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2020年05月11日

【指導・教育】『「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには』出口治明


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「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。

APU(立命館アジア太平洋大学)学長というよりも、ライフネットの創業者として知られる出口治明さんの新作です。

アマゾンの内容紹介から。
私たちが遺すべきもの、次世代が学ぶべきこと
先がまったく読めない時代に必要な「社会を生き抜くための武器」とは何か。
日本を救う「尖った人」を増やすには、どうしたらいいか。
我々は何を、どのように後輩たちに継承するべきか。
これは、あらゆる立場の人にとって難問といっていいでしょう。
親として、教師として、上司として……この「先輩としての責任」を難なく果たせている人はそう多くありません。
大学二回生で恩師から「わかること」「教えること」の本質を提示されたときから、会社員として、ベンチャー企業の創業者として、そして大学の学長という立場から考え続け、実践してきた著者の結論とは?
「教える」「教育」を切り口にして、日本の最重要課題に切り込む。

なお、上記未読本記事の時点では単行本と同額だったKindle版が、その後1割引きとなってお買い得です!






teach / MoHDI


【ポイント】

■1.考える力を身につけるには「先人の真似」から入る
 考える力は、料理をつくる力と同じです。まずお手本となるレシピ通りにつくってみる。食べてみる。味見をして、「ちょっと塩辛いな」と思ったら、醬油や塩を減らす。味が薄いのなら、醬油や塩を足す。その繰り返しで、おいしい料理をつくる力がついていきます。
 考える力を身につけたいのなら、料理のレシピを参照するように、まず優れた先人の思考の型や思考のパターン、発想の方法などを学ぶことです。
 アリストテレスやデカルト、アダム・スミスなど、お手本となる超一流の先人の著作を読んで、彼らの思考のプロセスを追体験し、他の人と議論を重ねながら、考える癖を身につけていく。これが、考える力を鍛える最も普遍的な方法だと思います。


■2.教える相手に「伝わりやすくなる」話し方
(1)最初に結論を述べる
 結論が見えないままに、延々と話を続けたり、自分の思いを一方的に語ったりするのは、ルール違反です。話をするときは、結論から端的に話す。結論を最初に伝えると、「話が長くなる」「話が脱線する」「ポイントが絞りきれない」といった悩みが解消され、相手の理解度が高まります。
(2)エビデンスを提示する(できれば3つ以内)
 根拠は、エピソードではなく、数字・ファクト・ロジックで説明します。エピソードは個別の経験談ですから、「一般的にそうだ」「誰にでも当てはまる」と言い切れるものではありません。エピソードに対して、エビデンスは科学的、統計的に裏付けのあるものです。
(3)相手のレベルに合わせた伝え方をする
 相手の理解をうながすには、相手がどの程度その話の内容を知っているのか、どの程度興味があるのかを考えながら、相手のレベル感に合わせた話し方を工夫することが大切です。


■3.高校を「変態」コースと「偏差値コース」に分ける
 日本の大学産業は、富士山型です。東京大学や京都大学を頂点とした綺麗なピラミッド構造をつくっています。だから、各大学の個性が見えにくい。富士山を模した山が地方に点在するように、東大と、それを目指すミニ東大がたくさんあるのが今の日本です。
 僕は、大学は富士山型ではなく八ヶ岳型であるべきだと考えています。八ヶ岳に多くの峰々が連なるように、大学もいろいろな個性があってしかるべきです。
 尖った人材を生み出すには、何よりも「好きなことを自由に学べる環境」が必要です。そのためには、高校の段階で、「偏差値コース7割ぐらい」と「変態コース3割ぐらい」に分けたらどうかと僕は考えています。偏差値コースは東大を目指せばいい、変態コースはAPUが引き受けます。
「変態コース」という名称がおかしければ、「個性派コース」と呼んでもいいと思いますが、要するに、自分の好きなことを徹底的に究めるコースです。偏差値によって振り分けられた世界は、いわば金太郎飴のようにきれいな序列で並んでいるだけですから、新しいアイデアはなかなか生まれません。


■4.マニュアル作成の「4つ」のポイント
(1)最初はマネージャークラスが作成する
 マネージャーが部下に、マニュアルをつくるように命じることがあるかもしれません。(中略)
 でも部下よりも、組織の全体像、仕事の全体像を把握しているマネージャークラスが、マニュアルのたたき台をつくるほうがいいと僕は思っています。
(2)マニュアルを一本化する
 会社組織も同じです。揺るぎないマニュアルをつくり、一本化する。仕事の標準化を実現するには、異本を置かないことが重要です。
(3)言葉の定義を明確にする
 社内だけで通用する、その会社特有の言葉を不用意に使っていないかをチェックする必要もあります。新入社員が読んでも理解できるレベルのわかりやすさで記述することがポイントです。
(4)定期的にアップデートする
 定期的にマニュアルの内容を確認して、会社の実情に即したものになるよう更新します。
 マニュアルの更新は、人員に欠員が出るタイミング(異動や育児休業など) に行うと業務の効率化が実現します。


■5.「2:6:2の法則」を前提に組織をマネジメントする
(1)下位2割の底上げより、上位2割を動かす
 やる気がある上位2割に仕事をがんがん与えると、中位6割の中から、「自分たちも頑張ったほうがいいのでは」と気持ちを切り替える社員があらわれます。中位6割のうち、半分の部下から信頼を得ることができれば、全体の5割を押さえたことになるので、御の字です。
(2)相手のレベルに応じて、仕事の量を変える
 全員に100の仕事をさせることはできません。仕事が2倍できる部下には2倍の仕事を割り当て、半分しかできない社員には、半分の仕事を割り当てるようにします。形式的な平等ではなく、実質的な平等を心がけるようにしてください。
(3)適材適所を考える
 上位、中位、下位は流動的ですから、「どの部署のどの仕事をしても必ず上位に入る人」はほとんどいません。同じように、「どの部署のどの仕事をしても必ず下位に入る人」もいません。グループを固定的に考えるのではなく、向き不向き、得意不得意といった部下の適性を見抜いて、正しく人材を配置するのがリーダーの務めです。


【感想】

◆当ブログでは、過去出口さんの作品を結構ご紹介してきており、その多くがライフネット時代のものであることから、本書も「上司が部下に教える」お話が中心かと思っていました。

しかし、冒頭で触れたように出口さんの今の肩書は「APU学長」ですから、むしろ「教育問題」がメインであってしかるべき。

実際、第1章では上記ポイントの1番目のような、「自分の頭で考える力を養う」ことを推奨すると同時に、世の中で生きていくための「最低限の知識」についても言及しています。

具体的には、「社会を生き抜くための7つの武器」と題した、「国家」「政府」「選挙」「税金」「社会保障」「お金」の各基礎、並びに「『情報の真偽』を確かめる」基礎を知ること。

特に「選挙」については、こんな風に言われています。
 市民がすべきことは、忍耐を 強いられながらも、「100%満足はできないけれど、他の候補者に比べれば、多少はマシ」な政治家を選ぶことです。
 これらのことがわかっていれば、「良い候補者がいない」からといって、白票を出したり、棄権したりするといった誤った結論には至らないのです。
昨日Twitterでは「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグが盛り上がっていましたが、まさに選挙は棄権してはいけないワケですね。


◆一方、上記ポイントの2番目は、第2章からのもの。

個人的に本書にはこういうネタを期待していたので、速攻ハイライトを引きました!

ちなみにこのTIPSは、講演やセミナーのみならず、プレゼンや教壇で話す際にも使えるもの。

特に(2)の「エビデンスを3つ以内で」というのは、出口さんいわく「相手がメモを取りやすい話し方」なのだそうです。

また、この第2章で割愛したお話で、「物事を見極める方法」として「タテ・ヨコ・算数」なるものが紹介されていました。

出口さんと言えば、過去の著作では「タテ(歴史的な視点)とヨコ(グローバルな視点)」を強調されていたのが、「算数(データにもとづく視点)」が加わった次第。

この辺は、ひょっとしたら昨今のファクトフルネスブームの影響もあるのかもしれません。


◆さて、続く第3章では本書のサブタイトルにもある、「尖った人」を生み出すための高等教育についての検討が。

そこで登場するのが、上記ポイントの3番目の「変態コース」(!?)です。

そもそもAPU自体が、「学生と教員の半数が外国人」という環境ですから、そこに「個性派」がどんどん送り込まれたら、それは「尖った人」もより一層生まれてきそうなヨカン。

特に出口さん直々にリーダーを務める「出口塾」では、本気で起業やNPO設立を目指す学生を支援しており、既にそこで設立した会社もいくつかあるそうです。

……お子さんをお持ちの方は、進学先としてご検討されても良いかもしれませんね。


◆そして最後の第4章では「社会人教育」がテーマですから、仕事がらみのお話が中心に。

上記ポイントの4番目と5番目は、いずれもこの第5章から抜き出してみました。

ポイントの4番目のマニュアル作りは、現在のようにテレワークが増えて、直接指導できない場合に備えて、あらかじめ着手しておいた方が良さげです。

また、ポイントの5番目の「2:6:2の法則」は、あまり大っぴらには言えませんけど、現実問題として、そう対処せざるを得ないのかと。

なお、この第4章を除く3つの章の最後にある「特別対談」も、引用量の問題で今回は割愛しましたが、実はハイライトをかなり引いております。

出口さんの対談相手となるお三方とも、教育・研究畑の人ですから、本書のテーマである「教える」を深堀りする意味では読み応えアリ。


上に立つ者としては、一読の価値がある1冊です!

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「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには
第1章 後輩たちに「社会を生き抜く武器」を与える
 特別対談 久野信之×出口治明
第2章 根拠にもとづいて話す。選択肢を与える
 特別対談 岡ノ谷一夫×出口治明
第3章 「尖った人」を生み出すための高等教育
 特別対談 松岡亮二×出口治明
第4章 正しい「人間洞察」を前提にした社会人教育


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【教え方】『オトナ相手の教え方』関根雅泰(2016年07月27日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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現役営業マンが明かす 不動産屋のぶっちゃけ話

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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