2021年06月25日
【先延ばし?】『「やらなきゃいけないのになんにも終わらなかった……」がなくなる本』菅原洋平
「やらなきゃいけないのになんにも終わらなかった……」がなくなる本
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった自己啓発書。当ブログではおなじみである菅原洋平さんが、「先延ばし」をテーマに書かれた作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
先延ばしは脳に痛みを与える行為です。放置すると息苦しさや筋肉のこわばりにつながります。
この本は「先延ばしをする脳=先延ばし脳」として8つの先延ばし脳タイプと、解決策をご紹介します。
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procrastination / Artistick Nik
【ポイント】
■1.先延ばし脳の8つのタイプ脳の覚醒度が高すぎて、行動がコロコロ切り替わってしまうのが(2)脱線脳です。脳の覚醒が低く、課題に集中できずに別のことばかりに気を取られてしまうのが(7)ご褒美脳です。
脳の覚醒が高すぎてぐるぐる頭で考えるだけで実際に行動に移せないのが(1)宿題脳。脳の覚醒度も課題への切り替えも、一緒にいる人や集団に染まるのが(5)サボり脳。普段は脳の覚醒が低過ぎて、締め切り間近の危険な状態になったら極端に覚醒し過ぎてまたすぐもとの低い覚醒に戻るのが(4)武勇伝脳です。脳の覚醒が高過ぎて視野が狭くなり、1つのことだけしか見えなくなってしまって段取りが悪くなるのが(6)集中脳。脳は適度に覚醒しているのに、失敗を恐れて行動を起こさないのが(3)取説脳。そして、脳の覚醒が低過ぎて行動の切り替えも遅いのが(8)お寝坊脳です。
■2.なぜ先延ばしせずに行動できたのか説明する
先延ばしせずに行動できたときに、なぜその行動ができたのか説明できますか?
外来でこれを聞いてみると、「時間がもったいないと思って」「やっぱり準備するのが大事だと思ったから」など、みなさん先延ばしを避けた理由をスラスラ挙げていきます。
これもつじつま合わせなのですが、こちらのつじつま合わせは行動を向上させるには都合が良いのです。うまくやれたときに、なぜそんな風にできたのかを話していると、「昔からそういうことには気をつけていたので」「そういうことはきっちりしたいタイプなので」というような発言が出てきます。
望ましい行動をしたときこそ、行動から感情のルートを強化していけば、それが自分の標準的な行動だという認識が出来上がっていくのです。
■3.口に出しそうになったら、手を動かしてみる
「お風呂でも」と頭をよぎったら、言葉に出す前に右手を軽く上げてみましょう。
思考から発声につながるルートを、思考から手の動きにつなぎ替えてしまいます。軽く手を上げてみると、やるべきことを考えた直後に体が動いた、という既成事実をつくることができます。
ひとまずこの段階では、席を立ってお風呂のスイッチを押す行動に至らなくても大丈夫です。これはただの実験です。考えた直後に体が動くかどうかを実験してみただけです。結果的に、体は動いたのであれば、脳に新しいルートがつくられたということになります。
後は、同じ日に数回、考えたら手を動かすことを繰り返すだけです。「何かしようかな」と思ったときに、都度右手を挙げてみましょう。脳は、新しいルートがつくられたときに、そのルートに2回、3回と電気刺激が流れると、神経が太くなり主要なルートへと格上げされていきます。
■4.どこまでやったかを数値化する
到達を100としてどこまで、という感覚的な数値でもよいので、とにかく進行状況を数値化してみましょう。
重要なのは、0は使ってはいけないこと。先延ばしで悩む人に「今、作業はどのくらい進んでいますか?」と聞くと、「0です」と断言する人が少なからずいます。「0だ」と先延ばしを宣言したとき、脳の中で変化が起こります。脳内の痛覚が反応するのです。(中略)
つまり、嫌な課題を先に延ばすことは、脳にとってひどい仕打ちであり、手を動かして作業を始めてしまえば、脳はひどい仕打ちから解放されるということです。
これを踏まえて、課題の到達度は1から100までの数字を言語化しましょう。2ならば、1よりは何が進んだのかを言語化すると、3になるには何をすればよいのかが明確になります。
■5.決まった作業に少しだけ手をつける
仕事の打ち合わせが終わったら、そのまま、打ち合わせで決まった作業に少しだけ手をつけましょう。例えば、文書ソフトやプレゼンソフトを立ち上げて、タイトルやほんの1行程度だけでも書き入れて、名前をつけて保存しておくのです。
こうすることで、脳にとってこの作業は「続き」になります。(中略)
打ち合わせを終えたところまでを「打ち合わせという一連の作業」だと保存すると、次の資料作成は別のタスクになります。タスクを開始するときには、新しい行動の企画をしなければならないので、予測が不明瞭になり、不明瞭な未来への防衛反応として先延ばしが起こります。
一方で、決まった作業に1行だけ手をつけるまでを「打ち合わせ」として保存すると、予測が明瞭になり防衛反応を防ぐことができます。
これは、一気に仕上げてしまうということではありません。先の展開を少しだけ脳に見せてあげることが目的なのです。
【感想】
◆今まで当ブログでご紹介してきた「先延ばし本」とは、ひと味違うタイプの作品でした。ザックリ言うと、今までのが「心理学ベース」だとしたら、こちらは「生理学」ベース(?)。
それはひとえに、著者の菅原さんの肩書が「作業療法士」で、「脳のリハビリテーションに従事した」経験があるからだと思います。
また、それに伴い菅原さんは、先延ばしする脳のタイプを上記ポイントの1番目にあるように、8つに分類。
こちらのタイプは、自分がどれに該当するかを判断するためのチェックリストが本書の冒頭にあるのですが、実はそのサワリがアマゾンのページの、本書の「内容紹介」にも掲載されているという(「出版社より」の「チェックリストでわかる!8つのタイプの先延ばし脳」)。
本書のチェックリストはもう少し量があって細かいのですが、アマゾンのリストでもニュアンスはつかめるのではないでしょうか。
◆さて、それを踏まえた上で、本書の序章では、まずは全部のタイプに共通するTIPSが10個ほど紹介されています。
その中の1つが上記ポイントの2番目。
ここで言う「脳のつじつま合わせ」は、先延ばしをする際にも行われているものなのですが、「できなかったときの感情ではなく、できたときの行動に置き換えて考えてみる」のがミソ。
たとえたまたまでも、先延ばしせずにできたときの感情を強化することにより、「それが自分の標準的な行動だという認識」を高めるワケです。
また、上記ポイントの3番目も、やはり共通するTIPSからのもの。
ぶっちゃけ、いちいち「お風呂でも沸かそうかな」なんて口にしない気もするのですが、とにかく「神経接続を、発言に接続するのではなく、手の動きにつなぎ替え」るようにします。
本書にもっとありがちなケースがあって、
ふとテーブルの下を見たとき、ホコリが積もっているのが目に入ったら「げっ!」と口に出す前に、掃除機やフローリングシートを取りに行ってみましょう。とのこと。
我が家でも、洗い物がたまってたりすると、「げっ!」と口に出すことがあるので、今後はこのTIPSを意識して、サクサク洗っていきたいと思います(自分に言い聞かせるように)。
◆続く第1章からは、各脳のタイプごとの解決策が第8章まで登場。
正直、ここまで細かく分ける必要があるのか? と思わないこともないのですが、実は上記ポイントの1番目の分類のお話のところで、各タイプが2軸の象限図でマッピングされています。
ちなみにその軸は「脳の覚醒が高い/低い」と「行動の切り替えが早い/遅い」の2つ。
単純な4象限に分けるのではなくて、軸の「真ん中」にもマッピングすることにより、9象限(?)のようになっています。
そして切り替えが早くて、脳の覚醒が真ん中なのが「理想」ということで、それ以外の8象限が各脳に割り当てられている次第。
話が前後してしまいましたが、これを踏まえて上記ポイントの1番目を再度お読みいただくと、理解が深まると思います。
◆ちなみに上記ポイントの4番目の「どこまでやったかを数値化する」というのは、(3)の取説脳からのもの。
アンガーマネジメントの本でも、怒りの度合いを数値化する、なんていうTIPSがありましたが、進捗度合を数値化する、というのもやってみる価値はあるのではないか、と。
ただし、ここで注意しているように、「0は使ってはいけない」とのこと。
実際に脳内の痛覚が反応する、というのは実験で確認されているらしく。
これを調べた研究は、数学の問題を使って嫌な問題に取り組まなければならないときに、その問題を想像しているときの脳の画像をfWRIで測定しています。すると、痛覚をつかさどる部位が活発になっていることが確認されました。そして、その嫌な課題に実際に取り組むと、痛覚中枢の働きは低下したのだそう。
おそらくこの現象は取説脳以外でも同様でしょうから、ぜひ試してみてください。
◆一方、上記ポイントの5番目の「決まった作業に少しだけ手をつける」というのは、(4)の武勇伝脳のTIPSなんですけど、これこそ全部のタイプに共通な気が。
俗にいう「ツァイガルニク効果」に近い気がするのですが、「覚えているか否か」の問題ではないので、また別の問題なのでしょうね。
ツァイガルニク効果 - Wikipedia
もちろん、打合せのみならず、通常の仕事であれ、帰宅直前に次のタスクの最初に手をつけてから(書類も開いたままで)終了する、というのは、翌日すぐに取り掛かれるかと。
私の場合、単に机が片付いていないのを、このTIPSの実践と言い張りそうですが(いけません)。
本書ではこれら以外にも、各脳のタイプごとのTIPSが色々と紹介されていますから、それぞれ良さげなものを試してみて、「先延ばし」を改善していただきたく。
「やらなきゃいけない」ことができるようになる1冊!
「やらなきゃいけないのになんにも終わらなかった……」がなくなる本
先延ばし脳チェックリスト
序章「全タイプ共通」 先延ばしを防ぐ基本実験
第1章「宿題脳タイプ」の解決策
第2章「脱線脳タイプ」の解決策
第3章「取説脳タイプ」の解決策
第4章「武勇伝脳タイプ」の解決策
第5章「サボり脳タイプ」の解決策
第6章「集中脳タイプ」の解決策
第7章「ご褒美脳タイプ」の解決策
第8章「お寝坊脳タイプ」の解決策
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【編集後記】
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