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2021年04月07日

【佐藤優流?】『見抜く力――びびらない、騙されない。』佐藤 優


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見抜く力――びびらない、騙されない。


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「科学・テクノロジー キャンペーン」の中でも人気の1冊。

おなじみ佐藤 優さんが、文字通り「見抜く力」を指南してくれているのですが、実は本書はそれだけに留まらないと言う……。

アマゾンの内容紹介から。
先の見えない時代、相手の本心や本当のようなウソの情報を「見抜く力」が求められている――。
情報のプロとして外交の最前線で活躍し、特捜検察にも屈しない交渉のプロである著者が、どんな相手や情報にもビビらずに、冷静に対処するための極意を伝授する。攻撃的な相手、足を引っ張ろうと近づいてくる相手にどう接すればいいのか。人を見極め、情報や数字を正しく読み取りたい人、わが子を他人や情報、常識に振り回されない大人に育てたい人は必読だ。

中古があまり値下がりしていませんから、送料を合わせるとKindle版が700円弱お買い得となります!






intelligence-economique / jean-louis zimmermann


【ポイント】

■1.「言い返す」「感情的になる」のはNG
 怒鳴るという行為は、意思決定におけるショートカットのひとつです。ただし何の力も持たない人が怒鳴ったところで、誰も言うことなど聞きません。普通に議論したら負けるとき、言い分を押し付けられるだけの力が自分の側にあると自覚する人が、議論を省くために用いる手段なのです。
 私自身は威圧的な人に対するとき、基本的に「はい、わかりました」と相手の言う通りにします。仕事上必要なら、土下座でもなんでもします。「うるせーな、頭悪そうだな」と思うだけで、感情的になることもありません。
 相手が意図して攻撃的になる状況では、力関係においてこちらが劣位なのです。感情的であれ冷静であれ、相手の非論理に対して論理的に応じるのは、カテゴリー違い。言い返すなど、もってのほかです。敵は百も承知の上で攻めてきている、と見なければいけません。


■2.口癖で人物を見分ける
 また、日常的に本心を隠そうとしたり、暗に警告を発するような言い方をする人にも注意が必要です。たとえば、人にあてこするときの常套句で、「一般論として」があります。「一般論として言うけれども、顧客と会うときは上司に一言言っといたほうがいいんじゃないかな」というセリフは、一般論ではなく、あなたの具体的な仕事に対する文句です。
「あまり」にも、気を付けたほうがいいです。何か不手際が起きた際に、「私は気にしていません」と言われるのと、「私はあまり気にしていません」と言われるのでは、意味がまったく違います。前者は「気にしていない」けれど、後者は少し「気にしている」わけです。このような言い方をする場合、かなり気にしていることが多い。


■3.人を2軸4象限で評価する
 私が外交官時代、尊敬していた上司に、欧亜局長を務めた東郷和彦さんがいます。祖父は東郷茂徳・元外相、父は東郷文彦・元外務事務次官です。その東郷和彦さんは、お父様から問われたことがあるそうです。
「世の中には、4通りの外交官がいる。能力が高くて、士気も高い外交官。能力が高くて、士気の低い外交官。能力が低くて、士気の高い外交官。能力が低くて、士気も低い外交官。そのうちのどれが一番悪いと思うか」
「能力が低くて、士気も低い外交官だ」
 東郷さんが答えると、お父様は言ったそうです。
「そうではない。能力が低くて士気も低い者は何もしないから、邪魔にはならない。むしろ、能力が低くて士気の高いのが一番悪い」
 その話を聞いたときは反発したそうですが、自ら仕事を重ねるうちに、お父様の言葉の正しさがわかってきたと語ってくれました。


■4.危機に直面したときに分かれる人間の4つのタイプ
 この本で強く印象に残ったことのもうひとつは、危機に直面したとき、人間は4つのタイプに分かれるという分析です。すなわち──。
⒈ やるべきことをきちんとやる人。
⒉ やるべきことをまったくやらないか、不十分にしかやらない人。
⒊ やってはいけないことをやる人。
⒋ やってはいけないことをやらない人。
 トラブルが発生したとき被害の程度を左右するのは、事後の対応です。それは個々人の行動如何にかかっています。組織を構成するのが1と4の人ばかりなら幸いですが、現実の人間は危機のときほど、2か3になってしまうというのです。すると対応ミスの連鎖が起こり、トラブルは深刻さを増し、人災の色が濃くなります。

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改訂 原子力安全の論理


■5.英語学習は中学からでじゅうぶん
 意外かもしれませんが、早回しで勉強すべき国語と算数に対して、早回ししてはいけないのが英語です。バイリンガルに育てるなら別ですが、外国語として身につけさせるなら中学からでじゅうぶん。
 なぜなら外国語は、母語がしっかり確立してから学ばないと、子どもが混乱してしまうからです。ただし中学校入学後は、相当な早回しをする必要があります。目標は、中学3年生までに英検準1級に合格することです。
 英語の学習にも、公文式が有効です。書くトレーニングをたくさん積めるからです。英語も、国語と同様に書くことで、文法や論理の構造を頭に叩き込むことができます。英連邦の国々に留学するために必要な英語検定テスト『IELTS(アイエルツ)』では、とにかくたくさん書かせます。本当の力は、書くことで測れるからです。


【感想】

◆冒頭で本書のテーマである「見抜く力」について、「実は本書はそれだけに留まらない」と申し上げましたが、実際本書は少々イレギュラーな作りになっています。

というのも、下記目次をご覧いただければお分かりのように、厳密な意味での「見抜く力」に該当するのは、第1章の「他人・常識・情報に振り回されない7つの極意」だけだから。

……帯にも大きくこの章題が掲載されていますから、その「7つの極意」を知りたくて、本書を手に取る方も多そうな?

一方第2章は「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」、第3章は「『考える力』が身につく育て方」ということで、佐藤さんが雑誌『プレジデント』で対談した経営者・学者等のその分野の一流どころの言葉が並んでいます。

ただし本書の「はじめに」によると、
誌面に掲載された対談をそのまま再録するのではなく、この人たちの見抜く力が象徴的に現れた言葉を抜き出して紹介
しているという。
危機を何度も切り抜けてきた経営者や、時代を切り開く研究者たちのノウハウは、ビジネスパーソンがこれから直面するどんな局面にも役に立つはずです。
 常識や情報の意味を見抜き、人の本質を見抜き、日常的なビジネスや生活に結びつける力をつけることが、この本の意図です。
なるほど、そういう意味で第2章と第3章も「見抜く力」と言えなくもないのかな、と。


◆とはいえ、本書に興味を持たれた方の大半は、第1章に興味があるでしょうから、上記ポイントでも1番目から3番目までと、多めに抜き出してみました。

まず上記ポイントの1番目は、「7つ極意」のうちの「極意1 攻撃的な人の本音を見抜く」からのもの。

ただ、これはもう「見抜く」より先の「対応法」になっていますね。

なるほど相手が攻撃的になる状況というのは、「力関係においてこちらが劣位」というのはうなずけるところ。

一般的にクレーマーが横柄なのも、こちらに非がある、と考えているからでしょうし。


◆また上記ポイントの2番目は、「極意3 表情・服装・持ち物・口癖で人物を見分ける」から引用しました。

確かに「一般論として」なんて言われても、全然「一般論」じゃなくて、こちらに対する意見ですよね?

「あまり」もそうですし、似たような意味では、相手を褒めたくて「悪くない」と言うつもりで、誤って「そんなに悪くない」と言ってしまった経験が私にもあります。

また本書では、「『絶対』が多い人は危ない」とあって、これは話に自信と裏付けがない証拠なのだとか。

他にも「本心は目に表れる」という指摘もあって、これは確かに昨今のコロナ禍においては、マスクによって口元が隠されるわけですから、意識しておかねばならないでしょう。


◆一方、上記ポイントの3番目は「極意5 自分に騙されない」からのもの。

一見東郷和彦さんが考えたように「能力が低くて、士気も低い」のが一番悪そう、と思ってしまうのが「自分に騙される」ということかと。

似たような話で「軍人の4タイプ」というのもありましたね。
有能な怠け者は指揮官にせよ
有能な働き者は参謀に向いている
無能な怠け者は連絡将校か下級兵士が務まる
無能な働き者は銃殺するしかない
無能な働き者 (むのうなはたらきもの)とは【ピクシブ百科事典】

これも言いたいことはほぼ同じかと。


◆続く上記ポイントの4番目もタイプ分けしていますが、こちらは第2章からのものでした。

東日本大震災の現場では、ここでいう「2と3」の人ばかりだったというのが恐ろしいのですが、人間なんてそんなものなのかもしれません。

しかしリーダーとしては、それを踏まえた上で「1と4」の人を育成する必要がある次第。

そして上記ポイントの5番目は、それまでの流れからするとやや唐突ですが、第3章から引用しました。

この前段として国語や算数は早めに学習させる(佐藤さんいうところの「早回し」)ことを主張されているのですが、英語は中学からでじゅうぶんと知り、親としてはホッとしたという。

……もっとも、中学生で「英検準1級に合格」というのは、ウチのムスコには無理ゲーなんですが。


「見抜く力」&「リーダー」「子育て」の3本立てでお楽しみください!

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見抜く力――びびらない、騙されない。
第1章 他人・常識・情報に振り回されない7つの極意

第2章 リーダーになる人に知っておいてほしいこと

第3章 「考える力」が身につく育て方


【関連記事】

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【知的生産】『新・リーダーのための教養講義 インプットとアウトプットの技法』佐藤優 同志社大学新島塾(2019年09月22日)

【AI読み?】『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(2018年11月21日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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自分ごとの政治学 NHK出版 学びのきほん

珍しい政治のムック本は、中古が定価を超えているのに「199円」というお値打ち価格ゆえ、Kindle版が500円以上お買い得。

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なぜ、あなたの話はつまらないのか?

下記のように当ブログでもレビュー済みの会話術本は、Kindle版が300円弱お得。

参考記事:【話術】『なぜ、あなたの話はつまらないのか?』美濃部達宏(2019年04月01日)

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NHK実践ビジネス英語 アメリカ人の「ココロ」を理解するための 教養としての英語

NHKラジオでもおなじみの杉田 敏さんのムック本は、やはり中古が定価を上回っていますから、Kindle版が700円弱お得な計算です!


【編集後記2】

◆一昨日の「講談社文庫50周年キャンペーン」で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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決定版 一億総ツッコミ時代 (講談社文庫)

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人生の役に立つ聖書の名言 (講談社文庫)

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深い河 (講談社文庫)

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過剰な二人 (講談社文庫)

参考記事:【オススメ!】『過剰な二人』見城 徹,林 真理子(2015年10月04日)

宜しければ、ご参考になさってください!


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