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2020年02月27日

【科学的自己啓発?】『「幸せ」をつかむ戦略』富永朋信,ダン・アリエリー


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「幸せ」をつかむ戦略


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日に続いて先日の「未読本・気になる本」の中でも、人気の高かった行動経済学本。

おなじみ、ダン・アリエリー教授の新作で、アマゾンレビュー8つの平均が「4.8」という高評価ぶりです。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
世界的ベストセラー『予想どおりに不合理(PREDICTABLY IRRATIONAL)』でおなじみ、行動経済学の権威であるダン・アリエリー(デューク大学教授)が語った、前代未聞の衝撃的幸福論!

本当の幸せはお金や地位ではなく、自分の意思で自由に振る舞えることにあるのではーー。
日本を代表するマーケティングのプロ・富永朋信は壮大な問いの答えを求めてカナダ・トロントまで飛び、ダン・アリエリーのもとへ。
消費から夫婦関係、子育て、従業員のモチベーションに至るまで、「幸せ」に関する8つの質問に対し、ダンが語った驚くべき回答とは?

なお、中古が3000円近くする一方、上記記事の時点では、単行本と同額だったKindle版のお値段が、1割引きに値下げになりましたから、ぜひご検討ください!





G4C14 Dan Ariely: Who Put the Monkey in the Driver’s Seat? / Games for Change


【ポイント】

■1.パートナーと幸せになりたいなら「離れる」
ダン 以前、ある同僚がいました。1年だけ彼がボストンにいて、奥さんがニューヨークにいて、週末にだけ会っていた。当時は子供がいませんでしたが、彼によれば、2つの理由から、あの1年は夢のような時期だったそうです。1つは、お互いを恋しく思ったこと。もう1つは、週末に会ったときには、本当に一緒に時間を過ごしたことです。
カップルがいて、週に数回しか会わないというアイデアは、子供を育てるとしたら大変ですけどね。私は完全にナイーブなわけではありませんが、ロマンスのために世の中を設計するのであれば、絶対に2人の人間を1つの家庭には置かないと思います。別々のマンションを与え、毎日会わせないようにする。少なくとも週に数日は、お互いを恋しく思うようにするんです。そうすれば、恋愛関係を維持するために、あらゆることをするでしょう。さもないと、ロマンスを殺してしまうからです。


■2.SNS時代だからこそ、異性と付き合った経験は多いほうが幸せ
ダン 最初の恋人と結婚した男性と、10人目の恋人と結婚した男性について見てみると、今幸せだとしたら、10人目と結婚した人は10人の中で一番良い相手だということが分かっている。
ところが、最初の恋人と結婚した人は果たしてどうなのか。ソーシャルメディアを見ていると、「ほかに誰か、もっといい人がいたかもしれない」と、以前に増して考えるようになります。なぜなら、明らかに自分自身の基準がないためです。10人でも20人でも、大勢の人とデートした男性は、「自分はいろいろ試している。これが別の選択肢よりも良いことは分かっている」と言えます。
これまで一度もセックスをしたことがない男性と、大勢の女性と寝たことがある男性がいたとしましょう。大勢の女性と寝たことがある男性は、「彼女はそれほど素晴らしくない」とか「素晴らしい」とか言うことができます。ところが、今回が初体験となる男性のほうは、どう判断していいのか分からない。インターネットを見たら、いろいろ書かれている。自分の基準を持っていないから、インターネットの基準を使わざるを得ない。そして、インターネットの基準は……。

富永 基準ではない、と。


■3.意味がものに乗り移る
ダン また、人にダーツを投げさせて、得点に応じてお金を払う実験もやりました。あるときは標的を愛する人の写真にして、ダーツの矢を真ん中に当てれば報酬がもらえる。別のときは、愛する人の写真を嫌いな人の写真に差し替えました。自分が愛する人の写真にダーツを投げるのはとても難しく、嫌いな人の写真に投げるのはとても簡単です。あなたは自分の子供の写真をデジタルコピーし、それを紙に印刷したものを燃やされたら、どんな気持ちになりますか。

富永 ひどい気持ちになるでしょうね。

ダン そうですよね。デジタルコピーがあるのに、やはり写真を燃やす気にはなりません。どういうことかと言えば、意味が付きまとうということです。もう必要ないからといって子供の写真を焼却するのは……。

富永 本物の子供を焼くようなものだと。

ダン とても嫌な気持ちになります。ブードゥー教をご存じですか。人形があって、刺して呪いをかけるものです。私たちは皆、少しそんなことを信じる。良くも悪くも意味がものに乗り移ると考えるんです。
 

■4.信頼の欠如はモチベーションの代償を伴う
ダン もしあなたが私の部下で、私があなたを全面的に信頼していたら、クレジットカードを渡して、「会社のために一番良いことをしてくれ」と言うでしょうね。あなたを信用しなければ、「3ドル以上の経費はすべて報告書を書き、どこそこへ一緒に行った人の写真を撮ってこなければならない」と言うでしょう。
この手続きは時間がかかるだけです。つまり官僚主義がやっていること、言っていることは、「絶対にズルをしてほしくない、そのためならこの制度全体のコストは払ってもいい」ということです。
一方で、信頼は本当に重要です。あなたが私の部下なら、私が信用していることを感じてもらうためにお金を渡します。なぜなら、あなたが私に信用されていないと感じたら、どれだけやる気になりますか。(中略)
逆の考え方で、「経費は1日25ドルまでしか使ってはならない」と言うこともできます。けれど、信頼の欠如はモチベーションの代償を伴うと思うんです。問題は、この代償が目に見えないことです。誰かが私たちを裏切ったときには、それがはっきり見えて、止めなければならないと思う。けれど実際には、官僚主義は知らず知らずのうちに組織全体が好成績を上げる能力を減退させてしまっているんです。


■5.従業員の満足度は、給料の額よりその公正さを重視する
 また、給料の絶対額よりも公正さを重視するという点については、人間が何かを評価するときは、独自に参照点を設定し、それとの比較で判断する、という性向に整合的です。
 例えば、転職先を2社から選ぶとします。
A社:あなたの年収1000万円 同僚の年収950万円  
B社:あなたの年収1100万円 同僚の年収1200万円
 絶対額面ではB社が高いにもかかわらず、この会社には自分が値踏みされているような気がしてA社を選びたくなってしまう気持ちが、誰にでも大なり小なり発生すると思います。
 このとき、あなたの年収を比較してB社を選択するのが合理的であるにもかかわらず、同僚との年収差という参照点を援用してしまい、A社を選びたくなってしまう、という心的作用が発生しているわけです。
 給料の公正さで高い評価を得ている企業は人間のこうした性質を理解し、公正さを重視しているのではないかと思います。これらの項目において高いスコアが得られる企業が高いパフォーマンスを出す、というのは納得性が高い、と私は考えます。


【感想】

◆読む前の予想が、2点ほど外れた作品でした。

まず、上記ポイントでもお分かりのように、アリエリー教授と、著者(の1人である)富永氏との対談形式で進行していくのですが、俗に言う「対談」とはかなり違うもの。

富永さんから出された「質問」に、教授が回答していくパターンであり、発言量から言ったら、アリエリー教授が7〜8割くらいを占めると思います。

そういう意味では、純粋に「アリエリーファン」の方であってもご満足いただけるかと。

ただしその反面、この「質問に回答する」形式ゆえ、「話の広がりが制限されていないか」とか、「本当に教授が話したいことが話されているのか」等は気になりました。

おそらく、いったん文章に起こして編集者の目を入れたら、違った質問をしたり、違う話の持って行き方をしていたかもしれないんですよね。

とはいえ、渡航して話を聞いたワケですし、それはどう考えても不可能でしょう。

そこはむしろ、リアルでラフな展開(キチンと読みやすくはなっています)を楽しんでいただきたく。


◆さて、その質問内容ですが、アマゾンの方に列挙されているものを引用しておきます(全部ではありません)。
・なぜアマゾンが超便利なのに、「本屋に行きたくなる」のか?
・「パートナーとの関係」が年々悪くなるのはなぜ?
・初めて付き合った相手と「結婚」した人と、10人と付き合った末に結婚した人はどっちが幸せ?
・「子育ての辛さ」を軽減し、喜びや幸せをより実感できる方法は?
・消費者や従業員に「愛される企業」になるには?
なお、これらはいずれも質問の「概要」であり、実際にはもうちょっと長い文章なのですが、それはさておき。

そして上記ポイントの1番目は、ここで言う「『パートナーとの関係』が年々悪くなるのはなぜ?」の項から抜き出したものになります。

ただし、これはあくまでも子供のいないカップルの話であり、教授もこの後の部分でそれについては触れていますが、それでも「別々に暮らす重要性は変わらない」とのこと。

……倦怠期に入った夫婦ならまだしも、心理的にも、物理的(費用的?)にも、なかなか難しいとは思いますが。


◆また、上記ポイントの2番目は、お読みいただければお分かりのように、上記質問内容の2番目に対するもの。

「SNS時代だからこそ」と注をしたように、今と20年前とは大きく異なるのだそうです。

というのも、Facebook等のソーシャルメディアでは、「すべての人が自分を過度にポジティブに描き出している」(教授談)から。

ポイントの2番目の続き部分を引用します。
基準ではない。ソーシャルメディアは偽の世界観です。我々の生活に対する我々の基準がどんどん虚構になり、どんどんプラス側にバイアスがかかっていく世界に移行するにつれ、人はソーシャルメディアの基準に頼る度合いを減らし、現実の基準にもっと頼る必要があります。
個人的には、昨今の若者の恋愛経験の少なさというのは、こうしたメディアの影響によって、目の前の恋人候補が色あせて見えるからではないかと思うのですが……。

一方上記ポイントの3番目は、「自由に芸術を楽しみ、喜ぶための方法はあるか?」という質問に対してのもの。

芸術作品に「意味」が付いた場合に、どのような効果や影響があるかについては、本書にてご確認ください。


◆なお、上記ポイントの4番目に対する質問は、上記にはないのですが、実はその質問から脱線(?)した部分なので、質問については省略します。

いずれにせよ、この「信頼の欠如」というのは、日本社会においても大きな問題であり、生産性の低さにもつながっているのではないか、と。

その分、従業員の裁量に任せているところは、リッツ・カールトンの「20万円の決裁権」のように、それだけで話題になったりしています。

もちろん、それが裏目に出ることもあるのでしょうが、そこに目をつぶってでも推し進めることで、組織全体が好成績を上げることができるハズ。

……でもやはり日本ではなかなか難しそうですよね。


◆なお、本書の最終章は対談ではなく、対談の翌日に行われた、教授の会社のカンファレンスにおける、教授の基調講演の模様が。

上記ポイントの5番目もここからのものであり、事例自体は本書のために富永さんが選んだのでしょうが、類書でも目にしたことがありました(数値は違いますが)。

実は他にも、さまざまなモチベーションに関するお話が収録されており、ここはビジネスパーソンならぜひともお読みいただきたいところ。

さらに巻末には、教授とともにコンサルティング会社を立ち上げたケリー・ピーターズCEOに対するインタビューも付されています。

おかげで、なかなかの読み応えになった次第。


アリエリー教授のファンなら、一読の価値ある作品です!

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「幸せ」をつかむ戦略
第1章 「消費」の幸せって何だろう
第2章 「人間関係」を幸せにするには
第3章 ダン・アリエリーの「幸せ観」
第4章 「辛さ」を幸せに変える
第5章 「企業と個人」の幸せな関係
第6章 職場のモチベーションを高めるには(ダン・アリエリーの講演を聞いて)


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。

マンガによるメンタル&コミュニケーションがテーマのこの本は、Kindle版が400円以上お買い得。

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