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2020年10月23日

【科学的自己啓発書?】『科学的に幸せになれる脳磨き』岩崎一郎


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科学的に幸せになれる脳磨き


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった科学的自己啓発書。

京大出で「脳科学者・医学博士」である著者の岩崎さんが、エビデンスベースの「幸せになる方法」を指南する1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
世界最先端の医学脳科学を研究してきた科学者が見つけた「幸福学」。脳の使い方を変えると、「思いがけない力」が発揮される。最新の研究を含む255の論文から導いたエビデンス。

中古価格が定価を大きく上回っていますから、「10%OFF」のKindle版がお買い得です!





child Head / charlywkarl


【ポイント】

■1.幸福感が上がる目標設定法と下がる目標設定法
 ひとつのタイプは、たとえば「6か月後までに◯◯円の売り上げを達成する」というように、「物質主義的な事柄を目標にする」というもの。
 もうひとつのタイプは、たとえば「地域の人5000人を笑顔にしたい!」とまずは決めます。それが実現したら「◯◯円の売り上げが達成できる」と考えるのです。(中略)
 そして、「6か月後」「2年後」「12年後」に、被験者たちの幸福感はどのようになっているかを調べました。
 すると「物質主義的な目標」を設定した人たちは、目標を達成している・していないにかかわらず、時間が 経つにつれて幸福感が次第に下がる傾向にありました。
 それに対して「心の豊かさ」を目標にする人たちは、こちらも目標を達成している・していないにかかわらず、時間が経つにつれて前向きで、幸福感・充実感が次第に高まる傾向にあることがわかったのです。


■2.ポジティブなフィードバックがやる気を高める
 オランダ・アムステルダム大学のバーガーズ博士らは、次のような研究を発表しています。157人の被験者に、オンラインの脳トレプログラムに参加してもらいます。プログラムの出来不出来にかかわらず、「良い点やできている点を見つけて、ポジティブなフィードバック」をする場合と、「悪い点を見つけて、ネガティブなフィードバック」をする場合で、やる気にどのような違いが現れるかを調査します。
 その結果、ネガティブなフィードバックばかりが続くと「やる気」が減少していくことがわかりました。
 ついつい、「ダメ出し」をした方が、成長をすると思いがちですが、じつは「ダメ出し」ばかりが続くと、気持ちが後ろ向きになり、やる気を削いで「成長」どころではなくなってしまうのです。
 それに対して、ポジティブなフィードバックをした場合は、気持ちが前向きになり、次第に「やる気」が高まるのです。


■3.人に何かしてあげたときの幸福感は長続きする
 米国・マサチューセッツ大学のシュワルツ博士らは、「人はどんなときに幸せを感じるか」という調査を行い、同じような結果を導いています。
 2016人の人たちに協力をしてもらい、どんなときに幸せを感じるかを調査しました。
「人に何かをしてもらったとき」と「人に何かをしてあげたとき」、このどちらもが幸せを感じるという結果が出たのです。
 ところが、「人に何かをしてもらったとき」の幸福感は、プレッシャーやストレスに簡単に打ち消されてしまうことがわかりました。
 一方、「人に何かをしてあげたとき」の幸福感はたとえプレッシャーやストレスを感じることがあってもなくならないのです。
 つまり、人に何かをしてあげること、人の幸せを思いやることというのは、自分の幸福感を長続きさせる効果があることがわかってきました。


■「Awe体験」は脳を活性化させる
大自然や大宇宙の悠久さや広大さを前に、自分の存在の小ささを感じる体験を、脳科学ではAwe(オウ)体験といいます。
 このAwe体験をしているとき、その人の脳はとても活性化していることが多くの研究から明らかになってきています。
 カナダ・トロント大学のステラー博士らの研究では、「Awe体験は自分を最小化し、それが謙虚になることに 繫がる」という仮説を立て、それを延べ977人の被験者の協力のもとに検証しています。
 その結果、被験者が「Awe体験によって世界が違って見えた」「Awe体験によって生かされている感じがした」と答えるなど、Awe体験をすると自分の自我(エゴ)を少なくし、謙虚な気持ちを起こすことがわかりました。


■5.より高い人生の目的を持つ人は脳細胞が破壊されにくい
 米国・ラッシュ大学のボイル博士らは、「人生の目的」と認知症との関連についての研究結果を残しています。ボイル博士らは、1400人以上の高齢者の方に同意を得て、研究を始めました。(中略)
 その結果、より大きな社会的な意義のある「人生の目的」を持っている人は、そうでない人に比べて2.5倍以上もアルツハイマー型の認知症になりにくいことがわかってきました。そしてたとえ認知症にかかってしまったとして、脳機能の衰えが2倍も少ないのです。生前に同意をもらえた人には、亡くなった後、脳の検死をさせてもらい、認知症等がないかを調べると、「より高い人生の目的」を持っている人は脳細胞が破壊されにくいことがわかりました。


【感想】

冒頭で触れたように、徹底したエビデンスベースの作品でした。

さすが「255の論文から導いた」だけのことはある、と言いますか、ハイパーリンクこそないものの、巻末にはその参考論文(全部英文ですが)が、びっしり掲載されています。

とにかく、何か述べるにしても、すべて実験なり研究の内容が徹底して付されている次第。

この辺は、メンタリストDaigoさんや、鈴木祐さんの一連の作品がお好みの方なら、ツボだと思います。


◆ただし、その実験内容や、どの大学の誰が研究したか、等々まで引用するとかなりボリューミーになってしまうので、上記ポイントでは一部割愛しました。

たとえば、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目の研究は、米・ノックス大学のカイザー博士らが118〜251人の被験者を対象に行ったものです。

ここのお話は、要は「お金を第一」に考えた人たちは、どちらにしても幸福感が下がっていき、「心の豊かさを第一」に考えた人たちは結果に関わらず、幸福感は上がっていった、ということ。

ちなみにそれに関連して、著者の岩崎さんがご自身の研修で実際に接した企業でも、従業員の幸せや地域貢献の目標を掲げた方が、仕事のやりがいなどの幸福感が高まり、それに伴って、会社の業績が伸びたのだそうです。

そしてこの「心の豊かさ」を第一に考えるというのは、本書で言う「脳磨き」全般の基本的な考え方、とのことなので、その旨ご留意ください。


◆また、1つ飛んだ第3章から抜き出したのが、上記ポイントの2番目にあるフィードバックのお話。

「ポジティブなフィードバックが大事」という指摘は、自分がムスコの勉強を見ていても、非常に納得できるところです。

さらに上記では割愛しましたが、実験ではタスクを始めてすぐに「ポジティブなフィードバック」をたくさんすると、その効果は、後にフィードバックがなくなっても継続しやすいのだとか。

一方第5章では、「利他の心」がテーマになります。

たとえば上記ポイントの3番目にあるように、「人に何かをしてもらったとき」よりも、「人に何かをしてあげたとき」の方が幸せを感じる、という結果が有意に出ていると、信じざるを得ず。

ちなみに「利己的な人と利他的な人とでは最初は同額の年収であっても、 時間経過とともに、利他的な人の方が年収の増加率が高くなっていく」という研究結果も出ているそうですから、ぜひ「利他の心」を意識してみてください。


◆なお上記ポイントの4番目は、第7章の「大自然で感じる『Awe(オウ)体験』で脳はどうなるのか?」からのもの。

「アハ体験」なら聞いたことがありましたが、「Awe(オウ)体験」というのは、本書で初めて知りました。

ただ、体験するために必要な「大自然」など、普通は身の回りにありません。

これに関して、オランダ・アムステルダム大学のフォンエルク博士らは、 大自然の広大さ・美しさが感じられる動画を見ることでも、軽微なAwe体験ができる、と主張しています。

そして本書で紹介されていたのが、こちらの米・ヨセミテ国立公園の動画。



確かにこの風景を実際に見たら、もっと大きな「Awe(オウ)体験」が得られそうですね。


◆最後の第8章では、本書で提案されてきた「脳磨き」の実践法等について指南されています。

たとえば上記ポイントの5番目の「人生の目的を持つ」こともその1つ。

この研究ではさらに「人生の大きな目的」を持っている人は、「鬱にかかりにくい」「交友関係のネットワークが大きい」「他の病気を併発しにくい」「身体機能がより良く保たれている」「寿命が長くなる傾向が見られる」等々の傾向があったのだそうです。

なお、そう簡単に「人生の目的」なんて見つからない、という方は、この第8章で岩崎さんがいかに「人生の目的」にたどり着けたかを読むと、きっと参考になるハズ。

私自身、今からでも「人生の目的」を意識することで、より良い未来を目指したいと思います。


エビデンスベースで「幸せ」になりたいなら読むべし!

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科学的に幸せになれる脳磨き
第1章 科学的に幸せになれる「脳の使い方」・幸せになれない「脳の使い方」
第2章 脳の回路にポジティブな変化をもたらす「感謝」
第3章 「前向きな気持ちが人生を変える」を脳科学的に裏づける
第4章 島皮質を鍛える「良き人間関係」
第5章 人のためという「利他の心」は脳の機能をもっとも高める
第6章 身体と心を鍛え、脳を成長させるマインドフルネス
第7章 大自然で感じる「Awe(オウ)体験」で脳はどうなるのか?
第8章 「脳磨き」でより良い未来を作る


【関連記事】

そろそろ『利他学』について一言いっとくか(2013年06月06日)

【科学的自己啓発?】『「幸せ」をつかむ戦略』富永朋信,ダン・アリエリー(2020年02月27日)

【科学的自己啓発書】『実践 幸福学: 科学はいかに「幸せ」を証明するか』友原章典(2020年01月12日)

【幸福とは?】『実践・脳を活かす幸福学 無意識の力を伸ばす8つの講義』前野隆司(2018年06月25日)

【科学的自己啓発書】『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』吉田尚記,‎石川善樹(2018年02月21日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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