2021年10月22日
【医療リテラシー】『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』松村むつみ
自身を守り家族を守る医療リテラシー読本
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本ストア 9周年キャンペーン」の翔泳社分の記事でも人気の高い医療本。昨今の「情報過多」状態において必要なのは、まさに「医療リテラシー」である、と思わせられた作品でした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
新型コロナウイルスの報道に見られるように、現在、医療に関するいろいろな情報が、ネットや新聞、TVにあふれています。
医学の進歩とインターネットの発達により、今は医療に関するさまざまな情報を手軽に得ることができます。一方、日々の報道やSNSから流れてくる大量の情報の中から科学的に正しい情報を選ぶのは、とても難しくなりました。
そこで本書では、医療や健康に関するデマや、不安をあおるような内容に惑わされず、医療リテラシーを身につけて実践し、健康で幸せな生活を送る方法について、身近な例を用いてわかりやすく解説していきます。
送料を加えた中古よりは、このKindle版が300円以上お買い得となっています!
Medical Consultation / Nursing Schools Near Me
【ポイント】
■1.「免疫力」という言葉を見たら誤情報の可能性を考えるよく、「体を温めることで免疫力をアップしよう」といった宣伝文句が、広告やウェブサイトなどに書いてあることがあります。新型コロナウイルス感染症でも、現役医師が「子宮を温めると新型コロナウイルスにかかりにくくなる」といった、真偽の不確かな情報を流して話題になりました。
不十分なエビデンスを根拠として提示する広告もあります。例えば、「おなかを温めることで免疫力アップ」といった広告が論拠にしていたある論文がありましたが、これは、6名のリンパ球減少症の患者さんに対して、体を温めるとリンパ球が増えたという研究でした。研究対象となった患者さんの数が少なく、健康な人を対象とした研究ではありません。また、リンパ球の数が増えたという結論は、健康に対する具体的な結果を示しておらず根拠として不十分です。研究結果を都合よく利用されては、研究者も迷惑でしょう。
「免疫力」という言葉を見たら、くれぐれも、まずは情報の真偽を確認しましょう。
■2.「誰かの推薦文」があるものは疑ってみよう
健康食品やビタミン剤などの広告に、有名医師や権威のある学者の推薦が書いてあることがあります。権威のある人が推薦していると、「さぞかし効果があるのだろう」という印象を受ける方が多いと思います。
しかし、きちんとしたエビデンスがあり、厚生労働省での承認を経て保険適用となった薬剤や検査には、そもそも「個人による推薦」というものは必要ありません。宣伝をする必要もなく、通常の診療プロセスで、医師はその薬を処方します。健康食品も薬と同じで、エビデンスのあるものは推薦を必要としません。よい食事は、栄養指導のパンフレットなどで、「このような食事をしましょう」と書かれています。逆にいうと、「誰かの推薦が書いてある」というのは、「真偽が疑わしいこと」の目印にもなります。(中略)
広告をエビデンスピラミッドで考えるのは適切ではありませんが、あえて分類するなら「専門家の個人的意見」はレベル6の、もっとも低いところに当たるとされています。その道の専門家で権威があっても、どんなに実績がある人でも、たとえノーベル賞を受賞した人でも変わりません。どんな人であれ、個人の考えの信頼性は低いものなのです。
■3.「ファクト」と「オピニオン」を区別しよう
ある情報に接したとき、それが「ファクト=事実」であるのか、「オピニオン=意見」であるのかを考えることは非常に重要です。ニュースや情報の真偽を見分けるには必須の技術です。ファクトとは裏付けのある事実のことで、正確性が証明されるもののことです。一方、オピニオンは個人的な意見や主張をいい、正確性が証明されないものをいいます。ファクトとオピニオンは一つの文章の中に両方含まれることも多く、複雑です。(中略)
「○○が△△がんに効いた」という表現ですが、これは、完全にはファクトとはいえない表現と思われます。というのは、薬剤の効果というのは、「効く」「効かない」のアバウトな表現で表されるものではないからです。
「○○の投与で、△△がんの5年生存率が中央値にして8カ月ほど延長された」という表現だと、ファクトが書かれているといえます。
■4.「標準治療」が実は最良の治療
日常生活では、お金を出せば出すほど、質のいいサービスが受けられる場合もあります。このため、医療も同じに違いないと考える人もいるかもしれません。しかし、現在の日本においてはそうではありません。診療の質も診療の順番も、お金や地位に関係なく、誰でも同じように受けられるのが日本の保険診療です。(中略)
がんについて説明すると、各臓器のがんに関して「標準治療」が確立されています。「標準治療」とは、英語でいえば standard therapy です。NCI(アメリカ国立がん研究所。National Cancer Institute)によると、「専門家らによって、そのタイプのがんには最適と受け入れられ、広く行われている治療」とされ、「最良の診療」とも呼ばれる(いずれも筆者訳)とされています。日本語で「標準」というと、「中くらい」のイメージがあるかもしれませんが、ここでの「標準」は、そういう意味ではありません。
■5.一番最初に書いてある科が専門
1つのクリニックに、「外科、泌尿器科、皮膚科」などが同時に標榜されていて、しかも医師が1人しかいない場合、どの分野がその医師の専門なのか、患者さん側からすると、わかりにくいかもしれません。
先ほども述べましたが、日本では開業医のほとんどがもとは専門医なので、どうしても得手不得手があります。基本的には、「主たる標榜科」は一番最初に書いてあるので、最初に書いてある診療科が専門であることが多いです。ホームページの医師のプロフィールに、どこの病院の何科に何年いた、というような職歴が書いてあれば、専門分野を確認する上で参考になるでしょう。最近では、学会の専門医名簿を一般の方が見られる場合もあります。クリニックの場合は、医師の専門分野と合致した病気で受診すると、より質の高い診療が受けられる場合が多いと思います。
【感想】
◆私自身、それなりに「医療リテラシー」は高い方だと思っていたのですが、意外と知らないことが多く勉強になりました。たとえば第2章から抜き出した、上記ポイントの1番目にある「免疫力」。
確かに「免疫力」が高まるなら、健康には良いのでしょうけど、そう言うにはそれなりのエビデンスが必要です。
なるほど、ポイントの1番目のように人数は少ないわ、対象者が特殊だわでは、エビデンスとしては不十分でしょう。
また「納豆で免疫力アップ」のような表現も、まるで納豆が「薬を飲んだときのように免疫機能が上昇する」と思われかねない、とのこと。
もちろん、納豆自体は腸内細菌のバランスを整えることで、免疫機能に良い影響をもたらす可能性はあるものの、そればかり食べるのも栄養のバランスの観点からはマイナスです。
いずれにせよ、「免疫力」という単語を見たら、一応身構えた方が良さそうな。
◆「身構える」といえば、同じ第2章にあった上記ポイントの2番目の「誰かの推薦文」も同様です。
ただ、特に健康食品で「誰かの推薦が書いてある」商品なんて、山ほどあった気が。
ちなみにここで言う「エビデンスピラミッド」とは、信頼性が高い順に上から並べたもので、こちらのツイートのピラミッド型の図のようなものになります(本書にも同様な図は収録されています)。
エビデンスピラミッド置いときますね。 pic.twitter.com/RhFT8iMJV9
— 川浪洋平@模範的アスレティックトレーナー (@river_waves) April 2, 2019
なお、出典は国立国際医療センター「初期臨床で身につけたい臨床研究のエッセンス」Vol2 第4章とのこと。
……確かに「専門家による意見」は一番下ですね(ただし、2018年に定められた医療法のガイドラインで、「著名人の推薦」「体験談」はガイドライン違反になっており、取り締まりの対象となっているとのこと)。
また、よくある「動物実験」は、エビデンスレベルでいうと、この「専門家による意見」のさらに下なのだそう。
◆続く第3章では、こうした医療情報のソースの見極め方が指南されています。
たとえば、日本人は諸外国に比べると、医療・健康情報をテレビから得ることが多いものの、実際に信頼性が高いのは「公的機関」のサイト。
具体的にはこんなところです、
ホーム|厚生労働省
がん情報サービス HOME:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
ネットで検索すると、以前は「WELQ」で問題になったように、私的企業のメディアが上位に表示されたものですが、今はGoogleが公的な機関や信頼できる情報が上位に来るようになりました。
ただし、公的サイト以外の情報を見る際に大事なのが、上記ポイントの3番目にある「ファクト」と「オピニオン」の区別です。
これは逆に、私たちビジネスパーソンにはおなじみなのですが、医療情報における具体例は、ポイントの最後の表現を参考にしてみてください。
◆一方第4章では、「感染症・放射線・がん」といった具体的なテーマごとに医療リテラシーを見ていきます。
「感染症」といえばもちろん新型コロナウィルスも含まれるワケで、「感染経路」はもちろん、分かりにくい「感度・特異度」といった用語の解説もアリ。
もっとも出版時点における最新の情報までしかカバーしようがありませんから、こういう新情報が出てくる新型コロナについては難しいところです。
アルファ株とデルタ株の混合変異株、国内で6人確認…感染力などはデルタ株の性質引き継ぐ : 医療・健康 : ニュース : 読売新聞オンライン
そこで「がん」について触れている上記ポイントの4番目を抜き出したのですが、こちらは類書でもよく言われていることかと。
それでもがんの性質上、完治が難しいものがあるだけに、「民間医療」に頼る人は後を絶たないのですが……。
◆また、最後の第5章のテーマは、実際に役に立つ「病院のかかり方、薬のもらい方」について。
上記ポイントの5番目の「一番最初に書いてある科が専門」というのは、私は知りませんでした。
……何だか食料品の原材料名で、最初に表示されているのが、一番量が多い、みたいな話ですね。
さらには大病院と個人病院の使い分けも勉強になりました。
確かに、長期的な診療が必要なものは、大学病院等に比べて人の入れ替わりが少ない、個人病院が良さそうです。
実際私も、職場近くの同じ病院に20年近く通い、そこで人間ドックも受けていますから、何かあった場合でも相談しやすいですし。
正しい医療情報を得るために、読んでおきたい1冊!
自身を守り家族を守る医療リテラシー読本
序 章 医療リテラシーを身につけたい理由
第1章 どうして医療情報は、わかりにくいのか?
第2章 「デマ」や「偏った情報」の特徴
第3章 自身を守り家族を守る医療情報リテラシー
第4章 「感染症・放射線・がん」で具体的に学ぶ医療リテラシー
第5章 知っておきたい「病院のかかり方、薬のもらい方」
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お前らもっと『かぜの科学』の凄さを知るべき(2015年01月21日)
【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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