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2020年04月20日

【リーダー論】『1分間君主論 差がつく実学教養(3)』ニッコロ・マキャベリ,齋藤 孝


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1分間君主論 差がつく実学教養(3) (1分間名著シリーズ)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中であるSBクリエイティブさんの「ビジネス・実用書フェア」の中でも読んでみたかった1冊。

おなじみ齋藤 孝先生が、これまた有名なマキャベリの『君主論』を"ビジネス語訳"した作品です。

アマゾンの内容紹介から。
たった1分で名著のエッセンスをマスター!最高のリーダー論をポケットに。

なお、中古は値崩れしていますが、送料を加えればKindle版に軍配が上がります!





Machiavelli / pierluigi_ruotolo


【ポイント】

■1.慕われるよりも恐れられる方が安全
 君主は恐れられる存在であるべきでしょうか、それとも慕われるほうがよいでしょうか。マキャベリの答えは明快です。
「2つのうちの1つを手放さねばならない時には、慕われるよりも恐れられていたほうがはるかに安全である」と言っています。
 さらにこう続けています。
「憎まれることを避けながら、恐れられる存在にならねばならない。(中略)恐れられることと憎まれないことは、十分に両立し得る」
 これに疑問を感じる人もいるでしょう。君主に限らず、人間は誰でも悪い評判を嫌い、人から好かれたいと思うからです。
 しかし、一方で 新渡戸稲造 が著書『武士道』で「慈悲は行き過ぎると弱さになる」と言っているように、上に立つ人間は慈悲や優しさを大切にしつつも、それに流されることは戒めるべきです。怖さや厳格さも併せ持ってこそリーダーたり得ます。
 まして、いくつもの国が乱立し、支配者がしばしば入れ替わっていたマキャベリの時代には、君主には冷酷さも不可欠でした。兵士や人民は冷酷さを警戒して服従しましたし、冷酷さを時には頼もしさと感じて尊敬もしたのです。


■2.部下に頼り過ぎず自分中心に組織を作る
 政治でもビジネスでも、好調な時にはたくさんの人が集まってきますが、不調になると、手のひらを返したように人が集まらなくなるものです。まして危機を迎えると、泥船から逃げるように人が離れていきます。
 人はそれほどに計算高く薄情であり、人心は移ろいやすいものだと、マキャベリは深く洞察していました。こう書いています。
「危険に陥った時期には、常に、自分が信頼できる人材の不足を思い知らされる」
 マキャベリは、平穏な時期には誰もが 馳せ参じ、君主のために命を投げ出すという誓いを立てるものの、それはあくまでも「平穏な時期」という条件つきにすぎないことを見抜いていました。不穏な時期になると、誓いを立てた人たちはどこかに消え去り、頼るべき人材はほとんどいなくなるのが現実なのです。
 君主は、そうならないように準備を怠るな、というのがマキャベリの忠告です。すなわち、どんな状況でも市民が君主と政権を必要とする方法を講じておけと言うのです。そうすれば、市民は状況がどう変わろうが、君主に忠実であり続けるでしょう。


■3.人民は優しく手なずけるか、さもなくば抹殺する
 マキャベリは、将来自分を脅かす恐れのある存在には断固たる態度で臨むべきだと考えていました。新しい支配地を獲得した君主の心得として、こう書いています。
「人民は優しく手なずけるか、さもなければ抹殺してしまうかだ。なぜならば、軽く傷つければ復讐してくるが、重ければそれができないから。したがって、そういう誰かを傷つける時には、思い切って復讐の恐れがないようにしなければならない」
 身も蓋もないリアリズムだと感じますが、確かに、敵に情けをかけたばかりに自らが滅ぼされる例は多いものです。
 日本で有名なのは、平清盛と源頼朝でしょう。1159年、平氏の頭領・清盛を打倒しようと、源氏の頭領・義朝が挙兵した平治の乱が起こります。これに勝った清盛は、義朝は殺しますが、息子の頼朝は十代前半だったことも考慮して、伊豆への流刑には処したものの命は奪いませんでした。
「武士の情け」だったのでしょうが、清盛没後、成人した頼朝が兵を挙げ、平家を滅ぼすわけですから、清盛にとって、敵に対する情けは、悔やみ切れない判断ミスだったといえます。


■4.加虐は一度に、恩恵は少しずつ与える
 政体を奪うために必要なら残虐行為も許されるとマキャベリは考えていましたが、残虐行為は使い方を誤ると憎まれ、いずれ倒されることになります。政権を保持するには、どう行使すればいいのでしょうか。
「加害行為はまとめて一度になされねばならない。けれども恩恵のほうは少しずつ施すことによって、なるべくゆっくりと味わうようにしなければならない」とマキャベリは書いています。
 残虐行為は一挙に実行して終わりにし、その後は恩恵を少しずつ施していけば、人々の記憶は薄れ、君主を信頼するようになります。それに対し、少しずつ残虐行為をくり返すと、君主はいつも剣を手にしていなければならず、人々も決して安心することはできないのです。
 現代のビジネスも同じです。改革には必ず痛みが伴います。じわじわ進めているうちに、反対者が勢力を得て、改革は潰されかねません。
 大きな改革は一気に断行してこそ、成果は上がるのです。


■5.側近には有能な人間を置く
 側近を見れば君主の力量がわかるとマキャベリは考えていました。
「ある支配者の頭脳を推し量る時、第一になすべきは、彼が身近に置く人間たちを見定めることだ」と書いています。
 身近に置く人間が有能で忠実なら名君とみなせるが、そうでない時は力量を疑うべきです。なぜなら、その程度の人間しか側に置かないことによって、君主は最初の誤りを犯しているといえるからです。
 経営者にとっても、自分の身近にどんな人間を置くかは会社の将来を左右する大事です。
 ゼネラル・エレクトリック(GE)の伝説のCEOジャック・ウェルチがこう言っています。
「優れたリーダーとは、自分が一番バカな人間に見えてしまうような優秀な人たちをチームメンバーとして集める勇気を持つ人たちだ」
 ある経営者も、有能だが可愛げのない部下と、可愛げはあるが能力の劣る部下のどちらを選ぶかと言えば、ためらうことなく前者を選ぶと話していました。


【感想】

◆以前から齋藤先生のこの「1分間」シリーズは、セールで何冊も目にしていましたが、実際に読んでみたのは本書が初めてでした。

その率直な感想としては、「フォーマットが齋藤先生とうまくマッチしているな」ということ。

まず、その本のキーとなる部分を的確に抜き出す作業は、齋藤先生が普段から推奨している「本の名文を抜き出す」ことに他なりません。

そしてその解説はもちろんのこと、同じような考え方や事例を他の作品から持ってくることができるのも、古典や定番本を数多く読みこなしてきた齋藤先生ならではでしょう。

上記ポイントでは、他の事例部分まで含めると長くなるので、全部は引用していませんが、ポイントの1,3,5番目では、この「関連事例」が記されているのが、お分かりになると思います。

この辺がアマゾンの内容紹介でも言われている(冒頭でも流用しましたが)、「ビジネス語訳」ということになるのではないか、と。


◆さて、肝心の内容についてですが、分かってはいたものの、相変わらず辛口なリーダー論でした。

初っ端の、第2章から抜き出した上記ポイントの1番目からして、「慕われるよりも恐れられる方が安全」と、いきなり『君主論』らしさが全開しています。

もっともこれは、選挙のある現在だと慕われた方が票につながりますから、「国家」で論じるよりも「会社」で考えた方が適切でしょう。

ただし注意すべきは、「恐れられることと憎まれないことは、十分に両立し得る」という指摘。

たとえ剛腕なリーダーシップを発揮したとしても、憎まれないようにはしないといけないワケです。

……あのジョブズも、さすがに憎まれてはいなかったような?


◆また1つ飛んで、第4章から抜き出した上記ポイントの3番目も、現代ではもちろん「抹殺」はできませんから、「ビジネス語訳」すると「会社をクビ」等でしょうか?

下手に左遷程度でおさめておくと、後でクーデターで会社を乗っ取られる……というのはありえなくもない話です。

だからといって、イエスマンだけで周りを固めてはいけない、ということがうたわれているのが、上記ポイントの5番目で、これは本書の第7章からのもの。

ジャック・ウェルチが言うように、自分よりも優秀な人材を集めることができてこその「リーダー」です。

もちろん、そこの最後で触れられている「有能だが可愛げのない部下」と「可愛げはあるが能力の劣る部下」で、前者を選ぶことができるのが優れたリーダーであることは、言うまでもありません。


◆ちなみに、1つ戻って第5章から引用した上記ポイントの4番目については、似たような話を聞いたことがあったものの、出典が『君主論』だとは、今般初めて知りました。

これは社員の給与等にも言えることで、下げる時は一気に下げて、その後徐々に上げた方が、一気に上げてから徐々に下げるよりも、たとえ総額は同じでも、もらう方は精神的にマシでしょう。

同じく、素人が憶測で言うのもアレですが、現在のコロナ対策においても、最初にドン、とロックダウンしておいてから、徐々に解除していった方が、ひょっとしたら良かったような?(本当に分かりませんが)

なお、『君主論』自体がルネサンス時代に書かれたものですから、上記でも触れたように、現代においてそのまま使えるわけではありません。

ただし、平時にはもちろんのこと、戦争時やまさに現在のような緊急時においては、世界各国のリーダーの資質が厳しく問われますから、「今だからこそ」読む意義もあるかと。


セールでお手頃価格ですから、この機会にぜひ!

B07DPCVT4Z
1分間君主論 差がつく実学教養(3) (1分間名著シリーズ)
第1章 リーダーは道徳に縛られてはならない
第2章 尊敬されるリーダー、軽蔑されるリーダー
第3章 他人に依存すれば必ず滅びる
第4章 こうすれば権力を維持できる
第5章 リーダーは二面性を使い分けよ
第6章 未来に備えることがリーダーの務めである
第7章 部下をうまく使う磐石の組織運営
第8章 有益な敵がいれば害となる味方もいる
第9章 リーダーは野望を持ち、大胆に行動すべし
第10章 運命に流されず人生の勝者となれ


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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