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2021年11月11日

【老後指南?】『不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方』中村恒子,奥田弘美


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不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」にて、人気の高い作品。

精神科医であるお二人が、折り返し時点を過ぎた人生の過ごし方について、ざっくばらんなアドバイスをしてくださっています。

アマゾンの内容紹介から。
『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』、待望の続編!
「人生100年時代」の後半戦に待ち受ける、憂鬱なあれこれと、うまいこと折り合いをつけて生きていくコツを、92歳の精神科医・中村恒子先生と、54歳で同じく精神科医の奥田弘美先生のコンビが対談形式で語り尽くします。
老い、孤独、人間関係、終活など、シニアの深刻な悩みにそっと寄り添い、答えを出してくれる一冊です。

中古がほとんど定価並みのお値段ですから、このKindle版が600円以上お買い得です!





Untitled (Ladies at the table) (1919) - Cristiano Cruz (1892-1951) / pedrosimoes7


【ポイント】

■1.潔く老いを認めていく
中村 アンチエイジングって、「老いに対抗する」っていう意味やろ? 私らの時代は、そんな言葉もなかったし、老いに抵抗する、対抗するっていう感覚もほとんどなかったなぁ。すごく自然に老いていけた気がするね。老いることに対して、すごく気楽やった。

奥田 恒子先生の今の言葉に、すごく大きなヒントがあると思います。「老いること」に対抗して、いつまでも若さに執着して苦しむより、潔く老いを認めていく
 さらに、嫌なことだと捉えずに、性別の縛りや人の目から解放される、そんなイメージを持てば、自分らしく、活き活きと生きられる気がします。ファッションにしても、世間の基準に惑わされず、自分が本当に心地良いものを身に付けて、のびのび生きた方が楽しいですからね。


■2.心の支えや拠り所を見つける
奥田 それはすごくわかりますね。私も子育て中にマタハラ(マタニティ・ハラスメント)を受けたり、職場の人間関係のストレスで悩んだりしたこともありますが、子どもを育てるためには負けられないぞと思ったら、乗り切ることができました。

中村 そうそう、たった1つでも心の支えや拠り所があると、大抵のストレスは乗り切ることができるもんや。それは何も子どもに限らん。なんでもええから生きがいを見つけるといいと思うよ。

奥田 そういえば、以前外来で出会った女性が、趣味でやっている音楽活動を続けるために、仕事で嫌なことがあっても耐えられるって仰っていました。バンドの演奏活動を続けるためにお金が必要だから、職場の嫌な上司に対しても我慢できるって。

中村 そうそう、拠り所は人によって様々。1つでも見つけられると強くなれるね。


■3.心を「今ここ」に保つ
奥田 実は私の中では、先生はマインドフルネスの最高の実践者です。先ほども話しましたが、戦時中という悲惨な時代に、不安に押しつぶされずに、ひたすら「今ここ」のことを考えて生き抜いてこられた。
 戦争が終わってからも、放埒なご主人とも工夫して暮らしながら、そのとき、そのときにできる仕事を90歳まで、たんたんとこなされた。

中村 生きるために、そうせざるを得なかっただけなんやけど(笑)。でも、戦時中に青春時代を過ごしたおかげで、くよくよ悩み過ぎない癖はついた。
明日のことを心配してもしゃあなし、昨日のことを後悔しても時間が戻るわけじゃなし。ま、開き直りやな。戦中派のたくましさは、このへんから来ていると思うよ。


■4.「5年後に死ぬとしたら、何をしておきたいか」を考える
中村 私の若い頃のように、死が身近にあり過ぎても困るけど、ときどきは、「自分が死ぬときってどんな感じやろう?」「自分はいつ頃死ぬんだろう」って想像してみるのも、悪くないと思うよ。

奥田 仰る通りです。自分の人生に必ず終わりがあるってことを自覚して、自分の死ぬときをイメージするというのは、セルフコーチングなどでもよく使われる手法なんですよね。
「自分がもし5年後に死ぬとしたら、何をしておきたいか?」と考えると、おのずと自分にとって必要なこと、大切なことが見えてきますよね。私もときどき、この問いを自分に投げかけて、本当に大切なことを疎かにしたり、後回しにしたりしていないかをチェックしています。


■5.平均寿命を超えた者からの提案
中村 予想外に長生きしてしまった私からの提案としては、まずは、体が動くうちにできる楽しみや趣味は、たっぷりしておくことやね。私は旅行が好きやったから、体が動くうちに国内で行きたいところには大体行っておいた。だから、今みたいに杖歩行になってしまってもあまり後悔はないね。

奥田 なるほど、先生はそのようにされて、後悔なく老後を過ごせているのですね。

中村 いや、全く後悔がないといえばウソになるけどな。ほどほどに満足はしている。あと、これは読んでいる人のために言っておこうと思ったんやけど、足を骨折して、仕事を辞めてから家におるやろ? 暇を持て余すことがあるから、家でできる趣味も見つけておいたら良かったなと、それだけは小さな後悔かなぁ。


【感想】

◆冒頭の内容紹介にもありますように、本書は「初老」に属する「54歳」の奥田弘美先生が、「超・後期高齢者」(本人談)である中村恒子先生に「高齢者」としての教えを乞うというもの。

一応テーマが「老後の心身の不安と折り合いをつけて、うまいこと老いる」ということで、下記目次の5つの章に分かれて展開されています。

まず第1章は、中村先生が「老いる」ことのメリットを説く「老いを受け入れるほど人は幸せになれる」。

こちらでは、世間一般の「老いることへの不安」に対して、違った角度から見解を述べられています。

たとえば上記ポイントの1番目にある「潔く老いを認める」というのは、アンチエイジング本を何冊もご紹介してきた私にとっては、ある意味「目からウロコ」。

実際、後半にかけて読んでいくと、中村先生が、いかに世間や人の目から解放されているかがよく分かるのですが。


◆その「世間」や「人の目」に関連しているのが、第2章の「人間関係はどんどん手放していく」。

ここでは章題にあるように、コミュニケーションに関することがテーマです。

そもそも中村先生、若い頃は旦那さんと離婚を考えてらしたくらい夫婦関係に悩んでいたのに、60歳を過ぎてからはすごく楽になったとのこと。

その秘訣は「諦め」。
私自身も夫を変えようと頑張っているときが、一番しんどかったよ。腹が立ったり、後悔して悲しくなったり。でも「夫を変えることは無理なんや」と諦めてしまったら、逆に腹が据わってきて、怒ったり悲しんだりする感情がどんどん薄くなっていったなあ。
ただし、そんな中でも中村先生はお子さんに愛情を注ぐことで、乗り切ってこれたのだそう。

つまり上記ポイントの2番目にあるように「心の支えや拠り所を見つける」のが大事なワケです。

もっとも中村先生いわく「交友関係は広くなるほど、悩みも増える」「一人や二人に嫌われたところで、死ぬわけじゃなし」(いずれも小見出しより)と、基本的に「独り」でいることがお好きなようなのですが。


◆一方第3章では、「『これまで』や『これから』で頭を満たさない」という章題でも明らかですが、いわゆる「マインドフルネス」についてのお話が登場します。

上記ポイントの3番目にあるように、奥田先生によると、中村先生は「マインドフルネスの最高の実践者」とのこと。

もちろん中村先生は、「マインドフルネス」なんて言葉はご存じではないですから、意識せずに実践されているのですが、特に若い頃は、今のように文明の利器がなかった分、手間ひまがかかったことが大きかったようです。

……「時短」を求めた結果、私たちが「これまで」や「これから」で頭を満たしてしまっているのは、皮肉なことですが。

また、奥田先生が心を「今ここ」を保つために工夫しているのが、「睡眠」と「食事」なので、この辺は私たちにも取り入れることができそうです(詳細は本書を)。


◆そして第4章ではいよいよ、「『死』との向き合い方」がテーマに。

上記ポイントの4番目にある「5年後に死ぬとしたら、何をしておきたいか」というのは、年数はさておき、この本を読んだときに私自身、意識したことがありました。

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死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33 (幻冬舎単行本)

参考記事:【死生観?】『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』大津秀一(2018年02月18日)

この本に登場するのは、いずれも癌等の終末期患者さんですから、それも当然のこと。

突然死や事故で亡くなる人がいるように、皆が皆、考えるチャンスを与えられるわけではありませんから、元気なうちから熟考しておいた方が良いと思います。

また、上記ポイントの5番目は、中村先生による「長寿者からアドバイス」で、これまたうなずくことしきり。

動けなくなってからも「家でできる趣味」は見つけられないことはないですが、体を動かす必要があるものは、先送りしない方が良さげですね……。


◆なお、ややデリケートなテーマなので割愛しましたが、第5章では延命治療の是非についてページが割かれています。

たとえば人工呼吸器に関しては、昨今の新型コロナの関係でよく目にするようになりましたが、私も「呼吸を助けてくれる機械」程度の知識でいました。

ところが奥田先生いわく
 人工呼吸器に乗せることになると、チューブを口から喉の奥へと突っ込んで強制的に機械に繫いで呼吸させますので、意識があると非常に苦しい。そこで麻酔薬を使って眠らせます。
 その後、何日か経っても呼吸状態が良くならなかったら、いつまでも喉にチューブを入れておけないので、今度は喉を切開して(気管切開)、カニューレ(気道を確保するチューブ)を喉に直接差し込みます。
ここまで読んだだけでも憂鬱ですが、高齢者の場合、「人工呼吸器に乗せるような濃厚な延命治療を行うと、呼吸機能が正常に戻り切らない場合が多い」のだそうです。

また、「何週間もベッドに寝かせきりで治療を行うと、筋力も低下するし、意識もしっかり戻り切らない場合も少なくない」ため、結果的に「命は取り留めたとしても、満足に会話もできず、食事もとれない、「寝たきり」の状態となり、体に何本も点滴や管を繫がれて、スパゲティ状態(体に何本もチューブや管が差し込まれている状態)になってしまう高齢者が非常に多い」とのこと。

残された家族は、「1日でも長生きして欲しい」と願って当然ですけど、治療を受ける方は、このような苦労を強いられるため、先生方はお二方とも「延命治療は絶対にいらない」と家族に伝えてあるのだそうです。

実際、奥田先生によると「医者や看護師で、高齢者になってから延命治療を受けたいと言う人には 今まで出会ったことがない」のだとか。

……個人的には、この第5章が読めただけでも、本書の元は取れました。


老後を悔いなく生きるために読むべし!

B097XZJ37S
不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方
第1章 老いを受け入れるほど人は幸せになれる
第2章 人間関係はどんどん手放していく
第3章 「これまで」や「これから」で頭を満たさない
第4章 「死」との向き合い方はちゃんとある
第5章 終着駅に笑顔で降り立つために


【関連記事】

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【メンタル】『中高年に効く! メンタル防衛術』夏目 誠(2018年11月07日)

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【健康】『いくつになっても年をとらない新・9つの習慣』吉川敏一(2015年12月29日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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天皇の日本史 (角川文庫)

日本の天皇文化(とまとめていいのか?)について解説したこの作品は、Kindle版が500円弱お得。

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フランス革命についての省察 (光文社古典新訳文庫)

フランス革命を掘り下げたこちらの作品は、中古価格が定価を上回りますから、Kindle版が1100円強お得な計算です!


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