2021年10月14日
【働き方】『職場の「感情」論』相原孝夫

職場の「感情」論 (日本経済新聞出版)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「Kindle本秋の読書キャンペーン」からの働き方本。昨日のセール終了前日ランキングで大人気であることを知り、あわてて読んでみた次第です。
アマゾンの内容紹介から。
リモートワークの広がり、効率と合理性の過剰な重視……。
働く人の感情をマネジメントするハードルは上がり続け、居心地の悪い職場が増えている。
上司、仕事内容、組織風土などにまつわるさまざまな事例、研究成果を踏まえ、職場の感情を多角的に考察する。
中古があまり値下がりしていませんから、このKindle版が700円弱お買い得となっています!

Ohio humanities working group / omeka_pics
【ポイント】
■1.「リモハラ」「テレハラ」が生まれやすいわけダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社が、テレワーク業務で上司とコミュニケーションを取っている会社員110名を対象に行ったインターネットによるアンケート調査によると、「あなたは在宅でのテレワークに際して、上司とのコミュニケーションでストレスや不快感を感じたことはありますか?」と質問したところ、「何度もある」が41.8%、「ある」が37.2%という結果となり、約8割の人が上司とのコミュニケーションにストレスを感じていることがわかった。(中略)
「オンラインでの会議やミーティングをする上で、上司との距離感が近すぎると感じたことはありますか?」については、「何度もある」と回答した人が28.2%、「ある」との回答が35.4%という結果となった。さらに、「何度もある」「ある」と回答した人70名に「上司との距離感が近すぎることによりストレスや不快感を感じましたか?」と質問したところ、「非常に感じた」と回答した会社員が41.4%、「多少感じた」と回答した会社員が52.9%という結果となった。
つまり、リモートでの上司とのコミュニケーションでは、距離感が近過ぎるがゆえに、ストレスや不快感を抱く人が大半であることがわかる。
■2.同僚との関係性はマイクロムーブに左右される
実際に、職場の同僚との関係性は「マイクロムーブ」に左右されるということがわかっている。「マイクロムーブ」とは、メールの返信が遅れたとか、ランチに誘わなかったとかといった、その瞬間には取るに足りないことのように思えるが、互いの関係に影響を及ぼす、些細な行動や態度のことである。(中略)
マイクロムーブによって、関係性がどのように変化するかはもちろん、当初の関係性に大きく左右される。たいへん近しく、互いに信頼感の高い関係を築いていれば、上記のように、ネガティブな方向へ進みがちなマイクロムーブがあった場合にも、ネガティブな方向へ向かう前に対話を通して、その流れを押しとどめることができる。
しかし、不安定な関係性で、疑心暗鬼な感情がもともとあるような場合には、急速にネガティブな方向へ向かいかねない。それゆえ、当初の関係性が思わしくないケースにおいては、なおさら相手に与える影響に注意しなければならない。
■3.孤立している人を放置してはいけない
また、シカゴ大学教授のジョン・T・カシオポらは研究の結果、孤独の伝染について次のように述べている。
「社会的ネットワークの周縁部で、ある驚くべきパターンが確認された。周縁部の人々は友人が少ないために孤独を感じるが、その孤独感ゆえに、残り少ない友人関係も断ち切ってしまう。だがその前に、残っている友人に同じ孤独が伝染し、このサイクルが連鎖する傾向がある。こうして孤独が増殖する結果、毛糸のセーターが端から外れるのと同じように、社会的ネットワークも周縁から崩れていく」。
集団の中のたった1人から多くの人へ伝染し、単なる知り合いにまでも広がり、連鎖的に影響を及ぼすのだ。だから、自分が集団の中で孤独を感じていないからいいというものではない。その集団の中で一人でも孤立している人がいれば、その影響は確実に周囲に及び、周囲も同様に心身の健康を害し、パフォーマンスを低下させる。つまり、個人の問題としてではなく、組織全体の問題として捉える必要がある。孤立している人を放置してはいけないのだ。
■4.「声掛け」は所属意識を高める
人間はどこかに所属していたいという根源的な欲求を持っている。そして、所属していると思えるか、そこが居場所と思えるかは、その場における人間関係にかかっている。米国での調査によると、職場に自分の居場所を見出している人は、より生産的でモチベーションも高く、熱心に仕事に打ち込む。組織への貢献度についても、自分のポテンシャルを最大限に発揮できる可能性が3.5倍も高まるという結果となった。(中略)
職場に居場所を見出すための最もシンプルなソリューションとして、「声掛け」が挙げられている。同僚同士が気軽に声を掛け合い、言葉を交わす機会を設けるというものだ。
調査によれば、同僚に声を掛けられ、仕事上のことであれ、個人的なことであれ、言葉を交わす時に最も強く帰属意識を感じると回答している人は約40%にのぼった。
つまり「声掛け」は、帰属意識を高めることに大きく寄与しているのだ。帰属意識はもちろん、職場における幸福感の根底にあるものだ。性別や世代は関係なく、つながりを感じさせ、帰属意識を築き、幸福感を高めるうえで最も一般的な方策と言える。
■5.仕事とプライベートを明確に切り分けない
では、どうすればいいのか。どうやら、仕事とプライベートとの間に、明確に境界線を引こうとする方向性は誤りのようである。一時期、ワーク・ライフ・バランスに関する最良のアドバイスは、「仕事とプライベートの間に明確な線引きをすること」であった。だが最近の研究によれば、仕事上の役割と家庭での役割を厳格に区別し続けることが、実際にはストレスを招いているおそれがあるということがわかった。葛藤とストレスを抱え込むようになり、公私両面での消耗を招くようだ。つまりは、公私ともに充実させるための方法として、仕事とプライベートとの間に境界線を引くことは逆効果なのだ。
この方法とは反対に、双方を融合させれば、心身の健康と仕事のパフォーマンスが向上する可能性があるという。仕事と私生活の境界を曖昧にすることこそが解決策であると、経営学者のデイビッド・バーカスは言う。
【感想】
◆著者である相原さんのご本を読むのは久しぶりでしたが、ハイライトを引きまくりました。まず第1章のテーマは「リモートワーク」。
上記ポイントの1番目の「リモハラ」「テレハラ」というのはそれぞれ、「リモートワークハラスメント」「テレワークハラスメント」略語です。
そもそも、こうしたフレーズ自体初耳だったのですが、上記のように「距離感が近過ぎる」なんて問題があるとのことですから、リモートワークで部下がいらっしゃる方はご留意を。
また、転職活動自体もリモートで行い、退職届の提出もリモートで済ませられるという、昨今のリモートワーク環境は、若手の転職にうってつけとのこと。
確かに顧問先でも1社、業界的にコロナの影響をまるかぶりしているところから、経理部門の若手のエース格が、何の前触れもなくやめてしまっているんですよね……。
◆続く第2章のテーマは、本書のタイトルにもある「職場の感情」について。
同僚との関係が、上記ポイントの2番目にある「マイクロムーブ」なんて些細なことに左右されるとは意外でした。
また、成果主義の導入による年功序列の破壊は、妬みややっかみというネガティブな感情を生みやすい、という指摘もうなずけるところ。
自分より年下に使えなければならない部下の感情も、「年上部下」から「〜君」付けで呼ばれたりする上司の感情も、ないがしろにはできません。
さらには、産休・育休利用者に対して改善してもらいたいことがあるか、という質問に対して、「ある」という回答は8割以上だったそう。
その内容は、「産休・育休の制度の利用や妊娠中もしくは子育て中で業務ができない分、それをカバーしている社員が他にいることに気付いて欲しい」が最も多かった。参考記事:「子どもがいないことを理由に職場で不快な経験をされた男性&女性へのアンケート」の調査結果
もちろん、休みを取るのは当然の権利なのですが、一応こういった感情面についても職場全体で理解する必要はあると思います。
◆一方第3章は「ネガティブな感情が支配する職場」という、少々物騒な章題が付けられたもの。
私は長年一人で仕事をしているので気になりませんでしたが、上記ポイントの3番目にあるように「孤独な従業員」は、本人の健康や生産性の低下させるだけでなく、周囲に伝染するのだそうです。
だからといって、大きな交流イベントに強制参加させて何とかしようとするのは誤りで、それらは多くの場合空振りするか、むしろ逆効果になるとのこと。
昨今はコロナのせいで、運動会やら旅行は中止になって、ほっとしている人も多いのかもしれません。
逆に第4章は「ポジティブな感情に満たされている職場」という、第3章とは逆のテーマが登場。
そのために効果があるのが、上記ポイントの4番目の「声掛け」なのだとか。
ちなみにもう1つ重要なのが、意外なことに「笑い」で、予防医学者の石川善樹さんが日本のホワイトカラー1万人を対象に行った調査によると、ポジティブな感情やネガティブな感情に関わる主な体験の中で、健康や生産性に効く重要なものは何かと聞いた際に、「敬意をもって接せられた」ことと並んで「仕事中に笑った」ことが特に重要だったそうです。
◆なお、上記ポイントの5番目の「ワーク・ライフ・バランス」のお話は、1つ飛んだ第6章からのもの。
ここにあるように、相原さんのお考えとしては、ワークとライフは切り分けるものではなく、融合すべきもの、ということになります。
いわゆる「ワーク・ライフ・インテグレーション」と呼ばれるものですね。
参考記事:ワークライフインテグレーションとは? 仕事と家庭の「統合」の本当の意味 - カオナビ人事用語集
実際、仕事と家庭の境界線があいまいな方が、「認知上の役割転換」(仕事⇔家庭における)における労力を抑えることができるのだとか。
私自身、ひとりで事務所をやっている関係で、両者をあまり切り分けていなかったのですが、どうやら結果オーライだったみたいです。
これからの働き方を考える上で、読むべき1冊!

職場の「感情」論 (日本経済新聞出版)
序章 なぜ、「職場の感情」がますます重要になるのか
第1章 リモートワークで浮き彫りになる職場の問題
第2章 ないがしろにされる職場の感情
第3章 ネガティブな感情が支配する職場
第4章 ポジティブな感情に満たされている職場
第5章 働く人の感情を左右する5つの要素
第6章 この感情をめぐる3つのパラドックス
終章 理想的な職場の「感情」論
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