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2020年04月22日

【寓話?】『ものの見方が変わる 座右の寓話』戸田智弘


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ものの見方が変わる 座右の寓話


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「ディスカヴァー35周年フェア」の中でも、以前から読んでみたかった1冊。

過去のセールでも人気でしたから、既にお読みの方も多いとは思いますが、今さらながら参戦してみました。

アマゾンの内容紹介から。
スピーチ、朝礼、プレゼンあるいは雑談など、人にものを伝える際「寓話」は非常に役立つツールです。イメージのしやすさ、ユーモアな表現、そして説得力の高さで話し手の主張を強固に印象づけます。
しかし、自分の主張に合う寓話を探すのは難しく、それらをうまく解釈するのも難しいもの。本書は、古今東西さまざまなジャンルの寓話を88話集め、さらにそれらを15の視点に分け解説。「実用的」に使える寓話集となっています。

中古もさすがに値崩れしていますが、今回の「実質382円」というお値段には敵いませぬ!






Asop's fables / emmeffe6


【ポイント】

■1.ナスルディンの鍵
 ナスルディンという男が自宅前の土の上で 這いつくばって探し物をしていた。友人が来て「何を探しているんだ」と尋ねた。
「カギだよ」とナスルディンは答えた。 そこで友人も膝をついて一緒にカギを探しはじめた。なかなか見つからないので、友人は「どこでカギを失くしたかを正確に言ってみろ」と聞いた。
「家の中だよ」とナスルディンは答えた。
「それなら、なぜ外を探しているんだ」
「家の中よりも、ここのほうが明るくて探しやすいからさ」
 馬鹿馬鹿しい話である。しかし、私たちはナスルディンを笑えない。たとえば、新規事業を始めようと思い、そのタネを探そうとするとき、自分たちにとって明るいところ、すなわち自分たちが知っている分野、動きやすい分野にアプローチしようとする。
 こうしたアプローチから新規事業が立ち上がる例は少ない。新規事業は、既存の論理や過去の経験が当てはまらないような領域に眠っている。これまでの常識を外れたところにあって、前例がないからこそ、新規なのである。


■2.天国と地獄の長い箸
 地獄の食堂では、みんなが一生懸命に食べようとするのだが、あまりに箸が長いのでどうしても自分の口の中に食べものが入らない。食べたいのに食べられない。おまけに、長い箸の先が隣の人を突いてしまう。食堂のいたるところでケンカが起きていた。
 極楽の食堂では、みんながおだやかな顔で食事を楽しんでいた。よく見ると、みんなが向かいの人の口へと食べものを運んでいた。
 地獄の食堂の人は「私は自分一人で生きている」と勘違いしている。一方、極楽の食堂の人は「人間は一人では生きていけない」ことを知っている。私たちは無数の他者のおかげで生きており、一人では生存できないという意味だ。ここで言うところの他者とは、家族や地域住民、同僚、同時代に生きている人々、人類が作りあげてきた技術環境や伝統、慣習、法律などのあらゆることを含んでいる。
 社会問題の多くは奪い合いから生じる。人と人、部族と部族、国と国が何らかの資源をめぐり奪い合いを起こす。資源が希少だから奪い合い、資源が満ち足りているから与え合うのか。逆だ。 奪い合うから足りなくなり、分け合えば余るのである。


■3.2人の旅人と熊
 2人の男が旅をしていた。ある大きな森の中の道を歩いていると、目の前に1頭の熊が現われた。それにいち早く気がついた1人は、友だちにかまうことなく急いで近くの大木によじ登って、身を隠した。もう一人の男は逃げ遅れてしまい、仕方なく地面に倒れて死んだふりをした。(中略)
 熊の姿が見えなくなると、木の上に隠れていた男が降りてきた。「ずいぶんしつこい熊だったねえ。熊が君の体を嗅ぎまわったときは本当にひやひやしたよ。ところで、あの熊は君の耳もとに口を近づけて、何か話をしているように見えたけど、何か言ったのかい?」
 もう1人の男は答えた。「ああ、熊の奴は確かに言ったよ。友だちが危険な目にあっているのに、その友だちを見捨てて、自分だけ逃げてしまうような薄情な人間とは、もう一緒に旅をするな、と」
 有用性や快に基づく友人はある種の道具である。自分にとって何かしら良いものが相手から得られるから付き合っているのだ。道具は代替可能なので、この関係は移ろいやすい。
 善に基づく友人は、決して道具ではなく、かけがえのない1人の人間である。この場合、自分にとって良いものが得られること以上に、相手が良くなることを願って付き合っているという点で他の2つとは異なる。「善に基づく愛」の寿命は長い。


■4.空を飛ぶ馬
 昔、ある男が王の怒りを買って死刑を宣告された。男は王に命乞いをした。
「王様、私に王様の馬をお預けください。1年の猶予をいただければ、馬に空を飛ぶことを教えましょう。1年経ってできなかったら私を死刑にしてください」(中略)
 この話を聞いた囚人の仲間は「馬が空を飛ぶはずがないだろ!」と彼をなじった。しかし、男はこう答えた。
「1年以内に王様が死ぬかもしれない。私が死ぬかもしれない。あの馬が死ぬかもしれない。1年の間に何が起こるかを誰が言い当てられる? それに、1年あれば馬が飛ぶようになるかもしれない
 命乞いをした死刑囚の言葉は間違いなく大言壮語(できそうもないことや自分の実力以上の威勢のいいことを言うこと)である。しかし、この話は大言壮語を戒める寓話ではない。逆に大言壮語をすすめる寓話だ。なぜなら、彼は大言壮語することで、少なくとも一年間は生きのびることができそうなのだから。
 絶対に不可能なことを「できます!」と言い切るのはともかくとして、できるかどうか分からないことを「できます!」と言うのは、仕事の作法として正しい。


■5.キツネとブドウ
 飢えたキツネが、ブドウ棚からブドウの房が垂れ下がっているのを見つけた。さっそく取って食べようとしたが、手が届かなかった。
 キツネはそこを立ち去りながらこう言った。
「あれはまだ熟れていない」
 実生活でキツネと同様の経験をしたとき、私たちはどうするべきか。最悪なのは「逃がした魚は大きい」と愚痴をこぼし続けることだ。愚痴とは、言っても仕方がないことを嘆くことである。
 最良なのは、失敗した原因を追究し、次に同じような事が起きたら成功できるように自己トレーニングを積むことだ。ただし、人生のすべての問題にこれは適用できない。自分ではどうしようもない問題も多々あるからだ。そういうときは「逃がした魚は 雑魚」と笑い飛ばすのが良い。異性にふられた、会社から内定をもらえなかった─こんなときはこの格言が有効である。


【感想】

◆本自体は読みやすい作品でしたが、思いのほか、こうしてレビューをするのにてこずってしまいました。

1つには、肝心の寓話自体が、ボリューム制限がある状態での「引用」という形態にそぐわないこと。

いってみればそれ自体が「起承転結」があってしかるべきものですから、ある程度の量を引用しないとワケが分からなくなってしまいます。

よほど有名な寓話(たとえば「アリとキリギリス」等)であれば、寓話部分を引用せずにタイトルだけで「はいはい、アレね!」となってくれるでしょうけど、そういう形でのレビューでいいのか否か……。

これが「要約」であれば、たとえば下記記事の中にあるような「ひばりの親子」部分の長さくらいに収まるのですが。

参考記事:トヨタの上司が部下に語る「ひばりの親子」「村祭り」の童話 | 日経クロステック(xTECH)

ちなみにこの寓話は本書にも収録されていますが、この倍以上の長さがありました。


◆もう1つは、これは著者の戸田さんの意向なのですが、通常寓話の最後に含まれていることの多い「学び」部分が、本書ではカットされています。

本書の「はじめに」から。
 多くの寓話ではお話の最後に短い教訓が添えられているが、本書では一部の例外を除いて教訓は敢えて省き、解説のところで示すようにした。お話と教訓を一体のものとして読み手や聞き手に差し出すと、どうしても押しつけがましくなると考えるからだ。
ゆえに、本書内の寓話はすべて本文部分とは別に解説部分が付されており、上記ポイントでは寓話部分を「引用内引用」という形で記しています。

その結果、話のスジが分かるよう、ただでさえ長めの引用がさらに長くなるということに(涙目)。

ただし、寓話から得られる一般的な教訓と戸田さんの見解が違う場合や、複数の考え方の可能性等もありえる場合には、先入観にとらわれない分、より自然に感じました。

もっとも、いかんせんボリュームの関係から、ご紹介しようにもできない寓話がいくつかあったのですが……。

これが「寓話部分だけ」とか、定番の寓話のタイトルだけ挙げて「解説部分だけ」とかなら、話が違ってきたかと。


◆なお、それぞれの寓話の出典については、巻末の「参考文献」に掲載されているので、有名な寓話の元がどこだったのかを知りえる、という意外なメリットもありました。

たとえば上記ポイントの1番目の「ナスルディンの鍵」は、この本からなのですが、大元は「トルコの民話」なのだとか。

4478307040
H. ミンツバーグ経営論

ポイントの2番目の「天国と地獄の長い箸」は、こちらから。

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ほとけの子―こどものための正信偈 (1983年)

ポイントの3番目の「2人の旅人と熊」と、5番目の「キツネとブドウ」は、おなじみのこちらから。

B01LWRIUAL
イソップ寓話集 (岩波文庫)

そしてポイントの4番目の「空を飛ぶ馬」は、こちらからになります。

4891010150
ユダヤ商法

こんな感じで気になる寓話をチェックしてみると、意外な発見もあるかもしれません。


◆個人的には、よく知っている寓話でも、教訓部分を勘違いしているものがいくつかありました。

また、話の筋は知っていても「何が教訓なのか」までは考えていないものもちらほらと。

ちなみに、ポイントの5番目のの「キツネとブドウ」の話は、「熟れてない」んじゃなくて、「酸っぱい」から負け惜しみを言うんじゃなかったでしたっけ?

すっぱい葡萄 - Wikipedia

ただ、ポイントの2番目の「天国と地獄の長い箸」も、箸ではなくてスプーンの話も聞いたことがありますから、この辺はさまざまなバージョンがある模様。

いずれにせよ、自ら教訓を得たり、部下や子どもに説いて聞かせるには、なかなか「使える」作品だと思います。


このお値段なら買って悔いなし!

B077N3FTTC
ものの見方が変わる 座右の寓話
第1章視点と視野と視座
第2章 幅広い認識としなやかな思考
第3章 思慮深さと正しい判断
第4章 聡明さと創造的な仕事
第5章 強い組織の精神
第6章 働く姿勢と働く意味
第7章 正義の心と共同体
第8章 科学技術と社会の関わり
第9章 人生の道理と「有り難う」
第10章 欲望との付き合い方
第11章 学びの心得と学ぶ理由
第12章 挑戦と持続可能性
第13章 自分の物語の描き方
第14章 生と死のつながり
第15章 どんなときでも「ものは考えよう」


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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参考記事:【読書術】『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』西岡壱誠(2018年06月03日)

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