2020年08月10日
【傾聴】『「聞く力」こそがリーダーの武器である』國武大紀
「聞く力」こそがリーダーの武器である
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 夏のセール」の中でも、個人的に読んでみたかった1冊。前作になる『「聞く力」こそが最強の武器である』が、当ブログでも人気だった國武大紀さんの、6月に出たばかりの新作です。
アマゾンの内容紹介から。
リーダーの「聞く力」の教科書。聞くだけで、部下はみずから動き出す。組織心理学に基づく科学的に部下を伸ばす方法。
中古が定価以上のお値段となっていますから、「60%OFF」のこのKindle版が、900円以上お買い得です!
All Staff Meeting / MDGovpics
【ポイント】
■1.相手の感情を聞く傾聴では、相手の話の内容を聞くという以外に、相手の感情(気持ち) を聞くということが大切になります。特に「相手の感情を聞く」という聞き方は、相手とのラポール(信頼関係) を築く上で極めて効果的なのです。
感情を聞くには、相手の非言語メッセージ(顔の表情、声のトーン、姿勢等) に意識を向けて相手の感情に共感していきます。シンプルに、相手の感情表現に呼応してあげればOKです。
たとえば、相手が悲しそうな表情であれば悲しそうに、楽しそうであれば楽しそうな表情で聞いてあげるのです。
人間は感情の生き物ですから、話の内容だけでなく、感情までも聞いてもらえると安心安全や親近感をより強く感じます。
■2.部下が自ら動き出すための聞くべきことの7つのリスト
(1)相談依頼(部下を信頼して相談を持ちかける)
(2)主体性(部下がどうしたいか、を問いかける)
(3)自立性(自力で行動できるか、を問いかける)
(4)対応性(部下がどう対応するか、を問いかける)
(5)理解度(部下がどれくらい理解しているか、を問いかける)
(6)期限確認(部下の行動を促すため、期限をお互いに確認する)
(7)承認と安心(部下を承認し、部下に安心感を与える)
(詳細は本書を)
■3.「10分間1on1」の3つのステップ
ステップ1(ラポール構築)最初のステップはラポールの構築です。まず、お互いに「心理的に安心安全を感じられる」ことが大切です。ステップ2(傾聴:相手の感情を聞く)
人が不安を感じるのは相手がどんな人間なのかがわからないからです。そのため、お互いに自己開示をしていきます。このあと、部下が学生時代に頑張ったことについて5分程度で話してもらいますが、ここでは話の内容よりも、部下の気持ちを聞くことにフォーカスしてください。ステップ3(振り返り)
そのためには非言語メッセージ(顔の表情、声のトーン、身体の動き等) に意識を向けることがポイントです。最後の1〜2分で簡単な振り返りを行います。
その際のポイントは、聞き手である上司がアドバイスや意見をすることなく、部下の話を聞いて感じた感情を素直に伝えてあげることです。
■4.結果は褒めないで、プロセスを褒める
ビジネスにおいて大事なことは、成功確率を上げるための「正しいプロセス」を持てるかどうかです。
間違ったプロセスでは、期待した成果を得ることはできません。
成功確率の高いプロセスでなぜか結果を得られないこともあれば、反対に、成功確率が低いプロセスで運よく結果を得られたということもあります。
結果だけ褒めてしまったとしたら、効果的でないプロセスを正しいと思い込んでしまう可能性があります。
プロセス(行動) は変えられますが、結果は変えられません。
だからこそ、プロセスに着目してフィードバックする。
正しいプロセスを踏んでいたのであれば、結果にかかわらず、「〇〇さんのこれまでの行動は素晴らしかったね!」と褒めればいいのです。
■5.空気を読んでも空気に支配されない
リーダーとして、空気を読むことは必要なことです。たとえば、社員が何をどう考えているかについて理解を深めていくプロセス自体は、リーダーが独断専行に陥らないためにも大切です。
他方で、多数が誤った考えや判断をしてしまっているような場合はどうでしょう。たとえば、往々にしてよくあるのが、正しい判断を行うために必要な情報が共有されておらず、印象の範囲でしか考えることができないケースです。
このようなケースでは、皆がそう考えているからと言って、その空気に合わせた判断や行動を取れば、組織は間違った方向に進んでいってしまいます。
そんなとき、その流れを食い止められるのは、リーダーしかいません。だからこそ、リーダーには多数の空気に支配されない「勇気ある行動」が強く求められます。(中略)
リーダーの役割は、正しい答えを教えたり、自分の意見に従わせたりすることではありません。大切なことは、組織が思考停止に陥らないように、「一石を投じて、波紋を広げること」なのです。
【感想】
◆傾聴、並びにコーチングについて、色々と学びのある1冊でした。ちなみに冒頭でも触れたように、当ブログでは以前、國武さんの前作に当たる下記の作品をレビューしているのですが(こちらも今回のセール対象でお買い得です)。
「聞く力」こそが最強の武器である
参考記事:【傾聴】『「聞く力」こそが最強の武器である』國武大紀(2018年12月29日)
こちらは「傾聴」全般がテーマなので、初っ端に奥さんのお話が出てきたりする一方、本書は完全な「ビジネス仕様」です。
タイトルにあるように、「リーダー」……と言いつつ、実際には部下やアシスタントのいらっしゃる方なら、一読の価値はあると言って良いでしょう。
◆さて、まず第1章では「聞けるリーダーと聞かないリーダー」の違いについて。
今までのリーダーは「背中を見せて部下を従わせる」のに対して、これからのリーダーは「部下と対等に向き合いながら話を聞く」、つまり「聞けるリーダー」こそが求められているわけです。
そこでそのために留意することの1つが、上記ポイントの1番目にある「相手の感情を聞く」ということ。
これは実際に、國武さんが1000人を超えるJICAの労働組合のトップを務めた際に心掛けて、かつ、効果のあったTIPSなのだそうです。
また、この章の最後では、本書の内容に関連している「ティール組織」についても触れられているのですが、これがなかなかに革新的な模様。
こちらの本を、機会があれば読んでみたくなりました。
ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
◆続く第2章では、こうした「リーダーの傾聴」のための、具体的なテクニックが登場。
上記ポイントの2番目にある「7つのリスト」もその1つです。
ただ、これだけですと分かりにくいと思うので、本書に収録されている対話例のサワリを引用。
(上司)「**の仕事について相談したいのだけどいい?」(相談依頼)見事にリストの順番通りに対話が進んでいますけど、全然不自然ではないという(この調子で最後の7番目まで質問しています)。
(部下)「はい、何でしょうか?」
(上司)「この仕事、君ならどう進めたい?」(主体性)
(部下)「まずは市場ニーズの分析、次は……というイメージです」
(上司)「一人で対応できそう?」(自立性)
(部下)「一人では難しそうです」
(上司)「誰に協力してもらえばうまくいくかな?」(対応性)……
この章では他にも「部下が本音を話せるリーダーになるための3つのポイント」「時間がないリーダーのための3つのコツ」といったTIPSもありますので、あわせてご確認ください。
◆そして第3章では、いよいよ「1on1」という1対1のマネジメント手法について言及。
この手法はGoogleやYahoo!、マイクロソフト、インテル他、日本の東証一部上場企業においても普及しつつあるのだそうです。
とはいえこの「1on1」は、日本でもよくある1対1の人事面談や業務打ち合わせとはまったく異なるもの。
具体的にはこの第3章をお読みいただきたいのですが、簡単に言うと「1対1のコーチング」といったところでしょうか。
ただし、通常の1セッションが1時間程度かかると聞いては「それは無理!」となるのも致し方ないところ。
そこで登場するのが、上記ポイントの3番目にある「10分間1on1」なワケです。
これも上記ポイントではほんのサワリだけなので、詳細は本書にてご確認ください。
◆一方第4章では、コーチングの際に重要な技術である「フィードバック」についてのお話が。
そこで大事なのが、上記ポイントの4番目の「結果は褒めないで、プロセスを褒める」という態度です。
そこでもし、正しいプロセスを取ったにもかかわらず、期待した結果が得られなければ、「さらに成功確率を高めるにはどう改善したらよいか?」を問い続けることで、部下はさらに考えを深め、次への一歩を踏み出していく、とのこと。
さらに最期の第5章では、「リーダーのあるべき姿」を掘り下げています。
上記ポイントの5番目にある「空気を読んでも空気に支配されない」というのは、まさにリーダーだからこそ意識したいものかと。
ほかにも「困難に打ち勝つセルフコーチングの方法」の4つのステップは、リーダーならずとも押さえていただきたいTIPSだと思います。
部下のいる方なら必読の1冊!
「聞く力」こそがリーダーの武器である
第1章 聞けるリーダーと聞かないリーダー
第2章 リーダーのための「聞く力」の基本
第3章 部下が動き出す「1 on 1」の技術
第4章 人を育てるフィードバックの技術
第5章 リーダーが大切にすべき自分の声を聞く技術
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【これは使える!】「“聞き上手”の法則―人間関係を良くする15のコツ」澤村直樹(2010年01月23日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。街角図鑑
街角にあるさまざまなものを集めたこの作品は、意外と中古が高くて、Kindle版が800円以上お買い得。
ヒトの発達の謎を解く ──胎児期から人類の未来まで (ちくま新書)
生物としてのヒトの謎に迫る新書は、中古が定価を上回っていますから、Kindle版が600円弱お得。
清華大生が見た 最先端社会、中国のリアル
出た当時(今年2月)には、完全にノーマークだったこの作品も、中古価格が定価を超えていますから、Kindle版が1100円強、お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 夏のセール」の初回分の記事で人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。図解 仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方
疲れがとれない原因は副腎が9割 Forest2545新書
科学的な適職
参考記事:【適職?】『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』鈴木 祐(2019年12月18日)
世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす
参考記事:【スピーチ】『世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす』リップシャッツ信元夏代(2020年06月18日)
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