2021年04月19日
【モチベーション】『勉強する気はなぜ起こらないのか』外山美樹
勉強する気はなぜ起こらないのか (ちくまプリマー新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事からの当ブログ向きの1冊。勉強のみならず、仕事のモチベーションにも関係する作品でした。
アマゾンの内容紹介から。
怠けたい、相手と比べてしまう、無気力だ……。そうした気持ちを少し変えるためには、心理学の考え方が役に立つ。「やる気」のメカニズムから自分をみつめなおそう。
中古が値下がりしていませんから、「12%OFF」のKindle版がオススメです!
Motivation / dailymotivation
【ポイント】
■1.さまざまなタイプの「外からのやる気」まず、外からのやる気のなかで、自律性が最も低いのが、「典型的な外からのやる気」になります。「典型的な外からのやる気」とは、報酬や罰のような外部からの圧力によって行動するものです。
続いて、「典型的な外からのやる気」よりは自律性の程度が進んだタイプが、「プライドによるやる気」になります。「勉強する理由」では、「(5)勉強ができないと恥ずかしいから」や「(6)良い成績をとりたいから」が、それに該当します。恥や不安を避けたり、達成感や有能感を得たりするために行動するという状態です。(中略)
そして、「プライドによるやる気」よりさらに自律性が進んだタイプのやる気が、「目標によるやる気」になります。このタイプは、行動が自分にとって重要で価値のあるものだと受けとめられている状態になります。(中略)
最後に、外からのやる気のなかでもっとも自律性の進んだ段階が「自己実現のためのやる気」になります。これは、「勉強する理由」では、「(9)自分の能力を高めたいから」や「(10)知識を得ることで幸せになれるから」が該当します。行動の価値が十分に自分のものとして取り入れられており、自分のなかの他の価値や欲求と調和していることを意味します。
(詳細は本書を)
■2.やる気をコントロールするさまざまな方法(抜粋)
●環境調整方略学習環境を整理することによって、やる気を高める方法もあります。たとえば、自分の好きな場所で勉強するとか、部屋を勉強に集中できる環境にするとかです。●負担軽減方略これは、自分にとっての負担をなるべく減らすような作戦です。たとえば、得意なところや好きなところを中心に勉強するとか、飽きたら別のことをしたり、休憩をしたりするなどがこれにあたります。●協同方略分一人ではがんばれないことでも、友だちと一緒だったらがんばれる。こういう経験はありませんか? ここでは「友だちに頼る作戦」と名づけましたが、心理学では「協同方略」と呼ばれています。これは、友だちと協力しながら勉強するというものです。
■3.目標設定がやる気につながる2つの理由
その1つ目の理由は、目標は、めざすべき方向性を明確にし、必要な努力の程度を調節することにつながるからです。
目標を設定する際には、現在の状態と理想とする目標との間のギャップを認識します。そのギャップがどのくらいあるのかを認識することで、必要な努力の程度が見えてきます。(中略)
つまり、目標を設定することによって、それを達成するのに必要な努力の程度が調節されるため、何をすべきか行動が明確になるのです。ギャップが一種の緊張状態を生み出し、人はその緊張状態を解消しようと考えるので、必要な努力の程度を調整するように意識が働くのです。
目標設定がやる気につながる2つ目の理由は、努力によって、自身が設定した目標が達成されたときには、達成感や喜び、自信を感じることができるからです。それがまた、さらなる目標達成に向けて動き出す大きな原動力になります。
■4.ライバルは自分よりちょっとだけ成績のいい人を
ここで私が行った調査を紹介しましょう。中学一年生を対象に、日ごろ、自分が成績を比較している友人の名前を挙げてもらいました。そして、この調査対象となった中学一年生と、その中学生が日ごろ成績を比較している友人の実際の成績を比べてみたのです。その結果、本人の成績よりも、比較している友人の成績のほうがちょっとだけ良いことがわかりました。(中略)
逆に、自分よりも劣った他者と意図的に比較する人は、傷ついた自尊心を守りたいとか、あるいは優越感を得たいといった消極的な理由で比較していることが多いため、やる気が高まることはなく、パフォーマンスも向上しないといわれています。ただし、自尊心は守られます。
先に紹介した私が中学生を対象に行った調査では、自分よりも成績が良い友人と比較をしている中学生と、自分よりも成績が悪い友人と比較をしている中学生に分けて、その後の学業成績の変化について調べてみました。その結果、自分よりも成績が良い友人と比較をしている中学生は、その後、自身の学業成績が向上する傾向にあったのですが、自分よりも成績が悪い友人と比較をしている中学生は、その後、自身の学業成績が低下する傾向にありました。
■5.悪い方に考える「防衛的悲観主義」が成功する2つの理由
まず1つ目は、悲観的に考えることで、不安をコントロールできる点です。(中略)
「良い結果が出る」ではなく「悪い結果が出る」と予想することで、成功しなくてはいけないというプレッシャーからも解放されることになります。くり返しいいますが、防衛的悲観主義の人は、ことさら不安傾向が強いから、このように考えるのです。
つまり、防衛的悲観主義者が最悪な事態を予想するのは、自分の目標の障害になる不安をコントロールするためと言えます。(中略)
「物事を悪いほうに考える」ことで成功する2つ目のポイントは、予想できる最悪の事態を見越して、それを避ける最大の努力を行うというプロセスにあります。悪いほう、悪いほうへと予想し、考えられる結果を鮮明に思い浮かべることによって、その対策を練りあげ、実行に移すことができるのです。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、勉強だけでなく、広範囲のモチベーションアップに活用できる作品でした。とはいえ「ちくまプリマー新書」からということで、形式的には学生向けの仕様である必要はあるかと。
その結果、モチベーションにダイレクトに関係する「勉強」がタイトルに入ったのだと思います。
いや、それにしても最近の若い子は、この手の自己啓発書を読んでたりするんですかね?
中高生、いや大学生の時でも、私はこういった実用書は読んだことがありませんでした。
……要は、刃を研がずに木を切ろうと必死になっていたんですが(涙目)。
◆さて、TIPS的にはさすがに既知のものも結構ありました。
たとえば、モチベーションにも内発的なものと外発的なものがある等々。
ただし、第1章の「やる気は内からくるのか、外からくるのか」にあった上記ポイントの1番目の外発的なものを区別するお話は、個人的には初めてでした。
ちなみにカッコ書きの数字というのは、その前段で「勉強する理由」として列挙されていたもの。
参考までに、抜けてる番号部分をご紹介しておきますと、「典型的な外からのやる気」が
(3)先生や親に叱られるからで、「目標によるやる気」が
(4)先生や親に褒められるから
(7)自分の夢や目標のために必要だからになります。
(8)良い高校や大学に入りたいから
つまり、後ろにいくにつれて、自発的になり、特に最後の「自己実現のためのやる気」になると、「内からのやる気」同様に「人に行動を起こさせ、そしてそれが持続しやすい望ましいやる気」になる次第。
◆続く第2章では「なぜ誘惑に負けてしまうのか」という章題から予想されたように、おなじみの「マシュマロ実験」が登場。
ただし本書でも言及されているのですが、この実験は2018年に再現実験が行われ、きわめて「限定的なもの」だったことが明らかにされています。
結局のところ、「スタンフォード関係者のようないいとこのお子さん」だからこその結果だったわけですね。
しかし、誘惑に対して子どもたちが取った方策(マシュマロが目に入らないようにする等)は、私たちにも学ぶべきことはありますし、同じように「やる気」を自分でコントロールすることは可能です。
そこで列挙されたのが、上記ポイントの2番目各方法。
この辺りは、類書でも紹介されていますから、ご存知の方も多いと思います。
◆一方「目標設定」の重要性をうたったのが、本書の第3章。
私は自分があまり「目標」を設定しないタイプなこともあって、上記ポイントの3番目の理由を読んで「なるほどー」と今さらながらに思いました(遅すぎ)。
……子どもに「どうして目標決めないといけないの?」と聞かれたら、この部分を受け売りしようかと。
また、第4章から抜き出した、上記ポイントの4番目の「ライバル設定」のお話も、何気に大事かと。
ただし、自分よりも成績の良い友人と比較するには、自分自身の「有能感」が高い必要があるそうなので、その点はご注意を。
ちなみに、心理学の研究においては、「人と比較することよりも、過去の自分と比較するほうが、有能感が高まる」そうなので、周りと比較したくない方は、参考にしてみてください。
◆また、上記ポイントの5番目の「ネガティブシンキング」のお話は、本書の第5章からのもの。
悲観主義に「防衛的悲観主義」なんて細目(?)があるなんて、本書で初めて知りました。
それにしても、2つ目の理由である「予想できる最悪の事態を見越して、それを避ける最大の努力を行う」なんて、まさにマンガ『ベイビーステップ』の登場人物である岡田隆行君(下記書影でガッツポーズしている方)を彷彿とさせますね。
ベイビーステップ(22) (講談社コミックス)
彼の試合前のつぶやきではこんなものがあります(1つ前の21巻からですが)。
……あとはないか? これ以上の最悪の筋書きは……ま、まさに「防衛的悲観主義」を実践してますよね。
……徹底的に最悪の事態を想定して、どんな事態でも対処してやる
ちなみにここまで極端ではないものの、ミスを避けたい業種である私も、悲観主義に近いスタンスで仕事に取り組んでいるので、この部分は非常に腑に落ちました。
モチベーションを高めたい方なら、一読の価値アリ!
勉強する気はなぜ起こらないのか (ちくまプリマー新書)
第1章 やる気は内からくるのか、外からくるのか
第2章 なぜ誘惑に負けてしまうのか
第3章 目標設定で差をつけよう
第4章 やる気を左右する周囲の存在
第5章 ネガティブでも大丈夫?
第6章 やる気がなくなったとき
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【思考法】『瞬間モチベーション――結果を出す人の驚くべき思考法』シャンタル・バーンズ(2016年05月06日)
『成功するには ポジティブ思考を捨てなさい』のあまりの凄さに戸惑いを隠せない(2015年06月10日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。議論入門 ──負けないための5つの技術 (ちくま学芸文庫)
これまた当ブログで人気の出そうな議論本は、中古が定価を上回るため、Kindle版が600円以上お得。
セルフトーク・マネジメントのすすめ
私も購入して、絶賛積読中のマネジメント本は、中古が値崩れしているものの、Kindle版の方がお買い得。
MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法
軸足をブログからnoteに移した広瀬隆雄さんの作品も、中古が定価を超えていますから、Kindle版が1200円以上お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「語学・教育関連本キャンペーン」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。思考の教室
参考記事:【思考術?】『思考の教室』戸田山和久(2021年04月18日)
落語はこころの処方箋 NHK出版 学びのきほん
名著ではじめる哲学入門 (NHK出版新書)
参考記事:【哲学】『名著ではじめる哲学入門』萱野稔人(2021年01月20日)
現代哲学の最前線 (NHK出版新書)
……案の定(?)非「語学本」ばかりですが、ご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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