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2019年12月26日

【オススメ!】『鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』鴻上尚史


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鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「Kindle本冬のポイント還元キャンペーン」の中でも特に読んでおきたかった1冊(朝日新聞出版分のランキングで1位でしたし)。

連載している「AERA dot.」の記事にブクマが大量に付いて、ほぼ毎回ホッテントリ入りしているという鴻上尚史さんの人生相談本です。

アマゾンの内容紹介から。
「AERA dot.」で大反響の連載、待望の書籍化。子育て、夫婦の不満、容姿、孤独……相談者に寄り添った鴻上尚史さんの丁寧な回答に、「電車で思わず泣いてしまった」「素晴らしすぎる、神回答!」「何度も読み返した」などとTwitterでも話題沸騰! 書き下ろしも収録。

元々Kindle版自体が「23%OFF」となっているところに「50%ポイント還元」まで加味された結果、送料を足した中古よりも700円弱お買い得です!






Pieta House Press Pack - Counselling and Support - Pieta House (11 of 28) / Joe Houghton


【ポイント】

■1.「鬱になった妹が田舎に帰ってきましたが、世間体を気にする家族が、病院に通わせようとしません」(38歳・男性 農家の長男)
 農家の長男さん。じつは、これまでの相談の中で、あなたの相談が、一番、深刻で緊急な相談だと僕は思っています。
 それは、事態がまさに今重大な方向に進行中である、ということはもちろんですが、そう追い込んでいる人達にまったく自覚がなく、なおかつ相談している農家の長男さんにも、事態の深刻さが充分に理解されてない、と思われるからです。(中略)
 とにかく、一刻もはやい受診をお勧めします。
 妹さんとちゃんと意思が通じるうちに、うつ状態の治療を始めるのです。うつ病は「こむら返り」であり、骨折ですから、自然治癒はありえません。妹さんと軽く話したり、食事を共にするのも、全身骨折を湿布で治療しようとするようなものです。病院に行かないとダメなのです。
 農家の長男さんにとって耳の痛いことかもしれませんが、くり返します。僕はあなたの20年、30年後の兄弟・姉妹を本当に何組か知っています。反対した親は死んでいるか、年老いて介護されています。
 親に従い、兄や妹を病院に連れて行けなかった弟や姉が、今、まさに苦しんでいるのです。けれど、精神が荒廃した兄や妹は、弟や姉がどれほど苦しんでいるのかを理解できないのです。


■2.「友達と元カレが付き合いだしました。友達が許せないし、彼のことも忘れられません」(21歳・女性 ケロちゃん)
 一番良くないのは、友達のふりを続けることです。そうすると、大好きな人の情報を中途半端に受け取ってしまいます。これを生殺しと言わずして、何を生殺しと言うのでしょう。そんな状態で、好きになった人のことを忘れられるはずがないのです。(中略)
 いいですか、ケロちゃんさん。
 もう一度、くり返します。私達は、続けられなかった恋愛だけにずっと苦しめられるのです。存在しない恋愛は、色あせることがないのです。
 長くつきあっていれば、相手の欠点も見えてきますし、日常という魔物がホルモンを減らしてくれます。どんなに美味しい食べ物も毎日食べていれば 飽きます。けれど、おあずけを食らわされた食い物だけを恋い焦がれるのです。
 そんな終わりのない恋愛の苦しみから解放される方法はたったひとつです。
 逃げ続けること。相手の存在からも、情報からも、周辺からも、徹底的に逃げ続けること。


■3.「『素直に』『普通に』の日本語の使い方についてイギリス人の友人から困った質問をされています」(27歳・男性 Q)
 物凄く威圧的で 威張る先輩と従順な後輩がマラソン大会に出たとします。後輩はなんと1位になります。学年最後で、もう後がない先輩は、百位以下という成績でした。
 後輩にマスコミが集まります。その横で先輩が睨んでいます。
 その時、後輩が「ものすごく嬉しいです」と答えると、先輩の怒りは燃え上がるでしょう。でも、「素直に嬉しいです」と言えば、先輩も少しはその心の動きを理解します。「素直に」嬉しく感じてしまうのは人間として当然なんだと。(中略)
 みんな同じ仲間だと思うから、「普通」という概念が出てくるのです。「社会」に生きる人はバラバラです。みんな違いますから、「普通」という考え方はできません。
 ニューヨークの小学校の教室を 覗けば、そこには、「普通」はないことがよく分かります。人種も文化も違う子供達が集まっているのです。
 でも、日本人は、外見が似ていて、なんとなく共通の文化に生きていると思っています(じつは誤解なんですが)。
 だから、いまだに、「普通に言うでしょ」「それ、普通でしょ」とスタンダードを持ち出すのです。


■4.「大学生の息子が俳優になりたいと言いだしました。人生を棒に振ってしまったらと心配で、私も妻も反対です」(51歳・男性 エイ)
 息子さんに言ってあげて下さい。大切なことは、自分の生き方に納得できるかどうかだと。
 25歳や30歳で俳優をやめていく人達をたくさん見てきました。その表情は二種類に分かれていました。
 10年間の活動に悔いはないと、 悔しいけれど充実した顔でやめていくタイプと、10年間後悔しかない、なんでもっと努力しなかったんだと落ち込みながらやめていくタイプです。そうなったら、自分の大切な10年間を否定することになります。それはあまりにも悲しい。
 エイ助さん。過剰に反対するわけでも過剰に応援するわけでもなく、ただ、少し離れて、見ないふりして見ているのがいいと思います。過剰に反対していると、「親とどう戦おう」ということしか子供は考えられません。過剰に期待していると「親の期待に応えられるだろうか」しか考えられなくなります。
 見ないふりして見ていたら、息子さんは自分の頭で「就職をしないで俳優の道に進むことはどういうことか」をじっくりと考えられるようになるでしょう。どんな結果になろうと、自分で考えた結果なら、受け入れられるはずです。


■5.「他人に迷惑をかけられるたびに心底いらいらしてしまいます。そのうちトラブルになるのではないかと心配です」(28歳・男性 じゅん)
 私は本当はこんなレベルじゃない。本当はもっとすごいんだ。私は世間に対して、ちゃんとモノが言える人間なんだ。
 自分を引き上げるためには、そう思って、みんな発言します。ツイッターやフェイスブック、ブログで、いろいろと発信します。
 けれど、上には上がいるので、そういう発言は否定されます。(中略)
 でも、 唯一、潰されない言葉があります。
 それは「正義の言葉」です。
 正義を語っている限り、突っ込まれる可能性はないのです。否定されるかもしれないと 怯える必要はないのです。
「ツイッターで未成年の飲酒を見つけた」「道路いっぱいに広がっている自転車がじゃま」「無許可で路上ライブやっている奴らは法律違反で許せない」「信号無視してる奴がいる」
 これらの「正義の言葉」は、上には上がいるインターネットの世界でも、否定されません。
 だから、「自分はこんなもんじゃない」と思い、けれど、何かを言って否定されたくない人は、「正義の言葉」を意識的にも無意識的にも語るのです。


【感想】

◆相談内容と回答が、一部かみ合ってないようで申し訳ありません。

そもそも、この「鴻上尚史のほがらか人生相談」は、「AERA dot.」の記事をお読みになったことのある方ならご存知のように、実際にはかなり長文の相談が詳しく述べられています。

たとえば下記のエントリーは比較的最近なため、本書には収録されていないものなのですが。



こんな感じで相談内容が600字弱あるものを、「『言い返さない』ことを選んだらサンドバッグ状態です(25歳 女性 ぽつん)」とまとめているのと同じですから、本エントリーで相談者の状況自体がわかりにくくなっているという。

さらに鴻上さんの回答の方も、たとえひと言でぶった斬れるものであっても、オブラートに包むこと包むこと!

……それをボリューム気にしながら引用すると上記のようになるわけでして(言い訳)。

それにしても「相談者の気持ちに寄り添う」ことに関しては、もはや職人芸といった感じで、賛同者や共感者が続出し、結果ブクマが付きまくって、はてブホッテントリの常連となっている次第です(実際、上記記事もブクマ840を超えていますし)。


◆実は、どうしてこんなに人生相談がこなれているかについて、鴻上さんご自身が巻末の「あとがきにかえて」にて述べられていました。

そこから一部引用します。
 22歳で劇団を旗揚げして、演出家になりました。
 俳優とスタッフは全員、二十歳前後でしたから、それはもう、青春の悩み真っ只中で大騒ぎでした。
 いろんな人がいろんな悩みを、僕に語りました。みんな若かったので、俳優としてのプロ意識はまだ徹底していなくて、演技に集中する代わりに、日常のいろんなこと、ささいなことから重大なことまで、いろいろと相談されました。
 そのたびに、一生懸命、答えました。答えなければ、劇団が 潰れる、なんていう状況も何度もありました。
しかも劇団以外の公演を演出するようになると、同世代だけではなく、うんと下や、かなり上の俳優さんやスタッフの相談も受けるようになったとのこと。

さらに、その回答の的確さについても、こんな発言が。
 もし、『ほがらか人生相談』を受け入れてくれる人が多いとしたら、演劇の現場のリアリティーに、僕が鍛えられたからだと思います。
 演劇という人間と人間がぶつかる場所で、なんとかギリギリの落とし所を見つけようとして、観念的ではなく、理想論でもなく、精神論だけでもなく、具体的で、実行可能な、だけど小さなアドバイスをずっと探してきた結果だと思います。
なるほど、鴻上さんのお答えが皆に支持されるのも、こうしたバックボーンがあるからなんですね。


◆また、個々の相談とは別に、鴻上さんご自身が、かねてから問題視して本まで書かれていたのが「世間」というテーマです。

当ブログでも以前ご紹介したことのある、この作品がそうなのですが(10年近く前の本なのに、送料を足した中古価格が800円弱もします)。

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「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

参考記事:【結構スゴ本】『「空気」と「世間」』鴻上尚史(2010年09月07日)

上記ポイントの1番目がこの問題に関連していますし、分かりにくいですが上記ポイントの3番目も同様です。

後者については、相談内容がこれだけでは分からないと思うので補足しておくと、「相談者のQさん」は、「日本在住3年の国立大大学院に通うイギリス人のジョン君」から、以下の質問をされたとのこと。
・なんで日本人は「嬉しい」の前に「素直に」をつけるのか。つまり、 例えばスポーツ選手がいい成績を残すと「素直に嬉しいです」というあれです。
 もうひとつ、
・なんで日本人のSNSは、「普通にすごいでしょ」「普通にNGでしょ」と、なんでも「普通に」をつけるのか。「素直に」と「普通に」は 枕詞 のようなものなのか。
私も指摘されるまで、疑問にすら思っていませんでしたが、こんな深い理由があったと知って、正直「目からウロコ」でした。


◆もう1つ何度か登場するのが、「やった後悔より、やらない後悔の方が大きい」というお話。

上記ポイントの4番目がそうなのですが、実際に当たって砕けてみないと、いつまでも心にしこりとして残ってしまうんですね。

実はこのポイントの4番目で鴻上さんが引き合いに出しているのが、30歳を過ぎて初めて劇団のオーディションを受ける女性たちです(結構多いのだそう)。

彼女らの共通点は、それなりに演劇をやっていて、若い頃オーディションを受けようと思ったけど、親に反対されていったんは就職したものの、あきらめきれなかったということ。

しかし鴻上さんいわく、「18歳で俳優を目指して、ダンスレッスンをしたり、発声のトレーニングをするのと、30歳から始めるのでは、プロの俳優になれる可能性はうんと違う」ため、「どうしてもっと早くオーディションを受けなかったんですか」と内心ため息をつくのだそうです。
よく言われるように、私達は、やったことより、やらなかったことを強く後悔します。彼女達が、親に反対されず、ほんの数年、俳優を目指し、そしてその可能性の低さに驚き、 怯え、 諦めれば、俳優への思いはあっさりと消えていったかもしれません。
 でも、親はそのトライアルの可能性さえ、 潰したのです。だからこそ、心の奥底で俳優への思いが燃え続けたのです。
子を持つ親として、しっかりと心に記しておかなくては……。


◆ちなみに本書の内容は、「2018年8月〜2019年4月に掲載された同名タイトルの連載を一部修正し、新規原稿を加えたもの」になります。

全部付け合わせたわけではないので、どれが新規原稿なのかは分からないのですが、なにせホッテントリの常連ですから、お読みになった記事がいくつもあるかもしれません。

ただ、私は今まで知らなかったのですが、「AERA dot.」の記事は、半年掲載した後、一部非表示にしているようです。

AERA dot.編集部からのお知らせ

それと「AERA dot.」の方は、やたらと改ページするのが気になっていたので、今般本書にて一気読みをできたのは、個人的に良かったな、と。

このクオリティの作品なら、通常価格の1100円でも惜しくないところが、本日中なら550円なんですから、これは「買い」でしょう。


たとえセールが終わっても、オススメせざるを得ません!

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鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋


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【サイバラ流?】『生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント』西原理恵子(2012年07月20日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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