2021年05月14日
【知的生産】『本当に頭がいい人の思考習慣100』齋藤 孝
本当に頭がいい人の思考習慣100
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」でも大人気だった齋藤 孝先生の知的生産術本。確かにTIPSを100も列挙してもらえたら、元が取れる可能性も高いと思います。
アマゾンの内容紹介から。
齋藤孝先生の最新刊です。現在、情報を得る作業はインターネットで容易になり、AIの進歩で「考える」という行為の必然性も減るような状況にあります。そんななか、最近では自身の能力に対して投資する傾向にあり、「頭がよくなりたい」と考えている人も増えています。本書は、教養・学びを自ら得て「頭がよくなる」とはどういうことかを理解し、その状態に常に昇華できるクセをつけるための習慣化の書籍です。見開き単位で、わかりやすく頭がよくなる習慣を紹介します。
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Genius / Sparsh Photography (Warrior in the Black)
【ポイント】
■1.自分の行動に意味を持たせる「あなたは今、何を意識してその作業をしているのか」と聞かれて、瞬時に答えられる人は「頭がいい人」です。ピアノの練習中にそう聞かれたとき、「このパートをスムーズに弾けるように左手の薬指を意識しています」とすぐに答えを返すことができる人は、常に課題をもちながら練習している人であり、頭の中も整理されている人です。
スポーツにおいても、たとえばゴルフのスイングを練習している人が、何も考えずに1000回振っても、筋力はつきますが上達はしません。一方、「上半身は腕とクラブを同調させるように意識して振っている」人は、ひと振りひと振りに意味をもたせています。
上達は練習の「質×量」で決まりますから、質がゼロなら答えも限りなくゼロに近くなりますし、後者のように意味をもたせた練習を1000回すれば、必ずショットは上達することでしょう。要は、自分のやるべきことを鮮明にしておくということです。
■2.話は要約して聞き、その上で広げる
誰かと話をしているとき、まずは「聞く」という行為に集中することが重要です。
ここでいう「聞く」とは、単に音として耳に入れるという意味ではなく、相手が何を伝えようとしているのか、言葉の裏にある意味を読み取りながら、頭の中で正しく要約するということです。要約できたときが、「話の内容がわかった」ときなのです。(中略)
「なるほど、つまりこういうことですね」とたとえてあげ、「ということは、こういうことにもつながりますね」と、ときに新たな意味を付け加えて話を広げてみます。それらが芯を食った適確な返しであれば、相手は「この人は正しく理解してくれているな」という安心した気持ちになり、その後の相手のトークはスムーズになるでしょう。
これが仕事上の上司との会話や、ビジネスパーソン同士のやりとりであれば、「この人は要約する力が高い人だ」「頭のいい人だ」という評価につながるわけです。
■3.本の内容を伝えるときは自分のエピソードを重ねる
「本を読むのは好きだけど、人に伝えるのが苦手で……」という人におすすめしたいのが、自分の体験を重ねながら説明するというやり方です。文章を引用しつつ、そこに自分のエピソードをひとつ重ねてみるのです。
大学で学生に「論語の言葉の中から任意でひとつ選び、意味を説明してください」と言うと、なかなかうまくできない人もいるのですが、「自分のエピソードをつけて」と言うと、なぜかできてしまうのです。(中略)
この「エピソード読み」は、過去の自分を掘り起こす作業です。アウトプットを前提にしているので記憶の定着も助けますし、自分の話として説明できたということは、内容を「自分のもの」にできたことにもなります。
■4.「速音読」で頭の回転を速くする
この「音読」をより効果的にするために、速く文章を読む「速音読」がおすすめです。1分間程度で短い文章をテキパキ音読すると、すごく頭がすっきりします。(中略)
「速音読」は、スポーツを始める前の準備運動と同じ役割をもっています。スポーツをするときは、ケガをしないように柔軟運動をしたり、軽いジョギングをしてからコートやピッチ(競技場)に入ります。同じように、「速音読」をすることで、ミスしにくい頭の状態をつくることができるのです。
音読をするとき、脳は、「目で追いながら、口では違う文章を声に出す」という複雑な動きをしています。そのため、実は「速音読」はすごく高度なことで、やってみるとなかなかうまくいきません。プロのアナウンサーも、原稿を読み上げる前に間違えそうなところを何度も何度も読み上げて、事前に繰り返し練習をして本番に臨んでいます。
■5.マイ古典をつくって行動の指針にする
「古典は教養の宝庫である。だから読むべきだ」と言われがちですが、実際にたくさんの量を読んでいくのは大変です。そこで量をこなすよりも、まずは自分に合った古典を見つけることをおすすめしています。
渋沢栄一は、混乱が続く明治時代初期、幼い頃から慣れ親しんでいた『論語』を自らの精神の柱として、日本の経済界を変えていく決意を立てます。『論語』は今読んでも間違いがほとんどない、それどころか進んで実践すべき教えもたくさんあると考えたのです。
「独占」が嫌いで、公に尽くすべきだと考えた渋沢は、三菱財閥の岩崎弥太郎と海運業をめぐって対立し、生涯財閥をつくりませんでした。このような一貫した考え方も『論語と算盤』にみられるような「『論語』を精神の柱とする」という明確な方針があってこそもてたのです。
【感想】
◆今までこの手のテーマの本を、たくさん書かれてきた齋藤先生の作品だけに、納得の1冊でした。ただし、これはもうしょうがないのですが、100個も挙げていくと類書の内容とかぶりがあるのは、致し方ないところ。
また、齋藤先生ご自身の著作ともかぶっていたりする(「3色ボールペン」等)のですが、本書に限った話でもなかったりするので、齋藤先生の知的生産術本を読んだことがある方は、あらかじめご了承ください。
……今般改めて、当ブログにおける、齋藤先生のレビュー数を数えたら、25冊以上あったのですが。
逆に言うと、齋藤先生のご本をそれほど読まれてない方にとっては、この1冊で齋藤先生の教えをかなり学ぶことができると思います。
◆さて、個々のポイントのを見ていくと、まず上記1番目のポイントは、序章の「頭がいい人はどのように考えるのか」からのもの。
本書の事例で知ったのですが、元スピードスケート選手である清水宏保さんは、小学生の頃から、腸腰筋という、お腹のインナーマッスルを強化する練習を徹底して行っていたのだそうです。
腸腰筋なんて筋肉を知ってる小学生、というのもすごいですが、そういった積み重ねがあってこその、オリンピックでの金メダルなんだな、と。
また上記ポイントの2番目の「要約」のお話は、第2章の「会話を知的にするための思考習慣」から抜き出しました。
なるほど「的確に要約できる人」が「頭がいい人」という印象を持たれやすい、という指摘には納得。
なお、この章で割愛したTIPSである「相手の言葉を自分の言葉に言い換える」というのも、同様の効果がありそうです。
◆続く第3章のテーマは齋藤先生お得意の「読書」ということで、上記ポイントの3番目の「自分のエピソードを重ねる」を選んでみました。
ちなみにこのTIPSは、面接等で座右の銘について聞かれた時にも効果アリ。
ただ言葉を挙げるのではなく、自分の体験を重ねて「だからこの言葉が私にとって……」と説明できれば、面接官は「この人は言葉を自分のものにできているな」と評価するでしょう。また、この章で耳痛かったのが「あえてレベルの高い本から読んでみる」という方法です。
齋藤先生いわく、「かみ砕かれた本ばかりに触れていると、自分で咀嚼する力が劣化する」とのこと。
ただ、当ブログで取り上げる場合、自分で理解できていないものをレビューするのはリスキーなので、どうしても避けがちなんですよね(言い訳)。
また、「話題の本は、話題になっているときに読んでおく」というTIPSは、土井英司さんのセミナーでも以前言われました。
確かに、その時の「空気感」を体験していないと、理解できない部分というのはあるな、と私も思います。
◆また、上記ポイントの4番目の「速音読」は、読書法の1つではあるのですが、第4章からのもの。
実際、内容うんぬん以上に、脳を鍛える側面があるのは、ここで引用したとおりです。
そもそも音読自体に、脳を活性化させる効果がありますから、それだけ負荷をかければより効果があるのは当然のことかと。
また、最後の第5章では、「天才たちの真似したい思考習慣」が多数紹介されています。
登場するのもおなじみの、ゲーテ、夏目漱石、アインシュタイン、吉田松陰等々。
なお、上記ポイントの5番目で挙げた、渋沢栄一の「マイ古典」というTIPSは、古典があまり得意ではない私でも取り入れたいものでした。
実際、「自分の支え」となるような作品を1つ持っておくと、いざというときに頼れると思います。
齋藤先生らしい学びが満載の1冊でした!
本当に頭がいい人の思考習慣100
序 章 頭がいい人はどのように考えるのか
第1章 情報を整理するための思考習慣
第2章 会話を知的にするための思考習慣
第3章 頭をよくする本を読むときの思考習慣
第4章 生涯、頭をよくし続けるための思考習慣
第5章 天才たちの真似したい思考習慣
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【編集後記】
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