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2021年07月17日

【未来の年表】『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』河合雅司


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未来のドリル コロナが見せた日本の弱点 未来の年表 (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本30%ポイント還元キャンペーン」の中でも個人的に読んでみたかった1冊。

「未来の年表」シリーズでおなじみである河合雅司さんが、コロナ禍によって、その「未来の年表」がどう変わったかを検証する内容となっています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
コロナ禍からの再興に手間取ることになれば、国家としての衰退の歩みはいよいよ早くなる。国際マーケットどころか国内マーケットをも外国資本に奪われ、多くの日本企業が外国資本の手に渡り、国益を守れなくなることが懸念される。
人命が最優先であることは論を俟たないが、少子高齢社会が受けるダメージのリアルから目を背けることは許されない。
「社会の老化」を放置し続ければ、「未来の年表」は悪化の一途をたどる。経済的困窮どころか、やがて国家の致命傷となる。
われわれは、ただ傍観し嘆いてはいられない。「社会の老化」が進んでいることを前提として対応策を考えるしかない。
まずわれわれができることは、コロナ禍がもたらした変化を正しく理解し、「社会の老化」がそこにどうかかわったのかを知ることだ。そして、次の一手を考えることに尽きる。

中古が値崩れしていますが、送料を考えるとKindle版が300円弱お買い得となります!






COVID No Indoor Dining / Photographing Travis


【ポイント】

■1.コロナで少子化が急加速した3つの理由
 1つは妊娠中の感染リスクへの懸念だ。妊婦の中には通院を抑制している人が少なくなかった。感染した場合の胎児への影響を心配する声も多かった。
 2つ目は、出産態勢への不安である。都会から地方に戻らないよう移動の自粛を求める地域が多く、「里帰り出産」ができなかった人が少なくない。入院中に夫や家族の立ち合いや面会が制限されるケースもあった。(中略)
 3つ目の要因は、景気悪化に伴う収入の減少や将来への不安だ。第2子以降の妊娠については、夫の育児参加や経済面の安定が大きな決め手となっている。勤務先の業績悪化で仕事を失ったり、給与やボーナスが減ったりする人が、ライフプランを見直さざるを得なくなり、子供を持つ余裕を失った夫婦・カップルが増えたということだ。


■2.消えたインバウンド需要
 政府は、「明日の日本を支える観光ビジョン」(2016年)で訪日外国人旅行者数を2020年に4000万人、2030年に6000万人にする目標を掲げ、消費額としてそれぞれ8兆円、15兆円を皮算用までしていた。
 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、外国人旅行者を大規模に受け入れる目論見は完全に崩れ去った。(中略)
 その落ち込みは目を覆うばかりだ。出入国在留管理庁の速報値によれば、2020年に日本に入国した外国人は430万7257人で、前年より2687万9922人少なく、86.2%もの減少となった。入国者数は2019年まで7年連続で過去最多を更新中だったが、2020年は統計を取り始めた1950年以降、最大の落ち込み幅である。
 このうち、観光目的は短期出張などと同じ「短期滞在」で、336万831人(全体の 93.8%)を数えたが、前年の実績に比べると 87.9%もの大激減であった。


■3.コロナ禍では地方で消費が落ち込んだ
 コロナ禍にあっての消費の冷え込みについてはあまり話題とならないが、大都市圏と地方圏で大きな差が現れていた。(中略)
 それによれば、意外にも感染者数が圧倒的に少なかった地方圏のほうが、「大都市」や「中都市」よりも落ち込みが激しかったのだ。
 二人以上の世帯について2021年1月を前年同月と比べてみると、全国平均では6.8%減だが、「大都市」は3.9%減、「中都市」は5.5%減にとどまった。これに対し、「小都市A」は同9.5%減、「小都市B.町村」は10.4%減と差がついた。人口規模に反比例して減少率が大きくなっていたのである。(中略)
 それよりも注目すべきは、人口が密集し感染者が飛びぬけて多い東京都区部は、3.3%減と落ち込みが小さかったことだ。ほぼ「ゼロコロナ」だった鳥取市は9.9%減、島根県松江市は6.5%減であり、はるかに下落率が大きい。感染拡大が経済に与えたダメージよりも、それ以外の要因による引き下げ効果のほうが大きいということである。


■4.都民が隣接県に出て行った理由
 東京都を離れる人が大幅に増えた要因は大きく2つある。
 1つはテレワークによる在宅勤務やオンライン授業の普及だ。これまで、大都市圏では通勤を前提としてオフィスまでの利便性を重視する住まい選びをする人が多かったが、その必要がなくなった人が増えた。
 テレワークが普及したのだから、東京圏を離れて「地方」へと転居してもよさそうだが、そうはいかない事情がある。現在、テレワークは過渡期にあり、多くの企業は通勤と在宅のハイブリッド型勤務としている。月に何度かの出勤日や、子供の進学先選びを考えると、思い切って故郷にUターンすることなどは難しいのだ。(中略)
 もう1つの要因は、コロナ禍の影響で収入が減少した人々が、住宅コストの高い都心部や駅前といった交通の利便性が高いエリアに住んでいられなくなったことである。飲食業では時間短縮営業の影響で給与が半減したという極端なケースもある。これでは家賃や住宅ローンの返済計画を一から見直さざるを得ない。


■5.大学を共同キャンパス化する
 第4の切り札は、ユースシティのコンパクト版ともいうべきアイデアだ。大学の共同キャンパス化である。大学が密集する東京・御茶ノ水のような「学生街」を、全国各地に創出しようというのである。
 若さ溢れる学生たちが社会に与える影響には大きなものがある。しかしながら、総務省の人口推計(2019年10月1日現在)によれば、0歳人口は89万4000人で、20歳(125万5000人)の71.2%だ。大雑把に見積もって、20年後の大学生は現在より3割少ない水準にまで落ち込むということである。
 ハイスピードで少なくなっていく学生たちがバラバラに分かれて学んでいたのでは、牾慇犬蕕靴ぜ磴記瓩世の中を動かす力は、人数の減少以上に弱くなっていく。
 こうした状況を阻止するには、地域ごとに大学が共同キャンパスを作り、学生たちが恒常的に集まれる機会を提供することだ。それは枯れゆく日本におけるパワースポットとなり、「社会の老化」が進む中での、瑞々しいオアシスという場所となろう。


【感想】

◆当ブログでも、著者の河合さんの「未来の年表」シリーズは、下記参考記事にもあるように2冊ほどご紹介していますから、その切り口についてはご存知の方も多いと思います。

実はレビューし損ねた1冊を含めて、本書がシリーズ4作目とのこと。

そして本書は、冒頭の内容紹介にもあるように、「『未来の年表』がコロナ禍によってどう書き換えられたか」がテーマとなっています。

そこで上記ポイントでも、特にコロナ禍絡みの項目について挙げてみた次第。

たとえば「少子高齢化」という観点から一番問題なのが、妊娠届け出数や婚姻件数が低下したことであり、その要因については上記ポイントの1番目に挙げたとおりです。

実際、3つのどれもがインパクトが大きいですし、1つでもひっかかったら、妊娠が先送りされてもしょうがないでしょう。


◆その要因の3つ目にも関連するのが、上記ポイントの2番目のインバウンド需要の消滅です。

外国人観光客目当ての商売が、軒並み売上ダウンしたのはご存知のことかと。

路線価コロナで一転 観光地 復活兆し見えず - 産経ニュース

地方の観光地だけでなく、私の働く銀座界隈でも、かつては通りを歩く人のかなりの割合が外国人観光客だったのが、今や見る影もありません。

本来なら、これから始まるであろうオリンピックによる、さらなる観光客増を目論んでいたでしょうし、たとえば新たに建設されたホテルの稼働率は、いったいどうなっていることか。

ポイントの最後にもあるように「前年の実績に比べると 87.9%もの大激減」なんですから、ひたすら耐えているのか、何らかの衣替えでもするのか……。


◆ちなみに、こうした経済的インパクトに関して興味深いのが、上記ポイントの3番目にある「都市の規模」による違いです。

引用内でサラッと「大都市」とか書いてしまいましたが、都市階級区分としては
「大都市」(政令指定都市および東京都区部)、「中都市」(大都市を除く人口15万人以上の市)、「小都市A」(人口5万人以上15万人未満の市)、「小都市B・町村」(人口5万人未満の市および町村)
の4つに分けられるのだとか。

このうち大都市、中でも東京都区部で消費の落ち込みが、地方に比べて小さい、というのは意外でした。

その理由として本書で指摘しているのが、家計収入の落ち込み具合が東京は比較的小さいこと。

まず都市階級区分で見ると、
2021年1月と前年同月の実収入(いわゆる税込み収入で、世帯全員の現金収入の合計額)を家計調査で比較してみると、全国平均では3.2%減だが、「大都市」2.1%増、「中都市」1.9%減、「小都市A」8.2%減、「小都市B.町村」11.5%減
であり、さらに東京を比較してみると
津市は28.0%減、甲府市15.1%減だったのに対し、東京都区部は0.5%増と、影響を受けていなかった
のだそうです。


◆では、東京に居れば何でもOKかというと決してそうではありません。

上記ポイントの4番目にあるように、東京から周辺の神奈川、埼玉、千葉に出て行った人もかなりいます。
 2020年の東京都からの転出者は、40万1805人と全国トップであった。転出者の行き先としては、埼玉県へ7万4659人、神奈川県へ9万1669人、千葉県へ5万6186人である。
もちろん逆にこの3県から東京に転入した人もいますから、実際には埼玉に1万1431人、神奈川に6874人、千葉に4539人の流出なのですが、いずれにせよ、東京から周囲へ流出する傾向には変わりません。

また、引用部分で指摘しているように、テレワークが進んだにしても、完全に「テレ」にはしきれないため、地方に移れないというのも納得です。

なお、コロナ禍による収入減の人がいる一方で、業界によっては「勝ち組」として「収入増」の人もおり、そうした人の中にはオフィス街に近いエリアにマンションを購入する人もいるのだとか。


◆こうした諸問題について検討した第1部に続いて、第2部では河合さんによる「処方箋」が登場します。

それが「日本を守る『切り札』5ヵ条」なるもの。

上記ポイントの5番目の「大学の共同キャンパス化」はそのうちの1つなのですが、とりあえず私が考えて、一番実現しやすそうなものを選んでみました。

ネタバレになりますので、それ以外の4つは割愛しますが、もし実現したら結構な効果はありそうです。

……逆に言うと、効果がある分、現状を変えるためのハードルが高すぎて、おそらく政権交代でもしないと無理な気が(大汗)。

なお、本書の工夫(?)として、第1部ではタイトルにもあるように「ドリル形式」が用いられている(見出しがマス埋め形式で、答えが3択になっていたり、小見出しの一部がひらがなになっている等)のですが、ぶっちゃけこれは読み手に余計なストレスをかけるだけなので、次からはやめてください(懇願)。


コロナ禍以降の「未来の年表」をぜひご確認ください!

B096RVFPXL
未来のドリル コロナが見せた日本の弱点 未来の年表 (講談社現代新書)
第1部 人口減少ドリル
 問題1 少子化の急加速
 問題2 高齢者とコロナ自粛
 問題3 高齢者と介護
 問題4 24時間営業の行き詰まり 他

第2部 日本を守る「切り札」5ヵ条


【関連記事】

【少子化】『未来を見る力 人口減少に負けない思考法』河合雅司(2020年09月17日)

【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)

【未来予想図?】『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』河合雅司(2018年06月24日)

【日本の実態】『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』橘木俊詔(2021年03月18日)

【生存戦略?】『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』デービッド・アトキンソン(2020年02月28日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済 (講談社現代新書)

日銀前総裁である白川さんが絶賛しているこちらの新書は、Kindle版が300円弱お得。

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ハイデガー『存在と時間』入門 (講談社現代新書)

当ブログでレビューできそうもない、こちらの哲学本は、中古に送料を足すとほぼ定価並みですから、Kindle版が1000円強お得な計算です!


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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