2021年01月13日
【コミュ障用?】『雑談の苦手がラクになる 会話のきっかけレシピ』枚岡治子

雑談の苦手がラクになる 会話のきっかけレシピ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」からの、個人的に気になっていたコミュニケーション本。よくある「雑談本」かと思いきや、むしろ「もっとその前の時点」からスタートしている(?)異色の作品でした。
アマゾンの内容紹介から。
仕事の時間より、休憩時間が苦痛。何かしゃべらなきゃ、とあせってどっと疲れる。人づきあいが重たく感じる。そんな、あなたに。
送料を足した中古よりも、このKindle版が800円弱、お買い得となっています!

Communication / zigazou76
【ポイント】
■1.「会話のきっかけレシピ」のポリシー●雑談は料理と同じ。「これが正解!」というのはない。ただTPOはある。
●まずは自分がラクになるのが大事で、笑顔を作るのも、相手への思いやりも後回し。「会話のきっかけレシピ」はいわば「お守り」みたいなもの。
●「会話上手」になるのではなく、「最低限これだけやっときゃなんとかなる」というごくありふれた会話を集め、ごくごく低いレベルを目指す。
●「こういうのがいい」「よくない」という優劣をつけるとプレッシャーになるので、ジャッジメントはしない。料理のレシピのようにぜ〜んぶ並べてお好きなものを使ってもらう。
●「コミュニケーションは素晴らしい」「友だちなんかいらない、孤独を恐れるな」といった価値観とは関係ないただのツールを作る。
■2.レシピ例:「**さん今日、何食べました?」
●シチュエーション会社へ戻るときに会った●場面説明昼ごはんを食べて戻ってくるときに、知ってる人と一緒になった。これから戻る場所は同じ(その他、外出から戻るなど)。●材料いまやっていたことなど●ぽてのひとくちメモこれも「レシピ」収集で「あいさつのみでしゃべらない」と答えた人が多かった場面です。
これは、「昼休みで外に食べに出たあと、戻ってくるとき」を想定しています。勤めていた会社では社屋の真ん前に横断歩道があり、信号で顔見知りの人と一緒になることが多々ありました。「朝、あいさつしたしな……どうしよう……」などと、真剣に悩んでいました。
■3.「会話のきっかけレシピ」から気がついた3つのこと
そして、みんなの工夫がつまった「レシピ」をたくさん並べてみて気づいた次の3つは、その後10年以上「レシピ」を作っていくうえで、コアになる発見でした。●「見たまんま」を言葉にするだけでいい(例:「今日はあったかいですね」など)。意味のある会話でなければ、言葉どおりの意味に沿った言葉を返さなければ、いついかなるときも人がいたらしゃべらなきゃ、と思いこんでいた自分にはあまりに正反対な結果でした。
● 返事は「オウム返し」でいい(例:「そうですね、あったかいですね」など)。
● むしろ、黙っていたほうがいいときもある(←最初はこの程度の認識でした)。
■4.笑顔は、目ヂカラならぬ眉ヂカラ
私はレシピ後、雑誌などでにっこりしている人の写真を見ていろいろマネしてみました。鏡で研究していると、どうも口角を上げるだけじゃなくて、目も少し見開くとより「微笑」っぽくなる、とわかってきました。
その後、ビジネスマナーの先生が「笑顔は、目ヂカラならぬ眉ヂカラ」と言うのを聞いて、なるほどと思いました。目、というより眉とまぶた両方を引き上げる感じにするとより「自然な見開き方」になるのです。やりすぎると不自然なので、鏡で練習してください。
「話すのが苦手でもニコッとしていればだいじょうぶ」という意見も見かけますが、実際「微笑」ができるとずいぶん違いました。「会話したことはないけれど知ってる人」とそのへんで顔を合わせたら、とりあえず「微笑」するだけで相手も同じような表情を返してくれたり、ときには向こうから話しかけてくれることもありました。やり方がわからなくて遠ざけていた「ニコッと」は、できると確かに強い味方なのです。
■5.雑談は「互いに投げて、受ける」
私は「自分がしゃべらないからダメなのでは?」「とにかくしゃべらなきゃ」と思いこんでしまったわけですが、これもどういうことか、いまならわかります。「しゃべる」という言葉の意味にとらわれすぎだったのです。
しゃべる=自分が口を開けて言葉を発する。そのように思っていましたので、「自分がたくさんしゃべらなきゃ」「面白い話をしなきゃ」「聞かれたことに答えなきゃ」「天気とかわかりきった話題はダメ」「質問すればいい」といった「自分がコトバを発する」ことに必死になっていました。
でも、実は「雑談」は、言葉を使っているけれど言葉どおりの意味はあまり重要ではないのです。あくまで、大事なのは「互いに投げて、受ける」という双方向の行為です。(中略)
そう考えると、声かけの内容も「いま、相手が受け取りやすいボールを投げる」ことがいちばん大事なんだとわかってきました。
【感想】
◆本書のアマゾンのページの、詳細な内容紹介の方に、本書の推薦の言葉がいくつか載せられているのですが、ノンフィクション作家である高野秀行さんはこんな風に言われてらっしゃいます。「枚岡さんのレベルは私の想像を超えており 『え、そこから?! 』と何度も驚かされました。」多分、このフレーズを読まれた方は、その意図するところが分からないと思われ。
そしてその意味が分かるのが、著者の枚岡さんが過去を振り返った本書の第1章です。
よく「コミュ障」という表現を目にしますけど、枚岡さんはそれを地で行くもの。
学生時代から最初は誰とも話ができず、ほぼ蚊帳の外である一方で、「この人は大丈夫」と思った人には「機関銃のように」しゃべっていたのだそうです。
結果、普通の授業や休み時間はよくても、クラス全体やグループでのイベントでは、その「心許した相手」もみんなにとけこんで楽しく参加しており、枚岡さんはひとりぼっちに。
だから「何をしゃべってもいいわけじゃない」人たちのなかで、ひたすら石になっていました。遠足、運動会、文化祭、飲み会など、みんなが楽しみであろうイベントは苦行でした。しかも、その仲のよい友人たちにも、ひたすら自分のことをしゃべったり、くっついて行動したがるため、大学生時代には「親友」と思っていた2人に「絶縁宣言」されたのだとか。
◆この状態は社会人になっても大して変わらず、要は距離感をつかむのが極端に下手ということかと。
そこで枚岡さんが始めたのが、「他の人の雑談を集める」ことです。
詳細は本書の2章に詳しいのですが、「『〜〜』と話しかけられたら、なんて答える?」と友人たちに聞きまくり、さらにそれを「目上」「同じ立場または目下」でパターン分けする等々。
そこで生まれたのが、上記ポイントの1番目にある「会話のきっかけレシピ」であり、そのポリシーは上記の引用のとおりです。
この「会話のきっかけレシピ」とは、具体的には上記ポイントの2番目のような感じで、それらが集められているのが、本書の第3章。
ポイントの2番目では「**さん今日、何食べました?」という、「レシピ」1つだけですが、本書ではアレンジ例として
「今日寒かったですよね〜」といった他のレシピが、各シチュエーションごとに10個以上収録されています。
「あそこの店**ですよ」
「**で〇〇を食べてきました」
……この記事の冒頭で「もっとその前の時点」と書いた意図が、お分かりいただけたかと。
◆一方本書の第4章は、この「会話のきっかけレシピ」をまとめる過程で、枚岡さんが気がついたことや発見したこと等に言及。
上記ポイントの3番目もその「発見」の1つであり、「10年以上」試行錯誤していく上で常に羅針盤となっていたのだそうです。
また、第5章では「会話のきっかけ」のさらに「きっかけ」である「笑顔・あいさつ」について解説。
笑顔については類書でも数多く触れられていますが、上記ポイントの4番目の「眉ヂカラ」は、私自身参考になりました。
さらに、かつての枚岡さんがされていたという「『イヤです』のサイン」の具体例も興味深かったです。
コミュ障と言われている方も、当てはまるようなら、気をつけていただきたいところ(詳細は本書を)。
◆そして最後の第6章では、現在の枚岡さんの立ち位置や、コミュニケーションに関するお話について。
上記ポイントの5番目はここからのものであり、当初の「0か100か」の人付き合いから、よくここまで変わってこれたな、と感慨深く思う次第です。
ただし、普通の雑談本は、この時点でもほぼほぼ「当たり前」の前提でスタートしており、そのレベルの雑談本をお望みの方にとっては、本書はおそらく不要かと。
逆に、ご自身が「コミュ障」だと思われている方は、あきらめずに本書の冒頭からお読みいただき、どのように対処していくと良いか、枚岡さんの例を参考にお考えください。
もちろん、枚岡さんがなさったのは、ある種の「コミュニケーションの因数分解」だと思うので、私個人としては十分得るところがありました。
「雑談嫌い」の方なら一読の価値アリ!

雑談の苦手がラクになる 会話のきっかけレシピ
第1章 みんな何をしゃべってるの!? 対人関係に悩んだ日々
第2章 そうだ!雑談を集めてみよう
第3章 日常シーンごとの私の「レシピ」
第4章 悩みとヒントが「見える化」された
第5章 会話のきっかけにも「きっかけ」があった――なぜ、「まずは笑顔・あいさつ」と言われるのか?
第6章 「会話のきっかけレシピ」と歩く
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
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