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2021年07月09日

【未来予想】『2030年 ビジネスの未来地図 これからを生き抜くための戦い方』『THE21』編集部


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2030年 ビジネスの未来地図 これからを生き抜くための戦い方


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、コンスタントな人気を集めていた1冊。

月刊『THE21』の2号に渡る、「2030年の世界はこうなる!」という特集を再編集した作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
技術の進化やグローバル化などにより、ビジネスを取り巻く環境の変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が増している中、コロナ禍が起こり、未来がどうなっていくのかは、ますます見通すことが難しくなりました。
そこで『THE21』編集部では、2030年という近未来に焦点を当てて、企業経営者やコンサルタント、経営学者など、様々な形でビジネスの世界で活躍されている18名の方々に、次の4点について質問を投げかけました。
• 2030年に向けて注目している変化
• 衰退するビジネス
• 新たに発展するビジネス
• 個人が身につけるべきスキル・思考・行動様式
本書に収録しているのは、その答えです。

現時点で中古が定価を大幅に上回っていますから、「12%OFF」のKindle版がお買い得です!






inconvenient_truth / Open_Cages


【ポイント】

■1.二酸化炭素の排出量を削減しない企業は市場から排除される
 2018年、2019年は大きな水害が日本各地で起こりましたが、残念なことに今後はそれ以上の被害が出てくることが予想されます。
 これらの自然災害の激甚化・頻発化を引き起こしているのが、地球温暖化です。ご存じのように、その原因は二酸化炭素の排出です。そこで、世界中のグローバル企業や機関投資家が、気候変動対策として、二酸化炭素削減に一斉に舵を切っています。
 この動きによって、自動車産業ばかりでなく、製鉄、化学など、様々な産業で既に変化が起こり始めています。製品使用時に二酸化炭素を排出しないだけでなく、製品の生産過程でも二酸化炭素を排出しないことが求められ、その要請に応えられない企業は顧客を失っていくことになります。(中略)
 この産業の大きな転換はチャンスでもあります。
 大きな追い風を受けるのは、二酸化炭素削減のための新技術や、それに適応したビジネスです。サーキュラーエコノミーという言葉も出てきたように、廃棄物をいかに減らし、資源を循環させるかに着目したビジネスモデルが、これから伸びていきます。

――夫馬賢治 ニューラル代表取締役CEO


■2.男性を育児に参加できる時間に帰宅させる
 いくら育児休業をとっても、復帰後は毎日、子どもが寝たあとにしか帰ってこられないのでは、育児参加が一過性のものになってしまいます。
 そうならないためには、男性が育児の戦力として機能する時間に自宅に帰らせることが重要です。具体的には19時台には家に着いていること。
 20時台ではダメです。幼い子どもがいる家庭では、20時台から子どもを寝かせるモードに持っていって、21時頃には寝かせるのが一般的です。そのスケジュールも把握せずに、20時40分に帰宅して、そろそろ寝ようとしていた子どものテンションを上げるような夫は、もはや迷惑でしかありません。
 食事や入浴、寝かしつけなど、育児の戦力として、妻としっかり役割分担ができる時間に夫を帰宅させること。これに企業は本気で取り組まなければなりません。
 実際、私たちが働き方改革をお手伝いした三重の企業で、この施策が非常に大きな効果を上げました。社員の結婚数が2倍に、出産数が2.5倍になったのです。

――小室淑恵 ワーク・ライフバランス代表取締役社長


■3.便利さに代わって「意味性」が新しいテーマに
 成長途上の社会においては、消費者が求めるのは「便利さ」です。その指標は、安全性や効率、スピードなど、比較的シンプルです。これらを満たすべく企業が競争し、うち少数の勝者が大企業として発展していくことになります。
 その成長曲線は、便利レイヤーが飽和するに従い、緩やかになります。
 ここで消費者が求めるのは、「意味」。面白さや楽しさや充実感、そして究極的には「自分らしさ」を満たしたいと考えるのです。
 これらを満たす指標は無数にあり、消費のありようは必然的に多様化します。対応するプレイヤーも多数となるでしょう。
 この段階に来ているのが、欧米を中心とした先進国です。これらの国では、数字的な経済成長は鈍化していますが、それに取って代わるかのように、大きなうねりが起こり始めています。

――藤井保文 ビービット 執行役員CCO 兼 東アジア営業責任者


■4.IoTならば日本企業にもチャンスがある
 これからデジタル競争は第2回戦に突入します。第1回戦では、GAFAをはじめとする海外勢に日本企業は負けてしまいましたが、次の戦いでは勝機がある。なぜならIoTの時代になると、モノの性能が問われるからです。
 第1回戦の主戦場は、主にスマートフォンの中でした。登場したばかりの新しい領域であり、更地での勝負だったので、スピードに勝る新興勢力が一気に覇権を握れたのです。
 それに対し、第2回戦の主戦場はIoTに移ります。今後は私たちの身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながる時代がやってくる。その世界を成立させるには、モノがよくなくてはいけません。
 すると、日本企業が持つモノ作りの技術が武器になります。そこに日本人が得意な肌理細やかなサービスを組み合わせれば、世界で勝てる可能性は十分あります。

――入山章栄 早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授


■5.高付加価値の「感情労働」は人間だけが生み出せる
 労働には、先ほど挙げた肉体労働と頭脳労働に加え、「感情労働」と呼ばれる第3の労働が存在すると言われています。これは顧客の満足を得るために自分の感情をコントロールする労働で、接客や医師、教師などが該当します。
 そして、3つの労働のうち、感情労働だけは人間にしかできません。肉体労働と頭脳労働をテクノロジーが担うようになれば、人間は感情労働に集中し、より高い付加価値を生み出すことが可能になります。人間の仕事が感情労働に集約されていけば、労働力のミスマッチも次第に解消される可能性があります。(中略)
 マイケル・オズボーン准教授(当時)のレポートは「人による労働 or テクノロジー」という代替性で論じられていましたが、我々のようなホスピタリティ産業では、「人による労働withテクノロジー」の相乗効果で付加価値を高められるのです。

――菊地唯夫 ロイヤルホールディングス代表取締役会長


【感想】

◆なるほど「2030年 ビジネスの未来地図」というタイトルに相応しい内容の作品でした。

ただし、上記ポイントは私がハイライトを引いた中から選んだものなのですが、当然のようにそれぞれ直接の関連性はありません。

一応、下記目次にあるように、5つの章には分かれているものの、登場される18名に問われた質問は、冒頭にあった
• 2030年に向けて注目している変化
• 衰退するビジネス
• 新たに発展するビジネス
• 個人が身につけるべきスキル・思考・行動様式
の4点です。

そして大変長くなりますが、18名の方々とは下記のとおり。
■第1章 迫られる「気候変動対策」
鈴木貴博 経営戦略コンサルタント
夫馬賢治 ニューラル代表取締役CEO
佐俣アンリ ベンチャーキャピタリスト
石井菜穂子 東京大学理事

■第2章 延びる寿命と確実に進行する「人口減少」
梅澤高明 A.T.カーニー日本法人会長
木下斉 エリア・イノベーション・アライアンス代表理事
楠木建 一橋ビジネススクール教授
小室淑恵 ワーク・ライフバランス代表取締役社長

■第3章 新しい世代の「価値観」
松本大 マネックスグループ代表執行役社長CEO
村上憲郎 元グーグル日本法人名誉会長
藤井保文 ビービット 執行役員CCO 兼 東アジア営業責任者

■第4章 進化する「テクノロジー」
神田昌典 経営コンサルタント・作家
小林喜光 三菱ケミカルホールディングス取締役
入山章栄 早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

■第5章 業界別・2030年の世界
望月智之 いつも取締役副社長
菊地唯夫 ロイヤルホールディングス代表取締役会長
中川悠介 アソビシステム代表取締役社長
福田稔 ローランド・ベルガー パートナー
あくまで質問事項は上記の4点なので、いったん全部回答を集めてから、その傾向ごとに分けて章立てしたのではないか、と。


◆たとえば、第1章では登場する皆さんが、「2030年に向けて注目している変化」として、おおむね「気候変動対策」を挙げています。

今回はその中から、夫馬さんのお話を挙げてみたワケなのですが、基本的にエビデンスとなる地球温暖化のデータは同じなので、目指す方向も似たようなものにならざるを得ず。

ただ、10年後の状況以前に、上記ポイントの1番目にあるように、昨今の我が国の自然災害の原因がこの地球温暖化だと言われると、他人ごとではありません。

……さっそく西日本で大雨降ってますが。

なお、この夫馬さんのお話で興味深かったのは、「海に囲まれた日本が洋上風力発電をやってこなかった最大の理由は、関連する法律の未整備」という指摘です。
 普通、発電設備を作れば、最低でも 20 年は発電事業をします。しかし、海域を長期間占有する法律がない状態では、せっかく洋上風力発電の設備を建設しても、数年で「やっぱりダメ」と言われかねないため、事業者が手を出せなかったのです。
一応、2019年に施行された「再エネ海域利用法」によって風向きは変わったものの、国産風力発電機メーカーはすべて事業撤退しており、ノウハウが蓄積されていないという……。


◆続く第2章では、すでに避けられない「人口減少」がテーマです。

「AI活用」や「地方創生」といった対策が挙がる中、少々ベタですが、上記ポイントの2番目にあるように、小室淑恵さんの「少子化対策」を選んでみました。

実際、この三重の企業で上記のことをアピールした年の新卒採用では、内定辞退者が1人も出ず、大阪の企業の内定を蹴って入社した新入社員もいたとのこと。

現状まだ、「男性の育休」でお茶を濁している会社がほとんどでしょうが、ここまで踏み込んでいただきたいところです。

なお、この章では『ストーリーとしての競争戦略』で知られる楠木建さんが登場しているものの、いきなり「ほとんどの未来予測は無駄である」と卓袱台返しをしていて面白かったですw

……確かに今は「人口減」が騒がれていますけど、ほんのひと昔前は、むしろ「人口増」が問題でしたよね(中国の「一人っ子政策」)。

いずれにせよ、物事を一方から見るよりは、こうして斜に構えた意見があった方が、多様性があって良いかと。


◆また第3章のテーマが「価値観」ということだったので、「意味性」に触れた藤井さんのお話を抜き出してみました。

わが国としては、これまでの「便利さ」で戦えた方が得意なのですが、もはや新興国にコスト面で敵うわけがなく。

かといって正面から「意味性」で戦おうにも、他の先進諸国は「意味性」に「テクノロジー」を融合させており、その点でも日本に勝ち目があるのかは疑問ですが。

一方、その「テクノロジー」でも勝ち目があるよ、といっているのが、上記ポイントの4番目。

これは「テクノロジー」がテーマの第4章から引用したものなのですが、入山先生の言葉が心強いです。

確かに、建設機械メーカーのコマツは、機会とICT技術を組み合わせて、世界で活躍していますしね!

なお、この章には、ビジネスパーソンにはおなじみの神田昌典さんも登場されていますので、こちらもお見逃しなく。


◆そしてちょっと毛色が違うのが最後の第5章です。

こちらでは「業界別」ということで、登場される方々の属する業界についての展望が語られているという。

典型的なのが、上記ポイントの5番目の菊池さんの「外食」ですとか、福田稔さんがお話された「アパレル」でしょうか。

特に後者に関しては、「D2C(Direct to Consumer)」がトレンドになってくるらしいのですが、この辺は以前ご紹介した福田さん自身の下記の作品に詳しかったです。

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2030年アパレルの未来: 日本企業が半分になる日

参考記事:【オススメ】『2030年アパレルの未来―日本企業が半分になる日』福田 稔(2020年02月25日)

いずれにせよ、本書は18人の話が1冊の本にまとめられている以上、掘り下げ方はそれほど深くはないのですが、広く浅く俯瞰するにはうってつけではないか、と。


10年後の世界に向けて読んでおきたい1冊!

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2030年 ビジネスの未来地図 これからを生き抜くための戦い方
第1章 迫られる「気候変動対策」
第2章 延びる寿命と確実に進行する「人口減少」
第3章 新しい世代の「価値観」
第4章 進化する「テクノロジー」
第5章 業界別・2030年の世界


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【オススメ】『2030年アパレルの未来―日本企業が半分になる日』福田 稔(2020年02月25日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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