2021年08月01日
【企業経営】『変貌する未来 世界企業14社の次期戦略』クーリエ・ジャポン(編集)

変貌する未来 世界企業14社の次期戦略 (講談社現代新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも人気が高かった新書。おなじみクーリエ・ジャポンさんが、グローバル企業14社の「これから」を探る1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
これが世界の潮流、次代の世界標準だ!
GAFAM、スタートアップ、レガシー……、世界を動かす企業がいま考えていること、そして描いている未来とは? 海外メディアだから書けた、「今日の社会」を変えていく14社の素顔。話題作『新しい世界』に続く第2弾!
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Del iPhone 7 y Apple Watch 2 hablo Tim Cook en la CNBC / iphonedigital
【ポイント】
■1.米国内の暴動をテクノロジーが助長した?クックは米国内で台頭する急進的な過激派イデオロギーの広がりに、一部のテクノロジー企業が関係していることにも言及した。今回のインタビューでも、個人データをプロファイリング目的で収集し、「過激主義などをあおるために悪用する」ことを可能にするものの1つは、プライバシーの欠如だと指摘したのだ。
今年初めに起きた米連邦議会への乱入事件では5人の死者が出た。しかし乱入者らの過激化に、一部のテクノロジー企業が運営するプラットフォームが一定の役割を果たしたとして各社を非難することは妥当なのだろうか。私はこの質問をクックに投げかけてみた。
「テクノロジーは、一部の過激な人の声を拡散させたり、人々を組織化し、思考を操作したりするためにも利用できます」と彼は言う。
「暴動に関しては、しかるべき調査が待たれますが、公平に見てテクノロジーが何らかの役割を果たしたことは確かでしょう。我々テクノロジー企業はこの問題から逃げてはなりません。問題を理解し、どうすれば再発を防げるか、改善できるかを考える必要があります」
■2.「寛大に解雇される」ネットフリックス
ヘイスティングスは、共同創業者だったマーク・ランドルフさえも降格した。元共同創業者の過激なまでの公平さについて、ランドルフはこう述べている。「彼にダメな理由をくどくど説明されたら、ここに居すわることなんてできない」。
ヘイスティングスは、創業時からともに仕事してきた親友のパティ・マッコードも解雇した。人事責任者だった彼女は「NETFLIX Culture Deck」をまとめ、ともに車で通勤していたのに。
「君が言うほど簡単なことではなかった」と彼は言う。「頭で考えることと、心で感じることの間には葛藤がある」だが、「ときには仕事に熱が入っていないようだとか、会社が成長して新たな課題に立ち向かうには、きみにはないスキルを持った新たな人材が必要だ」と言わねばならないときがある。「話し合いにつぐ、話し合い。『アプレンティス』のように簡単にはいかない」。
■3.ショッピファイは真っ白なキャンバス
ショッピファイは真っ白なキャンバスで、ブランドイメージを描くにはアマゾンよりはるかに適している。アマゾンで商品を購入する場合、それはどこで売られている品なのかが記憶に残らない。友人にもその商品のことは口にしないだろう。
だが、「オールバーズ」のサイトでウールのスニーカーを購入したら、それは自分自身に向けて、そして世界に向けてこう言いたくなるに違いない。
「アマゾン会員だって? カッコ悪。そんなの自慢にもならないし」
そのオールバーズは、ショッピファイで店を開いている事業者では最大手のひとつだ。会社を大きくするにはアマゾンや、フット・ロッカーのような流通業者を通したほうが早いにもかかわらず、それを避けた。オールバーズにとって、そこまでして自社ブランドの完全性と価格決定力を損ねる理由などなかったからだ。
■4.ドイツではイノベーションよりも仕上げが優先される
──ここ数十年で医療とバイオテクノロジーは長足の進歩を遂げてきました。しかし、ここまでドイツの金融機関から敬遠され、政治家からも無視されてきた業界も珍しいです。なぜそんなことが起きてしまったのでしょうか。
トゥレシ ドイツという国にはリスクを負ってイノベーションを起こすことに、ある種の抵抗があるのです。イノベーションよりも仕上げを完璧にすることを優先しがちです。
サヒン ドイツでは誰かが新型の車の開発を発表したとき、その車にホイールキャップが欠けていたら、全員がホイールキャップの文句ばかり言って、新発明の部分について語らないのです。米国では、ホイールキャップの開発を発表するだけで、革新的な自動車を期待できそうだという声が出てきます。歴史のある大企業にはできないことでも、スタートアップ企業ならできるかもしれない。そういう発想がドイツには残念ながら足りていません。
■5.「独身の日」誕生の裏側
そして2009年、ECサイト業界に革新が起きた。チャンと彼のチームが初めて「独身の日」セールを敢行したのだ。それまで特別に何の意味もなかった11月11日を、独身を祝って盛大に買い物をする記念日に仕立て上げた。
チャンはこのイベントに参加するよう数ヵ月にわたり出店企業を説得し、サイトの開発から宣伝、人気店の目玉商品の選定などイベントのすべてを監督した。2年目は1億3500万ドルだった売上は、5年目には58億ドルを突破。2018年の総売上は310億ドルに達した。これは、アメリカの「ブラック・フライデー」の売上をはるかに上回る数字である。
『アリババ:ジャックが建てた家(Alibaba: The House That Jack Ma Built)』(未邦訳)の著者ダンカン・クラークは「テンマオと独身の日が、いまのアリババの成功を築いた」と指摘する。
【感想】
◆本書は、クーリエ・ジャポンさんが「著者」ではなく「編集」という形で携わっており、冒頭の「はじめに」には、次のような記述が。本書では、世界の主要メディアから厳選された記事だけを翻訳・掲載するオンラインメディア「クーリエ・ジャポン」から、世界的に大きな影響力を持つ 14 の企業のCEOインタビューや分析記事を「ビッグテックはどこへ向かうか」「新しい潮流」「国際企業が見る世界」といったテーマ別に収録した。従って本書の内容も、元の記事によるのでしょうが、インタビュー形式そのままだったり、インタビューしたものをその記者が編集したり、インタビューが特にない「考察」だったりとさまざまです。
登場する企業も、上記テーマごとに分かれており、たとえば第1章ではGAFAMの5社がそのまま登場している一方、第2章では「新潮流」として、スペースX、ネットフリックス、ショッピファイ等々が。
そして第3章では、まさにグローバルな活動をしている、トタル(フランスの石油メジャー)や、TSMC(台湾の半導体メーカー)が分析されています。
このうち、第1章のGAFAMについては、企業自体広く知られていますし、それぞれが抱えている問題点等もご存知の方も多いことかと。
上記ポイントの1番目は、初っ端に「クック」とあるように、Appleのお話なのですが、プライバシーの問題はまさに今、GAFAMが直面している課題と言えるでしょう。
実際、抜き出しはしませんでしたが、他のGAFAM企業の項でも、多少なりともプライバシーには触れられていた次第。
ただ、この章は全体的に「予定調和」というか、議会に呼ばれて糾弾されているのに比べたら、余裕で建前での対応をされている印象は受けましたが。
◆それに比べると第2章は、興味深い企業が並んでいます。
まず上記ポイントの2番目のネットフリックスについては、話には聞いていましたが、CEOのリード・ヘイスティングスの「合理性」というか「人間味のなさ」に驚きました。
まぁ、ポイントの2番目でも触れたように、親友であるパティ・マッコードさえも、パフォーマンスに満足できなければクビにしていますからねー。
この本(のあとがき)で読んで一応は知っていましたが、今般本人が肯定しているのを確認できたワケです。

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く
参考記事:【人事戦略】『NETFLIXの最強人事戦略〜自由と責任の文化を築く〜』パティ・マッコード(2018年12月17日)
逆に上記ポイントの3番目のショッピファイは名前だけは聞いたことがあったものの、本書で初めてその概要を知りました。
アマゾンとは対照的なサイト作りと言いますか、「拡張性があってデザインに凝れる楽天」みたいな感じかと。
Shopify(ショッピファイ)とは何か?なぜアマゾン・楽天キラーと呼ばれるのか |ビジネス+IT
ただ、物流や商品発送を含む「バックエンド」も拡充していて、その辺はアマゾンに近いと言えるでしょう。
◆もう1つ、この第2章から抜き出したのが、今回の新型コロナワクチン開発でその名を世界中にとどろかせたドイツの企業、ビオンテックです。
上記ポイントの4番目では、直接コロナワクチンとは関係ない部分に触れましたが、この辺の国民性はドイツも日本に似たようなものなのだな、と妙に納得しました。
逆に、触れてない部分では、コロナワクチンに関する興味深いお話が多々。
たとえば3回目のワクチン接種についても、インタビューの時点(具体的にいつかは分かりませんが、少なくともデルタ株の前)で
ワクチンによる免疫は、自然感染による免疫と同じくらい持続すると考えています。2回目のワクチン接種が済めば、体内の免疫応答が強まることもわかっています。これは3回目の接種をすれば、さらに効果が大きくなる可能性があることを意味しています。たとえば1年後に3回目の接種をしたほうがいいということになる可能性はあります。と言われているんですよね。
さらに、コロナワクチン同様に期待されるのが、本来mRNAを研究していたがん治療の分野です。
現在、複数の製品の開発が進行しており、2023年か2024年にはそのうちのいくつかが承認されるのではないか、とのことでした。
◆なお、上記ポイントの5番目のアリババの「独身の日」セールは、最近では日本でも話題になっていますから、ご存知の方も多いかと。
ただし、上記引用内容ですと「独身の日」という言葉自体がアリババが作ったみたいですが、元々は「中国のインターネット上でジョークとして広まった」みたいですね。
光棍節 - Wikipedia
ただ、それをセールに結びつけたのが、現アリババ会長のダニエル・チャンの鋭いところ。
引用部分にもあるように、年々売上を伸ばしているようで、2020年にはさらに前年の約2倍だったそうです。
アリババ「独身の日」セールが7兆円突破 昨年の約2倍 | WWDJAPAN
こういう世界的企業の現状や近未来を俯瞰するには、本書はうってつけの作品でした。
ビジネスパーソンの常識として読んでおきたい1冊!

変貌する未来 世界企業14社の次期戦略 (講談社現代新書)
はじめに
第1章 ビッグ・テックはどこへ向かうか
第2章 新しい潮流
第3章 国際企業が見る世界
【関連記事】
【人事戦略】『NETFLIXの最強人事戦略〜自由と責任の文化を築く〜』パティ・マッコード(2018年12月17日)【ベゾス流?】『アマゾンのように考える 仕事を無敵にする思考と行動50のアイデア』ジョン・ロスマン(2020年07月20日)
【ビジネスモデル?】『業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち』斉藤 徹(2020年05月20日)
【対アマゾン戦略?】『デス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来』城田真琴(2018年10月07日)
【編集後記】
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