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2021年01月01日

【歴史】『歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A』出口治明


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歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A (文春新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった歴史本。

おなじみ出口治明さんが、歴史に関する様々な質問に分かりやすく答えてくださっています。

アマゾンの内容紹介から。
日本史、世界史の垣根を越えて、「マネー」「失敗」「リーダー」など一〇のテーマに分類。一問一答形式で、歴史のエッセンスを紹介する。こよなく歴史を愛し、人生の指針としてきた著者による実践的歴史読み物。

中古が値下がり気味ですから、お得なKindle版がオススメです!





Knight / gminguzzi


【ポイント】

■1.江戸時代は平和が続いて幸せだったのか?
A ちっとも幸せではなかったと思います。(中略)
 数字で示しましょう。日本のGDPは、1700年前後には世界シェアの4%程度を占めていたと推計されています。鎖国直後の五代将軍綱吉(在位1680〜1709)の時代ですね。
 現在、GDP(購売力平価ベース)で世界第4位の日本の世界シェアは約4%です。つまり、1700年頃の日本は、現在と同じぐらいの経済大国でした。(中略)
 ところが、江戸末期になると、日本のGDPの世界シェアは2%程度と半分以下に落ち込みます。これは200年にわたる鎖国の影響です。交易がない状況では、外国の物品が入ってこないだけではなく、情報も入ってきません。
 引きこもっていては、人々の生活が豊かになるはずはありません。


■2.共産主義はなぜ失敗に終わったのか?
A その理由は簡単で、人間はそれほど賢い動物ではないからです。(中略)
 ソ連をはじめとする共産主義国は、一部の計画経済がうまくいったおかげで栄えた時期もありました。しかし、70年近くたつうちに市場経済との差は歴然となりました。共産圏の国々は1990年前後にバタバタと倒れ、世界を二分していた冷戦構造はなくなりました。いまや共産主義国は地球上に存在しません。
「あれ、中国は?」と思われる人もいるでしょう。中国は中国共産党という名のエリート集団が政権を握っているだけで、実態は共産主義国ではありません。特にこの半世紀は、市場経済をガンガン導入してきました。
 そうでなければ、GDPで世界第2位の経済大国にまで成長しませんし、ユニコーン企業が100社ほども誕生するはずがありません。


■3.歴史を見ると負けた側のリーダーは殺されているのに、徳川慶喜はなぜ助かったのか?
A 双方のリーダーたちがきちんと算盤をはじいたからです。(中略)
当時の江戸は、国内最大の都市でした。焼け野原にしたら国家の貴重なインフラを失い、復興するにはコストがえらくかかることがお互いわかっていたのです。クーデタを起こした西郷たちは、貴重なインフラを傷つけることなく、できるだけ静かに幕府が江戸を出ていくことを秘かに望んでいました。「居抜き」が希望だったのです。
 逆に「江戸を破壊したろか」といい出したのは勝のほうです。リーダーである前将軍の徳川慶喜の命を助けると約束しなければ、江戸の町に火を放ってメチャクチャにしてまうぞ、と脅迫したわけです。


■4.戦後日本が経済大国になれた理由とは?
A 何よりも人口の増加と東西冷戦構造のおかげです。(中略)
 日本の戦後復興を指して「日本人は優秀だ」「日本のマネジメントは優れている」などと自慢する人がいますが、そんなことはありません。本当に優秀なら「失われた30年」などという事態に陥るはずがありません。
 日本の復興が急速に進んだ最大の理由は、戦後の中国で、毛沢東率いる共産党が 蔣介石(1887〜1975)が率いる国民党を打ち負かしたからです。このことによって、日本はアメリカの重要な同盟国になりました。もし蔣介石が勝っていたら、日本はずっと貧しい国のまま放置されたかもしれません。

(詳細は本書を)


■5.十字軍が何度も遠征をした理由は?
A この遠征には聖戦以外に、失業対策、即ち出稼ぎという一面がありました。地球の温暖化によってヨーロッパでは、若年層の人口が膨張し、国内では食べていけない若者が増える「ユースバルジ現象」が起きていたのです。(中略)
 しかし、もう1つ隠された重要な背景がありました。この遠征をヴェネツィアやジェノヴァの商人たちがけしかけていたのです。実は十字軍に武器や物資を補給していたのは、ヴェネツィアやジェノヴァの商人でした。彼らはそれで大儲けできたので、遠征の都度、莫大な利益を得ていたのです。(中略)
 ヴェネツィアやジェノヴァの商人にとって十字軍は、あらかじめ事業計画に組み込まれた高収益イベントそのものでした。定期的に出かけてもらわないと困るので、「がんばれ! がんばれ!」とハッパをかけたのです。


【感想】

◆出口さん「らしさ」が全開の1冊でした。

まず、表記上の固有名詞が、極力正当なものに寄せているであろうこと。

アメリカ大陸を発見した「コロンブス」は、ことごとく「コロン」になっていますし、いわゆるイギリスは「連合王国」と表記されています。

ほかにも「江戸と大坂」という表現があって、さすがにこれは「大阪」の誤植かと思いきや、調べてみると、どうも江戸時代は「大坂」だった模様。

……すごいこだわりです。

もう1点は、上記ポイントではほとんど抜き出していないのですが、登場人物の口調の多くが関西弁であること。

当初、日本の歴史上その人物が関西出身の場合に、リアルさを求めてそうしているのかと思ったのですが、ナポレオンが
「とくに産業もないルイジアナをアメリカが欲しがっているなら売ったらええ」
と言ったことになっていますから、関西関係なさげです。

これも、出口さんが講演等で話される際には、おそらくこんな調子なんでしょうね。


◆ただし、さすが歴史好きで何冊も歴史に関連した作品を出されている出口さんだけに、内容的にはガチそのもの。

元は出口さんの「文藝春秋digital」での連載、「腹落ちする超・歴史講義」をまとめたものなのですが、これは読者からの質問や編集者の疑問に出口さんがその場で答えていたのだそうです(だからこその関西弁?)。

ちなみに、事前に質問を聞いて、答えを用意していたのではない、とのことなので、改めて出口さんの博識ぶりには驚くばかり。

そのテーマは、下記にもあるように「マネー」「失敗」「リーダー」等の全10個で、日本史、世界史問わず、さまざまな質問が寄せられていました。

例えば上記ポイントの1番目は、第1章の「マネー」からのものなのですが、長きに渡った江戸時代について、一般的な常識とは逆に、かなり酷評しています。

実際、平均身長と平均体重の数値が最も高いのは現代なのに対して、最も低いのが江戸時代末期とのことで、これは戦国時代よりも下だったのだそう。


◆続く第2章の「失敗」からは、共産主義について論じた上記ポイントの2番目をセレクト。

共産主義は「計画経済」によって、生産や消費をコントロールできる、と考えましたが、実際には異常気象等の想定外のことが起こりうるため、とんでもないロスが発生してしまいます。

ちなみに出口さんが日本生命時代に、中国の相方に「中国は、建前は社会主義で計画経済。でも、金融では市場主義を重視」しているのに「日本はその逆で、建前は資本主義だけれど、金融界を見ると完全に計画経済」と言われたそうで、返す言葉もありませぬ……。

また、第3章の「リーダー」からは、上記ポイントの3番目の徳川慶喜のお話を抜き出してみました。

というか、この時点での実際の「リーダー」は、維新側の西郷隆盛と幕府側の勝海舟であり、両者がロジカルに考えたがゆえの「江戸城無血開城」だったワケです。


◆一方、上記ポイントの4番目の戦後日本の躍進のお話は、第4章の「大逆転」からのもの。

人口増加が影響していた話は知っていたものの、当時の中国の事情が関係していたとは知りませんでした。

上記では割愛しましたが、当初アメリカは、蒋介石の中国と手を結ぶはずだったのですが、毛沢東が中国の実権を握り、蒋介石は台湾に避難してしまったため、予定を変更して日本と組むことに。

一方で、日本の吉田茂は、「開国・富国・強兵」というグランドデザインの中の「強兵」をアメリカに任せることによって、本来軍備復興にあてる人材や予算をすべて経済に回すことができたのだそうです(知らなんだ)。

さらにポイントの最後の十字軍のお話は、第7章の「戦争」から抜き出してみました。

いや、宗教的ないしは政治的な意図があったのかと思いきや、こんな経済的な事情があったとは。

もっとも現在でも、軍需産業は世界で戦争があることを望んでいるでしょうから、同じことですかね。


「目からウロコ」の歴史の裏側が知りえる1冊!

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歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A (文春新書)
第1章 マネー
第2章 失敗
第3章 リーダー
第4章 大逆転
第5章 女性
第6章 宗教
第7章 戦争
第8章 ライフスタイル
第9章 アメリカ
第10章 日本と世界


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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