2021年11月27日
【情報収集?】『情報の選球眼 真実の収集・分析・発信』山本康正
情報の選球眼 真実の収集・分析・発信 (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも人気の高かった1冊。京大卒、東大大学院&ハーバード大学院を経て、Googleにも勤務したことがあるという山本康正さんが、「氾濫する情報の中から、真実ならびに各人に価値ある情報を獲得するノウハウ」を伝授してくださっています。
アマゾンの内容紹介から。
手を出すべきではない無数の虚偽情報が世の中に存在する。経営や投資において、フェイクや誤報を元に判断を下せば損失は免れない。だが、一方でスイングをしなければ利益を掴めない。ビジネスでは正しい情報が10あっても、大成功に結び付くのはたった1つ。トッププレイヤーでも1割以上の成功率を得るのは困難だが、彼らはその10の好機を見逃さずにバットを振り続けている。本書では投資家である著者が、自ら実践する情報の収集・活用法を指南。真実を見極める眼と、利益を最大化する思考力を養う一冊。
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Top SNS you must have on your Smartphone now! / Jahangeerm
【ポイント】
■1.世界の情報は英語でできている英語の原文を読むことは、情報の鮮度という観点からも重要です。たとえば、日本市場を瞬く間に席巻したiPhone。日本に入ってきたのは2008年でした。発売直後ではなく、2代目の機種になってからです。重要なのは、その時点ですでに世界では約600万台も売れていたことです。
にもかかわらず、日本のマーケットはこれまでに主流だった折りたたみ携帯が一部分では優秀なこともあって、海外からの情報の取得に消極的でほとんど情報が入ってきませんでした。グローバルレベル、英語での情報は飛び交っていたにもかかわらず、です。
その結果もありどうなったか。日本企業はシェアにおいてiPhoneに対抗することができませんでした。そしてこのような情報格差、特にグローバルで当たり前の情報が日本語に訳されず、日本のマーケットにまだ入ってきていないがために、知り得ない。結果、ビジネスで大きな危機が迫っているのにもかかわらず、気づかないケースがあまりに多いのです。
■2.署名記事かどうか確認する
日本のメディアや体制を批判しているわけではありませんが、対照的に海外のメディア、WSJなどでは、ヘルスケア領域一本で取材を何十年と続けている記者が当たり前にいます。
WSJであれば、特定テーマで担当者が変わらずに、ずっとその記者が署名記事で書いていることが多く、記事に間違った情報があった場合、記者がペナルティを受けるシステムもあります。記事の正確性を担保しようという自浄作用が働く仕組みができているのです。
このような体制が整っているからこそ堂々とクレジットを出せるし、読者も信頼できる記事として読むことができます。テレビの解説員も、名前こそ明らかであっても日本では同じ状況と言えるでしょう。(中略)
かなり極端なことを言いますが、小学生に算数のことを話しても、掛け算と足し算レベルの話しかできません。微分・積分の話をしても、多くの場合はなにも分からないでしょう。
専門家への取材とは、そういうことなのです。
■3.俯瞰的な視点で新聞を読む
新聞はスマートフォン、タブレット、パソコンなどで閲覧できる電子版を、スマートフォンやキンドルなどのタブレット端末で読んでいます。事前に何か準備するようなことはせず、夕刊はあまり読みません。メディアがこの情報に価値があると判断した内容であれば、夕刊だけの取り扱いで終わらないはずですし、オンラインのアプリの方でプッシュ通知をするだろうと考えるからです。(中略)
メディアを横断的に見るという点では、具体的には、日経新聞、WSJ、FT。この3紙はビジネスの観点からなるべく目を通します。日経新聞だけでなく、朝日新聞、読売新聞、産経新聞など国内の新聞はすべて毎朝読むことを習慣づけている人もいらっしゃいますが、それは専門性によるところが大きいと思います。政治などの投資以外の専門性を追求するならば、すべてに目を通すのは理にかなっているでしょう。
■4.ネット専業メディアはあくまで最終手段
ネットメディアから情報を取得しない理由は先に紹介したとおり、情報が偏っていることが多いからです。何か間違っていても、訂正と注意書きもなく、中身を入れ替えることを平気でする媒体に信用はおけません。(中略)
そもそも、紙媒体のメディアは一度印刷して世に情報が出たら、情報が間違っていたので後から訂正する、といった作業のハードルがかなり高いです。そのため情報が真実であるかを徹底的に、幾度ものチェック工程を経るシステムが構築されています。大手新聞社などでは、内容の事実や整合性をチェックする、校閲を専門に行う部署があります。
しかし、ネットメディアの場合は、整合性のチェックがされないことが多く、悪い意味で間違った情報が出やすい環境です。
ネットメディアから情報を得る場合は、それこそいままで以上に、目の前の情報は真実なのかどうかをチェックする必要があります。
■5.SNSは各サービスの違いを確認する
実際にユーチューブとティックトックとの違いなどを、考えてみましょう。すると、ティックトックはスマートフォンで撮影した動画を簡単に編集してすぐにアップロードすることができますが、ユーチューブは同じようにはできないということが分かります。レコメンデーションに関しては、ユーチューブの場合、これまでの履歴を参考にしているようですが、ティックトックは基本的には同じく履歴を参考にしていながら、一定の割合で、自分の興味とは関係のなさそうなランダムの動画をレコメンデーションしてくる仕様となっていることが分かります。
そのような違いが見えてくれば、情報の発信にも、よりベターなSNSを選ぶことができるでしょう。0からスタートする発信者側からすると、ティックトックの方が視聴されやすいことが分かります。
【感想】
◆著者である山本康正さんの作品を読むのは初めてでしたが、普段当ブログでご紹介している知的生産術系の著者さんとはまた違っていて、色々と勉強になりました。そもそも山本さんの本業は、海外のテック系ベンチャーを発掘する投資家であり、また日本企業やベンチャーへの助言を行うというもの。
となると必然的に海外の情報を仕入れる必要がありますから、第1章から引用した上記ポイントの1番目のように、英語は必須になる次第。
もちろん私は、iPhoneデビュー当時の情報を英語で読んだことはありませんが、日本での論調は確か「海外と違って日本ではあまり流行らないのでは」というものだったと思います。
もっとも海外での熱狂ぶりを英語で直接読めていたら、また違った感想を持っていたかと。
最近は翻訳アプリやDeepL翻訳等の翻訳サイトの性能向上ぶりから、「英語不要」という意見もあるものの、こと「情報収集」の点からは「グローバルの情報を英語の原文で確認し、世界のトレンドを知る」必要があるようです。
◆続く第2章は「情報の見極めかた」がテーマ。
山本さんいわく「すべての情報にはバイアスがかかっている」ため、それを踏まえた上で接する必要があるとのこと。
バイアスをかける理由は色々とありますが意図的にかけられたバイアスには、騙そうという意思が介在しているので特に気をつけねばなりません。分かりやすいのは、なんらかの利益をその情報を出すことで得られるケースです。これは企業やインフルエンサーのみならず、有名メディアでも起こりうります(主に「無知」からによるものが多いようですが)。
そこで意識しておきたいのが、上記ポイントの2番目に挙げた署名の有無。
確かにウェブニュースでも、書いた人の名前を見て「この記事は信用できそう」「この記事はちょっと……」という心構えを持つことはあると思います。
たとえば、新型コロナ関係の記事では、忽那賢志先生の書かれたものを信頼する方は多かったかと。
忽那賢志の記事一覧 - 個人 - Yahoo!ニュース
ただし、「専門家」を名乗る人でも、本当の専門家かどうかは、こちらでは分からないケースも多々あります。
コロナ禍ではワイドショーに多くの専門家が登場しましたが、本書ではバッサリ。
そもそも新型コロナウイルスの専門家で、本当に世の中から必要とされている方であれば、視聴者に行動を呼びかける場面は別として、専門性と直接関係ないワイドショーに過剰に出演したりする時間はないはずです。なるほど、確かに。
◆一方第3章では、具体的なメディアの活用法が指南されています。
まずは上記ポイントの3番目の「新聞」。
情報が偏らないように、複数の新聞を読むのは当然だとしても、日経以外がWSJとFTというのが、いかにも山本さんらしいです。
もちろん、「自分は海外関係ない」というドメスティックなお仕事の方もいらっしゃるとは思いますが、
テクノロジーの世界では、日本の中で、サプライチェーンが完結することはまずありません。常に、海外の動向も同時に見ておかなければ、2021年ごろに起こった車やスマホ、ゲーム機、データセンターなど、業界に関係なく起きた半導体の供給不足などの様子を把握することはできないでしょう。と言われると、返す言葉もありません。
また、新聞以外のメディアについても、色々と言及されています。
たとえばビジネス誌でも、必要に応じてチェックされているそうで、具体的には『週刊東洋経済』と『日経ビジネス』の2誌なのだとか(『週刊ダイヤモンド』の立場は……)。
さらに「市場関係者なら目を通しておくべき媒体」として『Bloomberg Professional Services』が挙げられていたんですが、月額約20万円と聞いて、市場関係者は大変だな、と思いました(小並感)。
◆ただし、上記ポイントの4番目に挙げた「ネット専業メディア」に関しては、本書はネガティブなスタンスです。
山本さんいわく「ネット上だけでメディアを運営している媒体から情報を得ることは、ほとんどない」とのこと。
速報性があるなどの理由でどうしても得たい情報があった。けれども上記のメディアでは見つからない。そのような場合にチェックする。最終手段という位置づけです。そうでない場合、ネットメディアで見るのは、信用する知人がシェアしたフェイスブックのリンクが多いです。確かに上記ポイントの4番目にあるように、紙媒体は一度間違ったら訂正するのが困難なため、チェックが厳重だというのはわかります。
ただ、一度間違っていたら、それが訂正されることもまずないので、それはそれで怖い気もするのですが……。
また、SNSについては「極端な情報が多い」との指摘が。
それを表したものとして、こちらの図が掲載されていました。
SNSを使う人が知っておくべき事#これでフォロワーさん増えました pic.twitter.com/JVpckktpxb
— つだしん (@shin_5_9) August 30, 2021
確かにヤフコメなどを見ると、それもありなん、と言ったところでしょうか。
◆また最後の第4章では、情報の活用法について述べられています。
たとえばリアルのビジネス誌で気になった記事があると、山本さんはスマホで撮影して、Googleフォトに保存するのだそう。
というのもGoogleフォトでは、画像に写った文字をテキストとして認識するOCR機能が備わっているため、後で検索がかけられるから。
さらにはSNSの経営への活用に関して述べた、上記ポイントの5番目のお話も興味深かったです。
なるほど、新規参入する場合には、YouTubeよりティックトックの方がスタートダッシュが切れるんですね(知らなんだ)。
単に時間の長さで使い分けるのかと思ってましたが、レコメンデーションが違うのだとは……。
情報収集&活用に関して学びの多い1冊でした!
情報の選球眼 真実の収集・分析・発信 (幻冬舎新書)
第1章 情報の価値は「どこ」にあるのか
第2章 価値ある情報をどう見極めるのか
第3章 メディアを活用して価値ある情報を見つける
第4章 活用できなければ情報に価値はない
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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