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2020年03月13日

【コミュニケーション】『ハーバード流「聞く」技術』パトリック・ハーラン


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ハーバード流「聞く」技術 (角川新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、以前「話術本」が当ブログでも大人気となった、パトリック・ハーランさんの「聞き方本」。

ハーランさんは「ハーバード卒の芸人さん」の「パックン」として、メディア等でマルチな活躍をされていますから、前作をお読みでなくても、ご存知の方は多いと思います。

アマゾンの内容紹介から。
相互理解は巧みな聞き方から始まる!「聞く(hear)」「聴く(listen)」「訊く(quest)」といった様々な聞き方を解説し、それらを人生のあらゆる場面に「効く」ものにする技術を紹介!思い込みで理解を遠ざける「バイアス」の外し方や、甘い言葉にだまされない「批判的思考」の鍛え方も伝授。

なお、新書版の表紙がモノクロの写真無しだったゆえ、Kindle版のものと差し替えております。





Actionable Listening / cambodia4kidsorg


【ポイント】

■1.日本流コミュニケーションの利点と限界
 またこれは僕の感覚でしかありませんが、日本人は空気を読むことに一生懸命になりすぎた結果、肝心の話の中身が理解できていないままでも物事を進めていることが多いような気がします。
 それを感じるのが、同調の意味で使う「うん、うん」という 相槌 の数。
 これ、アメリカ人はあんまり頻繁にやりません。でも日本の人はとにかくよく相槌を打つ。打ちまくる。
 それ自体が悪いわけではありません。でも「相槌を打つ=話を理解しています」というサインになってしまうので、その話がわからなかった場合、相手に尋ねにくくなってしまうんです。だから聞いたつもり、わかったつもりになってしまう。
 質問できないまま会話が進んでしまうと、 曖昧 な表現で、お互いに解釈しやすい落としどころでなんとなく話が終わってしまう。最悪の場合、それが混乱や誤解の元になることもあるかもしれません。聞き手にはわかったふりをして流すのではなくちゃんと質問する努力が必要です。


■2.素直に話を聞くために「自分への攻撃」と考えない
「どうせ」と並ぶ2大バイアスの1つ、「だって」。
「どうせ」より「だって」の方がちょっとヘヴィといいますか、こじらせてる人が多いかもしれません。
 というのも「だって」は、人の話に対して、とにかくケチつけたくなるクセだからです。(中略)
 3度目の遅刻をしたことを叱られると、「だって、道がいつも混んでいるんだもん!」と言う人。いつもなら、対策をとれるでしょ。「お前だって、昨日早退したじゃん!」と反撃する人。攻撃の的をずらさないでください。「だって、朝の会議は意味ないし」と、みんなが思っていたけど言えずにいたことをつい口にしてしまう人。遅刻せずに言うと説得力あがるよ。
「だって」で論点をすり替えて言い訳をし、自分を正当化しようとすることは損なだけです。聞く耳をふさぎ、自分の欠点をねじまげて美化し、下手すると是正すべき点を逆に伸ばしてしまいます。この例では自分の通勤手段や時間を、または会社の会議方針を見直す大事な機会を失ってしまうことになります。
 こういった姿勢を英語で「get defensive」と言います。「防御態勢をとる」という意味で、アメリカではすごくよく使う表現です。
 "Don't get defensive."(防御態勢をとらないで)
 "I got defensive."(僕は防御態勢に入った)
 というように、相手に聞く耳を持つように促したり、自分が素直に聞かなかった原因を自己分析したりするときに便利です。


■3.「聴く」の基本となる3つのポイント
 とにもかくにもリスニング、「聴く」においては相手の気持ちがポイントになります。なので、自分の意見ではなく相手の意見を引き出し、聴くようにしたいです。
 このとき最初に繰り出すのが、リフレクション(reflection)。水面の「反映」や音の「反響」といった意味がありますが、つまりは、相手の使ったワードを繰り返してみる方法です。(中略)
 リフレクションで相手に話をきちんと聴いていますよと伝えられたら、次はその要点をまとめましょう。
 大事なポイントを1つの「サマリー(summary要約)」として相手にまた伝えます。聞き間違いはないか、勘違いはないかと、確認を取るのです。この作業をサマライズといいます。(中略)
 そして最後はエンパシー(empathy)です。
 シンパシー(sympathy)は聞いたことがあるかもしれません。似ているんですけど意味はちょっと違って、シンパシーは日本語でいうと「かわいそう」「大変ね」みたいなニュアンス。でも「聴く」では同情ではなく、"共感"という意味のエンパシーを使っていただきたいんです。
「あなたかわいそうね」と対岸の火事的に同情するのではなく、「わかる、わかるよ、その辛さ」と、相手の感情に寄り添い、その気持ちを追体験するくらい深く共感してください。


■4.疑問をぶつけるときこそ柔らかさが大事
 批判的思考は、第3章でお伝えしたセラピスト的な「聴く」姿勢とはまったく違い、真実を追い求める強い姿勢が必要になります。でも決して揚げ足取りではないし、非難や糾弾でもありません。
 空気を読むことに長け、少ない言葉から相手の気持ちを察することができる日本人は、ヒアリングやリスニングはとっても上手です。でもどうやら苦手なのがクエスチョニング、特に批判的思考を伴った質問をすることのようです。(中略)
 また、出る杭になることを恐れたり、質問することで相手と敵対関係になってしまうことを恐れる人もいます。「こんな質問したらプレゼンした部長に恥をかかせてしまうかも」なんて声もあります。
 そんなときは、たとえば「このグラフ、とても興味深いですね。ちなみに、この前後がどうなってるのかわかりますか?」とスケールをズームアウトしたい意図を柔らかく伝えましょう。相手が答えに窮したら「大丈夫です。あとで調べます」と言えばいいし、立場次第では「あとで一緒に調べてもらってもいいですか」でもいいでしょう。会議を中断するのが気になるようであればあとで訊きに行ってもいいです(本来、会議はこうしたやりとりがあっていいはずですが)。


■5.「how about」で提案する
 まずは、提案の「how about」。簡単に言うと「こんなのはどう?」という意味ですね。
「そちらが大切にしたいところはここですね。我々が第一に考えているのはこの点です」と、まずは価値観の違いを明らかにし、折衷案を探すことが交渉のスタート地点になります。ここでも「聞・聴・訊」の"3きく"姿勢が基本。もちろん、相手にもこれができたほうがいいので、交渉開始前にこの本を1冊渡すと話が早いです。
 その上で、「how about」を使って提案をしてみましょう。
 たとえば土曜の夜の過ごし方。友人に「映画を観に行こう」と誘われたけど、「黙って映画を観るより話しながら一緒に過ごしたいな〜」と思ったら、その気持ちをまず友人に伝えましょう。次が「how about」の出番。「ダイニングバーなんてどう?」と。でも友人の反応は鈍い。そうしたらなぜ「why」を訊きましょう。「もっとエンタメ感のあるものがいい」という。ならば、「クラブのイベントは?」「ショーパブは?」と、提案しながら自分と相手との中間点を探っていくのです。


【感想】

◆和洋折衷と言いますか、いかにもハーランさん(以下「パックン」と表記します)らしい作品でした。

当ブログでも「聞き方本」はそれなりにご紹介していますが、それはどれも日本人著者ばかりでしたから、自然と「日本流」が当たり前になっていたかも。

それに対して、たとえ芸人さんであっても「ハーバード出」のパックンですから、日米の違いは意識されているようです。

実際にそれが表れているのが、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目にある「相槌」の件。

多くのコミュニケーション本では、基本的に相槌は不自然でない限りは、極端な話「打てば打つほど良い」とされていたと思います。

確かに自分でも「キチンとわからない状態」でも相槌を打っていましたし、途中で下手に打たなくなってしまうと、雰囲気が悪くなりそうな気がしていました。

その辺、機械的に相槌を打たずに、分からないことはきちんと尋ねるべきかと(当たり前なんですが)。


◆続く第2章は「聞く」がテーマなのですが、上記ポイントの2番目にある「get defensive」という表現は、私は初めて知りました。

なるほど、この状態になっていると、話を素直に聞けませんよね。

ちなみに今回は割愛したのですが、もう1つ知らなかった表現が、"アメリカでは超有名"な「passive aggressive」なるもの。

これ、和訳すると「受動的攻撃性」というワケ分からんものになってしまうのですが、それを表す行動はよく見るものなのだそう。
 例えば、何かの行事に直接的に「行きたくない」とは言わないけど、待ち合わせ時間に遅れたり、準備しなかったり、(わざと?) 日にちを間違えたり、都合よく風邪を引いたりする人、いませんか? それで結局一緒に行く約束をしていた自分も行けなくなってしまう。これが「passive aggressive behavior」(受動的攻撃行動)。
他にも「人を無視する、愚痴を言う、曖昧な頼み方をしたのにやってもらえなかったことで怒ったりする、人の計画をダメにする」等々の問題行動が代表的なのだとか。

確かにこういう人、日本でもいなくもないでしょう(「かまってちゃん」とか?)。

いずれにせよ、「聞き手」としては、そういった受動的攻撃性に気づけたら、「口に出されていない、その裏の感情にもいち早く気づける」、つまり「相手の真意に迫れる」ワケです。


◆第3章は「聴く」ということで、上記ポイントの3番目のお話をセレクトしました。

なるほど、アメリカではこの3つ(「reflection」「summary」「empathy」)が重要なようです。
この3つのポイントを押さえられると相手の気持ちがとってもよくわかって、主張や価値観もすっと理解できます。口にすると相手も聴いてもらった実感があり、話しやすくなります。
なお、似たような方法をセラピストも使うとのことで、「スピーカー・リスナー・テクニック(エクササイズ)」というのだそう。

どういうものかというと、相談に来た夫婦やカップルの片方に、まずはパートナーの話すことを黙って5分間聴いてもらい、その後、相手の話したことの要点を伝えてもらうのだとか。

「これこれ、こういうことですね」とサマライズしてもらワケなのですが、これが結構外れていることが多いらしく。

まぁ、聴いているつもりでも、聴けてないってことですよね。


◆一方第4章の「訊く」は、思っていたよりも「積極的」というか「批判的」なものでした。

実際、冒頭の内容紹介でも「批判的思考」というフレーズが出てきていましたし、上記ポイントの4番目内でも、「日本人は批判的思考を伴った質問が苦手」という指摘アリ。

その辺の「空気を読む」、私たちが「良かれ」と思っている行動が、グローバルで見るとよろしくないのかもしれません。

でもやはり、訊かれた方にしてみると、よほどうまく質問しないと、攻撃を受けた気になっちゃうのではないか、と(困惑)。

そして、上記ポイントの5番目は、第5章の「『聞き方』で『効き方』が変わる」からのもの。

言われて気が付いたのですが、確かに「提案」というのも、相手に「聞く」ことに他なりません。

ちなみにこの「how about」は、「交渉や会議のときに役立つ3つのマジックフレーズ」からのものになりますが、これ以外の2つについては、本書にてご確認ください。


「米国流」の聞き方のテクニックを学べる1冊!

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ハーバード流「聞く」技術 (角川新書)
第1章 会話は聞くことから始まる(コミュニケーションの真髄は聞き方にあり
第2章 「聞く力」の9割は姿勢で決まる―hear
第3章 対話とは相手について「聴く」こと―listen
第4章 だまされないための「訊く」技術―quest
第5章 「聞き方」で「効き方」が変わる―effect


【関連記事】

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【傾聴】『アクティブ・リッスン! 「聞く力」を武器にする』澤村直樹(2015年09月23日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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医者が教える 正しい病院のかかり方 (幻冬舎新書)

当ブログでもご紹介したばかりの「病院ハック本」は、まだ新しいのでKindle版が400円以上お得。

参考記事:【病院ハック?】『医者が教える 正しい病院のかかり方』山本健人(2019年12月06日)

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