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2021年02月09日

【管理職必読?】『管理職失格 新世代リーダーへの条件』木村尚敬,柳川範之


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管理職失格 新世代リーダーへの条件 (日本経済新聞出版)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 ビジネス書キャンペーン」の中でも人気の1冊。

8万部を突破したという『ダークサイド・スキル』の木村尚敬さんが、当ブログでもレビュー済みの『40歳からの会社に頼らない働き方』の著者である柳川範之さんと、熱く語りあった作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
先の見えない時代、「管理職」に求められる役割も変わりつつある。
従来からある「マネジャー」としての仕事に加えて「リーダー」としてリスクをとった意思決定を自ら行い、ときには一級の「プレイヤー」として最前線に立つことも要求される。
旧来型の管理職として時代に取り残されるか、新時代のリーダーとして道を切り開くか。
本書では、その2つを対比しつつ、新しい時代の「管理職に求められる条件」を描き出す。

なお、中古は値崩れ気味ですが、送料を踏まえるとKindle版が300円弱、お買い得です!






Leadership / Luigi Mengato


【ポイント】

■1.マネジメントとリーダーシップの違い
木村 マネジメントとは、その言葉通り「管理」ですよね。企業経営において管理が有効なのは、かつてのように正解のある問いを扱う局面です。「どうすればコストを2割下げられるか」「どうしたら工場の生産性を1.5倍にできるか」といった問いには正解があります。(中略)
 一方のリーダーシップとは「導く」、つまり同じチームで働いている人たちをどちらかの方向へ引っ張って行くことです。これが求められるのは、問題が与えられていない局面、つまり「改革型アプローチ」においてです。企業の課題がストラテジックなアジェンダで、「そもそも何が問いなのか」から考えなくてはいけない場面において、リーダーシップは有効に機能する。自分なりの問いを立ててメンバー全員と共有し、「我々の答えは恐らくこちらの方向だ」と示して共感を得て、その方向を目指して皆を導いていくことが、今の管理職に求められています。


■2.ネガティブな意思決定ほど早くする
木村 そもそも個人の立場で考えた場合でも、事業の売却や撤退が合理的な答えになることは少なくありません。自分たちの事業が今の会社から出ていくことになったら、そこで働く人たちは短期的には痛みを伴うかもしれませんが、長期的に見るとむしろ幸せになれるというのが私の考えです。(中略)
 例えばJTが2015年に飲料事業から撤退し、自動販売機事業はサントリーグループに買収されましたが、あれはかなり早い決断でした。自社内だけで見れば確かにお取り潰しかもしれませんが、飲料大手のサントリーに引き取られたことで競争力を回復し、さらなる成長が期待できた。長期的に見れば、JTの飲料事業に関わる当事者にとっても非常に良い決断だったのではないでしょうか。
 だから売却や撤退などネガティブな意思決定ほど早い方がいい。そして経営トップがその決断をできるのは、管理職が自部門に不利な情報を上げてこそ可能になるのです。


■3.「成果」と「能力」を切り分けて評価すべき
木村 例えばリスクをとって新規事業にチャレンジした結果、失敗したとします。そうすると、パフォーマンスは上げていないので、「成果」についての評価は低いかもしれない。ただし新規事業を立ち上げる過程において、投資について勉強したり、外部と提携するために様々なプレイヤーと接触する中で交渉力が身についたりと、失敗から多くのことを学んだとしたら、「能力」の評価は上がるかもしれない。
 その場合、「成果は出ていないから今年のボーナスは少ないが、この1年で大きく成長したのでランクは2つ上がる」と評価ができれば、リスクをとることにインセンティブが生まれます。

柳川 これは非常に重要な指摘です。その切り分けをしないと、逆に「失敗はしたが、あいつはよく頑張ったからいいじゃないか」という話になって、上司が自分にとって可愛い部下や扱いやすい部下を恣意的に高く評価することも可能になります。


■4.業績が落ちても部下の育成を優先する
木村 実際のところ、本気で部下を育てようと思ったら覚悟がないとできません。なぜなら、一時的にチームのパフォーマンスが落ちるからです。部下の能力を伸ばすには、得意なことだけやらせていてもダメで、少し高めの目標を与えたり、これまで経験のないことにチャレンジさせたりして、ストレッチさせる必要がある。(中略)

柳川 ただし、少なくともその段階では得意ではないことをやるわけだから、パフォーマンスは落ちますね。

木村 そうです。仕事の効率性が落ちるので、短期的なパフォーマンスは間違いなく低下します。それによってチームの成果が下がれば、管理職の評価も下がるリスクがある。それでもこの状況を飲み込んで、場合によっては落ちたパフォーマンスを補うために自分がプレイヤーとして現場に立つくらいの覚悟がなくてはいけない。それができて初めて、ただのプレイングマネジャーではなく、優秀なリーダーになれるのではないかと思います。


■5.賢者は歴史に学ぶ
木村 なかでもぜひミドルクラスのリーダーに学んでほしいのが、歴史です。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というドイツの名宰相・ビスマルクの言葉にもあるように、過去から学ぶことで本質的なものが見えてくるからです。

柳川 歴史の事象をケーススタディーとし、そこに含まれる普遍的な要素と個別的な要素を切り分け、前者を取り出して本質を学ぶということですね。(中略)

木村 歴史を学ぶことで得られる最も重要なスキルは、「一般化する力」です。例えば歴史上の失敗事例を知り、「その原因は何なのか」を考えて、「つまりこれはこういうことだ」と一般化できれば、それは現代の自分にも役立つ普遍的な知識になる。具体的な事象をいったん抽象化し、本質的な部分を取り出すスキルは、組織の中で上に立つ人間には必須のものです。
 ある経営者は、「経営はアナロジーである」とおっしゃっていました。過去に起こった出来事から何が導き出せるかを類推することが重要だという意味ですが、まさにその通りだと思います。


【感想】

◆これからの時代における「管理職像」について、非常に理解が深まる作品でした。

上記引用部分の大半が、著者のお1人である木村さんのものとなってしまいましたが、実際に本書も木村さんのお話が中心に展開しています。

というのも、元はといえば、冒頭でも触れた『ダークサイド・スキル』を題材とした対談セミナーが行われることになり、その際、木村さんの方から柳川さんをご指名されたとのこと。

そして「セミナーだけで終わらせるのはもったいない」と、書籍化されたのが本書なのだそうです。

なお、下記目次にもあるように、2つのパートそれぞれにお2人の「まとめ」があり、そこでは柳川さんも語りまくっていますからご安心を。


◆その2つのパートも、それそれが5つの章から構成されています。

Part1は「マインドセットをアップデートせよ」ということで、これからの時代における「管理職」の「捨てられるべき思考」について言及。

上記ポイントの1番目は、Chapter1からのものであり、ここにあるように、かつては「正解のある問い」が求められていたものでした。

一方、これからは「そもそも何が問いなのか」から考えなくてはならない模様。

つまり管理職も「マネジメント」から「リーダーシップ」へと意識を変えねばならないワケです。


◆同じくChapter2でも、「捨てられる思考」として「自部門に不利な決断はできない」が挙げられています。

上記ポイントの2番目の「撤退戦」というのも、まさに「不利な決断」に関するもの。
 その決断をしないまま問題を先送りにしたら、競争力はどんどん低下し、赤字も拡大して事業としては死に体になってしまう。そうなったら、売却したくても誰も引き取ってはくれません。働いていた人たちの引き取り先もないので、全員をリストラするしかない。
とはいえ、日本社会においては、まだまだ「浪花節」的に「つぶす部門が可哀そうじゃないか」となりがちなんですけどね。

また、この章では他にも「個別最適」という帽子をかぶりながらも、時には「全体最適」の帽子をかぶって、それぞれを使い分ける「Wハット」が推奨されています。

日本においては、トップダウンで強力に問題解決がしにくい以上、管理職における「全体最適」の視点からのトップ層への働きかけが大事な模様。

さらに上記ポイントの3番目は、Chapter4の「リスクを減らすのが自分の仕事だ」から抜き出しました。

日本においては、リスクテイクがインセンティブにならないことが多い以上、このような切り分けができれば、より多くの人が新規事業にもチャレンジできるかと。


◆一方後半のPart2では、具体的なアクションのアップデートがテーマになります。

ここでは「生き残る管理職への道」と題した5つの提案が登場しており、上記ポイントの4番目は、Chapter7からのものになります。

ただ、これも上記で触れた「全体最適」の考え方に則しており、確かに自分の部門の業績だけ考えたら、部下の得意なことをさせた方が数字は出るでしょうね。

また、最後のChapter10では、「ダークサイド・スキル」と対をなす「ブライトサイド・スキル」がテーマでした。

中でも上記ポイントの5番目の「歴史を学ぶ」は、多くの経営者や著者が述べていることですから、当ブログの読者さんにはおなじみのことでした。

ただし、ただ歴史本を読むだけではダメで、それを「一般化」できるかがキモ。

柳川さんも
 これを自然にできる人は少ないので、意図的に一般化する習慣をつけて、「この出来事があった頃の織田信長と豊臣秀吉の関係は、今の自分と部下の関係とこんなところが共通している」などと考えることができれば、自分の仕事に役立てられます
と言われてますから、ぜひご留意ください。


管理職を目指す方なら必読の1冊!

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管理職失格 新世代リーダーへの条件 (日本経済新聞出版)
Part1 マインドセットをアップデートせよ
Chapter1 捨てられる思考(1) 情報がないから判断できない
Chapter2 捨てられる思考(2) 自部門に不利な決断はできない
Chapter3 捨てられる思考(3) なんで中間管理職の私が決めるの?
Chapter4 捨てられる思考(4) リスクを減らすのが自分の仕事だ
Chapter5 捨てられる思考(5) 結局、会社にしがみついた方がいい
まとめ(1)経営アジェンダの変化とリーダーの役割(木村尚敬)
まとめ(2)「会社に縛られない」スキルを持って、自社で活躍する(柳川範之)

Part2 アクションをアップデートせよ
Chapter6 生き残る管理職への道(1) 20代・30代の友達を作れ
Chapter7 生き残る管理職への道(2) 現役感を手放すな
Chapter8 生き残る管理職への道(3) ムカつく奴をチームに入れろ
Chapter9 生き残る管理職への道(4) チームの羅針盤を作れ
Chapter10 生き残る管理職への道(5) ブライトサイド・スキルを磨け
まとめ(3)ゲリラ戦を戦い抜くリーダーシップ(柳川範之)
まとめ(4)リーダーシップ力と組織能力のアップデート(木村尚敬)


【関連記事】

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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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新・平家物語全一冊合本版 (吉川英治歴史時代文庫)

今日の作品でも「歴史に学べ」とありましたが、さっそくこの本は「399円」という激安ぶり!

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世の中の真実がわかる! 明解会計学入門

一昨日の日替わりセールに続いて、高橋先生の作品が登場しており、こちらもKindle版が600円以上お買い得。

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続・秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本 (光文社新書)

「元祖『カラー撮り鉄』」ことJ・ウォーリー・ヒギンズ氏の作品は、Kindle版が1000円以上お求めやすくなっています!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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