【説得術?】『禁断の説得術応酬話法――「ノー」と言わせないテクニック』村西とおる:マインドマップ的読書感想文

2021年02月18日

【説得術?】『禁断の説得術応酬話法――「ノー」と言わせないテクニック』村西とおる

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「Kindle本ビジネス書キャンペーン」の追加分の記事でも大人気だった1冊。

まさかのこの作品が、前日ランキングでトップになるとは思いませんでした。

アマゾンの内容紹介から。

言わずと知れたＡＶ界の帝王・村西とおる。彼が英語の百科事典のセールスマン時代に習得、全国１位の営業成績を上げるに至った技術が、応酬話法である。その後、テレビゲームのリース業、さらにＡＶの世界での成功の武器となったのも、この応酬話法。やがて負債総額５０億円という倒産の憂き目に遭い、過酷な取り立てで、命の危険にさらされることもあったが、応酬話法によって危機を脱出、やがて完済。本書では、この秘伝とも言うべき禁断の説得術を、ふんだんな具体例と共に開陳！

中古は値崩れしていますが、送料を踏まえるとこのKindle版の方がお得となります！

Car Salesman With Car / everycar_listed_photos

【ポイント】

■1.応酬話法の実例（抜粋）

●「高い」に対する応酬話法
　今、お客さまは、私がご紹介したエンサイクロペディアの値段を聞かれて『高い』とおっしゃいました。しかし、お叱りを受けるのを覚悟で申し上げれば、お客さまのこれからの人生で大きな戦力となる、この英語の百科事典と英会話教材のセットの、この程度の値段が『高い』とは、あまりにも自分の人生への暴言ではないでしょうか。
●「今すぐ決められない」に対する応酬話法
『今ここで決められない』ということは、これから先一生かかっても決めることができないということです。
　あなたさまは忙しい毎日を過ごされています。今こうして私の話を真剣に聞いていただいていますが、これであなたさまとお別れすれば、あなたさまはもう別なことをお考えになられるはずです。今、一生懸命に私の話を聞いていただいているここで決められないで、いつお決めになられるというのでしょうか。

■2.相手の自己承認欲求を満たす「間接否定話法」

　性欲や食欲や睡眠欲には、限界があります。ある程度満たされれば満足し、それ以上求めることがありません。しかし、自己承認欲求には限りがありません。限界を超えて「もっと、もっと」と、とどまるところを知りません。
　営業マンは、このような人間の心の底に横たわる強い自己承認欲求を理解し、お客さまと接することが求められます。命と引き換えてもいいとさえ思っている、相手の名誉を傷つけるような話し方は、厳禁です。相手の立場や面子を尊重し、常に肯定的であることです。(中略)
　お客さまの断わり文句を聞いたら、最初に発する言葉は「おっしゃる通りです」「なるほど、そうなんですか」「ご意見はよくわかります」と、お客さまの言葉を肯定することから話を組み立てることを徹底してください。お客さまの自己承認欲求を、〝言葉のマッサージ〟で心地よく刺激するのです。

■3.同じ断り文句を繰り返す「繰り返し話法」

　繰り返し話法とは、お客さまが使われた同じ断わりの言葉をそのまま会話に取り入れて、チャンスを摑む方法です。たとえば、「高い」という断わり文句を聞いたら「高いですか、おっしゃる通りです」と、お客さまの言葉と同じフレーズで対応します。
　実は、お客さまの放たれた断わりの言葉を営業マンが繰り返すことで、それがどれほど刺激的な言葉であっても、緩和されたものになります。(中略)
　押し売りをされるのではないか、と用心して身構え、「高い」と予防線を張ったお客さまに「高いですか、おっしゃる通りです」との繰り返し話法を使うことは、お客さまの頑なな心を解きほぐす効果があるのです。
　このように、お客さまの立場に立ち、同じ断わり文句を繰り返すことから始めることで、無用な討論や悪感情を消滅させることができるのが、繰り返し話法です。

■4.他の顧客に愛されていることを実例話法で紹介する

　英語の百科事典のセールスマン時代、最終的に採った方法は、実例話法の究極とも言えるものです。お客さまとの会話を重ねても埒が明かない時、目の前で、過去にご契約いただいたお客さまに電話をします。そして、電話の向こうのお客さまに対して、購入後の今日までの感想を話してもらうのです。
　お客さまのほとんどは社会人でしたから、勤め先に闇雲に電話をすることはできません。そこで電話先を、私の行きつけのお鮨屋の店長にしていました。これはサクラでも、ヤラセでもありません。店長は、実際にご購入いただいたお客さまでした。(中略)
　購入している経験者の影響力は絶大でした。電話で話し終えると、ほとんどの方が契約をしてくれました。

■5.モノを売るのではなく、必要な情報を提供する

　同僚には、一流国立大学や有名私立大学を卒業したネイティブ顔負けの英語力を持つ者が沢山いました。しかし、彼らはなまじ英語力があるせいで、「単語の覚え方や文法の学び方の紹介をすること」に注力していました。
　しかし、お客さまは、そうした英語を学ぶノウハウは学生時代に食傷していました。今さら、学習テクニックを熱く語っても興味を示すことはなかったのです。
　私は、英会話の学び方についてはいっさい話しませんでした。そこで勝負すれば、高卒の私のレベルでは立ち行かなくなることを知っていたからです。私は、お客さまが英語の実力を身につけることで、いかに明るい未来を築けるかの説明に徹しました。英語で啖呵を切ることができる実力を身につけることで、どれほど企業戦士としての将来が有望となるか、を語ったのです。

【感想】

◆私は世代的にモロに全盛期を知っている村西監督ですが、若い方にとっては今まで接する機会があったのか否か。

ひょっとしたら、こちらのNetflixの映画が最初かもしれませんが。

逆に私が観ていないので断言できませんけど、この予告編を観る限りでは、当初は「売れないセールスマン」として描かれている感じです。

しかし実際は本書で描かれているように、村西監督は「全国1位の営業成績」を挙げたくらい優秀だったそうで、その秘訣が本書のテーマである「欧州話法」にあったとのこと。

AV監督時代にも「ナイスですねぇ」の名文句で知られた村西監督ですが、その相手女優をAV業界に口説き落としたのも、この応酬話法あってこそだったワケです。

◆その「応酬話法とは何か」について述べられているのが、本書の序章。

ひと言で言ってしまえば「お客さまから投げかけられる疑問・質問・反論に答えるためのセールストーク」なのですが、この章の途中からは、村西監督が実際に英語の百科事典である『エンサイクロペディア』をセールスしていた際の応酬話法の実例が紹介されています。

そのほんの一部を抜き出したのが、上記ポイントの1番目。

ここでは「高い」と「今すぐ決められない」の2つの反論だけしか抜き出していませんが、実際には「必要ない」「同じものを持っている」「お金がない」といった理由にも対応しています。

しかも、本書に収録されたそれぞれの実例自体はこの数倍のボリュームがあり、Kindleなので分かりにくいモノの、見開き2ページ以上は余裕であるという。

今まで色々なセールス本を読んだことがありましたが、ここまで徹底的に各種の反論に対応した実例集というのは、おそらく初めてだと思います。

◆さて、その応酬話法は5つほどに分類されるとのことで、第1章から第5章までで各種類ごとの解説を展開。

まず第1章が「質問話法」なのですが、いわゆる「イエスセット話法」（答えが「はい」になる質問をする）がかなり近いということで、割愛させてもらいました。

続く第2章は「間接否定話法」であり、その解説は上記ポイントの2番目にあるとおり。

まずは「おっしゃる通りです」と言いつつも、その後から「でも」「たとえば」といったソフトな言葉で反論していきます。

ここでは実例を挙げていませんが、村西監督はいったんはAV出演に了解した女性が「やっぱりやめようかな」と断り文句を言い出しても、

「そうだよね、君みたいな素敵な女性が簡単にAVに出演するわけはないよね」

と肯定するのだそう。

……そこからいかに「じゃあ出ます」と言い出すようにさせるかは、本書にてご確認ください。

◆さらに第3章の「繰り返し話法」とは、断られた言葉をそのまま会話に取り入れるというもの。

上記ポイントの3番目に解説を載せましたが、結局「断る理由を肯定」しているわけですから、理論的にはそのまま「いりません」となってしまいそうなものです。

ところが、理屈はそうでも感情的にはそうでもなく、むしろ好印象を抱いてくれるのだそう。

なぜなら、自分の考えを全面的に受け入れてくれたからです。

この章でも具体例がいくつか載っていますから、こちらもぜひご確認ください。

どうも村西監督、オリンピック選手に教材売りつけたり、あの某女優さんをAVに口説き落とした際にも、この「繰り返し話法」を用いたようですね。

◆また、上記ポイントの4番目の「実例話法」は、第4章からのもの。

普段から村西監督は、過去の契約書を大量に持ち歩き、似たような属性の見込み客にそれを見せることで説得していたそうです。

さらには契約してくれた顧客にはお礼状を出していたため、それに対する返礼の手紙があれば、そちらも見せることでより一層の効果があったとのこと。

もちろん、このポイントの4番目のように、実際に契約した人の声が、一番強力なんでしょうけどね。

なお、第5章の「聞き流し話法」は、文字通り「反論を聞き流す」ものなのですが、行う人のキャラに左右されると思われましたので、今回は割愛しました（すいません）。

◆こんな村西監督でも、もちろん失敗は多々あったそうで、それを告白しているのが第6章の「大失敗」。

ただしここから抜き出した上記ポイントの5番目は、「同僚の失敗」（「失敗」というほどではありませんが）から、村西監督の戦法の正しさが証明された感じです。

実際、セールス本でもよく「夢を語れ」みたいなことは言われてますものね。

また、失敗といえば村西監督が「負債総額50億円」を抱えた理由についても、詳しく触れられています。

なるほど、時代を先取りしすぎる（衛星放送）の問題なんだな、と……。

ちなみに本書の「はじめに」では、その50億円債務の債権者の1人で「5000万円」ものお金を借りていた知人から、村西監督が脅されるシーンが登場します。

村西監督は、まさに応酬話法でその場を切り抜けるのですが、見出しにもあるように「これがなければ死んでおりました」というのもまんざらではありませんから、ぜひここもお見逃しなく。

「最盛期の年商100億円」を達成した秘密がここに！

禁断の説得術応酬話法――「ノー」と言わせないテクニック (祥伝社新書)

序章応酬話法とは何か
第1章質問話法――質問によって本音を炙り出す
第2章間接否定話法――最初に肯定してから、ソフトに否定していく
第3章繰り返し話法――相手の言葉を繰り返して、悪感情を緩和する
第4章実例話法――具体例を示すことで、説得力・親近感・安心感が増す
第5章聞き流し話法――論争を避け、自分のペースに持ち込む
第6章大失敗
終章自分を識る