2020年03月16日
【トラの巻?】『いちばんやさしいビジネスモデルの教本 人気講師が教える利益を生み出す仕組みの作り方』山口高弘
いちばんやさしいビジネスモデルの教本 人気講師が教える利益を生み出す仕組みの作り方 「いちばんやさしい教本」シリーズ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「春の実用書フェア」の中でも、個人的に読みたかった1冊。今までご紹介してきたビジネスモデル本とは少々異なり、実際に起業を意識して書かれた作品でした。
アマゾンの内容紹介から。
ビジネスモデルが構築されるまでのプロセスを、事例を用いてしっかり解説。収益を生み出すカラクリがわかる実践に基づくノウハウが満載。あらゆるビジネスパーソンに必要な課題解決スキルが身につく。
まだ中古があまり値下がりしていませんから、送料を加えると、このKindle版が800円以上お得となります!
Mobile Monday Amsterdam Business Model Canvas / marcfonteijn
【ポイント】
■1.サブスクリプションはビジネスモデルではない検索サイトで「ビジネスモデル 例」と検索して出てくる情報のほとんどは、それ自体はビジネスモデルといえないものです。このことが「ビジネスモデル」をわかりづらくしています。たとえば最近よく聞く「サブスクリプション」(月額定額制)。アマゾンプライムや、Netflixなどが取り入れている収益方法ですが、このサブスクリプションモデルは、ビジネスモデルなのかといったらそうではありません。
サブスクリプションはビジネスモデルキャンバスの「収益の流れ」という1つのパーツの、たった1つの選択肢にすぎないのです。
たしかにそれは最先端の選択肢かもしれませんし、自社のビジネスモデルを設計するときにそういった収益方法があるのを知っておくことは極めて有益です。
しかし、最終的にビジネスモデルキャンバス全体で調和がとれていなければそのパーツにクローズアップすることに何も意味がないのです。
■2.よい解決策の見つけ方
「よい課題」は必然的に難易度の高いものになるので、解決方法(ソリューション)もすんなり答えが出るわけではありません。ただし、よい解決方法にたどり着く思考の手順はあります。(1)世の中に存在するソリューションの情報を収集したうえで、(2)使えそうなパーツを抽出して、(3)パーツを組み合わせることです。
世間ではアイデアというものはゼロから生まれるものだという認識がありますが、ことソリューションに関しては基本的に既存の技術やメソッドの統合でできているものです。
一例を挙げましょう。重機メーカーの小松製作所が2001年に開発した「KOMTRAX」というシステムは、建設重機の情報を遠隔で確認できるというもの。これは「建設重機」という従来のソリューションに、自動車のカーナビで使われていたGPS機能と、自動販売機で使われていた在庫管理システムという異なるソリューションを統合してつくられたシステムです。いまでこそIoTは当たり前ですが、当時は画期的でした。
■3.すべてを受託する「フルアウトソース型ビジネスモデル」
アウトソーシング(外部委託)は近年、ビジネスの常識となりつつあります。受託するサービスを広げることで競合との差別化をはかる戦略のことをフルアウトソース型ビジネスモデルといいます。(中略)
アクティブ会員数500万人超え、流通高2,700億円という巨大サービスに成長したファッションEC大手のZOZOタウンも、実はフルアウトソース型です。ここまでユーザーの支持を集めた背景にはラインナップの豊富さやアプリの使いやすさなど複合的な要因があると思いますが、最大の特色は アパレルメーカーにとって手間のかかる受発注業務(販売・受注・検品・梱包・出荷)をすべて代行してくれることだといえます。
ZOZOはメーカーから商品を仕入れるわけではありませんが、メーカーが商品を作ったらZOZOが引き取り、自社の倉庫で保管してくれるため、メーカーとしては在庫スペースを圧縮できます。さらに人手のかかる出荷作業なども行ってくれるので、とくに小規模なアパレルメーカーにとってZOZOはただの販売チャネル以上の存在なのです。
■4.ユーザーを虜にする「本質的価値」
価値の重み、つまりユーザーの心をどれだけ動かすかでいうと、一番重いのが「本質的価値」です。旅行サービスでたとえれば、「安さ」や「便利さ」が入り口価値で、熱狂価値が「定番ではない拠点に行ける」だとしたら、本質的価値は「現地で親友ができる」といった類のものになります。
入り口価値は誰でも理解できます。熱狂価値も旅行好きの人であれば理解可能です。ただ、「現地で親友ができる」といった価値になってくると、ほとんどの人はすぐに理解できない、いわば「見えない価値」となります。実際にそのサービスを使って旅先で親友ができて、はじめて「このサービスを使って本当によかった」という最上級の感動体験を味わえるのです。
この本質的価値こそ、ユーザーを本当に満足させ、リピーターになってもらうために不可欠な要素です。とくにインターネットサービスのように、似たようなサービスが多いなかでいかにユーザーをつなぎ止めることができるかが勝負になってくると、本質的価値を届けることができるかどうかが勝負の分かれ目になっていきます。
■5.Airbnbも参入市場を変えている
ここでAirbnbの事例を紹介しましょう。Airbnbの創業メンバーはもともとデザイナーで、ビジネスについては詳しくありませんでした。そんな彼らが当初想定していたサービスは「P2P(person to person=個人対個人のこと)の居住シェア」と呼べるものでした。ここでのP2P居住シェアとは、ルームメイトのマッチングサービスのイメージです。
しかし、肝心の「P2Pの居住シェア」という市場はこの世には存在しませんでした。そのまま「居宅シェアサービス」として売り出していたとすると、ここまで爆発的に利用者が増えることはなかったと思います。「居宅シェアサービス」というサービスは人々にとっては未知のもので、手を出しづらいからです。
その後、Airbnbの創業メンバーは何度もサービスを試験的にリリースし、学習を繰り返していきます。その結果、居宅シェアではなく、「民泊」としてホテル業界の中のオンライン旅行代理店というセグメントに参入していきました。きっかけは、インターネット掲示板を使って民家に泊まりたい人を募集してみたところ、反応がよかったからです。
このように市場へのリリースを繰り返し、市場への最適化を図ったことで、いまや世界の誰もが知っているビジネスとなりました。
【感想】
◆ライトな装丁と、「いちばんやさしい」といううたい文句(このシリーズはどれもそうですが)に騙され(?)ましたが、かなり濃厚な1冊でした。私も正直、初めて読むビジネスモデル本が本書だったら、読むのにてこずったと思います。
というのも、類書の多くが、既存企業のビジネスモデルの「分析」がメインであるのに対して、本書はビジネスモデルの「作り方」を指南しているから。
なおかつ本書の場合、ビジネスモデルの「各要素(パーツ)」にフォーカスするのではなく、事業全体をビジネスモデルとしてとらえています。
ちなみにここでいう「パーツ」の典型例が、本書の第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の「サブスクリプション」。
ビジネスモデル全体から見たら、サブスクも単に「収益の流れ」の1つにすぎないわけです。
◆続く第2章で大きく取り上げられているのが、ビジネスモデルができるまでの「3つの段階」。
ビジネスのアイデアを模索する「アイデア期」、そのアイデアを形にして市場に試験的に投入して反応を調べる「市場投入期」、そこで得た学びをもとに本格的にビジネスを始動し事業の拡大を目指していく「成長期」です。どの期も大切ですが、ハナシ的に一番面白いのは、やはり「アイデア期」でしょう。
まずは「よい課題」を見つけた上で、「よい解決策」を探っていきます。
その後者について言及しているのが、上記ポイントの2番目で、なるほど「よい解決策」というのは、「基本的に既存の技術やメソッドの統合でできている」のだな、と。
なお、注意したいのは、逆の順番には基本的にはならないということ。
つまり、先に「よい解決策」を考え、結果的にそれが「よい課題」を解決できる、というルートは基本的に存在しないのだそうです。
確かにこの例でも、GPS機能から重機管理へは逆流しないかと。
◆一方第3章では、それまでの2つの章で述べられた内容に基づいて、さまざまなビジネスモデルを分析していきます。
具体的にタイトルを列挙してみると、
「資産リバイバル型ビジネスモデル」等々。
「遊休資産活用型ビジネスモデル」
「ジョブ解消型ビジネスモデル」
「替え刃型(任天堂型)ビジネスモデル」
「サウスウエスト航空型ビジネスモデル」
「フリーランス支援型ビジネスモデル」
「フルアウトソース型ビジネスモデル」
「アセット転用型ビジネスモデル」
タイトルだけで「はいはい、アレね!」というのもある一方で、これだけでは分かりにくいものもあると思いますから、詳細は本書にてご確認ください。
ちなみに上記ポイントの3番目は、もちろん「フルアウトソース型ビジネスモデル」に関するものなのですが、典型的なのは出版業界の編集プロダクション辺りですか。
逆にZOZOもそうだというのは、指摘されるまで気が付きませんでした。
◆そして第4章で展開されているのが、実はここまで触れていませんでしたが、本書の大きな柱となっている「ビジネスモデルキャンバス」です。
詳しく紹介しているこの本は、発売当時かなりに話題になったので、お読みになった方も多いと思いますが。
ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書
「キャンバス」というくらいですから、下記リンク先(この本とは直接は関係ないアプリのよう)のサンプルにもあるように、フォーマットが用意されています。
bCanvas ~あなただけのビジネスモデルキャンバスを簡単につくろう!~
実は上記ポイントの1番目の引用文の中に、サラッと登場しているように、本書では第1章ですでに「ビジネスモデルを理解するには、ビジネスモデルキャンバスが最適」として、ところどころで、ビジネスモデルキャンバスの「9つの要素」にも触れられていました。
その「9つの要素」とは、具体的には
「届ける価値」「顧客セグメント」「チャネル」「顧客との関係」「収益の流れ」「主要リソース」「主要活動」「主要パートナー」「コスト構造」なんですが、さっそくポイントの1番目でも「収益の流れ」が出ていますよね。
なお、この第4章では、これらの「9つの要素」を1つひとつ丁寧に解説していますので、上記『ビジネスモデル・ジェネレーション』を読んでなくとも、まったく問題ないとは思います。
◆また、続く第5章では、この「9つの要素」の中でも特に重要な、「届ける価値」と「顧客セグメント」の2つについて言及。
上記ポイントの4番目はここからのものなのですが、「価値」に「入口価値」「熱狂価値」「本質的価値」という3つの種類があることについて、私は初めて知りました。
ただし、上記では触れていませんが、人気を加速させるためには、その名の通り「熱狂価値」が必要な模様。
さらに本書の第6章では、チャネルと収益についても掘り下げています。
そして最後の第7章では、ビジネスモデルのブラッシュアップがテーマ。
上記ポイントの5番目にあるように、あのAirbnbでさえ、当初の目論見とは違った形で成功しているのですから、フレキシブルに対応することが大事なようです。
ビジネスモデルを理解し、起業に結びつけるために読むべし!
いちばんやさしいビジネスモデルの教本 人気講師が教える利益を生み出す仕組みの作り方 「いちばんやさしい教本」シリーズ
Chapter1 ビジネスモデルって何だろう?
Chapter2 これからのビジネスに必要な考え方
Chapter3 世の中のビジネスモデルを眺めてみよう
Chapter4 ビジネスモデルキャンバスの大原則を知ろう
Chapter5 「価値」と「顧客」の最適化をはかる
Chapter6 価値の届け方と収益モデルを考えよう
CHapter7 ビジネスモデルを成立させる
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【ビジネスモデル】『ビジネスモデル・ナビゲーター』オリヴァー・ガスマン,カロリン・フランケンバーガー,ミハエラ・チック(2017年02月19日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。ポジティブ・チェンジ
当ブログでは未紹介であるメンタリストDaiGoさんの自己啓発書は、送料を足しても中古の方が数十円お得なのでご留意を。
劣化するオッサン社会の処方箋〜なぜ一流は三流に牛耳られるのか〜 (光文社新書)
おなじみ山口周さんが、「日本社会の閉塞感を打ち破るため」に書いたという新書は、中古に送料を足すと、ギリギリでKindle版がお買い得となります。
【編集後記2】
◆昨日の「春の実用書フェア」の記事で人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。大切なことはすべて日常のなかにある
いちばんやさしいビジネスモデルの教本 人気講師が教える利益を生み出す仕組みの作り方 「いちばんやさしい教本」シリーズ
「安い食べ物」には何かがある―――生鮮食品、加工品、輸入品、原材料、添加物……ここだけはチェック
銀行・保険会社では教えてくれない 一生役立つお金の知識
参考記事:【お金】『銀行・保険会社では教えてくれない 一生役立つお金の知識』塚原 哲(2018年10月21日)
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