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2021年08月25日

【行きつけ?】『イドコロをつくる 乱世で正気を失わないための暮らし方』伊藤洋志


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イドコロをつくる 乱世で正気を失わないための暮らし方


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも、つい最近まで一番お求めいただいていた1冊。

セール記事でも触れたように、アマゾンの「出版社より」の部分が、未だかつてないくらいのボリューム(目次除いて5600字超!?)という力作です。

アマゾンの内容紹介から。
不安の感染を防ぎ、思考の健康さを保つ。縁側を自作する、近所の公園を使いこなす、銭湯に行く、行きつけのお店を大事にする、お気に入りの散歩道を見つける、趣味をつくる、一人で自然を眺める、仕事仲間、生活共同体、親しい友人を手入れする……現代において正気を失わないために各人が意識的に確保したい「イドコロ」を思考の免疫系という考え方で提案。個人でできる小さい広場のつくり方、見つけ方。

中古があまり値下がりしていませんから、Kindle版が700円弱お買い得となっています!






Marche provencal / villedeverviers


【ポイント】

■1.イドコロで正気を保つ
現代は悪質な物語に呑まれ正気を失うリスクを常に負っているのである。「自粛警察」などは近年の典型例と言っていいだろうし、見知らぬ有名人を根拠のない噂を信じ「正義だと思って」バッシングしてしまった人も正気を失っている。(中略)
 そこで鍵になるのがイドコロである。人は、様々なイドコロを持っている。自分が居心地よく精神を回復させられる場だ。近況をおしゃべりする友人から家族、趣味の集まりや、街の広場、気に入った公園、あるいは自分一人で楽しめる趣味など各種のイドコロがある。これら1つ1つが、正気を保つことに貢献している。複数あることが大事だ。よく洗脳で使われるのは、洗脳する側と繰り返し会わせ、洗脳しやすくするために対象者を他人から隔離する方法だ。こういうのを防ぐためにも、複数のイドコロを持つことが大事である。


■2.銭湯のイドコロとしての役割
 他の古い広場の例としては、会話を交わすことは多くはないが、人が集まって精神と体力を回復させる場としての銭湯があげられる。銭湯の回復ポイントは、湯の温かさもあるだろうが、他人とはいえ、「お湯は良い」という気持ちを共有する人たちが集まっていることが1つであろう。些細なことでも他者と同じものの良さを共感していると確認できるだけで人生に対する安心感や満足感を生むだろう。直接的な会話はなくてもいい。知らない人と頑張って会話するのは大変だが、銭湯を対象に「湯はいい」と思っている人が集まっているだけでいいのである。知らない人に話しかけるのを気にしないお年寄りなどは、突然「いい湯だねえ」と話しかけてくるが、無理せず「そうですね」ぐらいで十分だ。それでも、精神がいくらか回復する。


■3.強い趣味の集まりであるイドコロのつくり方
 もし何かの講座を入り口に強い趣味の集まりを探すのであれば次の点に着目するとよいだろう。
・期間が長いほうがイドコロ性が高まる
・講師も現役である
・何らかのゴールが設定されている
・他者を尊重する倫理観がある
・まずもって自分が興味のあること(可能性を感じる程度でいい)
 これらの点を押さえて探そう。
 私自身も2017年に、強い趣味のイドコロをつくってみた。名前は「働く人のための現代アートコレクションを学ぶ会」である。美術が専門外の人が5万円程度の美術作品を買う集まりだ。現代美術の作品は、いきなり直感でやみくもに買っても続かない。そこで当会では3カ月ほどの期間、先人の話を聞いて予習する。それを踏まえて、作品を買う。講師の話を聞いて「いい話聞けました」というだけでは終わらない。己の眼でいいと思う作品に身銭を投じるゴールを用意している。


■4.イドコロになるような日頃通える小さいお店を発掘する
 生活圏内にある日頃通えるお店もイドコロの1つになる。個人の好みにだいぶ依存すると思うが、やはりシステムからいくらか外れたバグのある店は、行くと元気になるように感じる。友人が営む土日だけ営業するジャークチキン屋は、世間話ができるのがいい点である。他にも、老夫婦が営む定食屋もたいした会話があるわけではないが、一言二言程度の余計な会話があるのでこれもいい。ただ、完全にシステム化されたチェーン店のほうが落ち着くという人もいるだろうし、人によってイドコロになるような店は変わってくる。行って落ち着いたりくつろげたりする店は、店主と客との距離感が自分に合っているところだろうから、生活圏に自分の好みのお店を探しておくことは大事なことである。


■5.「有志でつくるオープンな空間」は偏在する
 有志によるオープンな空間の威力は、運営者のペースで続けやすいことである。お店と思うと毎日開けたり経営的な課題が次々起きてくる。しばしばイドコロっぽい場所として取り上げられるカフェなどは、人口が少ないエリアでは経営が成立しにくい。居心地を良くしてお客さんの滞在時間が延びると経営を圧迫するという矛盾がある。しかし、有志による月1回程度の家での茶会であればそういう悩みは小さい。回転率を気にしなくていいので、毎月1回続けられる程度の会費を設定し、集まった人数で豊かな時間をつくっていけばいい。カフェという肩書きにとらわれると、店舗を構えないといけないし、定期的にお客さんを回転させなければいけない。もし、ある地域の人たちがやたら茶会を開く風習を持っていれば、お店などなくとも人が集って精神と気力を充実させるイドコロを出現させることができるだろう。


【感想】

◆本書でいうところの「イドコロ」とは、当初、スタバのような「サードプレイス」のようなものかと思っていました。

確かに自分1人で行けるような公園も「イドコロ」には含まれているようですから、「サードプレイス」もその範疇に含まれてはいるのかも。

ただし、本書に登場する「イドコロ」には、「人との集まり」や「ふれあい」的なものが多かれ少なかれ出てきていますから、本来的には違うのかもしれません。

スタバで誰かと話をすることはあっても、それはあらかじめ一緒に入った知人とでしょうし、店内で新たに誰かと話し始めたりはしないですから。

その真逆とも言えるのが、マスターと話ができるような小規模な喫茶店やスナック等々であり、これらはまちがいなく「イドコロ」となります。


◆さて、本書の第1章ではこうした「イドコロ」とは何かについて言及。

上記ポイントの1番目にあるように、機能的には「居心地よく精神を回復させられる場」というくくりになっています。

「何を大げさな」と思われる方もいるかもしれませんが、こうした「イドコロ」がないからこそ、デマや変な宗教、カルト的思考に陥いる人が出てきてしまうとも言えるかと。

代わりにネットで意見を探ろうにも、それこそ意図的に広告を読まされたり、「エコーチェンバー現象」で誤った考えが増幅されたりしますからねぇ……。

それに比べて、上記ポイントの2番目のような「銭湯」は、たとえ会話はなくとも「お湯は良い」 という気持ちだけでも「人生に対する安心感や満足感」が生まれる次第。

でも今の若い人は、ネット上で知らない人と会話をすることはあっても、実際に銭湯で話しかけられたら、ろくすっぽ受け答えも出来なさそうですが(ウチのムスコも)。


◆さて、こうした「イドコロ」には大きく分けて、元からあるような「自然系イドコロ」(家族、友人、仕事仲間等)と、自ら入ったり作る「獲得系イドコロ」の2種類があります。

第2章から抜き出した、上記ポイントの3番目に掲げた「強い趣味の集まり」は、後者の「獲得系イドコロ」の中の1つ。

趣味にも色々ありますけど、著者の伊藤さんは「特殊性(マイナー度)が高くて引力が強いもの」を「強い趣味」と呼んでいます。

……確かに「現代アートコレクション」というのは、好きな人は好きでしょうけど、決してメジャーではないですよね。

運動系で言うなら、テニスやサッカーではなく、卓球やハンドボール(実際に伊藤さんが部活で属していたそう)、というのもニュアンスとしては分かりますw


◆また上記ポイントの4番目の「日頃通える小さいお店」も「獲得系イドコロ」に属するもの。

この部分は、本書の第3章から引用したのですが、こうした「システムからいくらか外れたバグのある店」というのは、喫茶店、スナック、定食屋等々、その気になって探せば色々見つかりそうです。

会社員時代、まだ入社2年目くらいの後輩に、行きつけのスナックがある、と聞いて驚いたことがあったのですが、今にして思えば、地方から1人出てきた彼には、そういう「イドコロ」が必要だったのかもしれません。

一方、上記ポイントの5番目は本書の第4章から抜き出したもの。

「有志でつくるオープンな空間」も同じく「獲得系イドコロ」なのですが、
お店でもなければレンタルスペースでもなく、誰でも入れる公共施設でもない。オープンではあるが出入りにはゆるやかな条件がある
と定義がやや難しくなっています。

こちらはそもそも、その「有志」に、それなりの目的意識や実行力がないと続かなさそうですが。


◆そういえば私の通勤経路である勝どきでは、たまに近所で「マルシェ」が開かれていたのですが、「日本最大級規模」だったとは!?

Time Alive | 太陽のマルシェ

そうとは知らず、チラッと覗いたことがある程度だったので、今度じっくり滞在してみようかと。

また上記では割愛してしまった「自然系イドコロ」としては、私自身が大学時代にゼミ仲間と、大学の近くに借りていた、ボッロい安いアパートが該当しそうです。

そこで寝泊りしたり、就活の対策を練ったことも、今にしてみればいい思い出でした。

……と言いますか、住みもしない学生によく部屋を貸してくれたものだと思います(今なら無理でしょう)。


本書自体も1つの「イドコロ」になっていますので、ぜひご一読を!

B08Z7JD9FV
イドコロをつくる 乱世で正気を失わないための暮らし方
序 「イドコロ」の必要性
第1章 「イドコロ」とは何か
第2章 「イドコロ」をどのようにつくったらよいか
第3章 「イドコロ」の息吹(実践例)
第4章 「イドコロ」は思考の免疫系を構成する
あとがき


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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いつも機嫌がいい人の小さな習慣 仕事も人間関係もうまくいく88のヒント (毎日新聞出版)

こちらの自己啓発書は中古が値崩れしているのですが、「86%OFF」の「199円」という超激安設定のため、Kindle版が500円弱お買い得。

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