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2021年12月13日

【科学的自己啓発書】『TIME SMART(タイム・スマート)―お金と時間の科学』アシュリー・ウィランズ


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TIME SMART(タイム・スマート)―お金と時間の科学


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本冬のキャンペーン」の中でも、人気を集めていた自己啓発本。

当初、タイトルを見て時間術本かと思ったのですが、むしろ「幸福本」に近い内容でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
時間に投資せよ!
タイム・イズ・マネーではなく、マネー・イズ・タイムだ
ハーバード・ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーにして、心理学者のアシュリー・ウィランズが書いた本書は、効率性一辺倒ではない、異色の時間戦略の本だ。
「お金より時間が大事」
「生産性向上はタイム・リッチ(時間的に裕福な状態)から」
「まず、健康で幸福な生活を送る、その後、生産性・創造性が上がる」
と説く。仕事をしていくなかで身につけた、仕事術やTIPSにとどまらず、科学的な調査、統計データからわかった、幸福になるための時間の使い方を解説。
各章末には、実践的なエクササイズ・シートが付いている。

送料を足した中古金額よりは、Kindle版が600円弱お買い得となります!






Time Money / One Way Stock


【ポイント】

■1.裕福な人ほどタイム・プアに陥りやすい
 私たちのほとんどはタイム・プアだけれど、(働いている)富裕な人は もっと タイム・プアに感じている。これはうなずける。1つには、彼らは時間当たりに換算した収入が多いので、稼ぎが少ない人よりも、文字どおり時間の価値も高い(1時間働くごとに、もっと多くのお金を稼げる)からだ。時間の価値が高まれば、時間はその分だけ貴重で稀少に感じられる。これを証明するために、私の同業者たちは大学生をプロのコンサルタントに仕立て、実験室での課題に取り組むときに、一部の大学生には毎分1ドル50セント、残りの学生には15セントの料金を請求するように求めた。自分の時間1分当たり1ドル50セントを請求した学生は、15セント請求した学生よりも、時間に追われているように感じた。別の研究では、「1日のうちに十分な時間がなかった」といった言葉に、富裕な従業者のほうが同意する率が高かった。


■2.何を外注したいのかを理解する
 ディナーの支度をするのがストレスになるからといって、ただ食べ物を注文すればいいなどとは思わないでほしい。私がスマホ・アプリのジョイを使って行なった調査では、多くの消費者が、食事の配達サービスよりも食材とレシピがセットになっているミールキットの定期配達サービスを受けるほうに大きな満足を覚えることがわかった。これは、料理が好きな人は多いものの、何をつくるかを考えたり、ちょうど必要な量を見極めて食材を買ったりするのが面倒だからだろう。
 だから、自分が嫌いな活動についてしっかり考えてみよう。あなたが本当に嫌いなのは何か? 車での通勤が嫌いなのか、それとも、通勤中、お金を払って音楽のストリーミングやポッドキャストを聴いたりせず、たいてい前の車のバンパーを眺めている以外にすることがないだけなのか? するのが楽しくない活動のいちばん嫌な部分を変えるために投資するといい。


■3.単純緊急性を見極め、それと闘う
 面接を受ける準備をするといった、難度も重要性も高い活動を先延ばしにしているときには、メールに返信するといった、簡単で、たいして重要ではない活動に時間を無駄にすることがある。
 それは誰にでも起こる。重要な締め切りがいくつもあって忙しい週には、受信トレイを空にしていたりする。忙しかったり時間のストレスを感じていたりすると、物事を今すぐ片づけなくてはいけないようなプレッシャーもいつも以上に感じてしまう。残念ながら、そんなときには、取り組むことにした用件の重要性をしっかり考える能力が低下しているものだ。その結果、その用件が重要かどうかではなく、緊急かどうかを考えるのがデフォルト設定になっている。それを、「単純緊急性効果」という。(中略)
 あなたは自分のパターンにも気づくかもしれない。たとえば、何かの締め切り近くになると、無意識にそれを避けようとして、たんに緊急なだけの活動に取りかかることはないだろうか? 疲れているときに、ただの緊急性に負けてしまわないだろうか?
 

■4.余暇と効率や現在価値を切り離す
 スケジュールの中の活動を楽しむためには、自分がしていることの価値をはっきりと示してはくれない、お金その他の測定基準から切り離してほしい。 この投資はどれほど効率的だったかなどと考えるのをやめ、今この瞬間に意識を向けよう。現在の余暇の喜びから私たちを遠ざけるものはなんであれ、余暇の価値を台無しにし、将来またその活動をしたいという気持ちを削いでしまう。
 要するに、休暇にいくらかかったとか、ハウスクリーニング業者が金銭的投資に見合う働きをしたかどうかとか、考えないことだ。その代わりに、友人や家族ともっと時間を過ごせて、あるいは、大切なパートナーといっしょに布団にくるまりながら映画を楽しめて、どれだけ素晴らしいか、考えるといいだろう。


■5.「ノー」と言うために機会費用を評価する
 ノーと言いやすくするためには、イエスと言うことの機会費用を思い出すといい。ネットワークづくりのためにあなたと食事をしたいという人にイエスと言うのは、食事の1時間と、レストランまでの往復時間や駐車場所を見つけるための時間にイエスと言うことだ。全部で2時間かかるなら、 その時間でできたはずなのにしていないのは何か、と自問してほしい。そして、その食事の前後の時間には、どんな影響が出るのか? 慌てていくつか用件を片づけなければならないか? その約束に間に合わせようとして、ストレスが増さないか? そのあとの仕事にも影響が出ないか?(中略)
 自分のスケジュールを眺め、今後数カ月間の活動のプランを立てるときには、自分がイエスと言った活動にともなって生じる、この種のタイム・コストを必ず加えておこう。そうしたタイム・コストのせいでできなくなることを、5〜10書き出すといい。


【感想】

◆冒頭で「『幸福本』に近い内容」と申し上げましたが、本書の巻末の「謝辞」を読んでそれも納得。

著者であるアシュリー・ウィランズの、大学院時代の指導教授というのが、当ブログでもこの2冊をご紹介したことのある、エリザベス・ダンでした。

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「幸せをお金で買う」5つの授業 (中経出版)

参考記事:【科学的自己啓発書】『「幸せをお金で買う」5つの授業』エリザベス・ダン,マイケル・ノートン(2019年02月20日)

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「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室 (中経出版)

参考記事:【科学的自己啓発書?】『「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室』エリザベス・ダン,ロバート・ビスワス=ディーナー(2015年01月12日)

……上の方の作品は、中古が1万円超の高値なのに、Kindle版が半額になっているのですけど、どこのセールなのか?

それはさておき、実際、本書を通じて主張されているのが、「タイム・プア(働いてお金を稼ぐことを重視し、より質の高い時間をより多く手に入れることをおろそかにしてしまうこと)」を避けて、その逆の状態である「タイム・リッチ」を目指そうというもの。

実はその主張やそれに似たものは、類書でも数多く述べられていますが、本書はそれらと比べても考察の深さや具体例が充実していると思います。


◆たとえば第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目のお話。

よく「貧乏暇なし」と言いますが、実は「裕福な人ほどタイム・プアに陥りやすい」という指摘は目からウロコでした。

ただ、そこにある実験でも明らかなように、時間単価が高い人ほど、時間を稀少に感じやすいのも致し方ないでしょう。

この第1章では、こうした「タイム・プア」となるいくつかの要因を「タイム・トラップ」と呼び、分析しています。

割愛した中で興味深かったのが、「子ども時代に金銭的な不確かさを経験すると、大人になって慢性的にお金を重視する可能性が高まる」というもの。

脚注が付されていたので、タイトルでググったところ、どうもこちらの論文(?)らしく。

Psychological pathways linking income inequality in adolescence to well-being in adulthood: Self and Identity: Vol 0, No 0

いずれにせよ過去は変えられませんから、心当たりのある方は、こういった傾向があると自覚しておくべきでしょう。


◆続く第2章では「タイム・リッチ」になるための手順が、5つのステップで解説されています。

具体的なステップは本書にてご確認いただくとして、なるほどな、と思ったのが、ステップ4の「時間に投資する」から抜き出した、上記ポイントの2番目のお話。

よく「自分のやらねばならないことを、お金を出して外注せよ」みたいなことを言われますが、その中身は吟味する必要はあります。

特にここで引用しているような料理を作ることは、その行為が好きな人にとっては同じ時間の質の向上になりますから「タイム・リッチ」につながるもの。

また、ステップの最後の「時間の捉え方を変える」では、「時間の貴重さを認識する」というTIPSがありました。
人々は、今住んでいる町にはあと1カ月しかいられないと想像するように言われると、公園の中を歩いたり、芸術作品に気づいたり、ペットや人々を目にしたりするなど、普段なら気に留めることもなく、過小評価して過ごしていた時間から、急に大きな満足感を得るようになった。
この例、10年過ごした土地から今年引っ越した私には腑に落ちまくりでして、お気に入りだった「寝室の窓から見た外の風景」を引っ越し直前には何度も眺めていた記憶が。


◆一方第3章では、「タイム・リッチ」になるための具体的な戦略が紹介されています。

上記ポイントの3番目の「単純緊急性効果」のお話もその1つ。

確かに難易度も重要性も高い問題を目の前にすると、ついつい楽な緊急度の高い(と勝手に思っている)作業に手を出しがちです。

これに関しては、知識として「単純緊急性」という現象を知っておけば、こうした無考慮な行為にストップをかけられるかと。

また、上記ポイントの4番目も「余暇をゆったりと過ごす」という戦略からのもの。

余暇は余暇として満喫し、経済的価値を考えないことが、より「タイム・リッチ」につながるようです。

……これも脚注が付されているので、科学的根拠があるようなのですが、とりあえず割愛。


◆また上記ポイントの5番目は、第4章の「長期展望」から引用しました。

よく「『ノー』と言いましょう」ですとか、「アサーティブが大事」みたいな話はありましたが、ここにあるような「機会費用を評価する」というアドバイスは初めてな気が。

確かに軽々しく「イエス」という裏では、こういった機会費用がかかっていることを考えると、その考えに変化が出てくることでしょう。

さらには、著者のアシュリーの若くして亡くなった2人のいとこのエピソードを読むと、なぜ彼女がここまで「時間」に固執するのかも理解できました……。

なお本書は、各章ごとにかなりの量の脚注が付されており、さすがエリザベス・ダンの教え子の作品だな、と感じた次第。

テーマは自己啓発的ですが、しっかりエビデンスベースで書かれているのがポイント高いです。


科学的自己啓発書がお好きな方ならオススメ!

B09577BZ9B
TIME SMART(タイム・スマート)―お金と時間の科学
序 章 タイム・スマートの技法と科学
第1章 タイム・トラップとタイム・プアの蔓延
第2章 時間を見つけ、時間に投資するためのステップ
第3章 タイム・リッチになる習慣
第4章 長期展望
第5章 システム変更


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【地位財?】『幸せとお金の経済学』ロバート・H・フランク (著),‎ 金森重樹 (翻訳)(2017年12月28日)

【科学的自己啓発書】『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』エリック・バーカー(2017年10月27日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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