2020年10月15日
【天才?】『天才になる方法 本当に「頭がいい」とはどういうことだろう?』角田陽一郎
天才になる方法 本当に「頭がいい」とはどういうことだろう?
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも大人気だった1冊。身近に「天才」を見てきた、元TBSプロデューサーである角田陽一郎さんが、ご自身の考えを展開されています。
アマゾンの内容紹介から。
「自分には才能がない」「特別なものは何も持っていない」――
丸くもない星にもなれない僕らはどうすればいい?元TBSで人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサーによる、自分の足で立ち上がり、生きるための考え方
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Genius / Choubistar
【ポイント】
■1.知的探求心を鍛える自分で知ろうとする知的探究心って、僕は鍛えれば伸びると思っています。
つまり、わかりやすいモノが増えることは、知的探究心の鍛錬度が下がるモノが増えていくことであって、結果、どんどん噛みごたえがない作品ばかりがヒットしていく。
その流れに、僕は歯向かいたいと思っているのです。
「『わかりやすい』から『おもしろい』」から「『むずかしい』けど『おもしろい』」へ。
どんどんわかりやすいモノが増えているわけだから、少しくらい逆ベクトルの作品があったっていいと思っています。
そして、そういう志がある人やモノが、なんとかそれでも食っていけるような世界にしないと、すべてが流動食になってしまう……。
そして、いつの間にか、歯自体がボロボロになって使い物にならなくなって、流動食しか食べられなくなるのです。
■2.相手の気持ちをどうおもしろくするかを考える
プロデューサーを長年やっていて思うのは、おもしろいことを言うのはとても難しいということです。だいたいスベっている人は、その能力がないのにおもしろいことを言おうとして失敗しています。僕はあるとき、それに気づきました。
だから、自分は一生懸命しゃべることだけ心がけています。
そして、一生懸命しゃべっていると、時たま相手の共感を得ることがあります。
さらに思うのは、おもしろいこととお金をつなげるのも、とても難しいということ。
そのおもしろいことを、お金を出す側もやりたいと想う必要があるけど、ダメな人は自分がどうおもしろいかしか伝えず、相手の気持ちを考えずにプレゼンする。
したがって、相手の気持ちをどうおもしろくするかを考えることが大事です。
■3.なんでも勉強する
自分が好きなことや興味があること以外も勉強することが大事なのです。
日常生活で勉強していると、そこから渦ができて、ほかのことも自分の脳内に巻き込んでいくことができます。(中略)
その人が拳法の達人なら、「考えるな、感じろ」でいいけど、そうじゃないなら「考えて、感じて」だったり「感じて、考えて」だと思う。
その人が天才なら、「書を捨てよ町へ出よう」でいいけど、天才じゃないなら「書を読んで町へ出よう」と僕は考えます。
それでもなんか最近退屈なモノが多いのは、そのモノの供給者が知っていることとわかりやすいことばかり目指すからではないでしょうか。
しかも、それが「儲かるから」とか、「人気だから」という理由で。
「知らなくても、むずかしいことでも、おもしろい」という世界にならないと、このままだと退屈なモノと人ばかりになって、つまらない世界になってしまいます。
■4.他者を気にせず自分のやりたいようにやる
若いときは年上の人に「わかっていない」と言われてバカにされ、歳を取ると若者に時代遅れとバカにされ、有名だと有名税だとバカにされ、無名だと無価値だとバカにされる。
つまり、どんな年齢でも立場でも人はだいたいバカにされるものです。
楽しく生きるには「そんなバカにする他人をどう気にしないで生きるか」を自分で見出すしかありません。
人は多かれ少なかれ、他者とかかわらないと生きられないわけだから、他者にバカにされることは、ある意味、生きることと同義でもあります。
ならば他者を気にせず自分のやりたいようにやるしかないし、やったほうがいい。
その際に大切なことは、バカにする人に近寄らず、自分こそ他者をバカにしないことだと思います。
■5.この4つで物事が変わる
結局、我慢と本気と努力と技術。これらがある人だけが手に入れられる高みが確実にあるのです。これらがなくても本当の天才になれるかもしれないけれど、僕ら凡人はその4つが欠けているから凡人なんだと思うのです。
僕は少なくともこの4つができる人を素直に尊敬したいと思っています。
この4つの重要性を理解していない人に「あなたはこの4つをわかっていない」と伝える行為って、プロデューサーという職分では、タレントさんに対して、スタッフに対して、言い聞かせなきゃいけないシチュエーションが結構あるのですが、本当にやりたくない行為です。
なぜなら、相手に「あなたはわかっていない」と伝えても、相手が「わかっていない」ことを理解していないから、どんなに丁寧に言ってもその真意が伝わらないから。
「もっとこうすれば、あなたは天才になれるのになあ!」
そう歯がゆく感じることが多々あるのです。
【感想】
◆タイトルにある「天才」、さらにサブタイトルの「頭がいい」というフレーズから、本書のテーマが、俗に言う「学業優秀」の話だと思われた方もいらしたかもしれません。実際、著者の角田さんは東大の文学部卒業ですし、その角田さんの高校時代のお話や、今、角田さんが在籍している東大の大学院で接する若者たちの話に関しては、いわゆる「頭がいい」という意味での「天才」の文脈に沿うものと言えるかも。
ただし、本書でいう「天才」は、「学業」よりむしろ「仕事ができる」や「(クリエイティブな)才能がある」だったりするので、広義の意味での「勉強本」を期待されると、少々困ります。
……さすがに上記で抜き出したポイントを読めばお分かりだと思いますが。
つまり本書は、「天才になる方法」を説くのではなく、「天才になれない私たちがいかに生きるべきか」を指南してくれるワケです。
◆たとえば上記ポイントの1番目にある「知的探求心を鍛える」。
世間的な傾向として「わかりやすいモノ」が増えることに警鐘を鳴らし、「『むずかしい』けど『おもしろい』」が支持されることを、角田さんは望んでらっしゃいます。
角田さんは作り手側ですけど、受け手側の私たちが、「むずかしい」ものを受け入れなかったら、それはテレビであれば視聴率、本やそのほかのコンテンツであれば売上高で否定されてしまうでしょう。
確かにウチのムスコを見ていても、確かにちょっとむずかしいものに対して、立ち止まって深く考える、という習慣は希薄な気が(我が家の教育の問題かもしれませんが)。
また、上記ポイントの2番目も、天才になれない私たちが意識すべきこと。
「おもしろいことを言う」才能は、タレントではない私たちには直接必要ではないですが、仕事をする上で「相手の気持ちを考える」ことは当然重要だと思います。
◆一方、上記ポイントの3番目のお話は、ポイントの1番目にも通じること。
ただし「儲かるから」や「人気だから」という部分は、供給者側のお話です。
実は角田さんは本書を通じて、こうした「資本主義的」な傾向とは距離を置かれていて、ここで下手に触れると誤解を招きそうなのですが、「オンラインサロンが苦手」なのだとか(詳細は本書を)。
同様に「バズること」や「映えること」をもてはやす風潮もバッサリ斬ってらっしゃるのですが、SNS全盛の現代で、こうした流れに抗うのは、なかなか難しいような気もします。
それでも角田さんは、上記ポイントの4番目にあるように「他者を気にしない」ことを推奨。
個人的には、こうした「バカにする」という行為は、いわゆる「マウンティング」であり、そうすることによって自己顕示欲を満たしているのだと思っています。
ゴッホも「天才」でしたが、世間的に認められたのは死後ですし、本来やりたいことがあれば「自分のやりたいように」やるべきなんでしょうね。
◆なお本書は「天才になるための本ではない」と上記で申し上げましたが、天才との「差」に触れているのが、上記ポイントの5番目。
私たちはどうしても「技術」に目を奪われがちですが、「我慢と本気と努力」の3つもないと、「天才」の領域には迫れないんですね。
タレントさんだと、売れる、売れないといった、外的要因にも左右される(それも実力かもしれませんが)のでアレですが、サッカー界では、「技術」があっても大成しなかった「天才」は、それこそ掃いて捨てるほどいます。
それを考えると、「天才」ほど「技術」がないのであれば、「我慢と本気と努力」で埋め合わせなければいけないのは当然のことかと。
……手っ取り早く「天才」になりたい、という方には、本書はオススメできませんが、色々と考えさせられるお話が多く、勉強になりました。
自分らしく高みを目指すために読むべし!
天才になる方法 本当に「頭がいい」とはどういうことだろう?
第1章 天才と凡人のあいだ
第2章 天才は、お熱いのがお好き
第3章 ニセ天才んは気をつけろ
第4章 天才をぶっとばせ
第5章 凡人の逆襲
第6章 天才へ続く道
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【編集後記】
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参考記事:【健康】『腸内細菌の逆襲 お腹のガスが健康寿命を決める』江田証(2020年09月16日)
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