2021年02月25日
【真のマネジメント?】『これからのマネジャーが大切にすべきこと 42のストーリーで学ぶ思考と行動』ヘンリー・ミンツバーグ
これからのマネジャーが大切にすべきこと 42のストーリーで学ぶ思考と行動
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて大人気だった1冊。経営本やマネジメント本に定評のある、ヘンリー・ミンツバーグ教授の最新刊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「これまで書いた中で一番真剣な本と言えるかもしれない」ーー『戦略サファリ』『マネジャーの仕事』『MBAは会社を滅ぼす』など、数々のベストセラーを世の中に送り出してきたミンツバーグがそのように述べる、氏のこれまでの著作のエッセンスが詰まった、充実の内容!
中古価格が定価を大きく上回っていますから、お得なKindle版がオススメです!
Mintzberg Speaking / Daphne Depasse
【ポイント】
■1.マネジャーの選考には、候補者にマネジメントされた人に聞く誰かの欠点を知る方法は、2つしかない。その人と結婚するか、その人の下で働くかだ。しかし、マネジャーを選考する人たち——CEOを選ぶ取締役や、自分の部下として働くマネジャーを選ぶ上司(それにしても「上司」「部下」というのはぞっとする言葉だ)——の中に、(結婚まで求めるつもりはないが)その候補者の下で働いた経験がある人がどれだけいるだろう。そんな人はほとんどいない。その結果、上には愛想よく振る舞い、下には威張り散らすような人間がマネジャーに選ばれることが多い。この種の人間は、自信ありげで弁が立ち、「上司」に好印象を与えるのは得意でも、「部下」をマネジメントするときはひどい態度を取る。(中略)
私は、マネジメントに「魔法の特効薬」があるとは思わない。それでも、マネジメントのあり方を大きく改善するための処方箋があるとすれば、それは「マネジャーの選考では、候補者にマネジメントされた経験のある人たちの声を聞け」というものだ。この点をじっくり考えてみて欲しい。
■2.効率的なオーケストラとは?
やる気満々の若いMBA学生が、教室で学んだことをついに実践する機会を手にした。自分がよく知らない組織について調べ、効率を高めるための提案をまとめよ、という課題を与えられたのだ。その学生が選んだ対象はオーケストラだった。学生はまず資料を読み込むと、生まれて初めてコンサートに出かけた。そして、以下の提案をまとめた。1 4人のオーボエ奏者たちはかなり長い時間、何もしていない。したがって、オーボエ奏者の数を減らすべきである。また、プログラム全体を通して均等にオーボエの出番があるようにすることが望ましい。業務量を平準化するためだ。愉快な笑い話だと思っただろうか。しかし、レポートの書かれた対象がオーケストラではなく工場だったら、誰も笑えないだろう。とりわけ、その工場で働いている人にとってはまったくしゃれにならない。これは笑いごとなどではないのだ。
2 20人のバイオリン奏者は、全員がまったく同じ楽譜を演奏している。これは無駄な重複に思える。バイオリン奏者の数も大幅に削減すべきである。(中略)
■3.マネジャーの仕事の質を評価する際の6つの論点
(1)「マネジャーが機能するかしないか」という発想は間違いだ。機能するのは、あくまでもマネジャーと組織の相性だ。
(2)普遍的に有能なマネジャーは存在しない。
(3)マネジャーの仕事ぶりを評価するためには、組織の成功の度合いを評価する必要がある。
(4)組織の成功と失敗に、マネジャーがどのくらい影響を及ぼしたかも明らかにしなくてはならない。
(5) マネジャーの仕事の質は、所管する組織や部署だけでなく、もっと広範囲に及ぶ影響も考えて評価すべきだ。
(6)マネジャーの仕事の質は、数値で評価するのではなく、頭を使って判断すべきなのである。
(詳細は本書を)
■4.MBA取得者のCEOとしての成績表
MBA取得者がCEOになったあと、どのような結果になるのか——ビジネススクールはこの点を調査しようとしない。(中略)
私はランペルとともに、19 人の、1990年以降の成績を調べてみた。その結果は、ひとことで言えば惨憺たるものだった。19人のうち10人、つまり過半数は明らかに失敗していた。会社が破産したり、みずからが更迭されたり、大型企業買収が裏目に出たりしていたのだ。そのほかの4人も問題ありに見えた。この14人の中には、立派な会社を築いたり、不振企業を劇的に立て直したりして評判になったものの、その後、極端に業績が悪化したり経営破綻したりしたケースもあった。残りの5人は大過なく役割を務めていたようだ。失敗組の実例を挙げると、たとえばフランク・ロレンツォは3つの航空会社でトップを務め、そのすべてで大失敗を経験した。ロイ・ボストックは、有名広告代理店ベントン&ボウルズのCEOを10年務めたが、退任した5年後に会社は閉鎖された。
■5.ダウンサイジングという名の犯罪
確かに、会社が深刻な危機に陥っているときは、一部の人の職を守るためにほかの一部の人の職をなくすほかない。しかし、ダウンサイジングは概して、そのような意図で実行されるわけではない。多くの場合、高給取りの幹部たちがボーナスを確保するために実行される。(中略)
だいたい、ある日突然、何千人もの社員が余剰人員に変わることなどありうるのか。数週間前には、誰もその余剰に気づかなかったのだろうか。そのとき、会社のマネジメントを担っていたのは、どこの誰なのか。それは、ダウンサイジングを決定した当の経営幹部だろう。そのことだけ見ても、マネジャーが無能なことは明らかだ。
マネジャーたちは、自分が引き起こした問題や目を背けてきた問題をダウンサイジングによって覆い隠そうとするが、解決しようとはしない。そう考えると、ダウンサイジングされるべきなのは、ダウンサイジングを推進しようとする人たちだ。死刑執行人こそ、死刑を執行されるべきなのである。
【感想】
◆なかなか興味深いマネジメント本でした。ただ、サブタイトルに「42のストーリーで学ぶ」とあったので、上記ポイントの2番目のようなショートストーリーが中心なのかと思いきや、特にそういうワケでもなく。
通常の作品でも、著者の主張に沿った「事例」が紹介されるというのは、ビジネス書ではごく普通のことですし、ほぼそれに近い感じです。
とはいえ、さすがこの手のジャンルには長けているだけあって、著者であるミンツバーグの饒舌なこと!
現状のマネジメントや経営に関して、手厳しいことを数多く述べられています。
◆たとえば第1章から抜き出した上記ポイントの1番目では、現状のマネジャーの選考における問題点を指摘。
実際の選考において、「候補者にマネジメントされた経験のある人たちの声を聞く」ことが行われているかというと、かなり難しいとは思いますが、そうでもしないと「上には愛想よく振る舞い、下には威張り散らすような人間がマネジャーに選ばれる」のは必然と言えるでしょう。
またこの章では、インターネット等の普及による問題点にも触れられています。
インターネットは、物事をコントロールできているという幻想をいだかせることで、マネジャーたちが業務に振り回されてコントロールを失う状況を生んでいるのかもしれない。確かに部下からひっきりなしにメールが届いていたら、本来のマネジャーとしての職務が遂行しにくいのは当然かと。
◆また先ほど触れた上記ポイントの2番目のお話は、1つ飛んだ第3章からのもの。
実はこの「若いMBA学生」は、ほかにも「32分音符を演奏するには労力がかかるので、すべて16分音符にすべし」「同じパッセージを減らすべし」といった提案をしているという……。
本書ではこの部分に限らず、いわゆる「MBA的なやり方」を数多く批判しており、第4章から抜き出した上記ポイントの4番目もその1つです。
ちなみにここでいう「19人のCEO」とは、実はこちらの本に「成功例」(?)として登場している方々らしく。
ハーバード・ビジネス・スクールの経営教育
『ビジョナリー・カンパニー』に出てくる会社で、その後没落しているところもありますけど、上記のCEOたちの「失敗率」には及ばないかと。
◆なお最後のポイントの5番目は、本書の第6章からのもの。
経営を改善するために、人減らしを常用するCEOはよくいますが、そういう人に限って「プロ経営者」と呼ばれたりしているのも、おかしな話です。
逆にこの章で割愛した中には、経営トップからスタッフを10%削減するよう言われた某大手出版グループの編集長が、それに逆らってクビになった「ストーリー」もありました。
そこでその編集長は新しい出版社を設立し、彼が信じる経営を行い、IPOならぬIAO(イニシャル・オーサー・オファリング)を実施。
著者むけの株式を発行し、著者(およびその他の利害関係者)が望めば株式を購入できるようにしたのだそうです。
おかげでその出版社は、厳しい環境にある出版業界にあっても好調な経営を続けており、実はミンツバーグ教授も本書(の英語版)を含む、6つの著作をそこから出しているのだとか。
よりよいマネジメントを目指す方なら要チェックな1冊!
これからのマネジャーが大切にすべきこと 42のストーリーで学ぶ思考と行動
第1章 マネジメントの話
第2章 組織の話
第3章 分析の話
第4章 マネジャー育成の話
第5章 文脈の話
第6章 責任の話
第7章 未来の話
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【マネジメント】『即効マネジメント: 部下をコントロールする黄金原則』海老原嗣生(2016年05月15日)
【編集後記】
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参考記事:【思考術】『賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。』谷川祐基(2020年01月01日)
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本キャンペーン」の学研分の記事で人気のあったのは、この辺りの作品でした(順不同)。最短の時間で最大の成果を手に入れる 超効率勉強法
参考記事:【科学的勉強本】『最短の時間で最大の成果を手に入れる 超効率勉強法』メンタリストDaiGo(2019年03月09日)
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宜しければご参考になさってみてください!
ご声援ありがとうございました!
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