードのみにすることで、ずいぶん余計な業務が減ることがよく分かります(昨今のコンビニのレジ業務の煩雑さが良い例)。
◆では具体的に、どのようなサービスでサブスクを検討するか、については、上記ポイントの3番目をご覧いただきたく。
この中では(1)のスイッチ理論が、中小企業者にとっても汎用性が高いと感じました。
実際、サブスクとはちょっと違うのですが、私の通っている美容院の属する業界団体も、今まで地方に講師を派遣してカッティング等のセミナーをしていたのですが、コロナ禍を経て「複数のiPhoneでカッティングの模様をリアル配信する」形式に代わったそうです。
また、割愛した例では、アナログな習字教室だったものが、「ボールペン字講座をデジタルコンテンツ化」になる、というのも極端な話、「1人サブスク」ができそうな。
一方(2)(3)は、ある程度資本がないとキツイかもしれません。
◆また、「目からウロコ」だったのが、上記ポイントの4番目の「集客手段としてのサブスク」。
リアル対応有りだと、物理的な限界があるのでサブスク向きではないと思っていたのですが、そもそも月額料金を低めにして、それプラス別途優待料金を徴収するのであれば、会員も不満は持たないでしょう。
もちろん、そのプロゴルファーのファンであれば、ファンクラブ的に入会するでしょうし、まさに集客手段としても秀逸です。
ちなみに、こうした毎月同じようなサービスが提供されるサブスクは、事業者にとってそれほど負担ではない一方、大変なのが「毎月、何か新しいサプライズが届く」ような「企画力勝負」のサブスク。
企画力を必要とするサブスクリプションとしては、毎月違う食品を届ける頒布会型や、洋服を顧客の代わりにコーディネートしてあげるようなクリエイティブな代行型、といったものがあります。開始当初は順調でも後に事業者の負担が大きくなり、早々にやめてしまうというケースがあります。なるほど、この手のサービスは、前回よりもちょっとでも満足できなくなると、解約を考えちゃいますよね。
そういえば、「毎月カリスマがセレクトした商品が届けられる」みたいな会員サービスがありましたが、やはり続かなかったようですし……。
◆逆の意味で秀逸なのが、上記ポイントの5番目の「場の提供」モデルです。
こうしたCGM的なサービスは、SEOの観点から優れている、と以前学んだことがありました。
ただそれは、コンテンツ量を増やすことで、SEOで優位に立つことを目指すのですから、あくまで無料が前提。
それに対してこちらは、有料の会員を対象としたクローズドなものですが、会員の質問に回答することで、質問者だけでなく会員全体へのサービスとなるワケです。
この手のサービスは、検索していてたまに質問部分がヒットすることがあるのですが、会員でないと回答が読めなくなっていますから、思わず入会を考える人も出てきそうな。
なお、最後の第5章では、上記ポイントの4番目のアマチュアゴルファー向けのサービスを含めて(具体的なサービス名も載っています)、8つのサブスクが紹介されていました。
いずれもなかなかユニークなものばかりですから、こちらもぜひご確認ください。
サブスクが身近なものに感じられる良書でした!
サブスクリプションの教科書
第1章 「所有」から「所属と体験」の時代へ
第2章 サブスクリプションの基礎知識
第3章 サブスクリプション事業者になるための実践ステップ
第4章 サブスクリプション成功のフレームワーク
第5章 サブスクリプションの事例集
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。EARTHおじさん46億才
なぜか評価平均が「4.6」と高めなこちらの作品は、Kindle版が900円弱お買い得。
【音声DL付】NHKラジオ英会話 英会話 話を組み立てるパワーフレーズ トレーニング編
英会話の実力アップにつながりそうなムック本は、中古が定価を上回っていますから、Kindle版が800円以上お得な計算です。
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 年末年始キャンペーン」の新星出版社&SBクリエイティブさんの記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。筋トレ革命 エキセントリックトレーニングの教科書
核心のイメージがわかる!動詞キャラ図鑑
改訂版 超入門 株の教科書
数学ガールの秘密ノート/式とグラフ
よろしければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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