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2019年12月12日

【必読!?】『時間資本主義の時代 あなたの時間価値はどこまで高められるか?』松岡真宏


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時間資本主義の時代 あなたの時間価値はどこまで高められるか?


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは先日の「未読本・気になる本」の記事にて大人気だった作品。

タイトルにもある「時間資本主義」という考え方は、現状のビジネスモデルを分析したり、未来のビジネスを生み出すのに役立ちそうなものでした。

アマゾンの内容紹介から。
すきま時間を買う人・売る人、ダイナミック・プライシング、サブスクリプション―。ほんのわずかな時間の使い方で、人生の満足度に大きな差がつく。それが時間資本主義の時代。気鋭のコンサルタントが消費行動、企業のあり方、働き方まで「時間価値」と「空間」の関係を鋭く読み解く一冊!

中古はやや値下がり気味ですが、送料を足してもKindle版の方がお買い得となっています!





USJ, Halloween style / sean in japan


【ポイント】

■1.アンバンドリング化する時間と空間
「すきま時間」の活用は、私たちが従来「かたまり時間」で行っていた数々の作業や行為の棚卸しを可能とした。それらは例えば次のようなことだ。
(1)決められた場所に行かなければできない行為
(2)オフィスや自宅でじっくり時間を使って行うべき行為
(3)場所はどこでも構わないが多少まとまった時間が必要な行為
(4)場所がどこでも構わない上にこま切れの時間だけで完結する行為
 携帯情報端末が普及していなかった時は、(3)や(4)の行為をするために、電車などの移動空間や病院での待ち時間などを使うことができなかった。このため、例えばメールひとつを取ってみても、PCが設置してあるオフィスや書斎といった固定的な空間とバンドリングされた行為であった。しかし、携帯情報端末を持ち歩くことで、メールという行為は、どこか特定の空間とのバンドリングが必要なくなった。


■2.商品選択に関わる2つの時間価値
 今後は、以下の2つの時間価値が商品選択に関わってくると考えられる。
1.その物やサービスを利用することによって時間が短縮でき、他の高次な目的のために使用可能な有意義な時間が生み出される
=「節約(saving) 時間価値」
2.その物やサービスを利用することによって有意義な時間を過ごすことができる
=「創造(creative) 時間価値」(中略)
 東京〜新大阪間の新幹線のぞみの料金は、グリーン席だと合計1万9590円だ。このうち、乗車券は8910円であり、東京から新大阪までの移動というサービスに対する対価である。これに特急料金(自由席分) として4960円、さらにグリーン席の料金として5720円が加算される。特急料金は、在来線で移動するよりも早く東京〜新大阪間を移動することで、消費者の移動時間を節約することができるため、1の価値に対する対価と言える。そして、グリーン席の料金は、移動時間がより快適であることに対する対価であり、これは2の価値追求と言える。


■3.「要素価格の均等化」とその対応策
 単純労働を対象にした雇用は、先進国では存立し得なくなる。付加価値を生み出す人、付加価値を生み出す土地など、選別された経営資源だけが先進国で生き残り、場合によっては従来以上に高い評価を受ける。一方、資本主義に組み込まれた発展途上国では、安価な労働力、安価な土地を使って、付加価値の低い商品・サービスを生み出して、先進国との貿易で経済成長を模索する。結果、先進国において、付加価値が十分に高くない労働者や土地の値段は、発展途上国並みに下落するという、恐ろしい定理である。(中略)
 私たちは、グローバルでも価値を発揮できる独自性を身に付けなければいけない。言うなれば、ただのサバではなく、関サバにならなければいけないのだ。関サバは、米国のヘルシー志向のセレブに対しても、中国の富裕層相手にも勝負ができる。
 自分独自のブランドは、どこで構築できるのか。すべての時間価値がフラットな競争にさらされる時間資本主義社会では、関サバになることを目指すべきである。


■4.TDRとUSJがもたらす時間価値の違い
 USJとTDRの入場者数の趨勢で明暗が分かれている背景は、敷地面積の制約やマーケティング戦略の違いだけではない。私は、USJが、前述したダイナミック・プライシングを価格戦略に活かした結果、入場者の「時間価値」を高めているためではないかと考えている。「時間価値」が高い分だけ、USJは入場料を継続的に引き上げていても、依然として人気を維持向上できているのだ。
 実際、USJでは、入場パスとは別に、人気アトラクションの待ち時間を短縮したり、パレードの鑑賞エリアを確保したりするための「ユニバーサル・エクスプレス・パス」を有料で事前販売している。つまり、お金を払えば、待ち時間という時間を買える、という仕組みなのだ。興味深いことに、対象となるアトラクションの数、種類、シーズン、曜日などによって、このパスの値段は変動する。
 一方、TDRでは、待ち時間を短縮するための「ファストパス」は原則として無料配布(アトラクション前で発行)されている。つまり、お金で時間を買うことはできない。ファストパスの購入で時間が買えるUSJと時間の投資が平等なTDRを比較すると、USJのほうが、より時間資本主義に適したマーケティング戦略を採っているのだ。


■5.住宅の機能の外部化
 家の中を住みよくするだけでなく、家の外も利用するのが今後の住居のあり方だ。
 つまり、パブリックなスペースに、家の機能をアウトソースするのだ。「空間の公私混同」と言ってもよいだろう。これも、携帯できる情報通信端末などを使った「拡張現実」空間の創造と言える。PC画面の前という固定化された仮想現実を、携帯できる情報通信端末を使って外部へと持ち出し、自分や自宅の外に外生的に存在している空間に、自らの空間をコピー&ペーストするように貼り付けることで「拡張現実」を作る。
 例えばダイニング。
 広々とくつろいで、家族でごはんを食べたいという欲求は、近所のレストランや居酒屋でもかなえられる。そこは近所の人が集まる、巨大なダイニングであるとも考えられるのだ。もちろん、パブリックスペースなのでテレビを持ち込むことはできない。しかし、スマホで好みの動画コンテンツや映画を視聴したり、SNSで友人と意思疎通したりするなど、「拡張現実」としての仮想ダイニングというパーソナライズされた空間が瞬時にパブリック空間上に構築される。共時型の交流という観点からは、2019年ラグビーワールドカップで、日本中でパブリックビューイングが行われたことが好例だ。ダイニングやリビングが外部化されることで、そこでの新たな共感や共振が生まれる。


【感想】

◆まず最初に申し上げておかねばならないのが、本書は著者の松岡さんが、5年前に出されたこの本を「大幅に加筆修正」したものであるということ。

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時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?

参考記事:【濃厚!】『時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?』松岡真宏(2014年12月16日)

確かに、登場する事例のかなりの数が「ここ5年以内」だったりしますから、この辺は完全にリバイスされている感じです。

たとえば、本書の「はじめに」に収録されていたのが、松岡さんが北京にいる知人とランチを共にしたときのこと。

その知人が食事をしたレストランにスマホを忘れたことに移動中に気が付いたのですが、もう1台のスマホ経由でアプリを使って繋がった「見知らぬ人」にWeChatで対価を支払って、スマホを持ってきてもらったのだとか。

こういった「時間」と「対価」の交換を、スマホ上で「時間価値」が異なる人同士で行う、ということが、今まさに現在行われているワケなのです。


◆さて第1章では、こうした「時間価値」の変化についての言及が。

昔から「すきま時間」も、すきまではない「かたまり時間」もありましたが、スマホの普及により、「すきま時間」でも稼げる時代になってきたのが大きいかと。

その結果可能となったのが、上記ポイントの1番目の(3)や(4)の行為です。

かつて「ノマド」が流行った際にも、一部可能になっていましたが、スマホでそれがさらに加速された感じ。

また、なるほど、と思ったのが、昨今男性の「大」用のトイレが、「こもりスマホ」で混んでいるという指摘です。

「すきま時間」で可能な行為が増えると、こういう弊害(?)もある模様。


◆続く第2章では、まず上記ポイントの2番目にあるように、「時間価値」が2種類あることについて説明がなされています。

「節約時間価値」は、他にもクリーニングの「お急ぎ料金」などがそうですし、「創造時間価値」は、映画館のVIP席などが該当するかと。

ここで考えねばならないのが、物理的な制約で、たとえば3人掛けのソファに20人は座れません(これを「排他性」と呼ぶのだそう)。

その解決策の1つが、俗に言う「ダイナミック・プライシング」

第4章から抜き出した、上記ポイントの3番目のUSJの施策がまさにそうで、当初入場者数が低迷していたUSJが、2010年からの6年間でほぼ2倍となった裏には、こうした理由もあるようです。

……確かに私も東京からわざわざ行くとしたら、多少多めにお金を払ってでも、より多くのアトラクションを回りたいですしね。

ちなみに、このダイナミック・プライシングの導入により、USJは利用者の「時間価値」の総和の最大化にも成功しているとのこと。
 待ち時間を短縮するというオプションに喜んでお金を払い、自らの時間価値を最大化する人がいる。そのオプション価格をUSJが獲得し、収益を伸ばす。その増加分の収益で、USJは、新しいアトラクションの増設や、イベントの開催が可能となる。結果として、待ち時間短縮のための追加的な料金は払いたくない人たちも、新しい体験やイベントを楽しむことができる。ダイナミック・プライシングの導入によって、時間のある人もない人も、自らの時間価値を高めることが可能となっている。
いずれTDRでもダイナミック・プライシングが導入されるかもしれません。


◆また、本書の第5章で登場するのが、「時間とお金と人材のマトリクス」です。

これは、私たち個人を「収入」と「時間」を軸にした4象限のマトリクスで、松岡さんの上記の作品にも登場するもの。

……当時Excelで作った表を再度掲載しますが(汚くて申し訳ないです)。



このうち、伝統的な近代国家においては、「高い事務処理能力」を有する、左上の「伝統的エリート」が勝ち組でした。

しかし、技術が発達したり、海外の安い労働力が流れ込んでくると、順位付けに変化が出てきます。

上記ポイントの4番目の「要素価格の均等化」がまさにそうで、結論としては私たちも「関サバ」を目指さねばならない、と。

本書では「高いクリエイティビティがなくとも生き方がある」として、1つヒントを挙げていますが、一応本記事ではネタバレ自重しておきます。


◆一方、第6章では「住居」について言及が。

時間資本主義時代においては、「職住近接」が進む、というのが松岡さんのお考えで、創造生産性が高い人たちというのは、やたらと群れているのだそうです。

その結果だと思うのですが、たとえばシリコンバレーでは、居住費がやたら高くなり、これならむしろ買っちゃった方が安い、という話が、つい先日の渡辺千賀さんのブログでも言われていました。

持ち家より賃貸のリスクが高いシリコンバレー | On Off and Beyond

そこで「狭くても近い家」を選んだ場合に取りうる手段が、上記ポイントの5番目の「住宅の機能の外部化」。

他にも子連れのママ会をカラオケボックスで行ったり、「書斎」機能を、外のファミレスやカフェに持たせている方も多いと思います。

今後こういった流れは、さらに広まっていくのでしょうね。


「時間資本主義」を深く学ぶために読むべし!

4532358450
時間資本主義の時代 あなたの時間価値はどこまで高められるか?
第1章 なぜ、時間の価値が変わってきたのか
第2章 時間価値の経済学
第3章 時給よりも時間価値の最大化を目指せ
第4章 時間価値ビジネスの三要素
第5章 時間価値の高い人、低い人
第6章 時間価値の高い人が集まる街に仕事も集まる
第7章 思い出の総和が深遠な社会へ


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【本質主義】『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』グレッグ・マキューン(2014年11月20日)


【編集後記】

◆本日終了のKindleセールには、このようなものがありまして(ご紹介していなかったのですが)。

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この辺辺りは、当ブログ的にもアリだったかな、と。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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