2020年12月10日
【睡眠力?】『Sleep,Sleep,Sleep』に学ぶ勉強のコツ5選
Sleep,Sleep,Sleep
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本の記事」でも人気だった1冊。当ブログにおける鉄板テーマである「睡眠」を扱った作品ですから、見逃すわけには参りませぬ。
アマゾンの内容紹介から。
「絶対寝たほうがいい」と口を揃えて唱える科学者たち。読み終えたとき、眠っている間に何が起きているか全部わかる!「今わかっていること」を集約して睡眠の知識を体系化。睡眠研究世界・最新知見×最も効果がある超・熟睡メソッド。今回はこの本の中から、特に「勉強」に関するものを選んでみました。
なお、Kindle版も「10%OFF」とお買い得になっていますから、ぜひご検討ください!
Sleeping in School / MC Quinn
【ポイント】
■1.「何度もやったこと」を脳は優先して覚えるでは、脳による新しい記憶内容の取捨選択の基準はどこにあるのだろう? ここで決め手となるのは、学習の強度、つまり学習内容がどのくらいの頻度で繰り返されたかである。
英単語を何度も読み返すと、単語の学習に関連する脳の領域が夜の間とりわけ深い睡眠を示し、これらの英単語の定着が優先されるようになる。
それに対し、前夜に一度目を通しただけの単語については強い記憶痕跡は形成されず、そのような情報を、脳が睡眠中に何度も反復された情報と同じように扱うことはない。前の日の夜に靴下をどこに脱ぎ捨てたかについて繰り返し考えるような状況は、まずないだろう。そのため脳は、この記憶痕跡を無視するのだ。
■2.睡眠中に香りを嗅ぐと記憶が定着する
香りには過去の記憶を呼び起こす力がある。それどころか、睡眠中に香りを知覚すると、記憶の定着の促進にも効果があるというのだ。
少し前になるが、科学誌『サイエンス』にこのテーマに関する実験結果が発表された。
実験では、20〜30代の被験者がメモリーカード[訳注:神経衰弱のように絵札のペアを探すカードゲーム]で遊ぶ間、バラの香りを室内に漂わせた。その夜、半分の被験者にだけ、深い睡眠の間に同じバラの香りを嗅がせた。
その結果は驚くべきものだった。翌日再びメモリーカードに挑戦してもらったところ、睡眠中にバラの香りの刺激を受けたグループは、前日に覚えたカードのペアの位置を、もう一方のグループよりも明らかに多く記憶していたのである。
■3.「睡眠学習」は復習なら可能
被験者が深い睡眠に入っている間に、ゆっくりとした脳波にシンクロする音を聞かせたところ、長期記憶の形成に関わる脳波(睡眠紡錘波、大脳皮質から発せられるゆっくりとした脳波、そしてリップル波)の相互作用が強化されたのだ。
この知見は、たとえば新たに外国語を学ぶ際に応用できる。
スイスの睡眠研究者たちは、被験者グループが就寝する前に、オランダ語の単語をいくつか教えた。そして彼らの就寝中にも、これらの単語を繰り返し聞かせた。ただし一部の単語を除いて。
明くる日、実験参加者たちは睡眠中に流れていた単語のほうをよく覚えていたという。
だが注意が必要だ。記憶に定着させることができるのは、就寝前に学習した単語だけ。学んだことのないボキャブラリーを睡眠中に聞いたとしても、残念ながら何の役にも立たない。
■4.「ストレス」+「寝不足」で記憶力は最悪になる
調査ではメモリーカードを用い、それぞれのペアがどこに置かれているかを記憶するという手法で学生グループに記憶テストを受けてもらった。
その日の夜、被験者は睡眠を4時間だけとることが許された。同じ被験者たちは後日、再度メモリーカードのペアの位置を覚え、この日の夜には8時間の睡眠をとった。それぞれの実験の翌日、参加者にカードの置かれている場所をたずねたところ、その結果に睡眠時間の違いに起因する有意な差は見られなかった。(中略)
次に、試験や仕事でよく見られるストレス状況が記憶のパフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを検証した。被験者たちにはまず、騒音により集中力が阻害される環境下で大量の単語を暗記する課題が与えられた。そして、そのあとにもう一度記憶テストを行った。前日に覚えたメモリーカードのペアの場所を思い出してもらったのだ。
今回、4時間の睡眠でストレスの多い状況を経験した被験者たちは、どこにカードが置かれているかを前回ほど順調に思い出すことができなかった。記憶能力が10%低下したのだ。その一方で、きちんと睡眠をとったあとでは、ストレスによる影響は認められなかった。
■5.レム睡眠は、創造性を向上させる
元素周期はロシア人化学者ドミトリ・メンデレーエフの夢に実際に現れたという。1869年2月17日の日記に「夢の中で、すべての元素があるべきところに収まったシステムを見た。目覚めると同時に、すべてを紙に書き写した」と記されている。
135年後、科学誌『ネイチャー』に発表されたドイツの研究によって、レム睡眠の創造的な効果が裏づけられることになった。
研究者たちは、学生を複数のグループに分け、特別な数学の問題を解くための指導を行った。じつは問題を簡単に解ける近道があるのだが、学生たちに事前に教えることはしなかった。
入眠前に解答に辿り着けなかった被験者のうち60%が、問題を「一晩寝かせた」あとに、裏技を思いつくことができた。他方、睡眠をとることが許されなかったグループでは、答えを導き出せた被験者の割合はたった22%だった。
どうやら一晩睡眠をとることで、問題を解決できる確率を高められるようだ。もちろん、解決が確実に保証されるわけではないが。
【感想】
◆とにもかくにも、ハイライトを引きまくった作品でした。ただし、そのほとんどは睡眠の健康面に関するもので、上記に挙げたポイントは、本書の第5章&第6章というたった2つの章から抜き出したものにすぎません。
そういう意味では、誤解を招きかねない可能性が高いので申し訳ないのですが、それくらい本書のこの部分のインパクトが、個人的に強かったということ。
いずれにせよ、勉強本で睡眠の重要性について触れている本は多いのですが、逆に睡眠本で勉強に関するTIPSまで述べた作品は思い浮かびません。
結局、そのくらい本書が「睡眠」というものの多様性を網羅している、ということなのですが。
◆さて、まず上記ポイントの1番目は、勉強における「反復」がなぜ必要かについて述べたモノ。
繰り返し行うことで、記憶したり、身についたりすることは多くの本で述べられていますが、実はそこに睡眠も関わっていた、というのは、言われてみたら当然ですけど、あまり指摘されていなかったかと思います。
つまりこのロジックで言うと、同じ日に繰り返し何度も覚えるよりは、日を変えて(=睡眠をとって)同じ回数だけ覚えた方が記憶されるということ。
実際には、その合わせ技、というか、大事なこと(テストの範囲等)であれば、繰り返し毎日覚えることが多いのでしょうけど、たとえば対象が広範囲にわたる場合、範囲を狭めてその分同じ日に繰り返すよりは、同じ内容は日をまたぐように覚えた方がいいことになります。
たとえば仮に3日でA,B,Cという範囲を覚えるなら、それぞれを完ぺきにするような1日目「A,A,A」2日目「B,B,B」3日目「C,C,C」という覚え方よりも、3日とも「A,B,C」を繰り返した方が覚えられるハズ。
ただ単に「繰り返し覚える」というだけではないのが、ミソですね。
◆また上記ポイントの2番目は、数多くの勉強本を読んできた私にとってもまったくの初耳でした。
本書でもサラッとこの程度しか書かれてないので、どこまで効果があるのか分かりませんが、この結果に従うなら、たとえば勉強部屋と寝室を同じアロマにした方が、記憶が定着することになります。
私自身、勉強法については「負担にならないことならやる」「効果が少なくてもやらないよりやった方がましならやる」というスタンスなので、これはぜひお試しいただきたいところ。
ちなみに勉強法に関する説の1つに、「勉強する環境と、試験を受ける時の環境を似せた方がいい」というのがあるのですが、実際には出来ないことが多いです(BGM等)。
香りについても、勉強する時に使ったアロマスティック(手首や首筋につけるタイプ)を、試験を受ける時に使えばいいのかな、と考えていたのですが、ここで言うように寝る時ならば自由に合わせられるかと。
◆さらに、上記ポイントの3番目は、今後出される勉強本で、言及される可能性が高いTIPSだと思います。
今まで「睡眠学習」をまともに取り上げた勉強本はありませんでしたし、「効果がない」というのが定説だったところ、卓袱台返しされた気分。
たとえば何かを暗記する際に、自分の声を録音して、それを移動中に聞かれる方はいらっしゃいますが、それを寝る際にも聞いた方がいいことになります。
ただし、今まで勉強に音声を使ってなかった方が、わざわざ録音してまでやる意義があるのかは、本書の記載が本当にこの程度しかないので、正直分かりません。
それでも、上記でも述べたように「やらないよりやった方がましならやる」という立場の私としては、一応オススメしたく……。
◆なお、上記ポイントの4番目にあるように、寝不足だけならカバーできても、ストレスが絡むと記憶力が低下するそうなので、ご留意ください。
とはいえ、ストレスがあろうがなかろうが、こと記憶に関しては、基本的に睡眠が大事なのはご理解いただいていると思いますが。
さらに上記ポイントの5番目の研究結果は、類書でも見かけたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
要は記憶だけでなく、ひらめきにも睡眠は関わってくる次第。
ちなみに、昼寝だと「宣言的記憶」と「手続き記憶」は強化される一方、創造性は助長されないのだそうです。
……「いいアイデアが思い浮かばないので、昼寝をする」というのはダメなんですねw
そして分かり切っていることですが、睡眠不足は、ありとあらゆる健康に悪影響を及ぼす(肥満、認知症、感染症、がん等々)ことは、本書にこれでもか、と書かれている(全部割愛しましたが)ので、私のようにこの記事を書くのに4時間20分しか寝ていないのは、本末転倒です(めっちゃ眠い)!!
健康本好きも勉強本好きも満足できる1冊!
Sleep,Sleep,Sleep
第1部 科学者がそろって「絶対寝るべき」という理由
1章 眠らないとどうなる?
2章 睡眠には「4ステージ」がある
3章 私たちを支配する「体内時計」
4章 「デジタル革命」で人間は熟睡を失った
第2部 睡眠の「すごい効果」を全部受け取る
5章 眠って「賢者」になる
6章 夢が「創造性」を開花させる
7章 眠って「感情」を整える
8章 「認知症」を予防する睡眠
第3部 いい睡眠は「最良の薬」
9章 眠って「スリム」になる
10章 「免疫」を強くする
11章 「糖が溜まらない体」に睡眠が不可欠
12章 強靭な心臓
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【編集後記】
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