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2021年09月03日

【超説得術?】『気持ちよく人を動かす』高橋浩一


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気持ちよく人を動かす


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった作品。

ちなみにタイトルは「動かす」ですが、そんな横柄な話ではなくて「自ら動いてもらう」といった方が適切な内容でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
新卒で戦略コンサルティングの会社に入った著者は、「戦略コンサルタントの一番の武器はロジックなのだ」と思っていました。しかし、コンサルティングの現場で直面したのは「ロジックだけでは人は動かない」という事実でした。それから会社を辞めて独立し、経営者、そして無敗のトップセールスとしてキャリアを歩む中でたどり着いた「人を動かす」方法論を、本書にすべて詰め込みました。仕事でリーダーシップを発揮したい、すべての方に。

中古価格が定価を大きく上回っていますから、若干お得なKindle版がオススメです!





Business meeting shaking hands b2c credit to https://1dayreview.com / 1DayReview


【ポイント】

■1.乗り越えるべき「壁」を理解する
 業務のペーパーレス化によるメリットは現場にもあるはずですが、一方で、管理職からすると「急に時間を取られることへの抵抗」や「ヒアリング対象者へ説明する面倒くささ」が発生します。そこで、このような疑問や反論が考えられます。
●「こちらも忙しいので、現場の事情も考えてほしい。これは役員の了承事項ですか?」(気を許していないので動きたくない⇒関係性の壁
●「本当に全部署へのヒアリングが必要ですか? 一部の部署でもよいのでは?」(状況がクリアになっていないので動きたくない⇒情報整理の壁
●「以前もこの類のヒアリングに協力したが、現場には結果も共有されず、意味があるのかと思った。今回も同様では?」(過去に嫌な思いをしたので動きたくない⇒思い込みの壁
●「ペーパー業務が非効率なことはもう明らかなので、忙しい現場の時間を使ってわざわざヒアリングする意味はないでしょう」(割に合わないので動きたくない⇒損得勘定の壁


■2.壁を乗り越えるステップを通してお互いに認識が深まる
●相手をいきなり説得しようとせずに、深く理解することに集中する(「関係性の壁」を乗り越える)
●相手の話をビジュアルでまとめたものを見せることで、場を前進させる(「情報整理の壁」を乗り越える)
●相手の中にある思い込みの正体を突き止め、「なるほど、そう考えればいいのか」という発見を促す(「思い込みの壁」を乗り越える)
●今回の意思決定に対して、「どういう判断基準で考えるべきか」を提示している(「損得勘定の壁」を乗り越える)
 このように、壁を乗り越えるステップを通して、お互いに認識が深まり、結論の質が上がっています。課題が整理されたうえで単に売上アップだけでなく、メンバーへの教育効果についても、上司である部長の納得感が深まっているのです。
 

■3.コミュニケーションを双方向にする上での3つのポイント
(1)どのタイミングで、相手にどうボールを渡すか
 双方向にコミュニケーションを進めるためには、自分が発言のボールを持ちすぎないことが重要です。特に、冒頭で自分がボールを持つ時間が長すぎると、一方的な説得モードになってしまいます。
(2)どこまで深掘りし、相手に寄り添うか
 相手に発言のボールを渡したあと、どこまで話を深掘りして耳を傾けるかというのが2番目のポイントです。相手に話を振ったはいいものの、発言を深掘りせず、またすぐ自分の発言に戻ると、「とりあえず、かたちとして聞いただけ(本気で聞く気はない)」というサインになってしまいます。
(3)どのタイミングで、どうリードするか
 相手の発言を深掘りして、話してもらう割合が増えてくると、自分がどこで介入して話の主導権を取り戻すか迷うことがあります。特に、社外の打ち合わせや商談など、時間が限られた場面のコミュニケーションにおいては、終了時間がくる前に「話を収束させる」タイミングをうまく見極める必要があります。


■4.裏にある背景を問う4つの「深掘り質問」
 1つ目は「明確にする質問」です。具体例としては「……とおっしゃいますと?」のように、おうむ返しのごとく相手にもう1回その言葉を投げ返すというものです。そうすると相手は、いま言ったことについてもう少し明確に言い換えてくれたり、発言の裏側にある真意を話してくれたりします。
 2つ目は「詳細を引き出す質問」です。情報の構造をピラミッドで捉えると、ピラミッドの下側にある細かい情報を聞く質問です。「具体的には?」「もう少し詳しく伺えますか?」などがあります。
 3つ目は「背景を引き出す質問」です。情報のピラミッドの構造でいうと、より上に遡っていく質問です。背景や上位概念について問いかけます。「なぜでしょうか?」「どういうことでしょうか?」のように、自分に見えていない文脈や事情を聞きます。
 4つ目は「網羅性を確認する質問」です。これはピラミッドの構造でいうと、横や隣にあって抜けている情報を聞く質問です。「他にはありますか?」という問いかけによって、まだ自分に見えていない情報を探ることができます。


■5.「もう少しよく考えたい」にはビジュアルの情報整理が効果的
「もう少し自分なりに考えたい」という保留に対して、相手が持ち帰って検討するのを待っていては、動きが止まってしまいます。そこで、2章の会話例でメモを提示していたように、まさに相手と一緒にいるそのタイミングで、「ここまでを整理すると……」のようにビジュアルでまとめられると、場が進みます。
 以前、営業が強くて有名な某社で研修を実施したとき、「クロージングの場面で頼りになる武器はなんですか?」と質問したところ、多くの参加者が「ホワイトボードです」と回答されました。お客様と一緒に同じものを見ながら整理していくプロセスは、最後に相手の決断を後押しするうえで、とても重要だということです。
 相手から聞いた情報について、単に「おっしゃることはわかります」と言うより、ビジュアルで表現したものを見せるのは非常に効果的です。(中略)
「ここまで伺った内容を簡単に整理してみたのですが……」とメモを見せるのは、相手に「なるほど、こういうことなのか!」という新しい発見をもたらすこともありますし、「こんなにしっかり聞いてくれていたんだ!」という喜びの感情を生むこともあります。


【感想】

◆本書はタイトルだけ見ると「説得術」のようにも見えます。

実際私も、そのつもりで本書を手に取ったのですが、冒頭でも触れたように「相手を動かす」というよりも、むしろ「自らの意思で動いてもらう」という方が適切な感じ。

そもそも本書の第1章にもあったのですが、説得することで「自分の正しさ」を伝えようとすると、相手にとっては「自らの過ち」を認めることになりかねません。
 当然ながら、人は自分が間違っていると認めるのには抵抗があります。ですから、なんだかんだと理由をつけて、保留をしたり、はぐらかしたりという反応になります。
……商談における「考えておきます(でもホントは却下)」はこうして起こりうるんですね。

そこで説得する側にとっての壁を列挙したのが、上記ポイントの1番目。

「関係性」「情報整理」「思い込み」「損得勘定」の4つの「壁」を意識し、それぞれを乗り越えるための「引き出し」を用意しておけばよいわけです。


◆続く第2章では、具体的な2つのケーススタディを通じて、こうした「壁」の乗り越え方を指南。

しかもそれぞれについて「悪い例」と「良い例」が挙げられていますから、非常に分かりやすかったのですが、ボリュームがある分、その一部だけを抜き出すことが不可能でした。

そこでその結論部分だけを引用したのが、上記ポイントの2番目です。

ただし前提として実際の会話があって、その後に何を意図したかのお話なので、元となる会話部分がないと今ひとつわかりにくいかも。

とはいえ大事なのは、「そうじゃないんですよ」と相手を否定するのではなく、話をしっかり聞いて、それを整理(ビジュアル化)し、相手の思い込みを納得させた上で、決して損ではないことを理解させる、ということ。

ちなみに、こうした各「壁」については、第3章において詳しく解説されていますから、こちらもぜひご覧ください。


◆一方第4章では、双方の会話のボリュームやタイミングについて検討しています。

その際留意すべきなのが、上記ポイントの3番目にある3つのポイント。

これらを意識することで、適切な「双方向コミュニケーション」を実現していきます。

なお本書では、その結果として起こりうる「場の進行パターン」が5つ掲載されていました。

「相手にほとんど発言のボールを渡さない」が不正解なのは当然としても、最後にあった「相手に発言のボールを十分に渡し、最後はたたむ」が正解だと思うじゃないですか。

ところが実は、いずれも正解ではないとのこと。
 そこでおすすめなのは、「いったん中間段階で軽くまとめる」ということをあらかじめ決めておき、「前半はなるべく相手に話してもらい、後半でポイントを絞って議論する」という2段階の進行にすることです。
……初めからパターンに入れといて欲しいw


◆そこで第5章では、相手の話を深く聞く方法について言及。

とにかく「気になる発言」や「想定外の反応」が出たら、どんどん掘り下げていきます。

その際頼りになるのが、上記ポイントの4番目の「4つの深掘り質問」。

アクティブ・リスニング本等でも取り扱っているかもしれませんが、これらのある程度定型的な質問パターンを覚えておくことで、的確に深掘りできると思います。

なお、その深掘りタイミングが「感情まじりの『サイン』が見えたとき」というのは、個人的には「目からウロコ」(詳細は本書を)。

本書では具体的な「サイン」例が列挙されていますから、そちらもチェックしておいてください。


◆そして第6章では、こうして深掘りした質問を元に、情報をビジュアル化する作業が紹介されています。

確かに相手の理解が深まらないと、「考えておきます」で保留されてしまうもの。

そこで上記ポイントの5番目にあるように、相手から聞いた話をビジュアル化してしまえば、相手の頭の中も整理されます。

かつ、上記で触れたように、自分の正当性を押し付けるのではなくて、相手にとっての「自分自身のまとめ」なわけですから、それに従うことにも抵抗はないでしょう。

なるほど「クロージングの場面で頼りになる武器」が「ホワイトボード」というのもうなずけるお話ですね。

実際、別の作品でも、相手の言ったことをまとめた「メモ」を、相手から欲しがられたという話を読んだことがありますし、「ビジュアルの情報整理」はもっと積極的に取り入れて良いと思います。


「説得」ではなく「納得」してもらうために読むべし!

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気持ちよく人を動かす
第1章 どうしたら動いてくれるのか?
第2章 共に創るディスカッション
第3章 想定する力
第4章 段取りする力
第5章 理解を深める力
第6章 思い込みを外す力
第7章 見える化する力
第8章 軸を動かす力
第9章 巻き込む力
第10章 「気持ちよい合意」の先にあるもの


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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史上最強の投資家 バフェットの教訓 逆風の時でもお金を増やす125の知恵

何とこの本、当ブログ初登場となるバフェット本なのですが、Kindle版の方が600円弱お買い得。

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賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。

逆にこちらは、下記のようにレビュー済みの作品で、Kindle版が1100円弱もお得な計算です!

参考記事:【思考術】『賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。』谷川祐基(2020年01月01日)


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