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2020年12月29日

【思考法】『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』深沢真太郎


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数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問 (PHPビジネス新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった、深沢真太郎さんの最新作。

PHPビジネス新書の「思考トレーニング」シリーズからの1冊になります。

アマゾンの内容紹介から。
「先行きがまったく読めない」「成功法則がすぐに陳腐化してしまう」…そんな現代に求められるのは、「自ら深く考え、答えを出していく」こと。そしてそのために不可欠なのが「数学的思考」である。本書では、数学的思考の「正体」を解き明かすとともに、それを鍛えるエクササイズを多数用意。楽しく問題を解いているうちに、「数学的なアタマの使い方」が自然と身につく1冊。文系ビジネスパーソンこそ必読!

新書版が在庫切れで、中古が高値となっていますから、「11%OFF」のKindle版がお買い得です!





МСС / Dmitry Djouce


【ポイント】

■1.成果を出せるビジネスパーソンかどうかわかる3つの質問
 私は様々な企業の研修に登壇しています。昨今は管理職向けのものも増えました。そんな場で、私が頻繁に使う3つの質問があります。もちろん後で解説しますので、まずはあなたも考えてみてください。そして、この3つの質問に対するあなた自身の答えも用意してください。
【演習問題】
 成果が出るビジネスパーソンとそうでないビジネスパーソンでは、次の問いの答え方がそもそも違います。さていったいどんな違いがあると思いますか?
 Q1「あなたの仕事はなんですか?」
 Q2「それはできていますか?」
 Q3「なぜそう言えるのですか?」
(詳細は本書を)


■2.分解することで問題が解決する
【演習問題】
あなたの会社の売上高を分解してください。
そして一昨年と昨年の違いを明らかにしてください。(中略)
(売上)=(客単価)×(広告接触者数)×(来店率)×(購入率)
※お客様はすべてネット上で広告を見て来店したものとする
 こうすることで一昨年と昨年の差がより具体的になります。もしこの会社の売上高が下がっているという問題が生じているとしたら、この4つの素(もと)を比較することでその原因がはっきりし、解決策を具体的に考えることができるでしょう。
例:
(一昨年の売上)=100(万円)×10,000(人)×0.1×0.01=1,000(万円)
(昨年の売上) = 90(万円)×12,000(人)×0.07×0.01=756(万円)
 売上がダウンした大きな要因は来店率の低下。広告接触者数は増加していることから、広告の訴求内容に問題があったと考えられる。


■3.比較は複数する
【演習問題】
 TBS系テレビドラマ『半沢直樹(続編)』初回(2020年7月19日放送)の「総合視聴率」33.0%という数字をどう評価しますか?(中略)
 社会現象にもなった有名ドラマ、あなたもその存在はご存知でしょう。例えば私ならこんな比較をするでしょうか。
・同じ枠の他ドラマの初回との比較(どれくらい注目されているか?)
・前作(2013年放送)の初回との比較(どれくらいファンを育成できたか?)
・前作の最終回との比較(どれくらいファンが維持できているか?)
・2013年と2020年のドラマ平均視聴率の比較(一般的なテレビドラマの価値は?)
 複数の比較をすることで、この 33%という数字の姿が見えてきます。


■4.普段からたとえ話を考えるクセをつける
 たとえ話とは、いわゆる比喩と思っていただいて結構です。どういうことか、本章の内容を振り返りながら説明します。
 似ているものを見つける思考回路。これが本章のテーマでした。恋の構造は炭のそれに似ています。だから「恋は炭のようなものである」という比喩表現を作ることができます。
離婚は退職と構造が似ている
→「離婚とは退職するようなものである」(中略)
 つまり、「AはBのようなものである」というたとえ話を考えることが、すなわち構造化するプロセスを練習することになるのです。それがあなたの仕事に直接的に役立つかどうかはわかりません。しかし役立つかどうかで考えてしまうとそれは習慣として定着しません。ゲーム感覚で、遊びとして捉えてやってみることがコツです。


■5.ワインの品質を関数にする
 例えば、フランス・ボルドー産のワインの品質を、ある高度な分析手法によって予測した人がいます。ワイン好きの経済学者であるオーリー・アッシェンフェルターです。その式がこちらです(※注:アッシェンフェルター氏のウェブサイトhttp://www.liquidasset.com/winedata.htmlや関連文献をもとに、著者が一部簡略化)。
ワインの品質=(0.00117×冬の降雨量)+(0.06164×育成期の平均気温)
−(0.00386×収穫期の降雨量)+(0.02385×熟成年数)−12.145
 ブドウの生育に影響する何年分ものデータから、式中の4つの要因が価値予測に有効であることを示しています。ワイン愛好家や他の学者から様々な指摘や意見があったとされ、このモデルの妥当性については諸説あるようです。本書は学術書ではないのでその点は他書に譲ることにしますが、ここで申し上げたいのは「こういう関係になっていますよ」と説明することは関数を作ることと極めて近い行為であるということです。


【感想】

◆「数字本」「数学本」ではおなじみの深沢真太郎さんの新作でしたが、なかなか意欲的な内容だったと思います。

まず第1章では、タイトルにもある「『数学的思考』とはなんぞや?」がテーマ。

これに関して、本書の「はじめに」で深沢さんは「定義」「分解」「比較」「構造化」「モデル化」の5つの思考法に整理しています。

本書での構成が図解化されていたのですが、以下のとおり(アマゾンへのリンクなのでクリックしても拡大されません)。

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続く第2章では、「定義」に関して掘り下げており、いくつもの「演習問題」が挙げられています。

中でも興味深かったのが、上記ポイントの1番目で、これはぜひ、読者の皆さまにも回答した上で、本書で「答え合わせ」をしていただきたいところ。

……ネタバレ自重しますが、「NG例」に近い答えをしている方も多いかもしれませぬ。


◆また、第3章のテーマは「分解」ということで、「分けて考える」というのはもう、問題解決の定番でしょう。

さっそく上記ポイントの2番目でも、「売上高」を分解。

実際に分解することで、売上ダウンの要因が可視化されるワケです。
 分解するなら、それはできるだけ細かいほうがいい。なぜなら、その対象を深く知るためには、その素(もと)を把握することが有効だから。
さらに、分ける際にはもう1つ大事なポイントがあります。
分けるときは、漏れなく・ダブりなく。
そう、いわゆるMECEは、数学という学問を通じて学んでいたんですね。

なお、通常「分解」は定量的なものですが、定性的なものも本書ではカバー。

「自分が好きな人のどこが好きなのか明らかにする」という演習問題も、ただ要素を列挙するだけではなくて、ツリー図にするのがミソでした(詳細は本書を)。


◆一方第4章も、数学の定番である「比較」がテーマです。

「比較」する際に大事なのは、上記ポイントの3番目にあるように「複数」ですべし!

さらには、データを読み解くための2つの習慣がこちらになります。
・その比較が妥当かという疑問を持つ習慣
・そのデータの定義を確認する習慣
この2つを踏まえた上で、昨今の新型コロナウィルスの報道で提示されたデータを眺めると、今までとは違った考えになるかもしれませんね。

実際に本書でも、新型コロナウィルスの感染者数や陽性率を取り扱った演習問題がありましたから、気になる方はぜひご確認ください。


◆続く第5章では「構造化」に言及。

構造化することによって、「一見違うものの、実は同じ」という例がいくつか挙げられています。

上記ポイントの4番目の「離婚」と「退職」もその1つ。

これはまだ分かりやすい方ですけど、たとえば本書の帯にある「『居酒屋の飲み物』と『プリンターのインク』」の共通点が何か」についても考えてみてください。

……その練習としても、「たとえ話」の習慣が大事なんですね(あくまでゲーム感覚で!)。


◆そして最後の第6章では「モデル化」がテーマになのですが、これがなかなか一筋縄ではいきませぬ。

上記ポイントの5番目の「ワインの品質」も、数値的にどうこうというよりも、その考え方や要因の妥当性が大事。

個人的には心理学者であるピアーズ・スティールが提唱したという、下記の「やる気」の式が興味深かったです。
(課題へのやる気)=(達成確率×価値) ÷(衝動性×締め切りまでの時間)
そのお話の出典である、この本もなかなか面白そうな。

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その問題、数理モデルが解決します

いずれにせよ、こうした「一見数学とは無縁なテーマ」が、実は数学的な考え方によって紐解かれていくのが、本書の醍醐味ではないか、と。


「数学的思考」を身につけたい方なら読むべし!

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数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問 (PHPビジネス新書)
はじめに──なぜ「いま」数学的思考が必要なのか?
第1章:「数学的思考」の正体 〜人生を変える5つの思考回路〜
第2章:定義〜まず何から始めればいいのか〜
第3章:分解〜難しい問題は小さく分けて考える〜
第4章:比較〜だから人間には数が必要だった〜
第5章:構造化〜世の中をアナロジーで理解する〜
第6章:モデル化〜数学とは関係の科学である〜
おわりに──答えを出すチカラの正体


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【説得力?】『「説得力」を強くする 必ず相手を納得させる14の作戦』藤沢晃治(2015年07月08日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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