2020年03月12日
【科学本!】『竹内薫の「科学の名著」案内 文系でも面白い! 世の中の見方が変わる90冊!』竹内薫
竹内薫の「科学の名著」案内 文系でも面白い! 世の中の見方が変わる90冊! (一般書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのも、昨日に続いて先日の「未読本・気になる本」の記事の中で人気だったブックガイド。「科学ナビゲーター」こと竹内薫さんが、新旧の「科学の名著」とその読みどころを披露してくださる1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
地球温暖化・ネット社会…時代の変化に騙されない頭脳に変わる!日経新聞科学書評10年の著者が教えるとっておきの本。
中古に送料を足すと定価を超えますから、1割引きのKindle版がお得です!
A Touch of Science / Mars P.
【『竹内薫の「科学の名著」案内』から選んだ5冊】
■1.『沈黙の春』レイチェル・カーソンこの本は一言で言うと、農薬として使われている化学物質の汚染を糾弾した本で、初めて多くの人に環境問題を考えさせるきっかけとなりました。(中略)
『沈黙の春』の「沈黙」は、小鳥のさえずりが聞こえなくなったということを表現しています。
それはなぜなのか?
たとえば、小さな虫や草、果実などが農薬で汚染されてしまうと、今度はそれを食べている鳥や魚の体内に汚染が広がっていき、だんだんと濃縮されて、鳥や魚が皆死んでしまう。その事実を、「これでよいのか」と問題提起したのです。(中略)
農薬にかかわる環境問題は複雑です。純粋科学の問題であれば、ある程度、学界のコンセンサスが得られた時点で、対象となる農薬を禁止すればいいだけの話です。しかし、実際には、食糧生産と経済に大きな影響を与えるため、解決までに時間がかかるのです。
1つだけたしかなことは、カーソンが提起した環境問題は、いまだ現在進行形だということです。
沈黙の春 (新潮文庫)
■2.『世界を変えた50人の女性科学者たち』レイチェル・イグノトフスキー
私のお気に入りの女性科学者は、書評にもあるように、ロザリンド・フランクリンです。
ロザリンド・フランクリンは、X線を照射して分子構造を解明する研究を続け、DNAの二重らせん構造を発見するような写真を撮った人です。この写真をジェームズ・ワトソンやフランシス・クリックが見て、DNAの構造解明に至ったといわれ、2人は1962年にノーベル賞を受賞しました。しかし、フランクリンはノーベル賞をもらっていないのです。
それは、ノーベル賞授賞時には、彼女は亡くなっていた(1958年)こともあるのですが、フランクリンが撮った写真を許可なくワトソンが見てしまっているわけで、それって倫理的にどうなの? という疑問が残ります。(中略)
実は、クリックのほうも、ワトソンが写真を盗み見した後に、フランクリンが研究助成を受けていた団体の審査員を通じて、写真だけでなくデータまでも「覗き見」していたことがわかっています。(中略)
この本には、そのような話まで書かれているので面白いのです。
世界を変えた50人の女性科学者たち
■3.『ニュートリノ天体物理学入門―知られざる宇宙の姿を透視する』小柴昌俊
残念なことに、カミオカンデで陽子崩壊が検出されることはありませんでした。理論がまちがっていたのです。(中略)
そこで小柴先生は、方針をいち早く方向転換し、陽子崩壊はもうやめた、これを天体望遠鏡として使おう、という風に考えたのです。(中略)
科学のいろいろなプロジェクトは、世界中でたくさんの科学者が同じことを考えていたりします。しかし、小柴先生の場合は、やはり陽子崩壊を調べようとして作ったものをうまく転用した、というところがすごいと思います。実際、最初から「ニュートリノ用天体望遠鏡を作るよ」と言ったら、予算がおりていなかったかもしれません。
この小柴先生の本は、素粒子とはどういうものか、といった、ニュートリノの説明から、実際のニュートリノの検出方法や、超新星爆発の話までが書いてあり、素粒子物理学と宇宙物理学の両方を勉強できるお得な本だといえます。
ニュートリノ天体物理学入門―知られざる宇宙の姿を透視する (ブルーバックス)
■4.『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』ダレル・ハフ
『統計でウソをつく法』は、アメリカで1954年に出版され、ベストセラーとなっている準古典といってもいい本です。この本は、絶対に1回は読んでおいたほうがいいオススメ本です。
統計や確率は、学校の授業で必ずやっているはずですが、意外と授業の時間が少なかったりするので、その本質を理解している人は多くありません。そこで、編集者をしていたダレル・ハフが、統計の概念をやさしい言葉でわかりやすく紹介したのです。世界中で、教材としても使われているようです。
専門家が書いた統計の本は、おそらくほとんどがつまらないものでした。あまりにも専門的すぎて、なぜこんな計算を延々とやらなくてはいけないのか、と読者の頭の中が疑問だらけになってしまいます。そうではなく、この本は、統計を理解することで、実社会でいかに役立つのか、ということを教えてくれるのです。
統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス)
■5.『「ロウソクの科学」が教えてくれること』マイケル・ファラデー,白川英樹 (監修)
ファラデーという科学者を知っていますか? ほら、電磁誘導の法則、つまり、モーターや発電機の原理を発見したエラ〜イ科学者ですよ。
ファラデーは伝説の科学者でもある。小学校しか出ていないのに、勤勉実直に実験を積み重ね、世界有数の科学者にまで登り詰めた人物なのだ。
そんなファラデーは、イギリス王立協会が主催するクリスマス講演を頻繁に引き受けていた。講演の対象は8歳から80歳だそうだが、要は、子どもと一般科学ファンへの知的なクリスマスプレゼントなのである。
本書は、現代の知見を本に解説することで、ファラデーの名講演を現代に蘇らせた。親子で自宅で実験するといいかもしれませんね!
「ロウソクの科学」が教えてくれること 炎の輝きから科学の真髄に迫る、名講演と実験を図説で (サイエンス・アイ新書)
【感想】
◆日頃ビジネス書中心にご紹介している当ブログにとっては、なかなか新鮮なラインナップでした。特にここ数年、教養書に対するニーズが高まっていますから、「どういう本を読むべきか」と迷っている方なら、一読の価値があると思います。
ただし、タイトルにもある「90冊」というのは、実は大きく2つに分かれている点についてはご留意を。
1つは今回本書のために書き下ろされた1章から5章までで、合計20冊が念入りに紹介されています。
もう1つが第6章に収録された74冊で、これらは日経新聞の書評欄「今週の3冊」で2006年から直近まで、著者の竹内さんが紹介された作品の中から、第1章〜5章と共通するジャンルの「とっておきの作品」を抜き出したものとのこと。
こちらは当時のテキストがそのまま流用されていますから、文体が変わっていたり、その頃の竹内さんの趣味が反映されている感じです。
◆個々に見ていくと、まず最初の『沈黙の春』は、第1章の「地球環境を考えるヒントに」からのもの。
実際に何かしらの被害があることが判明したとしても、既得権者による妨害があるのは、今も昔も変わりません。
たとえば、今現在、日本でも赤トンボとミツバチが減っているのは、ネオニコ系の農薬のせい、と言われていますが、この農薬はEU内では使用が禁止されているにもかかわらず、日本では農薬散布について注意を喚起するのにとどまっているのだそうです。
赤トンボやミツバチの異変の陰に「ネオニコ」 | 環境と健康の深い関係 | 遠山千春 | 毎日新聞「医療プレミア」
また、この第1章では、他にも「名著」と言われるこの本が登場。
ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)
私もKindle版の方を買うだけ買って、豪快に積読状態なのですが、今般竹内さんの紹介文を読んで、読みたくなりました。
◆続く第2章の「奇妙で風変わりな科学者たちの世界」からは、2番目の『世界を変えた50人の女性科学者たち』をセレクト。
ここで触れたロザリンド・フランクリンの盗用されたエピソードは、今なら大問題ですよね。
実は最初の『沈黙の春』のレイチェル・カーソンも、50人の中の1人になります。
同じこの章では、章題にピッタリな(?)この本も収録。
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)
……この本も買うだけ買ったんですが、文庫本なので、今どの段ボールに入っているのか分からないという。
なお、第3章の「これは読まなくていい!誰もが知っている科学の古典」からは、「読まなくてもいい本」がテーマなので、選書を自重しました。
それぞれの作品が「なぜ読まなくていい」のか、また逆に「そのテーマならどの本を読めばいい」のかも、本書では触れられていますので、ぜひご確認ください。
◆そして第4章の「宇宙や未来を拓く物理の世界」からは、われらが小柴先生の作品を。
上記で触れた転用エピソードは、新聞か何かで簡単に読んだ記憶がありましたが、今般本書を読んでやっとキチンと理解できました。
それにしても、災い転じてと言うとカッコいいですけど、天体望遠鏡としてでも失敗していたらどうなっていたことやら……。
一方第5章の「学校では教えてもらえない本当の数学の世界」からは、これまた名著の誉れ高い『統計でウソをつく法』を選んだ次第。
この本、アマゾンのページ自体が100ブクマを超えているという、人気作です。
[B! book] Amazon.co.jp: 本: 統計でウソをつく法 ― 数式を使わない統計学入門
……この本もワタクシ、買うだけ買ってるんですよね(絶賛10年超、積読中)。
◆最後の第6章は、上記で触れたように竹内さんの書評のセレクト集。
上記5冊目の『「ロウソクの科学」が教えてくれること』も、ここからになります(明らかに文体が違うw)。
それまでの4冊は、紹介文のごく一部を引用しているのですが、この5冊目は引用部分で全部。
このくらいの長さの書評が、70冊超詰め込まれていますから、ザーッと眺めて気になる本を読んでみるのが正解だと思います。
個人的にはこの辺が面白そうだな、と……。
僕たちは、宇宙のことぜんぜんわからない この世で一番おもしろい宇宙入門
宇宙から恐怖がやってくる! ~地球滅亡9つのシナリオ
宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃
なお、最後の『宇宙と宇宙をつなぐ数学』は、下記記事(ブクマ1100超!)で触れられている望月新一教授の「ABC予想」のお話がテーマ。
「異世界からきた」論文を巡って: 望月新一による「ABC予想」の証明と、数学界の戦い | WIRED.jp
竹内さんが「私がここ数十年で読んだ一般向け数学本のベスト1」とまで言われていますので、数学好きの方はぜひご検討ください。
科学本を選ぶためのブックガイドとして秀逸な1冊!
竹内薫の「科学の名著」案内 文系でも面白い! 世の中の見方が変わる90冊! (一般書)
1 地球環境を考えるヒントに
2 奇妙で風変わりな科学者たちの世界
3 これは読まなくていい!誰もが知っている科学の古典
4 宇宙や未来を拓く物理の世界
5 学校では教えてもらえない本当の数学の世界
6 もっともっと科学書を楽しもう(日本経済新聞「今週の3冊」より)
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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