2021年03月05日
【新型コロナ】『専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話』忽那賢志
専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話 (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で、実は一番お買い求めいただいている健康本。「新型コロナウィルス」の関連記事を、「Yahoo! ニュース」にコンスタントに執筆されている忽那先生の最新作になります。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
新型コロナ感染症の日本上陸直後から最前線で治療にあたる感染症専門医が、自身の現場での経験と最新の科学データをもとにやさしく解説。
中古に送料を足すと定価を超えますから、お得なKindle版がオススメです!
Covid-19 text with marker, concept background / focusonmore.com
【ポイント】
■1.各検査方法の違い抗原検査とPCR検査は(かたや分子、かたや遺伝子という違いはあるものの)どちらもウイルスの一部を探すものです。それに対して、抗体検査で探すのはウイルスそのものではありません。
抗体とは、異物の抗原に結合して、その異物を体から排除する分子のことです。病原体に感染した人の免疫システムが作り出したものです。
したがって、抗原検査やPCR検査が「いま感染しているかどうか」を調べる検査であるのに対して、抗体検査は「過去に感染したことがあるかどうか」を調べる検査だと言えます。抗体は、感染してすぐにできるわけではありません。抗体検査が可能になるタイミングは、それぞれの感染症によって異なります。たとえば、新型コロナでは発症して抗体が検出されるようになるまで2〜3週間かかります。
■2.牡蠣の鮮度と食中毒には関係がない
ではなぜ、冬にノロウイルスがそんなに流行するのでしょうか。
このウイルスは、海で二枚貝に取り込まれ、その内臓に濃縮して溜め込まれています。人間はそれを食べることで感染するのですが、加熱調理してあれば問題はありません。ところが冬場には、多くの人が好んで生で食べる二枚貝が旬を迎えます。そう、もともと海水のなかにいたノロウイルスは、牡蠣の生食を通じて人間の体内に入り込むことが多いのです。(中略)
「鮮度の落ちた牡蠣を生で食べるからいけないのだろう」──生牡蠣の名誉を守るために(?)そう言いたい人も多いと思いますが、牡蠣の鮮度と食中毒のリスクのあいだには、何の関係もありません。二枚貝は海水からノロウイルスを取り込んでおり、獲ったばかりのいちばん新鮮な牡蠣もそれを溜め込んでいます。鮮度が落ちるにしたがってウイルスがわいてくるのではありません。したがって、売り手が「どこよりも新鮮」と胸を張っていても、生で食べればノロウイルスに感染するおそれはあります。
■3.回復後、PCR検査なしで職場復帰して大丈夫か?
不活化していれば、感染性はありません。発症から1カ月以上が過ぎてもPCR検査が陽性になり続ける患者さんもいますが、だからといって感染性も続いているというわけではないのです。(中略)
ある新型コロナのウイルス培養研究では、発症から8日目まではウイルス培養が陽性になる事例がありましたが、9日目以降で陽性になった事例はありませんでした。つまり感染性のあるウイルスが分離できたのは、最長でも8日目までということです。ウイルスが培養されるにはある程度のウイルス量が必要となるため、9日目以降はまったく感染性がなくなるとは言い切れませんが、感染リスクが大幅に低下することは間違いありません。
こうしたさまざまな研究結果から、ほとんどの患者さんは、発症から10日後には感染性はなくなっていると言えます。
■4.科学的に明らかになってきた「ユニバーサルマスク」の効果
無症状の人も含めてマスクを着用するスタイルのことを「ユニバーサルマスク」と呼びますが、それをいち早く採用したのは日本です。緊急事態宣言下の2020年5月に発表した「新しい生活様式」に関する提言のなかで、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、「外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用」することを推奨しました。(中略)
ユニバーサルマスクの感染防止効果は、ほかにもさまざまな研究や事例によって裏付けられています。たとえば中国では、新型コロナを発症した人が症状の出る前からマスクを着用していた場合、着用していない場合よりも家族への感染が79パーセントも減っていました。しかし発症後にマスクを着用しても、家族への感染は減らなかったそうです。
また、米国のある美容院では、2人の美容師が新型コロナに感染しました。しかしその2人と濃厚接触したはずの139人の客は1人も感染していません。この店では、美容師の発症前からユニバーサルマスクを実行していました。
■5.間違った情報に惑わされない
新型コロナウイルス感染症は、大半の患者さんが自然治癒する病気です。アビガンを飲んだ人たちも、アビガンなしでも回復した可能性は高いでしょう。それを、まるで「アビガンで病気が治った」ように見える形で報道するのは間違っています。(中略)
ウイルスの「弱毒化」説も、「次亜塩素酸水の噴霧は安全」説も、「新型コロナはかぜ」説も、「アビガンで治る」説も、どれも新しい感染症に対して不安を抱いている人々に受け入れられやすい情報と言えます。どれも安心感を与えてくれるので「ウケる」のです。
しかし、根拠のない情報で安心してしまうことほど怖いことはありません。
不安は解消されなくても、安全のためには根拠に基づいた慎重な見方をしなければなりません。わからないことを正しく「わからない」と言える人こそ、信頼できる情報発信者だと思います。
【感想】
◆すでに明らかになっていることを中心に、非常に分かりやすく、新型コロナ並びに感染症についての知識が得られる作品でした。まず第1章のテーマは「感染症とは何か」ということで、その定義から、怖さ、感染ルート、検査方法等について解説が。
上記ポイントの1番目にあるように、「抗体検査」をしただけでは、検査時点においての感染の有無はわからないということなんですね。
「抗原検査」(詳細は本書にて)との違いを含めて、何となく知った気でいたことが、私自身、本書を読んで改めて理解できました。
また、ウィルスによる感染症(かぜ、インフルエンザ、新型コロナ等)には、抗生物質が効かないことをご存知ない方も多い模様(ある調査によると49%しか知らなかったそう)。
私は以前、こちらの本を読んで初めて知ったので、偉そうなことは言えないのですが。
かぜの科学:もっとも身近な病の生態 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
参考記事:お前らもっと『かぜの科学』の凄さを知るべき(2015年01月21日)
◆続く第2章では「日常のなかの感染症」と題して、そのかぜやインフルエンザを含めたさまざまな感染症について説明がなされています。
上記ポイントの2番目の牡蠣のお話は、「感染性胃腸炎」の原因であるノロウィルスに関するもので、冬季の食中毒の6割以上がノロウィルスによるものなのだとか。
なお、ノロウィルスはわずか18個で感染するとのことなので、忽那先生も「いまは決して生牡蠣を食べようとは思わない」のだそうです。
一方第3章では「次々と発生する新興感染症」というテーマで、新型コロナ含めたここ最近の感染症についてレクチャー。
エボラ出血熱、エイズ、SARS、MERS、ジカ熱等々、名前だけ聞いたことはあるものの、よく分かっていなかった感染症についても、この章を読めばひととおり押さえておけると思います。
◆そして第4章は、いよいよ「新型コロナウイルス感染症とはどんな病気か」ということで、新型コロナを掘り下げて解説。
今では明らかになっていますが、感染症のピークが「発症3日前〜5日後」という特徴は、従来の感染症には見られなかったものであり、当初忽那先生も信じたくはなかったのだそうです。
また、上記ポイントの3番目にあるように、「ほとんどの患者さんは、発症から10日後には感染性はなくなっている」と言えるので、「回復後のPCR検査は不要」なのだとか。
もちろん、かからないのが一番ということで、第5章のテーマは「感染はどうしたら防げるか」。
上記の『かぜの科学』でも繰り返し言われていたように、接触感染を防ぐには何よりも「手洗い」を徹底するのが一番です。
さらには上記ポイントの4番目の「ユニバーサルマスク」も必須かと。
逆に「『空間除菌』を謳った商品はすべて過大広告なので騙されてはいけません」と断言されています。
ちなみに、今回の新型コロナのワクチンに用いられている、「mRNAワクチン」という新しい技術についても、効果から安全性等々詳しく説明されていますので、これから始まるワクチン接種の前に、ここはぜひお目通しいただきたいな、と。
◆なお、第6章で掘り下げられているのですが、今回の新型コロナが従来と異なるのが、「健康問題」以外に「社会問題」も考えねばならないということ。
医学的な見地からは、経済活動を完全に止めた方が感染拡大は防げますが、それを徹底してしまうと、もはや生活がなりたちません。
各国のやり方を踏まえた上でも、今現在我が国が行っている施策が正しいのか否かは、まだ判断しようがなく……。
さらに話がややこしいのが、デマや誤解がSNS等で広まってしまうこと。
第7章では「 SNS時代の感染症」と題して、こうした問題にも言及。
上記ポイントの5番目もこの章からのものなのですが、実際忽那先生も、「PCR原理主義」や「アビガン教」の人たちから「忽那は何もわかってない」と非難されたり、Wikipediaを書き換えられたそうです。
……そんな方を含め、本書をひととおり読んでもらえれば、利害関係のないフラットな知識が身につくと思われ。
新型コロナについて押さえるならこの1冊!
専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話 (幻冬舎新書)
第1章 感染症とは何か
第2章 日常のなかの感染症
第3章 次々と発生する新興感染症
第4章 新型コロナウイルス感染症とはどんな病気か
第5章 感染はどうしたら防げるか
第6章 社会問題としての新型コロナ
第7章 SNS時代の感染症
終章 次のパンデミックに備える
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【編集後記】
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参考記事:【ほめテク】『たった一言で人生が変わるほめ言葉の魔法』原邦雄(2017年07月27日)
ご声援ありがとうございました!
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