2019年12月11日
【論理と直感?】『未来仮説検証思考 直観とロジカルシンキングの融合法』藤田泰宏
未来仮説検証思考 直観とロジカルシンキングの融合法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日ではなく、11月末の「未読本・気になる本」の記事から、当ブログ向きの作品を。何せ「仮説検証」「直観」「ロジカルシンキング」といったフレーズが並んでいますから、タイトルだけでお腹一杯です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
戦略的な思考をする際に、重要なのは直観なのか、理系的なロジカルシンキングなのか。そもそも直観とロジカルシンキングとは何かを振り返り、ビジネスパーソンが仕事の競争で勝ち抜くために必要な未来思考とは何か。また、直観とロジカルシンキングを融合させた経営戦略の事例も紹介。ビジネスパーソンが仕事の競争で勝ち抜くためには「直観とロジカルシンキングによる未来思考」が必要であると考え、更にそれはどういうことなのかも提示する。
Kindle版はセールでもないのにほぼ半値ですから、どうせお読みになるならこちらがオススメです!
/ nccmrm97
【ポイント】
■1.ロジカルシンキングと直感の関係ロジカルシンキングはあくまでも論理展開する能力のことであり、新しいアイデアを生み出す創造的な思考力ではない。では、いくらロジカルシンキングを習得しても閃きのような新しいアイデアを思考することは、できないであろうか。いや、私はロジカルシンキングの訓練や経験を積むことで直観力が磨かれると考えている。(中略)
私自身の経験では、常に興味があって問題意識を持って体験している事柄については、いろいろ新しいアイデアが浮かんでくる。さらにロジカルシンキングを学びMECEで物事を捉える訓練を重ね、戦略策定のフレームを意識的に繰り返し使っていると、頭の中では経験したことが論理的に整理された状態で記憶されるように、脳の神経網(ニューラルネットワーク)が張り巡らされていくと考えられる。よく頭の中を整理するというが、直観力に優れた人の頭の中では経験や学習に基づくデータが実は体系的に整理され、秩序立った状態で格納されていると考えられるのだ。
■2.直観とロジックを融合させた「テオリア・メソッド」
それまで私は、まず直観的に仮説を立て、後付けでロジカルシンキングに沿って整理していたが、この「テオリア・メソッド」に出会ってから目から鱗であった。以降、私は現在でも企業の経営戦略を思考する際には、この方法を活用し続けている。(中略)
その特徴は次の通りである。(1)診断先中小企業の身の丈に合った具体策を提言する(詳細は本書を)
(2)帰納的アプローチと演繹的アプローチにより直観とロジックを融合させて革新的かつ合理的な提言を導く
(3)ソリューションプロセスマップ(SPM)により新規ドメインに向けた課題の解決を具体的かつ体系的に示す
(4)少数精鋭のグループで考えスピードと高品質を追求
■3.真の差別化にはアート的な思考も必要
近年ビジネスパーソンの創造力を高める手段の1つとして、アートが注目されている。ユニークなアイデアを生み出すにはアート的な思考が必要だからだ。先の読めない不確実な将来をロジカルシンキングだけでは予測不可能であり、直観力の必要性を多くのビジネスパーソンが気づき始めている。
これまでも一流の経営者には文化芸術面での教養も必要といわれてきた。成功した経営者がコンサートホールや美術館を作ったりするが、単に売名行為や宣伝効果を狙ったものではなく、それ相応の見識、理解、思い入れがあったためと思われる。(中略)
芸術は自然科学や政治経済などとは直接関係ないかもしれない。しかし、アインシュタインやメルケル首相のように芸術的素養を持つことは、単なる見栄や自己顕示ではなく、感性や人間性を豊かにし、思考の幅を広げていると考えられる。こうしたことは昔からいわれてきたことだが、いま再び見直され始めている。
■4.常に問題意識をもっていると直観が養われる
上述の通り、脅威や危機感がある場合、あるいは好きなことがある場合、ある特定の対象に向けて問題意識を持続させることができる。この他にも金銭欲や権力欲、渡世の義理、理性や倫理感、信仰心などもあるだろう。
そして、どんなことでもよいが、自分が将来人生の勝利者となるためには、まず自分が戦う土俵(ドメイン)を決める必要がある。人生の時間も個人の能力には限界があるし、企業にも経営資源の制約はあるので、あれもこれもすることはできない。
戦う土俵は自分や自社にとって有利なところを選ばなければならない。強みや能力が発揮できる場所で戦わなければ勝ち目はないからだ。子どもは本能的に自分を活かせる得意な分野を無意識に選択し、そこに向かって進もうとするのではないだろうか。
■5.仮説検証を繰り返す
例えばコンビニエンスストアーは戦略の仮説検証をシステム化したものだ。事前にいくら市場調査して顧客ニーズを分析しても果てしなく、しかも限界がある。そもそも顧客ニーズは日々コロコロ変わる。未だ市場に出たことのない新商品へのニーズ調査に対しては、そもそもデータが取れない。テストマーケティングをする方法もあるが、限界がある。
そこで実際に店の棚に商品を置いてみて売上高データをPOS(Point of sale system:レジで商品に張られたバーコードを読み取り、何がどれだけの量が売れたか記録するシステム)で回収し、日々商品毎の売上の変化を追跡する。これは店に商品を陳列することが仮説であり、売れ行きデータの分析がその検証となる仕組みなのだ。(中略)
POSを導入していない八百屋や魚屋も同じである。デジタルデータこそないが、店の仕入れ担当者の頭の中では、過去の経験で日々何を仕入れれば店の売上や利益がよくなるか予測を立てて仕入れ、当てが外れたら修正し次回の仕入れに活かしているはずである。これもある意味、仮説の検証をしているのだ。
【感想】
◆当ブログでも一時期、「ロジカルシンキング」が華やかかりし頃がありました。特にその当時はコンサル本関係が人気だったため、コンサル業界ではなかば当然とも言える、ロジカルシンキングが一世を風靡したと言いますか。
たとえば当ブログ内で、上記ポイントの1番目にも登場する「MECE」でググってみると、出てくるわ出てくるわ……。
MECE : マインドマップ的読書感想文
その後ブームがひと段落した後も、ロジカルシンキングは、主に理詰めのテーマを扱う本では、引き続き登場していた感じです。
一方で、本書のもう1つのテーマである「直感」は、イメージ的にはロジカルシンキングの真逆とも言えるもの。
ただし、上記ポイントの1番目にもあるように、ロジカルシンキングで整理した知識や情報が、直感に結びつく、と著者の藤田さんはお考えです。
◆そして、両者を融合して用いるのが、第2章から抜き出した上記2番目のポイントにある「テオリア・メソッド」なるもの。
上記では触れていないものの、これは中小企業診断士である八木田鶴子先生が生み出されたものとのことです。
ただ、こちらは門外不出なのか、ググっても中身についてはあまり明らかになっていないんですよね……。
一応概略が、「テオリア・メソッド」でググってトップに表示されたこのページに出ているのですが。
診断手法 | 経営支援 | 合同会社みんプロ
本書でも、藤田さんご自身がこのメソッドを「どのように使うか」までは掲載されているのですが、内容の詳細までは載っていませんので、一応ご留意を。
◆さらに本書の第3章では、これからの時代において生き残るための課題が5つ列挙されています。
上記ポイントの3番目は、その中の1つである「真の差別化を追求する」からのもの。
確かに他と差別化するために、「アート的な思考」も必要となってくるでしょう。
そういう意味で参考になったのが、以前読んだこちらの作品でした。
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
参考記事:【経営】『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?〜経営における「アート」と「サイエンス」〜』山口 周(2019年07月17日)
2年前の新書なのに、中古に送料を足すと定価とほぼ変わらない人気ぶりという。
◆そして最後の第4章では、「課題解決に向けた5つの対策」と題して、具体的なTIPSが挙げられています。
上記ポイントの4番目の「常に問題意識を持つ」というのもその1つ。
なるほど自分の「ドメイン」を決めることで、問題意識も持ち続けられるし、勝ち目も出てくるかと。
さらに上記ポイントの5番目の「仮説検証」も対策の1つであり、本書のタイトルにもあるもの。
せっかく戦略を立てても、検証しないことには正しいのか否かが分かりません。
その意味では、身近にあるコンビニはもちろん、八百屋や魚屋も、いいお手本ということなのでしょうね。
私も「これは!」という作品を当ブログでレビューしても、空振りすることも多々ありますし、ここは納得できた次第です。
◆いずれにせよ本書は、ビジネスシーンで直感をどう活用するかを考えるうえで、興味深い作品でした。
特に個人的には、ロジカルシンキングを極めようとすると、直感は逆に働かなくなるものだと思っていたので、上記ポイントの1番目の指摘は目からウロコ。
とはいえ本書は、紙の本でいうところの「ページ数が少なめ」なので、論点の掘り下げ具合や具体例の量については、必ずしも不満がないわけではないのですが……。
この辺は版元(ごきげんビジネス出版さん)の考え方と言うか、「大事なエッセンスを凝縮してコンパクトにまとめる」スタンスなのかもしれませんね。
論理と直感のどちらも活用するために!
未来仮説検証思考 直観とロジカルシンキングの融合法
第1章 これからは「直観」と「ロジック」の融合
第2章 直観とロジックを融合させるメソッド
第3章 AI時代で生き残るための5つの課題
第4章 課題解決に向けた5つの対策
【関連記事】
【経営】『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?〜経営における「アート」と「サイエンス」〜』山口 周(2019年07月17日)【直感?】『直観力』メンタリストDaiGo(2019年02月06日)
【叡智】『すべては導かれている〜逆境を越え、人生を拓く 五つの覚悟〜』田坂広志(2018年06月17日)
【思考術?】『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法――コロンビア大学ビジネススクール最重要講義』ウィリアム・ダガン(2017年11月25日)
【意思決定】『「洞察力」があらゆる問題を解決する』ゲイリー・クライン(2015年11月09日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。つい先日まで「サイバーマンデーセール」があったがために、ご紹介していなかったのがこちらのカドカワさんのセール。
Amazon.co.jp: KADOKAWA年末お役立ち本フェア(12/12まで): Kindleストア
今までも当ブログで人気だったこの辺の作品も対象となっていますので、良かったらご検討ください。
反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
健康の結論
参考記事:【予防医学】『健康の結論』堀江貴文 予防医療普及協会(2018年08月10日)
これも修行のうち。 実践!あらゆる悩みに「反応しない」生活
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
12月16日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです