2020年05月20日
【ビジネスモデル?】『業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち』斉藤 徹
業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち (光文社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気のビジネスモデル本。「大前研一先生ご推薦」ということでさっそく読んでみたところ、興味深いスタートアップがたくさん登場しており、非常に勉強になりました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「デス・バイ・アマゾン」という言葉がある。
アマゾンの業務拡大によって、業績の悪化が見込まれる企業や業界のことだ。同じような現象がさまざまな業界で起きている。タクシー業界におけるウーバー、ホテル業界におけるエアビーアンドビーなどが有名なところだ。
業界秩序や商習慣にとらわれることなく、斬新なビジネスモデルやテクノロジーを市場に持ち込み、驚くべきスピードで顧客を獲得している企業、すなわち「業界破壊企業」である。
新しい「業界破壊企業」の中から、これから世界に轟くであろう二二のイノベーティブな企業をピックアップして徹底解説する。
Kindle版も絶賛発売中です(定価と同額ですがw)!
Unicorn & Pegasus / scorpiorules58
【ポイント】
■1.先輩が後輩に学費を貸す「SoFi」「P2Pレンディング」のなかでも、SoFiが非常にユニークなのは、大学生の「教育ローン」に目を付けたこと。そして「先輩が後輩に貸す」という独自のストーリーを付加したことです。
SoFiが「借り手」として目を付けたのは「HENRYs」(High Earners, Not Rich Yet)。今はまだお金を持っていないけれど、将来的に稼ぐだろうと思われる高学歴な学生たちです。ターゲットを完全に名門大学の学生たちに絞ったのです。
これはなかなかユニークでありながら現実的な着眼点で、たとえば、国や自治体が「教育ローン」のしくみを作ろうとしても、やはり公平性の観点から「名門大学に限る」というわけにはいきません。
しかし、現実の社会では、名門大学の学生は高収入の職業につく可能性が高く、きちんと返済される可能性も高まると考えられます。
金融の原則から見れば「リスクの低い相手」「きちんとした返済が期待される相手」に対しては金利が低く設定されるはずなのですが、それがしくみ化されていなかったために「名門大学の学生も、一般の高い金利を払わなければならない」という現実に直面していました。
SoFiは、そこに目を付けたのです。
■2.動画を連動させて自宅でバイクを漕ぐ「Peloton」
Pelotonのビジネスモデルはフィットネス用のバイクを販売し、在宅でワークアウトができるというものです。
Peloton専用のバイクには大型モニターが付いていて、画面に流れる動画を見ながら、ユーザーは家庭でフィットネスを行います。(中略)
自宅にいながら、動画を見てバイクを漕ぐというのは「気軽さ」という意味で大きな魅力です。その半面、「モチベーションが持続しない」「結局、運動をしなくなってしまう」などのデメリットもあります。
その点、Pelotonでは、ユーザーが同じ動画を繰り返し見るのではなく、リアルタイムのライブでワークアウトを実施するパターンと、録画されている動画をストリーミングしながらフィットネスするという2つのパターンが用意されています。
いずれにしても、ユーザーは常にオンラインでつながっていて、「ライブ感」にこだわったつくりになっています。そのため「家にいながら、ジムのクラスに参加している」という体験ができるわけです。
■3.認定ハッカーが脆弱性を診断する「Synack」
みなさんは「ペンテスト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「ペネトレーションテスト」の略で、コンピュータやネットワーク上の弱点や問題を発見するためのテストのひとつです。具体的には、ある情報システムやネットワークに対して、あえて疑似攻撃をしかけて、どこに不備や不具合、脆弱性があるのかなどを確認するものです。
通常、こうしたペンテストにおいては、セキュリティ会社の担当者がクライアント(企業や政府など)のシステムに対して行い、その結果をレポートするという形になります。
しかし、Synackでは、その疑似攻撃を外部にいる約1500人のホワイトハッカーに行わせるのです。そして、何かしらの問題を見つけた場合は、その重大性や発見の早さに応じて報酬を払うという成果方式を採用しています。
ハッカーの攻撃に対処するのであれば、実際にハッカーにテストしてもらうのが一番という「餅は餅屋」的発想がユニークなところです。
■4.共感を集めるためにも「サスティナブル」が欠かせない
Apeel Sciencesの場合、「野菜や果物をコーティングすることで長持ちさせる」というテクノロジーをウリにしているわけですが、たとえば、彼らのアボカドを選択するだけで、食品ロスが減り、結果として23リットルの水を節約できたり、スマートフォン9回分の充電エネルギーの節約になると説明しています。つまり選択消費がサステナブルな活動というわけです。
Impossible Foodsにおいても同様、食肉生産のために「森林が伐採され、牧草地になることで、より炭素の放出量が増え、生物の多様性は損なわれる」ことを指摘しています。(中略)
今や、「サステナブル」は全人類が共有しているミッションであり、特に「ミレニアル世代」は厳しい目で企業や商品の選別を始めています。
大胆にサステナブルな事業への転換を打ち出し、人々の共感を得ることは、企業としての生き残りをかけた選択といえるのではないでしょうか。
■5.スタートアップバブル以降に予想される「ハッピーイノベーション」創出ステップ
(1)自分が夢中になれるスモールアイデアをひらめく
(2)計画より前に、現実に存在する課題を発見する
(3)課題を解決するための最小機能製品を作り、学習し続ける
(4)その過程で、コンテンツが磨かれ、同志の輪が自然と広がる
(5)社長は「いかに顧客の期待を上回り、再利用の意向を深めるか」に集中する
(6)一期一会。人との出会いを大切にする
(7)無理に告知しない、無理に戦略を立てない、無理に拡大しない
(8)ビジョンはあるが、自然な流れを大切に、幸せの連鎖を広げる
(詳細は本書を)
【感想】
◆私のような「ビジネスモデル好き」にとっては、非常に楽しめる作品でした。そもそもタイトルにある「業界破壊企業」。
これは「業界の常識や慣例を打ち破るような革新的企業」という意味になります。
ちなみに、アメリカNBC系のニュース専用放送局CNBCが、ユニークなアイデアで急成長を遂げているイノベーション企業の世界ランキングを毎年50社発表しているのですが、それが通称「ディスラプター50」なるもの。
「ディスラプト(disrupt)」とは「破壊する」という意味であり、本書でもこうした企業を「ディスラプター」と呼んで、20社ほど紹介しています。
それに先立ち、まず第1章では、ディスラプターが発生するベースとなる「イノベーション」の考察が。
この分野の本家である、おなじみクリステンセン教授の説に従い、本書では「破壊的イノベーション」をその源泉の違いから3つに分類しています。
その3つとは、下記目次の第2章から第4章までにあるように「プラットフォーム型」「ビジネスモデル型」「テクノロジー型」であり、以降、それぞれの型ごとにディスラプターが紹介される次第。
◆まず第2章では、「プラットフォーム型」のディスラプターが登場します。
上記ポイントの1番目の「SoFi」はこの章から抜き出したものであり、なるほど、貸し倒れの可能性が低いのにもかかわらず、高い金利を支払うというのは、理にかなっていません。
創業者の1人であるマイク・ギャニー氏いわく、
自分たちがスタンフォードにいた頃、スタンフォード大学院を出た人が35年ローンを組んでも、誰一人債務不履行に陥っていないと知って驚いた。それにもかかわらず、6.8〜7.9パーセントという高いレートで教育ローンを支払っている。それはリスクの低さに見合ったものとは思えなかった。とのこと。
さらに「SoFi」が秀逸なのは、「同門の先輩たちが、後輩たちにお金を貸す」という「物語」にしたことです。
ましてそれが名門大学ですから、OBたちの稼ぎもよく、積極的にお金を出そうというマインドの人も多いのだそう。
日本だと規制が多いので同じことは難しいのでしょうけど、ビジネスモデルとしては、非常に良くできていると思います。
◆続く第3章は「ビジネスモデル型」ということで、ユニークなものが多々。
そこで昨今のコロナ対策としても強そうな、上記ポイントの2番目の「Peloton」を選んでみました。
YouTubeに広告動画(?)があったのでご紹介。
……ガチすぎて泣きそうなんですがw
なお、このバイクのお値段は約2200ドル(約24万円)で、これに動画を見ながらの受講はサブスクモデルで、月額約39ドル(約4300円)で、どんなクラスも受け放題なのだとか。
高っか!!
ところがどっこい、全米では大ウケだそうで、その秘密(ブランド体験等)について本書では触れられていますから、気になる方はぜひご確認ください。
◆そして第4章では「テクノロジー型」のディスラプターが紹介されています。
ただ、テクノロジーと言うと、どうしても「革新的な技術」が必要となりますから、「( ´_ゝ`)フーン」とならざるを得ず。
そんな中、「目からウロコ」的だったのが、上記ポイントの3番目にある「Synack」です。
ハッカーを雇ってテストさせるだけでも、結構ワイルドですけど、さらに「重大性や発見の早さに応じて報酬を払う」なんて、まるでジャングルで狩りをするみたいじゃないですか!?
ただしその分、採用するハッカーは厳密に身元確認をしているそうで、Synackのテストに合格するのは、世界中の精鋭の中でもわずか8%なのだそうです。
おかげで、Synackのペンテストは、アメリカ国防総省やアメリカ国税庁でも導入されているそうですから、ぜひ我が国のシステムにも導入してみていただきたく(使うまでもない、という話は置いといて)。
◆さて、企業である以上、「稼ぎ」のベクトルを重視するのは当然として、昨今注目されているのが、社会的な意義です。
第5章から抜き出した、上記ポイントの4番目では、日本でもよく目にするようになったワードである「サスティナブル」が登場。
さらに最後の第6章では、今までのような「スケールアップを目指す」スタートアップとは異なる、「幸せの連鎖を生むサスティナブルな起業」、ハッピーイノベーションが紹介されています。
具体的にその創出ステップを抜き出したのが、上記ポイントの5番目。
太字でない(2)〜(5)までは、ここまでのディスラプター群と同じですが、太字部分が大きく変わったところになります。
正直、スケール的に「ユニコーン」は目指しにくいと思うものの、これからの社会にマッチしているのは、このハッピーイノベーションかもしれませんね。
ビジネスモデル好きならば、一読の価値ある1冊!
業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち (光文社新書)
第1章 イノベーションが私たちの「業界」を破壊する
第2章 プラットフォームによる業界破壊企業
第3章 ビジネスモデルによる業界破壊企業
第4章 テクノロジーによる業界破壊企業
第5章 起業は、小さく始める、かしこく学ぶ
第6章 「ハッピーイノベーション」で不穏な時代を乗り越える
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【編集後記】
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【編集後記2】
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宜しければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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