2020年09月16日
【健康】『腸内細菌の逆襲 お腹のガスが健康寿命を決める』江田証
腸内細菌の逆襲 お腹のガスが健康寿命を決める (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、いよいよ明日で終了となる「電本フェス 本祭」の中から、昨日健康診断を受けたばかりの私が読んでみた1冊。今まで多少なりとも知っていたツモリの「腸内細菌」について、「目からウロコ」のお話が立て続けに収録されており、思わずハイライトを引きまくりました。
アマゾンの内容紹介から。
腸内細菌はこれまで私たちの健康の味方と考えられてきた。しかし最新の研究で、現代人の食生活の乱れ、ストレス、抗生物質の乱用などによって腸内細菌が異常に増え、お腹の張り、ガス、下痢や便秘を招く小腸内細菌増殖症=SIBO【シーボ】の原因となることがわかってきた。現在、1700万人もの日本人がSIBOによるお腹の不調に悩まされている。慢性的な疲れ、だるさ、集中力の低下、がん、動脈硬化、心不全、肝不全といったあらゆる症状や病気につながるSIBOを防ぐための食事と生活習慣を、腸のスペシャリストがくわしく解説。
まだ中古がほとんど値下がりしていないため、このKindle版が400円弱、お買い得となります!
Wallaby Yogurt / snowpea&bokchoi
【ポイント】
■1.腸内細菌で糖尿病になるかどうか予見できる興味深い研究があります。『Nature』という一流の科学誌に2013年に発表された論文です。
糖尿病を発症する前、すなわち血糖値が上がってくる前の段階にある人の便を保存しておき、5年後に糖尿病になった人とそうでない人の腸内細菌を比べたというものです。
すると、糖尿病になる人には糖尿病を発症する5年前に、すでに「ある細菌」が増えていることがわかりました。(中略)
そして、その腸内細菌は、なんと「乳酸菌」だったのです。ある特定の種の乳酸菌を腸内に持っている人は糖尿病になりやすかったのです。つまり、代謝が悪くなり、血糖が上がりやすくなる腸内細菌が存在するということです。しかもこのことは、日本人でも中国人でもイギリス人でも同様の結果で、民族差はないことがわかっています。(中略)
一般的に体に良いとされている乳酸菌の仲間が糖尿病患者の腸の中で増えているということは興味深いものですが、腸内細菌の知識は「常識はずれ」で意外なことが多いのです。
■2.胃酸を抑える薬が逆効果に
日本人に増えている逆流性食道炎。脂っこいものを食べた後に胸がチリチリと焼けたり、むかむかしたり、吐き気がするやっかいな病気です。従来から、胃酸が多いために、胃から食道に胃酸が逆流して起こると考えられています。
日本人の胃酸分泌能は、20年前と比べると、約2倍に増えているという調査結果があります。実際、日本全国の消化器内科医で、胃酸を抑える薬が山ほど処方されています。(中略)
しかし、薬では症状がまったく良くならない患者さんがいるばかりか、「胃酸を抑える薬を飲むと、かえって症状が悪化する」患者さんもいるのです。なぜでしょうか?(中略)
小腸で過剰に細菌が増えてしまうSIBOになると、小腸で過剰なガスが発生します。すると、消化管は1本の管で連続していますから、 小腸でできたガスは十二指腸から胃へと逆流 していきます。胃の中は過剰なガスで圧迫されてしまいます。そして、ガスといっしょに胃酸は食道に逆流していくというわけです。
つまり、小腸でできるガスが増えすぎると、胸焼けが生じるというわけです。
本来、胃酸には、小腸の中で細菌が増えすぎないように調節する大切な働きがあるのです。
胃酸が雑菌を殺し、小腸の中の菌量を減らしてくれています。しかし、人によっては、胃酸を抑える薬を飲んでいると胃酸が不足してしまい、雑菌を殺すことができなくなってしまうのです。
■3.空腹の時間に腸は掃除される
細菌異常増殖を防ぐもうひとつの重要な仕組みは、小腸に特有の浄化行動、すなわち「蠕動運動」です。小腸は、食べ物の残りカスや細菌を大腸へ押し流す強いさざ波のような運動をしているのです。
食事をしていないとき、この 蠕動は90分ごとに発生するようになっています。この小腸のリズミカルな蠕動運動のことを「MMC(伝播性消化管収縮運動:Migrating Motor Complex)」と呼びます。
体が食べ物を消化して栄養分を吸収する食事中だけは、動きが停止するようにできています。つまり、間食してしまうと、せっかくの腸のお掃除運動である蠕動運動が止まってしまいます。空腹の時間を作ることが、小腸の蠕動運動を強くし、腸を浄化するのには必要なのです。
■4.細菌においしいエサを与えるな
食事療法の重要な戦略は、細菌が喜んで食べるような食べ物を避けることにあります。
このためには総じて小腸で消化・吸収されにくい糖を排除することになります(ただし、消化管の最初の60センチメートルほどですぐに吸収される通常のグルコースは除く)。なぜなら、細菌にとって最も重要な栄養素が糖なのです。
小腸でなかなか吸収されない糖質を含んだ食事をとると、この糖は人体に吸収されず小腸の中で浮遊し、細菌のエサとなり、しかも細菌はこの糖を急激に発酵させ、ガスを発生させるのです。(中略)
そのため、SIBOの患者にすすめられるのは、低炭水化物の食事療法です。
具体的には、パンやパスタなどの小麦製品、豆類、牛乳をはじめとする乳製品に含まれる二糖のラクトース(乳糖)、腸から吸収しづらい果糖、人口甘味料を含むポリオールなどの糖質を避ける食事です。
これらの、小腸でほとんど吸収されないために、細菌のエサとなって急激な発酵を起こす糖質を総称して、「FODMAP」と呼びます。
■5.ビフィズス菌が多い人ほど便秘になっている
もともとビフィズス菌とは小児の下痢症に対して処方されるものでした。つまりビフィズス菌とは、便の中の水分を吸収して便を硬くする作用を持つ細菌なのです。(中略)
では、なぜビフィズス菌入りのヨーグルトを食べて便秘が改善する人がいるのでしょうか? それは、ヨーグルトの中に入っている乳糖(ラクトース)のせいなのです。
日本人の約75%は乳糖不耐症で、乳糖を分解するラクターゼを持っていません。したがって、乳糖不耐症の人がヨーグルトを食べれば、ヨーグルトの中に含まれる乳糖を分解できないため、下痢になるのです。(中略)
ヨーグルトを食べて下痢するのはいわば副作用なのですが、頑固な便秘の人で、副作用がマイルドに出る人にとっては、便秘に対する「治療効果」として感じられます。
これが、ビフィズス菌入りのヨーグルトで便秘が治る仕組みなのです。
【感想】
◆本書のテーマであり、冒頭の内容紹介でも触れられている「SIBO(小腸内細菌増殖症)」。今まで当ブログで触れていなかったかとググってみたら、この本の目次にありました。
高城式健康術55〜医師が教えてくれない家庭の医学〜 (光文社新書)
参考記事:【超健康?】『高城式健康術55 医師が教えてくれない家庭の医学』高城 剛(2020年06月22日)
「あれ? 第4章の章題なのにレビューで触れてないぞ?」と思って今確認したところ、この本、章がなくて、単に小見出しの4番目がSIBOだった次第。
……もうちょっとあとの方の小見出しだったら、完全にスルーしていましたよ。
とはいえ、私が読んだ限りでは、ほとんどの健康本で重要視されていないか、まったく取り上げられていなかった問題なのですが、これが結構根が深そうでして。
◆たとえば、上記ポイントの1番目にあるように、ある種の乳酸菌は、糖尿病の原因となっているとのこと。
乳酸菌なんて、「取れば取るほど健康にいい」と思われている腸内細菌じゃないですか。
「乳酸菌配合」をウリにしている商品も多々ありますけど、そういうリスクも考慮しておかなくてはいけないな、と。
また、上記ポイントの5番目では、「便秘に効く」と思って、ビフィズス菌目当てでヨーグルトを食べても、実は意味がないことを指摘。
お恥ずかしい話、ウチのムスメは便秘がひどくて、その改善を目的として毎日ヨーグルト食べてるのですが、「ブレーキを踏みながらアクセルも踏んでいる」ようなものです。
この場合「副作用がマイルドに出ない」人だと、逆に下痢になるのでしょうから、身体的には無理な負担がかかっていると思われ。
というか、我が家に限らず、便秘改善を目的としてヨーグルトを食べている人は、かなり多いのではないでしょうか?
◆また、上記ポイントの2番目にあるように、胸やけに対して「胃酸を抑える薬」を飲んでも効かない場合、SIBOである可能性が考えられます。
つまり、小腸で細菌が増えすぎて過剰なガスが発生したことにより、ガスと一緒に胃酸が「十二指腸⇒胃⇒食道」まで到達するのですが、胃薬によって胃酸が抑えられると、さらに細菌が最近が増えてしまうという悪循環。
私も結構胸やけしやすい方なので、胃薬を飲むことが多いのですが、SIBOであるかもしれません。
くわえて、本来小腸は、過剰なガスが発生するようにできていませんから、ガスの発生によって「膨らんで縮んで」を繰り返すと、風船の皮が薄くなるように小腸が傷つくのだそうです。
胸やけしやすい人や、ゲップの多い人は、本書のこの部分をぜひチェックしていただきたく。
◆そこで本書の最終章では、こうした腸内状況を改善させる「低FODMAP食」なるものが解説されています。
手っ取り早くググったものを。
「腸の健康」を保つための新しい食生活!『低FODMAP』な食生活とは?|太陽化学コラム | 食と健康Lab | 太陽化学株式会社
ここにあるように、FODMAPとは
F(Fermentable):発酵性の頭文字を取ったものになります。
O(Oligosaccharides):オリゴ糖
D(Disaccharides):二糖類
M (Monosaccharides):単糖類
P (Polyols):ポリオール(多価アルコール、糖アルコール)
上記ポイントの5番目にあるように、小麦製品や乳製品を減らせ、というのはまぁ分かるのですが、豆類を制限されたのは初めてかも。
また、ダイエット本では避けるように言われていた人工甘味料も、「人間にはゼロカロリーでも、細菌には高カロリー」だそうで、これも避けねばなりません。
◆実はこの「人間にはゼロカロリーでも、細菌には高カロリー」という意味では「食物繊維」も同様です。
上記では触れていませんが、食物繊維を多く含む食事は、SIBOで悩む患者にとっては逆効果だったとのこと。
そして、何回も分けて食事をとる方法も、上記ポイントの3番目にあるように、 「小腸の蠕動運動を強くし、腸を浄化する」妨げになるのだそうです。
ここまであれこれ指摘されると、自分がSIBOの患者に該当するか否か気になるのではないでしょうか?
本書によると、SIBOの有無は、呼気検査で苦痛がないそうなので、かくいう私も、機会があれば受けてみたいな、と。
お腹の具合がすぐれない方なら、要チェックな1冊!
腸内細菌の逆襲 お腹のガスが健康寿命を決める (幻冬舎新書)
第1章 腸内細菌に操られるヒト
第2章 腸のガスから万病が始まる
第3章 医者もわかってくれないお腹のトラブル
第4章 小腸を襲うSIBOという難病
第5章 長年苦しんだ人を救う最新治療
第6章 最良最強の食事療法「低FODMAP食」
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【編集後記】
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