2020年07月28日
【健康】『最高のデスクワーク』猪俣武範
最高のデスクワーク
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった「健康系働き方本」。著者の猪俣武範さんは、「ハーバード×MBA×医学博士」というハイブリッドな肩書の持ち主ですから、そのお話にも説得力があります。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
1日の3分の1ほど費やすデスクワークを最適化することができたら仕事効率や集中力が高まり、悪いデスクワークを原因とする集中力の低下や心身の不調などの悩みが改善します。そうすることで今よりも仕事が快適になるでしょう。本書では、現役で大学病院の教授を務める猪俣氏が、生産性を高めるための頭・体・心をマネジメントする方法をお伝えしています。仕事の効率化だけでなく、最高の体調や精神力を手に入れ、ビジネスで最高のパフォーマンスを出し続けることが可能になります。
なお、中古がやや値下がりしていますが、送料を足せばKindle版の方がお買い得となります!
Young woman holding glasses sitting at laptop in office. / shixart1985
【ポイント】
■1.浅い呼吸がエネルギー不足を生む人間は、1日に2万5千回ほど呼吸をしています。1回息を吸うと、成人男子で500ミリリットルほどの空気が入ってくるので、1日で1万2500リットルくらいの空気を吸っていることになります。空気中の酸素の割合は約21%ですから、酸素量は1日2600リットルほどにもなります。私たちが1日過ごすためにはいかに大量の酸素が必要か、実感できると思います。
姿勢が悪いと、呼吸が浅くなります。特に前かがみの姿勢だと、肩がすぼまって肺が圧迫されてしまいます。呼吸が浅いと、1回の換気量が半分ほどにまで低下してしまいます。姿勢がいい人と悪い人では、大雑把な計算ですが1日1300リットルも酸素摂取量に差が出てしまいます。これは非常に大きな違いだと思いませんか?
■2.運動は脳に肥料を与える
近年において脳の神経細胞が再生することがわかってきましたが、新たな神経細胞が生まれる際には、BDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれるタンパク質が重要な役割を果たします。日本語だと漢字ばかりなのですが、BDNFは「神経栄養因子」という文字通り「神経を育てる栄養分」です。BDNFが多ければ、神経細胞はよく育つわけです。逆にBDNFが少ないとうつ症状や認知障害などが起こりやすいことから、感情や認知機能に関与していると考えられます。
「BDNFは脳の肥料」とよく言われますが、この肥料を増やす方法は、またもや「運動」なのです。それも難しいことはひとつもなく、ウォーキングなどの有酸素運動で十分。ミトコンドリアの増やし方と同じですね。実際、神経細胞が増えればその分ミトコンドリアが増えるわけだから、一石二鳥です。しかも、有酸素運動によって新しい脳神経が発生しやすくなることもわかっていますから、これはもう「歩かなければ損」ですね。
■3.デスク整理で「やる気スイッチ」をONにする
朝オフィスに到着したら数分間、最初にデスク周りを整えることを習慣にしてみましょう。仕事前に簡単な作業を行うことが、脳を刺激します。手を動かして書類や事務用品を片づける。デスク周りをきれいに掃除する。このような行動が、 側 坐 核 を刺激してドーパミンが分泌されます。ドーパミンは、モチベーションを上げてくれる神経伝達物質でしたよね。
デスク周りの整理整頓は、朝一番のウォーミングアップになります。五郎丸選手やイチロー選手のように、ルーティン動作(私たちの場合は、整理箇所や掃除の順番)を決めておくと、より集中して脳を仕事モードに切り替えることができるでしょう。ルーティン化は脳の自動運転のようなものです。決められた動作が脳の負担を軽減し、省エネで効率的に集中力を引き出し、気持ちよく1日の仕事をスタートさせましょう。
■4.色で脳を説得する
私は日常業務でもトリアージを意識して、それぞれのタスクに色のタグづけを行っています。【赤色のタグ】 一刻も早く対処が必要なタスク(1〜3日以内)仕事をする順番は、もちろん赤→黄→緑です。そして終了したタスクは黒色に戻しています。医療現場のトリアージにならって仕事の優先度を区別しているのは、自分が医者だからという単純な理由ではありません。この方法の本質は、「色分けで明示する」ことにあります。ここまで読み進んできた方はすでに気づいていると思いますが、脳に色をみせることが狙いです。
【黄色のタグ】 少し余裕をもって取り組めるタスク(1週間以内)
【緑色のタグ】 今のところ緊急性はないタスク
赤、黄、緑といえば、信号機にも使われている組み合わせです。安全か危険か、感情、本能に訴える力がある色です。自分の脳に、「もうそろそろヤバイぜ」「まだ余裕かな」「そんなの後回しにしろ」といった信号を送ることが、優先順位を決めるということです。そうすれば、脳も納得してうまく働くはずです。
■5.ドライアイは実用視力を落とす
2013年に日本の研究者たちが発表したドライアイに関する報告によると、ドライアイで実用視力が落ちた人がロスする作業量は、年間トータル約3.5日分になると試算されています。ひとりで3.5日ですから、企業レベル、国家レベルで考えると非常に大きな損失です。ドライアイは立派なプレゼンティーイズム(疾病就業)なのです。したがって、予防のためのアイケアをしっかり行うことは、作業効率を高める大きなカギになります。
ドライアイの予防策ですが、一番大事なことは時間を決めてこまめに休むことです。1時間ごとに休憩を入れましょう。これは座りすぎ対策と連動させれば一石二鳥で予防できます。休憩時には外の景色をながめたり、できるだけ遠くをみる時間をつくると目の疲労回復に効果的です。
目の乾燥を防ぐためには、パソコンモニターを気持ち伏し目になるような位置と角度に調整しましょう。まぶたを閉じ気味にした方が乾燥しにくくなるからです。また、意識的にまばたき回数を増やすと良いでしょう。エアコンが近くにある場合は、風が直接目に当たらないように座る位置などを工夫してください。
【感想】
◆タイトルや装丁からのイメージよりは、「健康ネタ」寄りの作品でした。といっても、著者の猪俣さんはお医者さんですからある意味当然のことでしょう。
まず第1章では、上記ポイントの1番目にあるように「姿勢」に注目。
別のところで、腹式呼吸についても触れられていますが、そもそもそれ以前に姿勢を良くすることが大事とのことです。
また、同じく姿勢に関して初めて知ったのが、野球のイチロー選手は、腰を痛める危険のある柔らかいソファーを避けて、いつも固いパイプ椅子等に腰かけていたのだそう。
では、なぜソファーが腰を痛めるのでしょうか? ソファーは普通の椅子よりも座面が低く、クッションが柔らかいので腰が沈みやすい。したがって、座ると膝が股関節よりも高い位置になりやすい。そうなると背中を丸めた姿勢になり、腰の付け根(腰椎5番あたり)に負担がかかって腰痛を起こしやすくなるからです。私たちも長時間ソファーに腰かけると、 こういうリスクがあると知っておきたいところです。
◆なお、上記ポイントの2番目「BDNF」は、久しぶりに目にしたワードでした(当ブログとしては5年ぶり)。
すっかり忘れてたのですが、健康維持とはまた別の次元で、脳のためにも運動はしなくてはいけませんね!(と相変わらず運動不足の私が言ってみるテストw)
特にハードな運動をしなくとも、ウォーキング程度で良いそうですから、テレワーク等でより運動不足の方はご留意を。
私は最近は、雨が降らない限りは自転車通勤しているので、これが多少は運動になっているのではないか、と思う次第。
同時に、今まで以上に日の光を浴びていますから、それによりセロトニンが生成され、「睡眠」や「集中力」等にも良い影響が生まれていることを期待しております。
◆一方上記ポイントの3番目は、第3章の「デスクワークの環境を整える」からのもの。
飛ばした第2章では、ルーティンの重要性について触れていたのですが、それをさらに机周りの整理と組み合わせたワケです。
たとえ壊滅的に汚かったとしても、「毎朝5分」と決めて、1か所ずつ片づけていけば良い、とのこと。
そしていざ、デスクで作業をする際には、机や椅子の高さとモニター位置も調節すべきでしょう。
こちらは本書のイラストからなのですが(クリックするとアマゾンのページに飛びます)。
……常時ノートブックパソコンを使っている私は、首を前に曲げており、よろしくない模様。
そういう場合は、拡張モニターを用いるか、ノーパソを目の高さにおいて、外付けのキーボードを使うと良いそうです。
◆また第4章から抜き出した、上記ポイントの4番目のTIPSは、いかにもお医者さんらしいもの。
具体的にどうやって色を付けるのかは記されていないのですが、付箋やフォルダを色分けすれば良さげです。
さらに第5章では「集中力」がテーマ。
ランチで炭水化物を取り過ぎると、眠くなりやすいそうなので、心当たりのある人は、ぜひ改善してみてください。
また盲点だったのが、上記ポイントの5番目にある「ドライ・アイ」です。
「目が疲れた」と私たちは安易に考えがちですが、それにより自律神経のバランスが悪くなり、思考力や集中力にも影響があるのだとか。
なお、本書によると、まばたきを12.4秒以上我慢できない人は「ドライ・アイ」だそうなので、ぜひご確認を。
……私も今試したら、10秒でまばたきしてしまったんですがw
◆なお、巻末には付録として「デスクでできる簡単ストレッチ」なるものを収録。
これまた本書からの画像を抜き出してみますが(やはりアマゾンのページに飛びますのでクリック不要です)。
こんな感じで椅子に座ったままで行えるものが7つ、立ったりしゃがんだりして行うものが3つの、計10個が紹介されています。
私もそうなのですが、仕事で座りっぱなしの方には、これらをぜひお試しいただきたく。
デスクワークをより充実させるために読みたい1冊!
最高のデスクワーク
第1章 高性能な体を維持するために
第2章 心をコントロールする
第3章 デスクワークの環境を整える
第4章 効率を上げるスキルを身につける
第5章 集中力を高め継続する
第6章 モチベーションを高め継続する
巻末付録 デスクでできる簡単ストレッチ
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。中学の知識でオイラーの公式がわかる (光文社新書)
あの「オイラーの公式」を、最低限の知識でも理解させようとする意欲的な作品。
中古がかなり高いため、Kindle版が900円強、お得な計算です。
ご声援ありがとうございました!
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