2021年10月25日
【知的生産?】『TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』ズンク・アーレンス
TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも一番人気だったメモ術本。ただし通常のメモと違い、「アウトプット前提」でメモを作成するのが、本書の特徴となっています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
58冊の本と、数百本の論文という、大量の執筆をしたニクラス・ルーマンという社会学者がいます。彼の著作のクオリティはずばぬけていて、専門分野以外でも古典的名著になっています。
どうしてそんなことができたのか?
その答えは、彼が編み出したツェッテルカステンというメモ術にあります。
中古が定価を大きく上回る一方、上記未読本記事の時点では定価だったKindle版が値下がりして、「10%OFF」となっていますから、こちらもお見逃しなく!
2015-06-12i Imagining an index card browsing interface -- index card #index-card #zettelkasten #browsing #visualization / sachac
【ポイント】
■1.ツェッテルカステンに必要な4つの道具(1)書くものと書かれるものアイデアが浮かんでくるたびに、いつでもどこでもアイデアをメモするものが必要です。(中略)(2)文献管理システム
ノートでも、ナプキンでも、あるいはスマートフォンやiPad上のアプリでもかまいません。(2)のメモもすでにご説明しました。これにはふたつの目的があります。文献を集めることと、読書中のメモを集めることです。私は〈Zotero〉(無料)のようなプログラムを強くおすすめします。(3)ツェッテルカステンこれについては、先ほど概要をご紹介した、昔ながらの、手書きの紙を箱に入れるやり方を好む人もいます。(中略)(4)エディター
コンピューターだと、リンクの追加や書誌情報の体裁の調整など、仕事のなかの比較的重要でない部分をスピードアップしてくれます。〈Zotero〉をお使いの場合は、対応しているエディター(Microsoft Wordなど)をおすすめします。書誌情報がいちばん面倒で、これを手入力しなくてよくなれば、かなり作業が楽になるからです。
■2.永久に保存する2種類のメモ
残念ながら、プロジェクトが化けるかどうかをすぐに見分けるのは困難です。だからこそ、アイデアを書き留めるかどうかのしきい値はできるだけ低くする必要がありますが、それを1日か2日のうちに自分の言葉で説明するのも同じぐらい重要です。
メモの内容が理解できなくなっていたり、やけに平凡に思えたりしたら、メモを長く放置しすぎたサインです。前者は、メモが思い出させてくれるはずの中身を忘れてしまった状態です。後者は、メモに意味を与えていた文脈を忘れてしまった状態です。
永久に保存するメモは2種類だけ。
文献管理システムに格納する文献メモと、ツェッテルカステンに格納するメインのメモです。前者はごく簡単で構いません。メモが指し示している文献の本文こそが重要なのが明らかだからです。
後者はもっと注意深く、詳しく書く必要があります。単独で読んでもわかるようになっていなければならないからです。
■3.ツェッテルカステンに用いられる4つのリンク
(1)まず最初は、トピックの概要を示すメインのメモへのリンクです。
これは索引から直接参照されるようなメモのことです。このリンクは、概要が必要なほど大きく発展したトピックへの入口として使われます。(中略)
(2)最も一般的なものは、メモからメモへの直接的なリンクです。これは、ふたつのメモのあいだにつながりがあることを示す以外の機能はありません。ツェッテルカステン内の位置にかかわらず、関連するふたつのメモ内の単語を直接リンクしましょう。(中略)
(3)これは、ルーマンのように紙とペンで作業している場合にのみ必要になりますが、ツェッテルカステンに蓄積された思考の流れをたどれるようにしたリンクで、デジタルならタグにあたります。(中略)
(4)これもデジタル版では必要ありませんが、紙で管理する場合は、現在のメモがフォローするメモと、逆にフォローされるメモを示すリンクの一覧も必要です。これも、(3)と同様、隣同士でなくなったにもかかわらず相互フォローの関係にあるメモを確認するためにのみ重要です。
■4.常に同じようにメモをとる
デジタルを使えば、メモの長さに関する物理的制約はなくなりますが、個人的にはデジタルのメモもスペースが限られているように扱うことを強くおすすめします。
ツェッテルカステンは、ユーザーにかなりの制約を課します。でも、それがいいところでもあります。すべて同じ形式に制限しているので、メモ1枚あたりひとつのアイデアを、可能なかぎり簡潔、明確に表現しなければなりません。また、「メモ1枚にひとつのアイデア」に制限することは、あとでアイデアを自由に組み合わせるための前提条件でもあります。
ルーマンはA6形式のメモを選びました。デジタル版では、画面に収まってスクロールしないぐらいの量がひとつの目安になるでしょう。
また、ツェッテルカステンは私たちが文献や思考を扱うときも「常に同じ」にしてくれます。さまざまなメモやアイデアをあらゆる形式のメモやテクニックで処理する代わりに、常に同じ、シンプルなアプローチを使います
■5.メモの積み重ねがあれば執筆も簡単
執筆とは下書きの改訂にすぎず、その下書きとは一連のメモを連続した文に書き直す作業にすぎません。メモを毎日書き留め、ツェッテルカステンに入れ、互いに関連づけて索引を添えておけば、自分が書くもののテーマを見つける心配をすることはありません。私たちは、ツェッテルカステンのなかを見て、塊ができているところをチェックするだけです。
塊になっているものは関心を何度も惹いたテーマなので、取り組むべき資料が見つかっているのはすでにわかっています。
次に、このメモを机の上に並べて、主張のアウトラインを作成しましょう。章、節、項の仮の順番を組み立てます。そうすると、答えられていない問いが明らかになり、埋めるべき主張の穴や、さらなる取り組みが必要な部分が浮かび上がります。
【感想】
◆本書で展開されているメモ術……タイトルにもあるツェッテルカステンについては、パッと読んだ感じでは、いわゆる「京大式カード」を思い浮かべる方も多いかもしれません。元祖ライフハック! 梅棹忠夫の京大カードは現代でも通じるか - ITmedia エンタープライズ
1.常に携帯し、気付いたことがあればメモするどちらが先に生まれたかは分からないのですが、確かにカードに整理して、カード同士の関係を意識するところなど、まさにそう。
2.1枚に1つの情報を記録する
3.ときどき見直し、カード同士の関係から再発見をする
ただし何となく違うな、と思われる点がいくつかあって、その1つが上記ポイントの1番目にある「文献管理システム」です。
ここで触れられている「zotero」なるツールは、ブログ内を検索したところヒットしなかったので、当ブログ初登場でした。
新たな文献管理ツール「zotero」〜便利な使い方を詳しく解説 | 英文校正と論文翻訳の医学英語総合サービス
基本的には論文を書く際に、引用文献の「著者・所属名、雑誌名、出版年数など」を管理するツールのようですが、確かに「文献管理システム」としては秀逸ではないか、と。
そして、このシステムに格納したメモは「文献メモ」として永久に保存されることは、上記ポイントの2番目にあるとおりです。
◆なお、そちらが比較的簡単で良いのに比べて、もう1つの「永久保存メモ」である「ツェッテルカステンに格納するメインのメモ」の方は、作成にやや手こずる模様。
まずは、普通のメモ術にあるように、何でも思いついたことや気になったことを「走り書きのメモ」に記します。
その後、過去に書いたメモや「文献メモ」を踏まえた上で、「1日か2日のうちに」その「走り書きメモ」の内容を「メインのメモ」にブラッシュアップするという。
しかもこの「メインのメモ」は、上記ポイントの5番目にあるように、そのまま執筆の下書きにほぼそのまま使えるレベルのものになります。
……多分、このツェッテルカステンというシステムが、そこそこ古くからあるのに、それほど普及していないのはこのブラッシュアップの作業が大変だったからでは、と感じたワタクシ。
◆実は本書は、具体的なメモの内容がほぼ掲載されておらず、唯一の例外とも言っていいのが、当ブログでもご紹介したことのあるこちらの本を、著者が読んだ際のメモでした。
いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学
参考記事:【オススメ!】『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール(2015年03月01日)
この本を読んで、著者はこのような最初のメモを残したのだとか。
「社会的不平等に関する分析には、欠乏の認知的影響を含めなければならない」(Mullainathan and Shafir 2013.)ただし、次のメモでは「なぜだろうか」から始まる、自分の考えを記しています。
2枚目のメモは欠乏が社会的不平等の研究となぜ関係あるのか、その答えがすべて本に書いてあっても、ただ書き写してはいけません。明確にされなければならないのです。確かにここまで書き込むとなると、それなりに工数もかかりますし、「執筆の下書き」に近いことがわかります。
言い換えると、欠乏の認知的影響に関する洞察が、社会的不平等の分析にどのように影響するのか、自分で考えて書く必要があるということです。この両方は、読書中にとったメモに基づいてはいますが、自分の思考の流れに沿って書いたものです。
……できれば、この2枚目のメモも収録してくれればよかったのに、それはないんですよね(涙目)。
と言いますか、こういったメモの概要や、メモ同士の関係、それぞれのメモのレイアウト等について、実物の写真までは望まないものの、せめてイラストがあれば……と思っていたら、本書の冒頭の「はじめに」の次に、「日本版特別付録」としてありましたw
読み始めてすぐに、図があることは気が付いていたのですが、あまりに最初の方の図だったので、その後、該当ページあたりで再登場するかと思っていた次第(「日本版特別付録」じゃ無理ですよね)。
◆また、上記ポイントの3番目のリンクについては、4つご紹介したものの、こと「リンク」という作業を考えると、デジタルをオススメせざるを得ません。
本書でも手書きの効能には触れられているのですが、手作業で漏れなくリンクを書くのは非常に困難かと。
なお、今回割愛した、追加でメモを加えた場合のナンバリングの仕方や、タグの書き方等に関しては、ブクマ500超のこちらのGIGAZINさんの記事が分かりやすいと思います。
効率的なノートを作成できるドイツの社会学者が生み出した方法「Zettelkasten」とは? - GIGAZINE
去年の6月に書かれた記事なのに、私はノーマークでした。
ただし、こちらの記事では、前述の「文献メモ」が独立しておらず、「どこからアイデアを得たのかがわかるように、カードには必ず参考文献の情報をメモしておきます」と一緒(?)のようになっているので、本書とはやや違う感じ。
このGIGAZINさんのエントリーを読んで、ツェッテルカステンに興味を持たれていた方は、本書で補足すると良いと思います。
◆なお、今回の記事では、こうしたツェッテルカステンの形式的な部分を中心に取り上げてきましたが、本書ではメモ自体の効能や、読書メモの取り方等についても触れられていました。
たとえば、現時点で特に執筆する予定がない人にとっても、読書メモとしてツェッテルカステンを作り上げていく行為は、自分自身の財産になるのではないでしょうか。
実際、過去のメモと照らし合わせて、新たに思考した上でメモを加えていくのですから、時間が経てば経つほど、より濃厚になるわけですし、まさに「知的生産」そのものかと。
ちなみに巻末の「原注」と本文は、Kindle版の場合「リンク」していますので、その都度飛べて、非常に読みやすかったです。
また、リンクは張っていなかったものの、大量の参考文献が掲載されているのも、まさにツェッテルカステンをベースに書かれたからこそ。
充実した知的生産を行いたい方は読むべし!
TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる
Chapter 01 「メモのとり方」を知れば大作が自然に書ける
Chapter 02 メモはとればとるほど、財産になる
Chapter 03 必要なのはシンプルに「ペン」と「紙」
Chapter 04 「メモ」はあなたオリジナルの「思考」を生む魔法のツール
Chapter 05 メモをとれば、書くことではなく思考に集中できる
Chapter 06 メモをとるときは、つながりを意識する
Chapter 07 メモをとれば、オリジナルのテーマと資料が自然に揃う
Chapter 08 メモがあれば、大作も書ける
Chapter 09 メモをとることは、「考え」「覚える」教養にもなる
Chapter 10 読書メモは、自分の言葉で書こう
Chapter 11 メモをとることは最高に学ぶことでもある
Chapter 12 メモ同士をつなげれば、次から次へアイデアが発展していく
Chapter 13 メモをとればアウトプットができる
Chapter 14 何かをひらめくたびにペンを取ろう
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【メモ術】『仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。』小西利行(2016年01月20日)
【編集後記】
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私も父が患者だったゆえ、他人ごとではない糖尿病本は、Kindle版が600円弱お買い得。
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【編集後記2】
◆一昨日の「ニコニコカドカワ祭り2021 続き」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。絶対に疲れない体をつくる関節ストレッチ
わが闘争(上下・続 3冊合本版) (角川文庫)
世界神話事典 世界の神々の誕生 (角川ソフィア文庫)
神曲【全三篇 合本版】 (角川ソフィア文庫)
よろしければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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