2021年03月08日
【ミス撲滅】『ミスしない大百科 仕事は速くてもミスがなくなる科学的な方法』飯野謙次,宇都出雅巳
ミスしない大百科 仕事は速くてもミスがなくなる科学的な方法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった仕事術本。「失敗学」で知られる飯野謙次さんが、ミスに関する著作がある宇都出雅巳さんとタッグを組んだ1冊です(ただし対談等はありません)。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書では、スタンフォード大学情報工学部出身で現在は失敗学副会長を勤める飯野謙次氏と、脳科学・認知科学の知見を踏まえた仕事術を伝えている宇都出雅巳氏により、科学的にも腑に落ちる「ミスのなくし方」を紹介するもの。メール周りやSNSの誤爆から、忘れ物といった身近なミスまで、脳科学・認知科学や失敗学的な知見を踏まえ、それをなくす方法を伝授していきます。
特に値引はないものの、私はKindle版にて読了しました!
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【ポイント】
■1.「注意」のムダ遣いをなくす3つの方法●脳が「注意」を使っているモノを手放すメモを使わず、頭の中で覚えようとしたり、頭の中であれこれ考えているときは、「注意」を使って言葉を記憶し、処理しています。これでは「注意」が足りなくなってしまいます。できるだけ「注意」を手放せるものは手放しましょう。●脳から「注意」を奪うモノから離れる仕事が大変なときに、わざわざ「注意」不足を招くような環境を私たち自身がつくっていることもよくあります。 「注意」のムダ遣いをしないためには、今必要なもの以外は、目に入る場所に置かないことです。すぐできて効果絶大なのは、まず「スマートフォンを手元に置かない」ことです。●脳が「注意」を使わないレベルまで体得するクルマを運転する方は思い出してほしいのですが、運転し始めた頃は、ハンドル操作やミラーのチェックなど、とにかく運転することだけで一杯一杯だったのではないでしょうか。(中略)
しかし、慣れてくると、普通に助手席の人と話せたり音楽を楽しめるようになります。身体で運転の手順を覚えているため、特に「注意」を向けなくても、ハンドルを動かせるし、ミラーも見ることができる。すると、余裕がある分、これまでできなかったことに「注意」が使えるようになるわけです。
■2.手帳で予定との差を認識する
手帳などに、今日やるべき仕事を時間ごとにスケジューリングしている方もいると思います。実際に1日の仕事が終わったら、それを振り返ってみてください。すると、「自分は60分と予定を立てていたのに、実際は80分かかってしまった」などと見えてきます。まずは、その差を意識することです。
すると次に予定を立てるときに、この前は想定より30%ぐらい多く時間がかかったから、今回は見積もりを30%増やしておこうと考えられますね。さらに、要領のいい人はそのときに50%増やしておきます。すると、仕事に余裕が生まれます。
常にカツカツの状態で、これが終わったら次、とずっと仕事をし続ける計画を立てると、大抵どこかで時間が合わなくなりますし、失敗も生じやすくなります。
■3.メールは10行書けばいい
メールで大事なのは、ぱっと見たときに目に入る部分の10行ぐらいなんです。その中に言いたいことが入っていないと、見過ごされてしまいます。
やってはいけないのは、長いメールを書いて最後にお願いを書き込むこと。それはお願いが伝わらない可能性が非常に高いです。(中略)
昔の日本の手紙は、時候の挨拶から始まって、その後要件があって、それで最後に締めくくる、というところがあったのですが、順番を逆にしないといけません。
つまり、・要件はこうですといった順番のほうが、相手もすぐわかりますし、伝達ミスも少なくなるでしょう。
・その要件が必要な理由はこういうことです
・(詳細な背景が必要であれば、さらに後ろに書き足します)
・時候の挨拶(台風のお見舞いなど何か仕事以外の気遣いの言葉が必要であればここに)
■4.先に今日の日付を入れたファイル名で保存してしまう
万一、ファイルを消しても最低限の損失で済むように、私は、そのファイルを開いたとき、作業する前にファイル名の最初の数文字を今日の日付に直して保存し、作業をはじめています(「210103_filename」を開けたら「210104_filename」として新たに保存して、作業を開始するような感じです)。
特に、何日もかけて常に更新し続けるようなファイル(今まさに、私が草稿を書いているこの原稿ファイルもその1つです)のように、2〜3日おきには何らかの更新が入るようなものはこの形式で保存しています。
上書き保存で毎回同じファイルを更新していると、そのファイルは1個しかないことになります。何かのミスで、そのファイルをなくしてしまうと、ゼロからの再出発になってしまって、茫然自失状態になることは間違いありません。
そこで1日分の損失だけで済むよう、前回までの状態を保存しておいて、続きは新しいファイルで作業を始めるのです。
■5.付箋・メモを書いたら写真にとる
電話がかかってきて、慌てて近くにあった付箋にメモをする、突然上司に呼ばれて、急いでメモをとる──。
しかしメモをとったものの、その付箋やメモが見当たらなくなってしまうことはないでしょうか?
こんなアナログ世界のミスをIT機器で簡単に回避する方法があります。携帯やスマートフォンのカメラです。たとえば、大事なメモを付箋に書いたら、すかさず、そのメモを写真に撮ります。するとなくなっても、写真を見返せばいいので、安心です。
写真を撮ることで、何らかの証拠にもなります。私は実験のデータをとるときに、実験のログブックとともに、スマートフォンのカメラにも収めておくことがあります。
日常の仕事で写真に撮ってしまえば済む場面はいくらでもあります。たとえば、ユーザーIDとパスワード、誰かの氏名、住所、電話番号など、誰かに伝える必要のある情報があったとします。ただし、書類に書かれていたり、コンピュータ画面に表示されていたりして、書き写すときに面倒だったり、ミスが起こりそうなことがあります。
住所や電話番号であれば、写真のほうが早いことがあります(これも、PART0でお伝えした工数比較の原理です)。基本的に1回しか使わない情報を送る際は、写真が有利です。
【感想】
ミスに関するTIPSを集めまくったかのような作品でした。そもそも内容紹介では触れられていないものの、本書の帯には「仕事は速くてもミスがなくなるワザ106選」というフレーズがあります。
本書内ではナンバリングされていないので、実際に106個あるのか数えたワケではないのですが、各章内にある各節の最初に2〜3個ずつのまとめがあるので、それを全部足すと100は超えそうな。
各節ごとに、ミスの要因となる問題(「仕事がなぜかたまる」「資料作成に時間がかかる」等)があって、それについて飯野さんと宇都出さんのどちらかが担当して、TIPSを指南していく仕様になっています。
ちなみに、最初の3章は飯野さんが担当されたパートの方が多くて、残りの2章は宇都出さんの方が多いのですが、章のテーマ的に前半に仕事術ネタが集中していたため、上記ポイントも飯野さんパートが大半になっているという。
◆さて、1つ1つについて見ていくと、まず上記ポイントの1番目の3つの方法は、いずれも脳の仕組みに由来するもの。
いわゆる「ワーキングメモリ」を消費しないための工夫が列挙されています。
メモを多用するのは、その際たるものですし、スマホが「諸悪の根源」であることは、類書でも言われていましたっけ。
……北海道大学の実験によると、実際に触っていなくても、机の上にあるだけで問題を解くスピードが落ちたそうですからカバンにしまっておく方が良さげです。
また、最後の車の運転のお話は、仕事でもまわりからあれこれ口を出すことで、かえってミスにつながることにも似ているような。
◆一方、上記ポイントの2番目のお話は、これまた類書では「何をどれくらいやったか」を記した「時間簿」等と呼ばれているものに近いです。
ただし、本書の秀逸なのは、それを手帳上でやってしまうこと。
本書内にはイラストがあるのですが、バーチカルタイプのスケジュールの隣に、そのまま実際にかかった時間を書いていきます。
普通のスケジュール表ですと、各日にちごとに縦1列つかってしまうので、それを縦に半分にする感じですね。
こういう場合、Googleカレンダーオンリーの私は、ちょっと困ってしまうのですが。
◆また、上記ポイントの3番目のメールの書き方は、いかにもスタンフォードで働く飯野さんらしいところ。
類書でも、短めのメールの書き方は色々ありましたが、ここまで割り切っているのも、あまりないかもしれません。
そして上記ポイントの4番目のお話も、ファイル名はさておき「作業開始前にファイル名を付ける」というのは、私もぜひ取り入れたいな、と。
新規でファイルを作成していて、急な仕事が入った際に、テキトウなファイル名で保存してしまったため、後で見つからず苦労した経験がありまして……。
確かに時間に余裕のある作業開始時点で、おちついて正しいファイル名を付けていれば、こういったミスは撲滅できるでしょう。
◆なお、最後のポイントの「写真に撮る」というのは、最近私も多用していました。
こういったメモだけでなく、以前ならスキャンしてPDFで保存していたものでも、提出等の必要がなければ、写真で十分でしょう。
また、ちょっと話が異なるのですが、画像絡みで本書で「なるほど」と思ったTIPSが1つ。
正しい英単語を探すときに、ブラウザーで画像検索すると、意図したものか否かが画像で判別できるというものです。
以前、ハンドル式電動車椅子(4輪、または3輪のオートバイのような形で、高齢者や身体に障がいがある方が利用。最高速度は6km/時に制限されている) の英語訳が “electrical scooter”となっていたのに違和感を覚え、画像検索をしてみると、まったく別物でした。ハンドル式電動車椅子は英語圏では “mobility scooter”です。この単語でいいのか迷ったら、「画像検索」をぜひ試してみてください。私は英語自体、使う機会がマレなのですが、一般的には覚えておくと便利だと思われ。
ミスを減らしたい方なら要チェックな1冊です!
ミスしない大百科 仕事は速くてもミスがなくなる科学的な方法
序 章 注意力・集中力でがんばらなくてもミスは防げる
第1章 仕事のミスをなくす
第2章 「なくす」「忘れる」がなくなる整理術
第3章 メール・SNSでのミスはなくせるか
第4章 コミュニケーションは最大のミス
第5章 ミスがしやすい状況をどうなくすか
【関連記事】
【失敗学?】『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』飯野謙次(2019年11月20日)【ミス撲滅】『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』飯野謙次(2017年02月05日)
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『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。自作の小屋で暮らそう ──Bライフの愉しみ (ちくま文庫)
DIY系の文庫本は、中古が意外と人気で、Kindle版が600円弱お買い得。
史記1 本紀 (ちくま学芸文庫)
古典の定番『史記』全5巻のうち最初の1冊目は、Kindle版が500円以上お得。
プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―「決まる!」7つの交渉術
当ブログでもご紹介済みのこちらの作品は、ギリギリで中古の方がお得なのですが、興味のある方はご検討ください。
参考記事:【オススメ】『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―「決まる!」7つの交渉術』藤井一郎(2016年11月26日)
【編集後記2】
◆一昨日の講談社さんの「新生活を豊かに! 入門書フェア」の記事で人気の高かったのはこの辺の作品でした(順不同)。現代暗号入門 いかにして秘密は守られるのか (ブルーバックス)
はじめての論語 素読して活かす孔子の知恵 (講談社+α新書)
はじめてのゲーム理論 2つのキーワードで本質がわかる (ブルーバックス)
エネルギーとはなにか そのエッセンスがゼロからわかる (ブルーバックス)
宜しければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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