2020年03月23日
【知的生産術】『知的再武装 60のヒント』池上 彰,佐藤 優

知的再武装 60のヒント (文春新書 1254)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも当ブログ向きと言える知的生産術本。おなじみ池上彰さんと佐藤優さんという「知の二代巨頭」が、主に中高年以上の方に向けて「学び」を指南するという作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「知的再武装」はよりよく生き、よりよく死んでいくための、人生の必須課題です。では、「知的再武装」で、何をどう学ぶべきか。その点について、二人の勉強の達人が、秘中の策を惜しげもなく教えてくれる。時間は有限な財産であるから、そこでやってはいけないこともある。それは何なのかも明言してくれます。もちろん、稀代の読書家の二人なので、厳選した読むべき書籍も推薦してくれます。それだけなら、よくあるガイド本でしかありません。二人が提案するのは、学び直しに当たって、何を準備すればいいのか、いかにして継続させるのかです。そのための方策は細部にわたります。記憶力の上げ方や、映画・小説は当然のこととして、時代劇ですら、どうすれば勉強の対象になるかを開陳してくれます。
なお、中古がやや値下がりしてきましたから、若干でもお得なKindle版がお買い得です!

study hard! / ▓▒░ TORLEY ░▒▓
【ポイント】
■1.根っこがあるところで勝負する佐藤 まったく新しいことをやっても、入って来るものと、来ないものがある。すでに根っこがあることを伸ばしていくことはできるから、根っこがあるところで勝負する。逆に言うと、45歳までは新しいことを積極的にやったほうがいい。
自分の勉強スタイルというのは、実は45歳になるまでにはすでに確立しているし、45歳よりも早く確立していたことに気付くことでもあるわけです。あるいは、45歳で見切って何かを捨てることができるようになったり、自分のどこが強いかを対象化できる。成功している人は、だいたい強いところで勝負しているんです。(中略)
池上 私はまったく新しい言語を覚えるのはとても無理ですね。英語をもう少し勉強し直すというのはありですが、ロシア語なんて絶対に無理です。
佐藤 ある程度、年をとってから、まったく新しいジャンルの勉強をすべきかどうかは、すごく大きな問題ですね。つまり、「知的再武装」において、自分の限界を知ることと、何を諦めて、何を伸ばすかを見切ることはすごく大事になってくる。
■2.語学には終点がないから、どこまででやめるのか終わりを決めておく
佐藤 ずばり言ってしまいますと、英語のようにカリキュラムが体系としてすごく整っているものは別にして、それ以外の言語で、教養のための語学とか、観光のために使えるような語学は、時間の無駄になってしまう可能性が高いです。(中略)
池上 語学習得にはコストがかかりますから、ちょっと齧るだけなら、お金を浪費するだけで終わってしまうリスクが高い。はじめにレベルを設定しておくことが大切ですね。問題は、語学には終点がないことです。
佐藤 そうなんです。大事なのは、語学には終点がないから、どこまででやめるのか終わりを決めておくことです。たとえば最低限の踊り場は、英検の準一級ぐらい。それに相当するドイツ語でもロシア語でもいいですが、そのレベルになると踊り場から落ちることはありません。しかし、英検の二級とか大学入試ぐらいのレベルだと、ほったらかしにしておくとすぐに中学生レベルまで落ちます。
■3.短いネットニュースを信じるのは一種の信仰
佐藤 いま、私がすごく危ないと思っているのは、何十秒でわかるとかいうネットニュースです。
池上 1分でわかるとか。
佐藤 短いネットニュースを信じるのは一種の信仰ですね。30秒とか1分でわからせるコツは、相手に考えさせないということですから。ある意味で、ヒトラーの技法と一緒です。思考させないことにおいては、一種の扇動と言ってもいい。(中略)
池上 私が言うのもなんですけど、「ああ、わかりやすい」という説明は危険ですね。私もわかりやすくやってはいるんですが、いろんなところで、あまりにも「わかりやすいでしょ!」みたいな簡単でお手軽な解説が増えてきている。「ああ、わかりやすい」で納得して喜んじゃうのは、実はとても危険です。
佐藤 池上さんの場合は「わかりやすい」です。だけど、短いネットニュースは「信じやすい」なんです。それは大きな違いです。たとえば30秒でわかる動画を作ってくださいと言われたら、たぶん、池上さんは断ると思う。
■4.SNSは見るだけにして書き込まない
佐藤 60歳過ぎでLINEなどのSNSで消耗している人たちがいますよね。LINEでグループからあいつが抜けたとか、既読スルーとはどういうことなんだと、いちいち国政に対するぐらいの勢いで怒って、完全にSNSに振り回されています。(中略)
池上 どうすればいいのかと言うと、SNSなんかやらないのが一番いい(笑)。それでは解決にならない? だったら、ツイッターでも何でも、見るだけにすることが肝心です。書き込みを始めるから、泥沼にはまったり、炎上したりするんです。とくに中高年は見るだけにしておくことです。
佐藤 そうそう、SNSをめぐるゲームのプレーヤーにならないでおくことは大事ですね。
私のアドバイスは、パソコンを使うことです。LINEで連絡をもらっても、パソコン(PC)で返す。スマホのLINEで連絡するのは、「了解」とか「何時に集合」とか「分かりました」とかだけにして、込み入った話は必ずPCのメールでやる。(中略)
PCで送られたメールには2、3日返事をしなくても問題にはならない。ところがLINEで即レスをしないと、何か含むところがあるのかという反応が起きるわけです。その2つは文化体系が違っていると認識することが重要だと思います。
■5.定点観測になる話は変化に注意する
佐藤 会社の先輩とか同僚って、オハコネタを持っているものです。何度も聞くと話がちょっと違ったりするんですが、そのちょっとした違いが非常に重要になってくる。というのは、そこに心象風景の変化が表われるからです。特に話に登場する人物に対する評価が変わったりすれば、そこは重要な部分です。
池上 逆に言えば、繰り返される話を軽んじるなということですね。
佐藤 たとえば安倍政権の安定性を見るときに重要なのは、実は、いつも安倍政権側の論理を解説してくれる政治評論家たちなんです。彼らが少しでも政権に対して批判的なニュアンスを帯びたときには、この政権は危ない。これは、定点観測の手法です。同じような話をしているときは、政権が安定していると見るということです。
同じ意味で、ロシアでも、常に体制寄りのことを言うような人を何人か知っていないといけないわけです。定期的な定点観測で聞いて、少しでも批判的なことが出てきたら、その偏差を重要視しなければならない。退屈な話は聞かないのではなくて、定点観測になる話は退屈でも毎回聞くことです。
【感想】
◆池上彰さんと佐藤優さんのタッグというのは、当ブログではこちらの読書本以来でした。
僕らが毎日やっている最強の読み方;新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意
参考記事:【オススメ!】『僕らが毎日やっている最強の読み方』池上 彰,佐藤 優(2016年12月16日)
てっきり今回の作品が、お2人の久々の作品かと思いきや、上記の本の後に、「教育本」と、「ロシア本」を出されていたという。
ただしテーマ的には、今回の作品が「続編」に当たると思いますし、内容的にも当ブログ向き。
そもそもお1人ずつでもTIPSが豊富なお2人のお話ですから、ダブルでハイライトを引きまくることとなりました。
◆まず第1章では、お2人の歩みを振り返りながら「何を学ぶべきか」について言及。
逮捕をきっかけとした佐藤さんの作家転身のいきさつは有名ですが、池上さんのNHK退社の理由が、民放に出るためではなかった、というのは初めて知りました(詳細は本書を)。
いずれにせよ、今まで経験のない、新しい分野に挑戦するなら、上記ポイントの1番目にあるように「すでに根っこがあること」にすべし!
……私はもう45歳を超えてしまったので、新規の分野には歩めないようなのですが。
また、この第1章の後半では、読むべき古典の必読書が挙げられており、こちらも見逃せません。
たとえば有名すぎるこの本は、2018年12月に翻訳し直されて「はじめてリーダブルになった」(佐藤さん談)のだそうです。

聖書 聖書協会共同訳 旧約聖書続編付き 引照・注付き SIO43DC
◆続く第2章のテーマは「いかに学ぶか」。
上記ポイントの2番目では「語学」の例が挙げられていますが、なるほど必然性が低い語学は、なかなか身につかないんですね。
ちなみに本書では、この部分に続いて、佐藤さんの語学学習法が明かされているのですが、ロシア語(現状維持のため)、琉球語、チェコ語の3つを、専門の先生についてマンツーマンで習っているのだとか(スゲー)。
また個人的には、佐藤さんが「自衛隊の情報部隊の人に薦めている」という、この本が気になりました。

KGBスパイ式記憶術
何でも「受験生の暗記術としても非常にいい」そうなのですが、1年経ってもKindle化されていないので、Kindleで読むのは難しそうです。
◆一方、第3章は「いかに学び続けるか」というテーマでしたが、やや関係のない(?)上記ポイントの3番目を抜き出してみました。
実際、この手のネットニュースに脊髄反射してしまう方はちらほらいるような。
そしてこの傾向に対して佐藤さんは、「教養とは何かと言えば、適切な場面で立ち止まれること」と断言されています。
この状態が嵩じると、テレビの3分間の解説に耐えられなくなってくると思う。30秒や1分に慣れてしまうと、もはや3分間には耐えられなくなる。だから、テレビ離れということが言われたのは、難しいから離れていったわけで、その人たちはネットやYouTubeやツイッターに流れていった。火曜サスペンス劇場型のドラマがなくなってきているのは、時間に耐えられないからです。確かに最近思うのは、Twitterのトレンド欄で「話題のツイート」は、まだ公式アカウントやオーソリティが上に来ることが多いのですが、「最新」の方はもう昨日今日始めたようなアカウントのツイートでも拾ってきてしまいますから、かなり玉石混交なんですよね。
こういうツイートを見て、一喜一憂するのは、止めた方が良さげです。
◆さらに第4章でも、実はいくつかのヒントでSNSに警鐘を鳴らしており、その中の1つが上記ポイントの4番目。
「SNSをめぐるゲームのプレーヤーにならない」というのは、可能であれば実践したいところです。
ちなみに他のヒントで触れられているのですが、佐藤さんは5ちゃんに常駐するいわゆる「ネトウヨ」には、50代後半から60代の人が多いと思われており、そういう人たちが、YouTubeのヘイト動画をエンドレスで観ていたりすると指摘。
また、最後の「対話」をテーマにした第5章からは、上記ポイントの5番目の「定点観測」における目の付けどころをご紹介してみました。
「同じ話」というのは往々にして、自分の自慢話が多かったりするのですが、「人物に対する評価」の変化は要チェックということ。
なおこの章では、定年退職後の生活態度の注意点についても言及されていますから、熟年離婚を避ける意味でも、会社勤めの方は一読をされた方が良いと思います(詳細は本書を)。
中高年以降の知的生産術を学ぶために読むべし!

知的再武装 60のヒント (文春新書 1254)
第1章 何を学ぶべきか
第2章 いかに学ぶべきか
第3章 いかに学び続けるか
第4章 今の時代をいかに学ぶか
第5章 いかに対話するか
【関連記事】
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お前らもっと『情報を活かす力』の凄さを知るべき(2016年06月22日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
残業学〜明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?〜 (光文社新書)
当ブログでもレビュー済みである働き方本。
中古は値崩れしていますが、送料を合わせるとKindle版がお得です!
参考記事:【残業】『残業学〜明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?〜』中原 淳,パーソル総合研究所(2018年12月26日)
【編集後記2】
◆昨日の「新生活キャンペーン」の再追加分の記事で人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。
「貞観政要」がやさしく学べるノート――組織を「安定軌道」に乗せるにはどうすべきか?

大人の読解力を鍛える (幻冬舎新書)
参考記事:【知的生産術】『大人の読解力を鍛える』齋藤 孝(2019年10月07日)

もしアドラーが上司だったら

近すぎず、遠すぎず。 他人に振り回されない人付き合いの極意
よろしければご参考まで。

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