2020年03月07日
【知的生産】『知的生産力』齋藤 孝
知的生産力
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日同様先日の「未読本・気になる本」の記事にて注目されていた作品。おなじみ齋藤 孝先生が、お得意の知的生産術について述べられた1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
圧倒的なインプット力・アウトプット力が身につく!“新しさ”“気づき”“意外性”を生み出す「知力」の上げ方。
中古が若干値下がりしてきましたが、2割引きのKindle版の方がお買い得です!
Potter files / Catface27
【ポイント】
■1.アウトプットを想定してインプットをする「学んだ知識を役立てることができない」「本を読んでもすぐに忘れてしまう」「情報に振り回される」など、インプットした知識を使いこなすことができないとしたら、その原因のひとつは、「アウトプットの回路ができていない」ことです。
インプットとアウトプットは、ふたつでひとつのセットです。
情報をインプットしたら、実践につなげる。「読む、書く(描く)、話す」ことによって、情報は血肉に変わります。頭の中に価値のある知識、知恵、ノウハウが入っていても、それを実際に活用しなければ、持っていないのと同じです。(中略)
アウトプットの必要性がないインプットは記憶に残りにくいため、アウトプットを想定してインプットするのが基本です。
「せっかくインプットしたのだから、いつかアウトプットしよう」ではなく、「アウトプットしなければいけない」という強制力を働かせる。「アウトプットする必要があるから、インプットしよう」と考えたほうが、学習の精度は上がります。学習のサイクルは、アウトプットが起点です。
■2.アウトプットに自分のエピソードを加える
私は大学生のコメント力を磨くために、
「私が指定するテキストを読んで、そのテキストから文を6個抜き出す。そして、その6個に対し、ひとつずつ自分のエピソードを加える」
という課題を出すことがあります。
すると、引用箇所に個性が表われる上に、学生自身のエピソードが加わるため、独自性の際立つアウトプットが完成します。
私が「エピソードを加える」というアウトプットの形を決めることで、大学生は、「自分のエピソードが語れる引用箇所はどこか」を意識するため、アクティブな読み方になります。(中略)
「生産」とは、新しいものを生み出すことです。ニーチェや福沢諭吉を紹介しただけでは新しさに欠けます。ウィキペディアを切り貼りしたところで、生産的とは言い難い。
しかし、自分のエピソードとつなげることで、独自性と新しさが加わって、クリエイティブなものになります。なぜなら、自分のエピソードは、世界で唯一、自分にしか語れないものだからです。
■3.知的な質問をする5つのコツ
(1)疑問点をメモする人の話を聞くとき、話の内容と同時に疑問点を書き出しておくと、質問力がアップします。(2)質問に重要度の順位づけをする疑問点が多数出てきた場合、限られた時間の中ですべて聞くのは難しいので、優先順位をつけて、重要度の高い疑問から質問します。(3)「キーワード返し」をする相手の言ったことを繰り返す「オウム返し」は、傾聴の基本と考えられていますが、知的さには欠けてしまいます。(中略)(4)事前に情報収集をする
仮に相手が1分間話をしたとすると、その1分間の話の中からキーワードを選んで、「やはり、○○○が基本ということですか?」などと強調点をクリアにして質問するのが、キーワード返しです。その場でいくら考えても、それだけでは底の浅い質問になります。事前の知識が不足していると基本的なことから質問しなければならないため、話を深掘りできません。(5)事前に質問項目を書き出しておく会議に参加するときは、質問項目を箇条書きにして事前に配っておきます。すると、全員で話し合うべき問題点を共有することができます。
■4.知的生産性を上げたいなら、意識の量を増やす
仕事の生産性が低いとしたら、その原因は、才能や能力が欠如しているからでも、職場環境が悪いからでもなく、自分の「意識の量」が足りないから、かもしれません。
自分の意識の量よりも大きい問題を抱え込むと、失敗します。
反対に、失敗したくないからといって自分の意識の量に合わせて小さくまとまると、知的生産性は上がりません。(中略)
知的生産性が高い人は、人より才能に優れているわけではなく、「意識の量が多い」人です。
たとえば、こちらの言うことにすぐに反応し、的確な相槌を打ち、相手のことを考えたアドバイスを与えてくれる人は、明らかに意識の量が多い人です。
これからの時代に私たちが目指すべきは、意識高い系ではなく、「意識の量が多い系」です。
仕事の知的生産性を高めたいのなら、まずは意識の量を増やしましょう。
■5.DNAのスイッチをオンにして、知的才能を目覚めさせる
今、最先端のDNA研究の進展から、「生活習慣によってDNA(遺伝子)の働きが変わる(体質、能力、病気のなりやすさなどが変わる)」ことがわかっています。
DNAには「スイッチ」のような仕組みがあって、スイッチを切り替えることで働きが変化します。(中略)
DNAのスイッチをオンにして、潜在能力を引き出すには、「変化」が必要です。
私は、「突き抜けた経験」が、スイッチオンのきっかけになると考えています。
「突き抜けた経験」とは、今までやったことがないこと、抵抗を覚えていたこと、自分にはできないと思っていたことにチャレンジすることです。(中略)
仕事のトラブルや失敗といった、「不愉快な出来事」でさえDNAのスイッチをオンにする刺激です。愉快だろうが不愉快だろうが、「突き抜けた経験」から得られる刺激は、潜在能力を高めるきっかけになります。
やりたくない仕事、やったことがない仕事、面倒な仕事を割り当てられそうになったときは、避けるのではなく、率先して手を挙げる。
すると、DNAのスイッチがオンになって、眠っていた能力が目覚めはじめます。
【感想】
◆本書のタイトルにもありますし、私たちも普通に使っている「知的生産」というコトバ。これについて、本書の「はじめに」では、故・梅棹忠夫さんの名著『知的生産の技術』を引き合いに、こう定義しています。
知的生産とは、「知的情報を生産すること」であり、新しさ、意外性、気づきをわかりやすく伝えることなのです。大前提として、「知的な素材を扱う」必要があるということ。
つまり、単に読んだり書いたりしているだけでは、ダメなワケです。
そこで本書の第1章では、「知的インプットの増やし方」と題して、「知的な素材」の集め方を6つ指南。
具体的には本書をご覧いただきたいのですが、お約束の「名著」は当然としても、「高校の授業を振り返る」なんて意外なものもありました。
ただし、インプットする際には、アウトプットを想定しなければならないのは、上記ポイントの1番目にあるとおり。
もっともこの辺は、類書や齋藤先生の過去の著作でも指摘されていたと思います。
◆続く第2章では「アウトプット」の仕方についての言及が。
齋藤先生いわく、知的な本を読んで、そこから引用するだけでなく、自分のコメントを付す、というのが、アウトプットの基本形とのこと。
さらには上記ポイントの2番目にあるように、そのコメントとして、「自分のエピソードを加える」ことで、さらに独自性が加わります。
……これは当ブログでも意識したいところ。
また、アウトプットする際に文字だけでなく、写真や図解、イラスト等を使うことも、齋藤先生は推奨しており、好例として紹介されていたのがこちらの本です。
古代エジプトうんちく図鑑
何せ
芝崎みゆきさんの著書は、膨大な知識を手描きイラストつきで楽しく伝えており、アウトプットのお手本となる「奇跡の書」です。と、大プッシュされていますから、興味のある方は、ぜひご確認を。
◆一方第3章は、アウトプットでも特に「ビジネス」を意識したものについて。
さっそく取り上げたのが、ちょっと長くなりましたが、上記ポイントの3番目の「質問のコツ」です。
この中で、初めて見たのが(3)の「キーワード返し」というTIPSでした。
傾聴の本では、「オウム返し」がお約束というか、勧められていましたが、より「知的」な質問をするためには、意識しておくべきテクニックかもしれません。
また「初めて見た」という意味では、上記ポイントの4番目の「意識の量」という概念も同様でした。
ただ、これに関しては、齋藤先生は昔、こういう本を出されていたんですね(私は未読でした)。
「意識の量」を増やせ! (光文社新書 522)
本書では「意識の量の増やし方」を5つ挙げていますから、気になる方は本書をチェックしてみてください。
◆最後の第4章は「働き方」がテーマということで、上記ポイントの5番目を抜き出してみました。
何でも、先生の教え子の中には、「カラオケボックスで歌うのは恥ずかしくない。でも、授業中に、学友の前で歌うのは恥ずかしい」という学生がたくさんいるのだとか。
ところが一度、授業で歌って「突き抜けた経験」をすると、メンタルブロックが外れて(DNAスイッチがオンになって)、恥ずかしさが快感に変わります。ドーパミンやエンドルフィンなどの脳内物質も分泌され、「もう一度、あのスイッチオンの状態を味わいたい」と思うようになるのです。それを考えたら、「仕事のトラブルや失敗」が「DNAのスイッチオンに影響がある」、というのもうなずけるかと。
もちろんパワハラだったり、ブラックだったりして、心が病んだりしないことが大前提でしょうが、自分の置かれたマイナスな状況を、プラスに転じる意識を持ちたいところです。
知的生産力を上げたい方なら、要チェックな1冊!
知的生産力
第1章 今日から始める知的生産―アウトプットを始める前に
第2章 アウトプットの基本形―知的な素材をどのようにアレンジするか
第3章 ビジネスで使うアウトプット―質の高い仕事をするために
第4章 働き方のマインドセット―結果を出すために、どう考えるか
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【知的生産】『「読む・書く・話す」を一瞬でモノにする技術』齋藤 孝(2009年09月02日)
【編集後記】
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参考記事:【適職?】『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』鈴木 祐(2019年12月18日)
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