2019年12月08日
【お金】『日本人の給料はなぜこんなに安いのか 〜生活の中にある「コスト」と「リターン」の経済学〜』坂口孝則
日本人の給料はなぜこんなに安いのか 〜生活の中にある「コスト」と「リターン」の経済学〜 (SB新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、最近ではテレビのコメンテーターとしてもおなじみである、坂口孝則さんの新作。ちょうど昨日、本書の一部をまとめた記事が、はてブホッテントリ入りしていたことから、ご存知の方も多いと思います。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「スッキリ」(日テレ系 朝の情報バラエティ)でおなじみの人気経営コンサルタントが教える
身近な生活の中にある「コスト」と「リターン」の経済学
Kindle版は定価と同額ですが、中古が高値なので、そちらでも十分アリかな、と。
salary / pclark333
【ポイント】
■1.安い給料の理由:「給料の上方硬直化」たとえばある社員が、今月30万円相当の仕事をしたとします。しかし翌月には20万円分の仕事しかしなかった。でも翌々月には40万円相当の仕事をしたとしましょう。こんなとき企業は給料を「30万円→20万円→40万円」とはなかなか変更できません。せいぜい30万円を継続するくらいでしょう。
しかしこれは、かなり奇妙な状態ではないでしょうか。だって日ごろの生活で、100円の価値なら100円、1000円の価値なら1000円をスーパーで払っていますよね。でも雇用の場合は、100円の成果しかない月も、1000円をもらうことができるのです。
経営者にとってみれば、成果に応じた給料を払いたい。でも給料を下げると、社員が反感を覚える可能性がある。それならもともと低めに設定して、そこから変化させないほうがいいと経営者が考えるのは当然かもしれません。状況に応じて解雇できる国と違って、日本はこれが許されません。そうなると給料が上がりにくいのはしかたがないかもしれません。
■2.リスク(不確実性)が高いほど、リターン(給料)が大きい
私は独立したいと相談されたら、「やめたほうがいいよ」とアドバイスします。このアドバイスだけで踏みとどまるのであれば、独立なんてやめたほうがいいと思うからです。一人の意見だけで将来の不確実性にビビるくらいなら、独立なんてやめたほうが正解でしょう。
ただ、ほんとうに悩んでいるのであれば、転職でも独立でも、まずはやってみることを勧めます。なぜなら日本はリスクとリターンが歪んでいるからです。失敗しても生活保護や再就職支援が手厚く、「日本では絶対に死なない=リスクが実は少ない国」です。ですから成功したらそれこそ儲けもの。腹を決めて決断することを私は勧めます。
ただ当然ながら、仕事は給料の額だけで決めるものではありません。たしかに日本の給料は諸外国に比べて安いという事実があります。しかしその裏には、諸外国に比べればまだまだ安定的な雇用という安心感があります。何を重要視し、何を選択するか。すべては個々人の判断にかかっているのではないでしょうか。
■3.年金をもらいはじめる時期はいつがいいのか?
・3年早く(62歳〜)もらう場合……0.5%×12カ月×3年=年額18%減しかも増加した分は、以降、一生涯続きます。国は年金の財源が厳しくなるので、国民には受給時期をもっと繰り下げてほしいと思っています。だから今後は、70歳を超えた受給開始時期を設定するかもしれません(そのときも0.7%なのか、何%になるのかはわかりません)。ただ現時点では繰り下げを選択すると、かなり受給額は増加します。
・3年遅く(68歳〜)もらう場合……0.7%×12カ月×3年=年額25.2%増
でも繰り下げたものの、早く死んでしまってはリターンが減ってしまいます。ここでは計算を省きますが「繰り下げると、おおむね受給から12年を過ぎるあたりから元がとれる」と覚えてください。つまり65歳を68歳まで繰り下げた人は80歳、65歳を70歳まで繰り下げた人は82歳より長生きすると、リターンが勝るというわけです。
■4.モノの購入は「出口」まで考える
ガソリン車とハイブリッド車を比べるとします。(中略)トータルコスト=購入代金+月々のガソリン代等−売却価格今回、新たに考えに入れたいのがこの「売却価格」です。コスト計算をするとき売却価格も加味すると、トータルコストの計算はより正確に行えます。車の売却価格は乗車年数やトレンドのみならず、車体のカラーによっても左右されます。ピンクの車は欲しい人が限られるので高くは売れにくい一方、黒や白の車はピンクの車に比べて売れやすい。ですから黒や白の車は売却価格が高くなります。
そこでそこまでこだわりがなく、いつかは買い替える可能性がある買い物をするときは、売却価格が高いものを選んで買う選択をするのも1つの手だと思います。このようにモノの購入は「出口から考える」こともトータルコストを考えるとき重要です。
■5.不動産が下落しても満足できる決定をする
持ち家派については、「ローンを払い終わったとき、土地にも建屋にも価値がなくなっていれば意味がない」と考える人がいますが、正確にはそれは売る際の価値のことで、ずっとそこに住み続けて、売るつもりもないのであれば問題はありません。
3000万円で買って、価値がゼロになっても、それまでの家賃は不要になったわけですし、賃貸では実現のできない持ち家ゆえの自由も謳歌したはずです。もっと言えば、その時点で価値がゼロになっただけで、将来はわかりません。
株式もそうなのですが、3000円で買って1000円に値下がりしても、ずっともっているつもりの株なら、一時的な値下がりで損が確定するわけではありません。株をもつことで、その企業を応援したいのであれば、短期的にはなおさら気にする必要がありません。
家も同様に、収入の大半を賭けて住むに耐えうる住宅であれば、不動産価格がどうあれ気にならないはずです。投資用の物件であれば別ですが、自分が住むのであれば住宅購入決定の前には、表面的な資産価値の上昇・下落がどうであっても、満足できる住宅を選ぶことをまずは優先するべきでしょう。
【感想】
◆本書のタイトルを見た方、中でも冒頭の記事を読まれた方は、本書が「日本人の給料はなぜこんなに安いのか」について述べた本だと普通考えるでしょう。実際、上記の記事は5ページに渡ってその件についてのみ触れていますから、ある意味当然かと。
さらに書影を見ても、メインタイトルである「日本人の給料はなぜこんなに安いのか」の文字の大きさに比べて、サブタイトルは一回り以上小さいです。
ところが実際は、このサブタイトルである「生活の中にある『コスト』と『リターン』の経済学」こそが本書のテーマであり、給料ネタはその1つにすぎません。
とはいえ、キチンと1章を費やしてその件について論じていますし、上記記事よりかなり濃い内容となっていますから、決して不誠実というワケではないと思います。
それに本の帯をよく見ると、給料ネタ以外のお話も掲載されていますしね!
◆というわけで本書の第1章は、その章題からしてそのまま「日本人の給料はなぜこんなに安いのか?」。
この問題に対する答えについては、繰り返しになりますが、上記記事にその一部が掲載されています。
理由(1)日本の社会は「製造業」がベースにあるからそして上記ポイントの1番目にある「給料の上方硬直化」が理由の3番目で、さらに本書ではもう1つの理由についても解説がされているという。
理由(2)流動性が低い
ちなみに、記事にある2つの理由も、本書ではこの倍近いボリュームで書かれていますから、著者の坂口さんの真意を知るためには、本書にてご確認いただいた方が良いとは思います。
また、問題だけ提起して、そのままかというとそうではなく、給料を増やす方策についても言及が。
具体的な内容については本書に譲りますが、結論としては上記ポイントの2番目にあるように、「本当に悩んでいるなら、まずはやってみるべき」とのことです。
……そう言われても日本人は遺伝子(「セロトニントランスポーター遺伝子」)レベルでリスクが取れない、というお話は、つい先日この本で読んだばかりなのですがw
(171)金のなる人: お金をどんどん働かせ資産を増やす生き方 (ポプラ新書)
参考記事:【成毛流お金本?】『金のなる人: お金をどんどん働かせ資産を増やす生き方』成毛 眞(2019年11月10日)
◆また、下記目次にもあるように、本書の第2章では「年金」についてのお話が登場。
年金の場合、支払期間中が「コスト」だとすると、受給期間中が「リターン」になります。
もらう時期は、現状は60歳から70歳までの期間で開始時期を選択でき、基本は65歳。
これより早くもらおうと思えば、1カ月あたり0.5%減り、逆に「受給開始は遅くていい」と思えば、1カ月あたり0.7%増えます。ということで、試算してみた結果が上記ポイントの3番目にあるとおり。
開始時期に起因する損得については、自分が長生きするか否かにもよるワケです。
もっとも、章題にもあるように、そもそも「払い損にならないのか?」が一番気になるところだと思いますが、こちらも試算してみると「支払い損はない」とのこと(詳細は本書にてご確認を)。
ただし、それで足りるかどうかは人それぞれであり、その大きな違いとなるのが「持ち家か否か」です。
そういえば、これまた先日ご紹介したばかりのこの本も、「現役時代は賃貸」「老後は中古の持ち家」という主張をしていましたっけ。
大人になったら知っておきたいマネーハック大全
参考記事:【マネーハック!】『大人になったら知っておきたいマネーハック大全』山崎俊輔(2019年12月01日)
◆続く第3章は「購入」に関する「コスト」と「リターン」がテーマです。
実は坂口さんは「仕入れのプロ」であり、「季節ごとのお買い得」をまとめた「買いどきカレンダー」なんてものも掲載されていますので、気になる方は本書の第3章をご覧ください。
他にも、量販店なら平日よりも土日の方が値段が安いのだそう。
客足が増える休日は、競合他店との価格競争が激しくなります。安価な商品をきっかけに、一気に顧客を自店舗に引き込むためです。そのため同じ店の、同じ商品の価格が平日より下がっていることが多いのです。有楽町ビックに平日空いている時にいつも行っていたsmooth涙目の巻……。
さらに考えるべきが、上記ポイントの4番目の「出口戦略」です。
上記はクルマのお話ですが、今やフリマアプリで高値が付く商品が、人気になったりするのだとか。
衣類の購入動機についてもその約8割が「フリマアプリでの売れ行きがいいから」と答えたとか。これからは「所有」でなく「売却を前提」にした消費行動が主流になるかもしれません。これはビジネスやビジネスモデルを考える上でも留意すべきことでしょう。
◆そして最後の第4章は、クルマよりも高額となる「家」について。
上記の年金の部分でも、持ち家か賃貸か、というお話がありましたが、ここではさらに掘り下げて、どちらを選ぶべきかについて検討しています。
ちなみに「持ち家」を選んだ場合、一生住み続けるのであれば、上記の「出口戦略」とは逆で、持ち家がいくら値下がりしようとも関係ありませんから、「満足できる決定をする」というのは、確かにそうかも。
さらに、賃貸を選んだ場合は、当たり前ですけど「定年までにしっかり貯めておく」のが大事です。
一応今は低金利時代なので、坂口さんは「持ち家」を推してらっしゃいますが、金融資産を増やせる人なら、賃貸がオススメかもとのこと。
……金融資産が増やせないのに、賃貸住まいのワタクシ、大ピンチの巻。
さまざまなテーマで「コスト」と「リターン」を考えるための1冊!
日本人の給料はなぜこんなに安いのか 〜生活の中にある「コスト」と「リターン」の経済学〜 (SB新書)
第1章 日本人の給料はなぜこんなに安いのか
第2章 年金は払い損にならないのか?
第3章 消費税増税! もう大物買いはソンなのか?
第4章 空家大国日本、やっぱり家は買ってはいけない!?
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【編集後記】
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