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2020年02月11日

【バイアス】『MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか』グロービス


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MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか (文春e-book)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった「バイアス本」。

単行本の発売は14日なのですが、Kindle版が先行発売されており、そちらでさっそく読んでみました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
経営学、認知心理学、行動経済学など経営大学院(MBA)で教えられる「認知バイアス」「感情バイアス」を101項目厳選して紹介・解説。
優れたビジネスパーソンは、感情に流されない。
誰もが陥る「思い込みの罠」全網羅!

なお、まだ単行本が発売されておらず、中古がない以上、このKindle版が1割引きでお買い得です!





bias / trendingtopics


【ポイント】

■1.相関関係を因果関係と錯覚する
 人間は理由を求める動物です。たとえば古代人は、雷が鳴ることについて、雷神という神様が暴れているものだとして理由をつけようとしました。
 そのような「理由や根拠がないと気持ち悪い」という思考は現代人にも受け継がれています。その1つの現れが、相関関係があるものを原因と考える発想です。(中略)
 短絡的な例で最も有名なのは、子どもの頃に海外旅行に行った回数と、学校の成績でしょうか。これは実際にグラフにすると、海外旅行に行った回数の多い子どもの方が学力が高いという観察結果が出るようです。ただ、常識的に考えれば、海外旅行に行ったからといって、学力にダイレクトに反映されるメカニズムを説明することはできないでしょう。
 このケースであれば、それぞれと相関のある第三因子があり、それがとなって表れたと見る方が妥当そうです。具体的には親の裕福度です。つまり、親が裕福な方が海外旅行に行く回数が多い、同時に、裕福な親は子どもに良い教育を受けさせる可能性が高いということです。


■2.「そのうち何とかなる」は失敗の種
 人間は好ましくない事態に直面したときに、「そのうち事態は好転するさ」あるいは「これは自分には関係がない」と考える傾向があります。人による差はありますが、多くの人間はこのバイアスを持っています。このバイアスが生じる理由として指摘されるのは、あまり心配しすぎてもストレスがかかるだけなので、それを回避しようとする心理が自然に働くからといったことです。(中略)
 こう考えてしまう背景には、過去、そのように考えて何とかなった経験があることが多いです。たとえば、友人と喧嘩をして口も利かなくなったが、時間がそれを癒し、数年経ったらそこまでのわだかまりは消えてしまった、あるいは、体に多少痛みを感じたが、何もしなくても痛みは消えてしまったなどです。皆さんも何かしら思い当たることがあるはずです。こうしたことが悪しき「成功体験」となり、楽観してはいけない場面でも楽観してしまうという態度につながるのです。


■3.原因は常に複数ある
 何らかの事象は1つのことだけが原因で起こるわけではありません。通常は複数の原因が重なってあることが起こるものです。
 たとえば風邪をひいたという単純な事象も、菌やウイルスの多い場所に行った、部屋が乾燥していた、うがいや手洗いを忘れた、ストレスがたまっていて免疫力が弱っていたなど、さまざまな要素が絡み合って発病に至るものです。
 それでも人は何か目立つものにメインの原因を帰着させようとします。その方が頭を使わずに済みますし、自分の中での納得感が高くなるからです。上記の例であれば、実は生活が乱れていたことやストレスによる免疫力の低下が一番大きな原因だったかもしれません。しかし、そうした「素地」的なものは通常見逃されがちですから、「昨日、人通りの多いところに行ったにもかかわらず、うがい薬を使ってうがいをしなかった」といったことを最大の理由としてしまいがちなのです。そこに同意が集まると、ますますそれを本質的な理由と考えるようにもなっていきます。


■4.「量」より「率」の罠
 ウェバーフェフナー効果は物理的な認知にも心理的な認知にも働くとされています。
 よく例に出されるのは、リュックサックに追加の重量を加えたときにそれを察知できるかというシーンです。仮にいま背負っているリュックサックの重量が10kgだとしたら、そこに350g(350ml)のビール缶を1つ載せたとしても気が付かない、という人は多いでしょう。350mlの缶ビールは決して軽くはないのですが、10kgが10.35kgになっても、その比はわずかであり、気が付かない人もいるわけです。
 ところが仮にリュックに何も入っておらず、そのリュックの重さが500g程度だとしたら、そこに350gの缶ビールを入れて気が付かない人はいません。加えられた重量は同じ350gでも今回は重量が一気に1.7倍にもなってしまったからです。人は「量」より「比率」の変化にこそ敏感なのです。


■5.ネットの情報には偏りがある
 ネットの掲示板やコメント欄、SNSなどに投稿したり読んだりする人は多いと思います。それを見ていると、ある意見が非常に多数派を占めているように思うことがありますが、実はそれは錯覚というケースが少なくありません。似た考えを持つ人は集まりやすいというのがその理由です。
 また、往々にして発言力の極めて強い人々がおり、彼らの言説に引っ張られてしまう側面もあります。媒体の質やテーマにもよるので一概には言えませんが、ある掲示板などでは、そこに書き込んでいる1%程度の人が全体の投稿の95%以上を占めていたとする報告もあります。
 ビジネスではよく パレートの法則(とも言います。上位20%の人や事柄で全体の80%程度を占めるという経験則です)が生じますが、ネットの投稿はそうした割合が当てはまらないほど偏ってしまうことがあるのです。


【感想】

◆予想どおりというか、タイトルどおり「ネタ満載」の作品でした。

冒頭の内容紹介にあるように、いわゆる「バイアス」ばかり、101個列挙している次第。

どのバイアスも同じレイヤーとして、章ごとに区分されているワケですから、今回その中から「ポイント」として5つだけ選ぶのも色々と迷いました。

ただし101個も選ぶ以上、当然ですが皆様おなじみの「大ネタ」もかなり含まれており、それらを挙げると「今さら」感が漂ってしまいます。

かといって、見たこともないレアな「小ネタ」(「NIH症候群」等)を連発するのもいかがなものかと。

迷った結果が上記の5つなのですが、そもそも、似たようにバイアスを列挙した作品としては、当ブログで以前、こちらをご紹介していますしね(実はこの本、本書の巻末の「参考文献」でも挙げられています)。

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不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100

参考記事:【行動経済学?】『不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100』スチュアート・ サザーランド(2017年05月28日)


◆もっとも本書はタイトルに「MBA」とうたっている分、ビジネス要素がやや濃い目。

上記では挙げていませんが、ビジネスユースの事例が数多く紹介されていました。

たとえば第6章から引用した上記ポイントの4番目では、ビール缶の話が登場していますが、その続きで「マーケティングやセールスにおける応用も可能」として、
たとえば新築の一軒家を購入する場合だと、仮に総額5000万円程度の物件の場合、「50万円追加すれば床暖房も付けられます」というセールストークに「安いな」と感じ、「じゃあそれも追加で」と言ってしまう人は少なくないのです。
といった一文が付け加えられている等々。

また、単にバイアスの説明だけでなく、その「活用法(悪用法?)」も多くのネタで触れられていました。

たとえば割愛した中で「歴史が長いものを無批判に受け入れる傾向」というバイアスがあったのですが、
 ちなみに、こうした根強い慣習(時には因習)を変えるには、強制力を働かせ、一気に変えてしまうのが一番手っ取り早いのですが、そのためにはある程度力のあるトップのリーダーシップが必要になります。
と言った直後に、
言い方を変えれば、 そうした強制力を持つリーダーに「このやり方は伝統もありますし、変える弊害の方が大きいですよ」などと吹き込んで納得させれば、変更すべきものもそのまま続いていく可能性が増すのです。
と提案したりとか。


◆さて、ポイントを個々に見ていくと、まず上記ポイントの1番目は、第2章の「統計/データを用いた意思決定に影響する心理バイアス」からのもの。

事例の「海外旅行」だと、さすがに感覚的に「学力」とは結び付けられない(ただし英語の点数と結び付けられたらアウトかも?)ものの、「習い事としてのピアノ」が「学力」と因果関係がある、という話はよく目にします。

これなども「海外旅行」同様、ある程度、家庭が裕福でないと続けられないものですから「疑似相関」に注意したいところ。

また、ポイントの2番目は、第3章の「変化やリスクについての判断に影響する心理バイアス」からのものですが、株式投資等をしていて、下がり局面に入った際に、こう考えていると大けがをしそうです。

逆に、衰退産業の会社では、「どうにもならない」と分かっていても、「どうしようもできない」ことが多々あるのですが……。


◆一方、上記ポイントの3番目は、第5章の「因果関係を見誤らせる心理バイアス」から抜き出しました。

これは「原因を目立つものに帰属させたがる」バイアスなのですが、これに似たものが、「最期の藁」なるもの。
これは、他にも素地となる原因があったにもかかわらず、 最後に決定的に事を起こしたものを最大の原因と錯覚するというものです。
本書で挙げられていたのが、「失態を繰り返していた営業担当者の顧客に、事務の新人が請求書の発送を忘れたため、怒りが頂点に達し取引停止になった」ケースです。

その新人のミスがきっかけとはいえ、その前から脈々と続けられていた失態が取引停止の大きな原因なのですが、最後のミス1つで覆い隠されてしまいがちということに。

また、上記ポイントの5番目は、第9章の「ネットの情報発信、情報収集などでありがちなもの」からのもの。

俗に「エコーチェンバー現象」と言われているバイアスになります。

エコーチェンバー現象(エコーチェンバーゲンショウ)とは - コトバンク

いわゆる「ラウドマイノリティ」の言い分を聞いて、道を間違うことはよくありますから、こちらもご注意を。


◆駆け足でザーッと眺めてきましたが、あくまで「5/101」に過ぎませんから、人によっては、もっと違うバイアスを取り上げるべき、と思われるかもしれません。

とはいえ繰り返しになりますが、バイアスに関しては、類書でも数多く取り上げていますし、上記の『不合理』のように、そのアプローチ自体も似ている作品もあります。

ただし、『不合理』は原書が1992年ということで、30年近く前であり、ネット絡みのバイアスは収録されていなかったハズ。

そういう意味で、この手の「ネタ満載」の作品をお持ちでない方は、本書を1冊持っておくと、知識が網羅できると思います。


バイアスに気を付け、さらに活用したい方に!

B0842GZMLQ
MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか (文春e-book)
1章 認知や意思決定に影響を与える心理バイアス
2章 統計/データを用いた意思決定に影響する心理バイアス
3章 変化やリスクについての判断に影響する心理バイアス
4章 交渉/セールス/プレゼンテーションに影響する心理バイアス
5章 因果関係を見誤らせる心理バイアス
6章 「錯覚」を生み出す心理バイアス
7章 人の「記憶」に作用する心理バイアス
8章 「テクノロジー」に関連する心理バイアス
9章 ネットの情報発信、情報収集などでありがちなもの
10章 日常生活でも発生する心理バイアス


【関連記事】

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【ヒューリスティック】『思い違いの法則: じぶんの脳にだまされない20の法則』レイ・ハーバート(2012年04月24日)

【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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医師のつくった「頭のよさ」テスト〜認知特性から見た6つのパターン〜 (光文社新書)

当ブログでもレビュー済みの認知特性本は、中古が値崩れしているものの、送料を足すとKindle版がお徳。

参考記事:【6つのタイプ】『医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン』本田真美(2012年06月19日)

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