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2020年01月06日

【無意識?】『「無意識」はすべてを知っている』町田宗鳳


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「無意識」はすべてを知っている


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、意外な人気を集めていた1冊。

著者の町田宗鳳さんは、「ハーバード大学で神学修士号」「ペンシルバニア大学で哲学博士号」を取得しただけでなく、プリンストン大学助教授、国立シンガポール大学准教授、東京外国語大学教授という経歴の持ち主の住職さんです。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書では、偉人のエピソードや著者の体験談を交えつつ、仏教を中心にキリスト教・心理学・哲学・スポーツなど多角的な見地から、「無意識」の正体に迫ります。無意識の力を呼び覚ますカギとなる坐禅、声の力、少食・断食など、僧侶ならではの心身コントロール術も紹介。
「無意識の力」にゆだねれば、人生はもっと気楽に、そして、より創造的なものになっていくのです。

なお、中古価格が定価の倍以上しますから、若干お得なKindle版がオススメです!





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【ポイント】

■1.村上春樹は想像力の根を無意識にまで下げている
 彼のいう「地下1階」とは、私たちの意識下にあるものです。ここでは、それを「潜在意識」と呼んでおきます。注目すべきは、ここで村上氏がその潜在意識の下にもさらなる「わけの分からない空間が広がっている」と述べていることです。
 この点については後に述べるとして、村上春樹という作家は、どこまで深いかわからない無意識の世界で想像力を泳がせ、作品を編み出しているのです。
 そのことを裏付けるような発言を、あるインタビューの中で彼は口にしています。
小説を書く、物語を書く、というのは 煎じ詰めて言えば、「経験していないことの記憶をたどる」という作業なんです。
「経験していないことの記憶」とは、無意識にある記憶のことだと私は推測しています。村上氏は、書くという作業を通じて、明らかにみずからの内なる無意識と向き合い、対話をしているのです。


■2.潜在意識は感染する
 ちなみに、潜在意識の特徴は他者に感染しやすいことです。私はそれを「空気論」と呼んでいるのですが、家庭・職場・地域社会には特有の「空気」が流れています。(中略)
 職場でも社員が自社を愛し、働き甲斐を感じているなら、良い「空気」が流れているので、上司がいちいち檄を飛ばさなくても、誰もが一生懸命働くことでしょう。利潤至上主義で、人間的な心の通い合いがない企業が、やがて倒産の憂き目を見るのは、景気の動向よりも、社内の「空気」の濁りが原因しているのではないでしょうか。パワハラやいじめが横行するような職場で利益を多く上げられるはずもありません。
 したがって、リーダーの最大責任は資金調達でも契約獲得でもなく、組織に良い「空気」を醸し出すことにあると言っても過言ではありません。
 個人や組織だけではありません。国家にも特有の「空気」が流れています。
 戦前の日本ならば、軍国主義という「空気」が国民の思考力を鈍らせていました。現代の日本にはどんな「空気」が流れているのでしょうか。


■3.「ありがとう」を反復朗唱する効果
「ありがとう」の五音が含む母音を複数の人間が朗唱すると、倍音が自然発生します。倍音とは、素音(加工していない生の音)と比べて整数倍の周波数をもつ音です。耳に心地よい歌声や木管楽器などの音は、たいてい倍音を含んでいます。森林や海岸のように人工的な音がない自然環境も、倍音に溢れています。
 倍音は耳では聞こえない超音波を出しており、その振動が体の骨格を通じて、中枢神経に運ばれます。そうすると脳が反応して、松果体からオキシトシンやβ−エンドルフィンのような快楽物質が分泌されるようになり、脳波もふだんのβ波からα波に変わり、深いリラックス感を味わうことになります。
(詳細は本書を)


■4.「脳と声と腸の三位一体」説
 私のセミナーでは、断食中に手作り酵素ジュースを飲み、断食明けに野菜サラダを食べていただくことによって、参加者ほぼ全員が宿便(腸内に溜まった毒素や老廃物)を排泄します。その際、大量の梅湯も飲んでもらいますので、宿便は下痢状になって排泄されます。しかし、たったそれだけのことで、参加者の身心に大きな変化が生じるのです。
 まず体が軽くなったような感覚を受けます。そして表情がとても明るくなるのです。私は自分の経験から、どうやら宿便を排泄することは無意識の否定的記憶の排泄にも関連しているように思えてなりません。なぜなら、この体験をきっかけに積極的で前向きな性格になっていかれる人たちが少なからずおられるからです。
 古人が深層意識を表す言葉として「腸」を多用していたことが、私は今さらながらに頷けます。週末だけのプチ断食で「ありがとう」を朗唱するだけなのに、長期にわたってうつ病やパニック症に苦しんでいた人たちも、目に見えて明るくなっていかれるのを数限りなく目撃してきた私は、「脳と声と腸の三位一体」説を唱えたいとさえ考えるようになりました。


■5.思い続けた祈りは「個人無意識の祈り」となる
 心の深いところで祈る。それは1つの願いを何か月も、何年も諦めずに抱き続けたときに可能となります。宗教なんかにまったく関心がなくても、プロのサッカー選手になりたいとか、人気女優になりたいとか、少年少女でもそういう願望があるはずです。それは浅はかな願望というよりも、それをどこまで強く抱き続けるかによって、彼らの未来が決まるような気がしてなりません。
 イチロー氏は、小学校の卒業文集で「僕は絶対にプロ野球選手になる」と宣言し、ドラフトで入団したいチーム名や契約金の金額まで書いていたといいますが、そういう強い願望があってこそ、世界のイチローになり得たのではないかと思います。
 自我意識で思いついたことであっても、長年真剣に思い続けると、それが潜在意識の祈りとなり、やがて個人無意識の祈りとなるのではないでしょうか。そうすると、無意識のエネルギーが動き出し、その思いを現実に投影し始めるのです。


【感想】

◆この作品を取り上げた未読本記事では触れたのですが、本書はNHKテキストのムック『こころをよむ 無意識との対話 身心を見つめなおす』を単行本化したもの。

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こころをよむ 無意識との対話―身心を見つめなおす (NHKシリーズ)

そちらが送料を足すと2000円近くもしますし、Kindle版もないことから、どうせお求めになるならこちらがオススメなのですが、それはさておき。

予想以上に、スピリチュアルと言いますか、精神世界系(という呼び方が正しいのかどうか)に足を踏み入れていることに、少々驚きました。

一応今回の記事では、その傾向を抑えているのですが、本書の内容をNHKでラジオ放送したというのが意外なくらい。

もっとも、宗教がテーマだったら(本書は宗教とはある程度距離はおいていましたが)、これ以上にスピが入るのかもしれませんが。


◆とはいえ興味深い点もいくつかありましたので、そちらを抜き出していくと、まずは序章から引用した、上記ポイントの1番目の村上春樹さんの件。

村上春樹さんの作品の魅力や作風について論じた書籍は、過去あれこれありましたが、こういう切り口は、私は初めて読みました。

また、諸外国でも人気のある理由について、このような発言も。
 彼は外国の文学作品の翻訳家でもあり、そのことが日本人離れした感覚を養ったと考えられます。村上作品が「無国籍的」だと評されたりするのはそのせいもあると思いますが、民族の地域性を超えた、私たちの誰もが持つ無意識の領域から湧き上がってくるイメージで、物語が展開されるからとも言えるでしょう。無意識が紡ぎ出した物語は、神話や民話のように、宗教や文化の違いを超えて世界各国の人々の共感を呼ぶことができるからです。
作品のベースとなるのが、民族性を超えた「無意識」から来ているから、というのは、スジとしては通ります。

また、この序章ではもう1人、イチロー氏も登場して、「無意識」の活用法を指南してくれていますから、お見逃しなく。


◆さて本書では、「無意識」や「潜在意識」といった用語がバンバン出てくるのですが、それらについて歴史を追って解説しているのが第1章です。

フロイトやユングといったおなじみの心理学の大家や、仏教における考え方等々。

「唯識学」だなんて言葉は、私は初めてでしたよ。

唯識 - Wikipedia

また、第2章では章全体を丸々使って、盤珪永琢禅師の教えをレクチャー。

盤珪永琢 - Wikipedia

……すいません、この方も私は存じませんでした。


◆これらの考え方を踏まえた上で、第3章では著者である町田さんの「仮説」が展開されています。

町田さんいわく、私たちのこころは以下の5つの層に分けることができるとのこと。
・自我意識
・潜在意識
・個人無意識
・普遍無意識
・光の意識
それぞれの意識については、この第3章と次の第4章にて解説されているのですが、どれか1つを選ぶワケにもいかず。

また、それに続く第5章は、この5つの層の間にある「4つの壁」について触れたものでしたので、結局この3つの章は丸々割愛してしまいました(それぞれの詳細については、本書にてご確認を)。


◆逆に第6章からは、上記ポイントの3番目と4番目をセレクト。

上記ポイントの3番目の「ありがとう」(「ありがとう禅」という名称だそう)は、何でも1時間ほど唱え続けるらしく、上記では割愛しましたが、多くの人たちが朗唱中に涙を流すのだとか。

ただし、「複数の人間」でないと倍音効果が出ないのであれば、結局町田さんのお寺に行く必要があるのではないか、と。

また最近目にする「プチ断食」も、ダイエット以外に、上記ポイントの4番目のように心理的な効果もあるようです。

もっとも、断食中に「ありがとう禅」もしているようなので、そちらの影響もあるとは思いますが。

なお第7章のテーマは祈りで、上記ポイントの5番目はその章からのもの。

序章で登場したイチロー氏を筆頭に、町田さんがいうところの「個人無意識の祈り」にまでなると、「無意識のエネルギーが動き出し、その思いを現実に投影」するとのことです。


「無意識」の秘めたる力を活用したい方は要チェック!

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「無意識」はすべてを知っている
序章 村上春樹とイチローの共通点
第1章 無意識はどう考えられてきたか
第2章 盤珪(ばんけい)禅師が説いた「不生の仏心」
第3章 こころの中の「五重塔」
第4章 潜在意識の奥にあるもの
第5章 無意識との対話を実現するには
第6章 無意識を浄化する
第7章 「祈りの力」を考える
第8章 日本人が誇りとする「結び」の思想


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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