2020年05月22日
【論理的文章術】『理系の文章術 今日から役立つ科学ライティング入門』更科 功
理系の文章術 今日から役立つ科学ライティング入門 (ブルーバックス)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも大人気だった文章術本。著者の更科 功さんは東大卒の理学博士で、本書の内容も、東大教養学部および東大大学院総合文化研究科における講義、「科学技術ライティング論」の内容をもとにしているだけあって、理系のみならず文系の方にも役立つ内容となっています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
理系にとって「いい文章」とは何か?
読みやすさ、論理、わかりやすさ……名サイエンス作家としても知られる著者が、さまざまな視点から文章の創作について実例をまじえ考察し、具体的に指南する科学ライティングの決定版!
論文やレポート、理系に文章力が必要とされるさまざまな場面において、もっとも効率的、かつ効果的に自分の意図を伝える文章とは?
上記未読本記事の後にリリースされたKindle版は、1割引きとお買い得です!
Daily Paragraph Editing / jimmiehomeschoolmom
【ポイント】
■1.不特定多数の読者に向けた書き方不特定多数の読者に向けた文章には、それなりの書き方がある。なるべく広く使われている言葉や広く知られている物事だけを使って、文章を作っていくのだ。豊かな多様性をもつ日本語の一部しか使えないのだから、不特定多数に向けた文章は窮屈である。でも、それは仕方がない。どうしても読者のイメージを具体的に描きたいなら、たとえば、高校生とお年寄りなど、知識の量や質が大きく異なる2人を読者として考えるとよい。「ちょっと、この文章はわかりにくいかな」と思ったときに、頭の中の高校生とお年寄りに読んでもらって、チェックする。そうして、2人にとって、わかりやすい文章を書いていくのである。そうすれば、ほぼ不特定多数に向けた文章になる。
■2.文と文をきちんとつなげる
[問題2-1]次の(1)〜(3)の発言をした人の中で、彼のことが一番好きなのは誰か。また後でも説明するので、ここでは簡単に述べよう。(1)〜(3)は、それぞれ2つの文からなる文章で、接続表現だけが違っている。(1)の「ただし」は、前の文に重みがあることを示す。(2)の「しかし」は後の文に重みがあることを示す。(3)の「一方」は、前後の文が対等であることを示す。(1)彼はカッコいい。ただし、性格は悪い。
(2)彼はカッコいい。しかし、性格は悪い。
(3)彼はカッコいい。一方、性格は悪い。
カッコよければ好きになるかもしれないが、性格が悪ければ嫌いになる可能性が高い。そこで、少なくともこの3人の中で彼のことが一番好きなのは、(1)を言った人になる。
■3.主語と述語を正しく照応させる
(1)潮の満ち引きは月の重力によって起きるが、海水を月の方へ引き上げるわけではない。この文には主語が1つ(潮の満ち引きは)しかないので、素直に読むと、後半の「引き上げる」の主語は「潮の満ち引きは」ということになる。しかし、意味を考えれば「海水を月の方へ引き上げるわけではない」の主語は、明らかに「月の重力」であって「潮の満ち引き」ではない。そこで、「月の重力」を補って、以下のようにすれば、主語と述語の照応は正しくなる。(1の改善例1) 潮の満ち引きは月の重力によって起きるが、 月の重力が 海水を月の方へ引き上げるわけではない。もう少しだけ、考えてみよう。たしかに、主語と述語の照応は正しくなったけれど、この文には「月の重力」が続けて2回出てくるので、やや読みにくい。何とかならないだろうか。
こういう場合は、後半の主語を変えてみるのも1つの方法である。たとえば、後半の文の目的語である「海水」を主語に変えると、以下のようになる。(1の改善例2) 潮の満ち引きは月の重力によって起きるが、海水が月の方へ引き上げられるわけではない。
■4.キーセンテンスをパラグラフの最初に置く2つの理由
キーセンテンスをパラグラフの最初に置く理由は2つある。1つは、文章を理解しやすくするためだ。
推理小説を読むときに、前もって犯人が誰かわかっていたら面白くない。面白くはないけれど、細かいところまで理解しやすくなる。犯罪にいたる伏線や犯人のちょっとした言葉など、つい読み流してしまいそうなところに注意しながら、読むことができるからだ。
パラグラフ・ライティングは、最初のページに犯人が誰か書いてある推理小説のようなものだ。最初に読者の頭の中に、目的地や全体の地図を作ってもらえば、スタートからゴールまで、きちんと理解しながら、迷わずに歩くことができる。そのために、キーセンテンスをパラグラフの最初に置くのである。
キーセンテンスをパラグラフの最初に置く理由の2つ目は、飛ばし読みができるようにするためだ。
たとえば、最初のパラグラフのキーセンテンス「(1) 生物の進化では、 収斂進化と呼ばれる現象がしばしば起こる。」を読んで、収斂進化に興味を持ったとする。その場合は、キーセンテンスに続くサブセンテンスも読めばよい。
■5.パラグラフライティング 11のルール
01.1つのパラグラフでは、1つのトピックだけを述べる。
02.1つのパラグラフは、1つのキーセンテンスと複数のサブセンテンスから成る。
03.キーセンテンスはパラグラフの最初に置く。
04.キーセンテンスは直前のパラグラフの最後の文につなげるのではなく、直前のパラグラフのキーセンテンスにつなげる。
05.サブセンテンスは、前後のパラグラフのキーセンテンスではなく、そのパラグラフのキーセンテンスだけにつなげる。
06.1つの文章は、1つのキーパラグラフと複数のサブパラグラフから成る。
07.キーパラグラフは文章の最初に置く。
08.キーパラグラフは短くする。
09.場合によっては、キーパラグラフのキーセンテンスは、パラグラフの最初でなくてもよく、キーセンテンス自体がなくてもよい。
10.場合によっては、キーパラグラフの内容と、サブパラグラフのキーセンテンスの内容を対応させるのもよい。
11.なるべくサブセンテンスでは、文末に新しい情報(未知の情報)を置き、次の文の文頭でその情報(既知になった情報)を受ける。
(詳細は本書を)
【感想】
◆冒頭の未読本記事を書く際に本書を初めて目にしたとき、タイトルの「理系」、さらにはサブタイトルの「科学ライティング」というフレーズから、てっきりパラグラフ・ライティングがテーマの作品だと思っていました。確かに下記目次にもあるように、第4章は丸々パラグラフ・ライティングを扱っていますが、実際の本書はそれだけに収まらない文章術本だったワケでして。
とはいえ、簡単な「てにをは」レベルのお話でもないことは言うまでもなく、しいて言うなら、ベクトル的には受験の国語の解説に近いような気が。
実際本書は、上記ポイントの2番目や3番目にもあるような「問題」が多数収録されており、それらが私たちの理解を深めてくれています。
……ただしこうした問題形式の場合、引用する際には問題と解答、さらに当然解説まで載せないと分かりにくいものが多く、引用部分がボリューミーになってしまったり、そもそも長すぎて引用できなかったTIPSも結構あったのですが(涙目)。
◆さて、第1章のテーマは「読者」ということで、文章を書くには、読む相手のことを意識しなければならない、というお話が登場します。
上記ポイントの1番目はこの第1章からであり、たとえ「不特定多数の読者向け」であっても、漠然と書くよりは「大きく異なる2人」を想定する、というのはなるほど納得。
逆に設定を細かくした特定の1人(マーケ本で言うところの「ペルソナ」みたいな)をイメージして書くことには、著者の更科さんはネガティブなスタンスのようです。
また、この章で興味深かったのが、「論ぜよ」と「述べよ」の違いで、「述べよ」だったら、知っていることを書くだけでもよいものの、「論ぜよ」だと「根拠」と「結論」がないといけないとのこと(知らなんだ)。
本書では、具体的に問題に対する2つの解答を提示して解説されており、私自身恥ずかしながら理解していなかったので、非常に勉強になりました。
◆続く第2章は「論理と接続」ですから、まさにロジカルなTIPSが展開!
お約束の(?)「逆」「裏」「対偶」に関しても、分かりやすく解説されてはいるのですが、ここはやはり関係図ナシで触れるのは難しいので、避けさせていただきました。
そこで抜き出したのが上記ポイントの2番目の「接続」のお話。
これ、私は無意識に使い分けていましたが、「文の重み」という要素までは考えておりませんでした。
本書では「順接、付加」「逆説、補足、対比」「換言、例示」さらには、接続詞を使わなくてよい場合も含めて、使い分けのキモがアドバイスされていますから、ここもぜひご一読を。
◆一方第3章では「わかりやすい文章」と題して、「文の短縮法」や「能動態と受動態」「主語と述語」「読点の打ち方」といったテーマに言及。
上記ポイントの3番目では、「主語と述語」だけでなく、「能動態と受動態」のテクニックを駆使して、より分かりやすい文章に仕上げています。
もちろん改善例1でも、文章は分かりやすくなっていますが、同じ主語が繰り返し出てこない分、改善例2の方が、よりスマートかと。
ちなみにこの章に収録されている、文章量を削減する問題は「346字の文章から106文字以上削って240字以下にする」というなかなか難しいものでした。
ところが、233字となったその模範解答から「さらに33字以上短くして200字以下にする」という問題が続けて出されており、正直私はお手上げだった次第(ヘタレ)。
◆そして第4章では上記で触れたように、いよいよパラグラフ・ライティングが登場します。
当ブログでは過去何冊かご紹介していますが、上記ポイントの5番目のように、簡潔にまとめられたことは確かなかったハズ。
もちろん本書では、それぞれのルールについて細かく解説されていますから、まったくご存知ない方でもご安心を。
たとえば上記ポイントの4番目は、ルール03について触れられている中の一部になります。
……それにしても、「パラグラフ・ライティングは、最初のページに犯人が誰か書いてある推理小説のようなものだ」という表現は、身も蓋もないですけど、まさにその通りだな、とw
正しく、分かりやすい文章を書くために読むべし!
理系の文章術 今日から役立つ科学ライティング入門 (ブルーバックス)
第1章 読者
第2章 論理と接続
第3章 わかりやすい文章
第4章 パラグラフ・ライティング
第5章 科学ライティング
第6章 科学と社会の架け橋
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