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2021年04月25日

【中国古典】『仕事・職場ですぐ使える「中国古典」の心得 孫子のリアルガチ兵法』安恒理


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仕事・職場ですぐ使える「中国古典」の心得 孫子のリアルガチ兵法 横浜中華街に息づく2500年前の知恵 (単行本)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「カドカワ祭 ゴールデン2021」からの1冊。

「中国古典」の教えをビジネスシーンで活かす事例が満載の作品でした。

アマゾンの内容紹介から。
中国古典の教えをビジネスで活用する「ガチ」で「リアル」な事例を紹介。
IoT・AIなどビジネスを取り巻く環境が激変する今、過去の名著や偉人たちの名言に脚光が。成功・勝利へは古から不変の法則があり『孫子』に代表される中国古典に凝縮。そのエッセンス抽出した1冊

なお、中古が値崩れしているのですが、送料を踏まえるとKindle版の方がお買い得となっています!





Image from page 116 of "The mythology of all races" (1916) / Internet Archive Book Images


【ポイント】

■1.追い詰めるほど叱責してはいけない
 失敗した部下を叱るとき、追い詰めすぎると反発したりやる気を失ったりして、教育になりません。
 とくに切れ者の経営者ほど部下に完璧を求めようとするので、この落とし穴にはまりやすくなりがちです。
 厳しく叱責することは、必ずしも社員の成長にはつながらないのです。
「帰師には遏(トド)むることなかれ」
 失敗した部下、能力が劣る部下にも逃げ道を与えるようにするのです。
「どうしてこうなったのか、君なりの理由があるんだろう。それを聞かせてよ」
「これぐらいは次に取り戻せるから、とにかく頑張ろう」
 コツとしては、このようにポイントを絞り、感情的にならず穏やかに諭すことです。逃げ道をつくってあげれば、きっといつか自分でミスを取り戻す成長をします。


■2.失敗は大きなことではなく、ささいなことが原因で起きるもの
 後日、大山さんは疑問に思っていたことを社長にぶつけてみました。
「なぜ、最初にプランを提出した時、あんなどうでもいいところばかり、社長はチェックなさったんですか?」
 社長はニヤッと笑って答えました。
「大きな流れでは、私も長年やってきているし、君もベテランで任せられると思った。だけどおうおうにして、わかっているつもりの部分に、細かい失敗のタネが潜んでいるもんなんだよ。わかっているからこその油断も生まれるし、それがプロジェクト全体の失敗にもつながりかねないんだ」
「人は山に躓くこと莫(ナ)くして、垤(アリヅカ)に躓く」
 誰でも、重大なことには細心の注意を払って行動しますから、そこでミスはしにくくなります。しかし、慣れていることや大したことはないと思っていることで、ことごとく失敗してしまうのです。ささいなつまずきが、重大な失敗につながることもあるという戒めです。


■3.勝負に出るときは、動きを察知されてはならない
 飲料メーカー、サントリーが、新しくビール事業に参入した時のこと。担当重役はのち社長に上りつめる佐治敬三さん。佐治さんは徹底した「隠密行動」に出ます。
 というのも同じ飲料メーカーの宝酒造がビール事業に乗り出した時、先発の企業は宝酒造のビール事業へ圧力をかけたのです。(中略)
 佐治さんは宝酒造の苦戦を参考に、工場用地の取得、製造機械の発注、欧州のビール会社との提携でもカモフラージュを行ないます。社内でも「ビール」の「ビ」の字も使いません。(中略)
 こうして秘密裏に進めたビール事業参入がいよいよベールを脱ぐ時がきました。のちの武蔵野ビール工場の管轄下にある立川税務署にビール工場設立の申請書を提出。その後、すぐに用意万端整ったところで記者発表。
 帝国ホテルに用意された記者会見場で佐治さんは高らかに宣言します。
「サントリーは、ビール事業に再び挑戦します!」(中略)
「その謀(ハカリゴト)を陰し、その機を密にし、その塁を高くし、その鋭士を伏せ、寂として声なきがごとくせよ」
 行動に出るときは、競合に自社の動きを察知されることなく、静かに潜航する必要があるという事例です。


■4.自分は幸運に恵まれていると思い込む
 葛城紀夫さん(=仮名)は、従業員十数人のイベント企画・運営を行なう会社のトップです。社員を採用する時、あるいは付き合いを始めようとする時、葛城さんは相手に次のような質問をするといいます。「あなたは、自分は運がいいほうだと思いますか」と。
 自分は運に恵まれていない──そう思い込んでいる人間と深い付き合いをしてはダメだと葛城さんは言い切ります。
「自分はツキがないと考えている人間は、だいたいにおいてマイナス思考が強い。ちょっとでもつまずくと、ますます落ち込んでしまう。そのマイナスの影響は周囲の人間にまで及ぼすので、できるだけ遠ざけたいのです」
 逆に運がいいと思い込んでいる人間は、少々の壁でもうまく乗り越え、順調にいっている時はその勢いを長く持続させるといいます。


■5.ためらいは大きな損害をもたらす
 成功するか否か、それはやってみなければわかりません。しかし、やる前からあれこれ考えすぎてしまっては、何も成果は生み出せません。
「退くか、前に進むか」その判断を求められるなかで、決断を先送りする「保留」は悪手といっていいでしょう。
「兵を用うるの害は、猶予最大なり。三軍の災いは狐疑(コギ)に生ず」
 コトを起こすにはスピード感が大事です。進むも退くも、トップの素早い判断で行なわなくてはなりません。とりあえず「様子見」を決めこんで決断を先送りするのは、悪い結果しか生みません。一度決断を下したら、迷うことなく突き進むことです。そこで少しでも迷いが生じてしまえば、組織の勢いを失わせ、部下たちのやる気をも失わせることになります。


【感想】

◆内容的には楽しめたのですが、少々「想定外」の部分がありました。

と言うのは、表紙を見て右上に大きく「孫子」とあるものですから、てっきり『孫子の兵法』がテーマだと思いきや、あくまで「中国古典」全般を扱った作品であったこと。

登場する他の古典としては、『論語』『韓非子』『菜根譚』『三国志』等々は知ってましたが、『淮南子』『六韜』『南斉書』『元史』あたりになると、読み方からして怪しいという……。

ただし、全体の3割弱が『孫子』からですから、あながちタイトルに「孫子」と入れているのも、まぁアリ、かな、と。

一応、本エントリーのタイトルや、冒頭の内容紹介で「中国古典」というフレーズにこだわったのは、そういう理由からになります。


◆また、あらかじめ予想すべきだったのですが、当ブログの形式に当てはめると、本書は引用しにくい構成でした。

上記ポイントでは引用内引用して太字になっているのが、いわゆる「名言」なのですが、本書ではもちろんその意味を解説されているものの、そこを抜き出すと、それだけでかなりのボリュームになってしまいます。

さらにその解説の後ろに、著者の安垣さんが実際に接したエピソードが続くのですが、それがまぁ普通に長いこと。

上記ポイントの2番目では、前半部分を削ってますし、4番目では後半部分をカット。

また、上記ポイントの3番目では飛び飛びに抜き出した結果「(中略)」が3回も出てくる始末です。

そこで苦肉の策として、ポイントの1番目と5番目では、エピソードから得られる「教訓」のみをご紹介しているのですが、これだと普通に「名言解説」になっている気が……。


◆上記ポイントを個々にみていくと、まず1番目は「『孫子』九変編」からのもの。

「帰師には遏むることなかれ」という名言の解説としては、本書ではこのように書かれています。
 元々は、母国に退却しようとしている敵軍の逃げ道を完全に包囲してはいけないという教え。完全に退路を断ってしまえば、相手は死にもの狂いで立ち向かってきます。そうなると味方の損害も大きくなってしまいます。逃げ道をつくってやれば、自軍の損害も少なくなるのです。
似たようなもので「敵をつくらないために、徹底的に潰すのではなく温情を残す」という教えの「奸を鋤き、倖を杜ぐには、他の一条の去路を放つを要す」という『菜根譚』からの教えも、本書にはありましたが、こちらは割愛。

また、上記ポイントの2番目の「人は山に躓くこと莫くして、垤に躓く」は、『淮南子』からでした。

私は初めて聞いた言葉なのですが、これは自分の仕事でも言える話だと肝に銘じた次第。


◆そして上記ポイントの3番目は「『六韜』(これ「リクトウ」って読むんですね)文韜 兵道第十二」にあるとのこと。

これはその教え以上に、紹介されているサントリーのビール事業参入のお話が興味深かったです。

そもそも宝酒造がビールに乗り出していたなんて初耳ですし、それを既存業者が妨害していたなんて……。

その妨害の仕方も嫌らしいものですし(詳細は本書を)、実際に一度は参入していたんですね。

宝ホールディングス - Wikipedia
また「タカラビール」というブランドでビールを製造・販売していたこともあったが、同業他社との販売戦略に敗れ撤退し、生産設備はサッポロビールと麒麟麦酒に売却、2006年(平成18年)までノンアルコールビールを製造・販売していたが、それを含むソフトドリンク事業から全面撤退した。


◆また上記ポイントの4番目では、とうとう「名言」も抜き出せませんでした(かなり離れたところにあったので)。

実はこちらは「遇と不遇とは時なり」という「『荀子』宥坐篇」からのもの。

「ツキがないときは焦ってもうまくいかないので、事態が好転するまで我慢すべし」という意味なのですが、上記ではそれに関連した興味深い具体例を選んでみました。

そして上記ポイントの5番目は「『呉子』治兵」から。

「リーダーは先送りしない!」という教え自体はよくあるものなのですが、こういう故事をサラッと出せると、教養のある人と思われるのではないでしょうか?


中国古典を身近なものにする1冊!

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仕事・職場ですぐ使える「中国古典」の心得 孫子のリアルガチ兵法 横浜中華街に息づく2500年前の知恵 (単行本)
第1章 人を動かす編
第2章 組織・リーダー編
第3章 戦略・決断・実行編
第4章 ライバル・強敵編
第5章 交渉・情報・運編


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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