2019年12月06日
【病院ハック?】『医者が教える 正しい病院のかかり方』山本健人
医者が教える 正しい病院のかかり方 (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現役の消化管外医師で「外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医」といった肩書を持つ山本健人さんの健康本。ちょうどつい先日、区の健康診断に行ったばかりの私にとっても、非常に納得のいく作品であり、新書の割にはハイライトを引きまくりました。
アマゾンの内容紹介から。
世の中には様々な医療情報があふれているが、その中身は玉石混淆。命の危機につながる間違った情報も少なくない。そして病院に行ったら行ったで、何時間も待って診療は数分、医者に聞きたいことがあっても聞けない、説明されても意味が分からない等々、患者側の悩みは尽きない。私たちはどうしたらベストな治療を受け、命を守ることができるのか?正しい医療情報を分かりやすく発信することで、多くの人から信頼される現役医師が、風邪からガンまで、知っておくと得する60の基本知識を解説した、医者と病院のトリセツ。
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【ポイント】
■1.なるべく受診すべき2種類の痛み(1)突然痛みが発生したこの「突然」というのは、「テレビを見ている間」といった時間的な幅のあるものより、「この番組のこのシーンを見ているとき」というところまで正確に言えるほどの「突然」が、特に危険です。(2)これまで経験したことのない痛みが発生した
クモ膜下出血が原因の頭痛や、大動脈解離(大動脈の壁が裂けてしまう病気)の胸痛・背部痛など、命に危険が及ぶような「痛み」には、突然起こるものが多くあるからです。このような痛みがあるときは、受診を検討すべきです。この「経験したことのない」というのは、「経験したことのない強さ」と「経験したことのない種類」の両方を指します。今まで経験したことがないくらい強い、人生最大の痛み、という場合や、経験したことがないタイプの痛み、という場合は、受診を検討すべきでしょう。
■2.セカンドオピニオンと普通の紹介の違い
セカンドオピニオンは、治療中の病気に関して他の医師の意見を聞くことができる仕組みのことですが、通常の紹介とは目的がまったく異なります。
通常の紹介では、患者さんは他の病院で保険診療を受けるために受診します。紹介先の医師は患者さんに会ったその日から検査を行うことができますし、治療を開始することも可能です。必要に応じて、引き続きその病院に通って治療を継続することが可能です。
一方、セカンドオピニオンは、「他の病院の医師の意見を聞くだけ」です。転院ではありませんし、そもそも普通の外来受診ではありませんので、その場で新たに検査を行うことも、治療を開始することもありません。元の病院の医師が作成した紹介状(診療情報提供書)を見てコメントするだけです。保険診療ではない(健康保険は使えない)ので、1万〜4万円くらいの費用がかかることにも注意が必要です。他の医師の意見をもらって再び元の病院に戻り、その意見を参考に医師と再び相談する、という流れになります。
■3.がんの「標準治療」とは、現時点で考えられる「最も有効な治療」
がん治療の効果を正確に知りたいときは、厳しい条件のもとで臨床試験が行われ、その効果がきちんと証明されているか、を確認することが大切です。
臨床試験では、数百、数千といった、非常に大勢の同じ条件の患者さんを集め、厳密な規則にのっとって薬の効果が解析されます。その結果は、「査読」と呼ばれる厳しい審査を経て、論文として世に発表されています。これが標準治療になるための条件です。(中略)
標準治療は、厳しい条件のもとで効果が証明された治療であるため、保険診療で使用できるよう承認されています。原価が高い薬であっても、健康保険制度や高額療養費制度の恩恵によって、比較的安価で使用できるのです。これは、きちんとした手順で、客観的に効果が示されていることの証拠でもあります。
一方、保険の利かない高額の治療の中には、標準治療のように臨床試験で十分な効果が証明されていない(あるいは臨床試験そのものが行われていない)ために、保険診療として採用できないものが含まれています。このことには十分に注意する必要があるでしょう。
■4.他の臓器に転移したがんに手術は行わない
まず、他の臓器に転移が1カ所あると分かった場合、目で見えないがん細胞は他に無数にあると考えます。他の臓器に転移したということは、数え切れないほどのがん細胞が、血管内に入って血流に乗ったということです。よって、血流に乗って行き着いた臓器で、無数のがん細胞が偶然たった1カ所にのみ集まっているとは考えにくくなります。(中略)
したがって、目で見える転移を切除したとしても、そのとき見えなかったサイズのがんはすぐに大きくなって現れてきます。
他臓器に転移したケースには、遠くのリンパ節に転移したケースや、お腹の中にがんが散らばったケース(腹膜播種または腹膜転移と呼ぶ)も含みます。これらも同じことで、目で確認できるがんが1カ所あれば、確認できないがんは無数にあると考えるべきです。
他臓器に転移したケースでは、手術で目に見えるがんをすべて取れたとしても、目に見えないレベルで体内にがんが残る可能性が大いにある、というわけです。
■5.風邪薬に「風邪を治す力」はない
一般的な風邪薬の成分は、・解熱鎮痛薬(熱を下げ、頭痛やのどの痛みを抑える)などです。
・咳止め
・たん切り
・アレルギー薬(くしゃみ、鼻水を抑える)
つまり、風邪によって起こる、発熱、頭痛、のどの痛み、咳、たん、鼻水といった症状を軽くする成分しか入っていない、ということです。OTC薬は、これらの成分量の差で、「咳に強い」「鼻水に効く」などと特徴を持たせているのが一般的です。風邪薬が「効く」というのは、こうした症状を「軽くする」ことを意味します。決して風邪を「治す」というわけではありません。(中略)
では、「風邪を治す薬」はないのでしょうか?
風邪は、大部分がウイルスによる上気道の感染症です。よって、もし「風邪を治す薬」があるとしたら、それは「風邪の原因となるウイルスをやっつける薬」でなくてはなりません。残念ながら、現在そういう薬は存在しません。「風邪の症状とうまく付き合いながら、自分の力で風邪を治す」というのが正解です。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、ハイライトを引きまくった作品でした。上記ポイントでの小見出しは、基本的にその部分における「結論」を書いていますが、実は実際の本書の小見出しは、すべて「質問形式」となっています。
要は、こうした「質問」に対する回答(の一部分)が、上記ポイントということ。
そしてアマゾンの内容紹介にある「目次」には、下記目次における各章題はもちろん、その章の小見出し名(=質問)が、すべて掲載されていますので、ご確認のほどを。
ザーッと眺めて、1つでも2つでも答えを知りたいものがあれば、本書を読んで満足できる可能性は高いです。
◆まず第1章では「病院に行く前に」と題して、実際に病院に行く前に注意すべき事項についてのレクチャーが。
たとえば上記ポイントの1番目は、「痛み」で病院に行く際に、考えていただきたい事柄になります。
実際、痛みの耐性は人それぞれなので、大したことがなくとも病院に駆け込んだりするケースもあるものの、上記の2種類の場合は、迷わず病院に行けとのこと。
また、この第1章では、医療や健康に関する情報を、ネットを使って検索する場合の注意事項についても触れられていました。
結論をまとめると
(1)GoogleやYahoo!などで検索して上位に出てきた情報が信頼できるとは限らないになるのだとか(詳細は本書を)。
(2)出典・参考文献の記載があるかどうかを確認する
(3)学会や公的機関からの情報を優先的に参考にする
◆続く第2章では、お医者さんとの関係のお話が。
私も知らなかったのですが、上記ポイントの2番目にあるように、セカンドオピニオンのお医者さんは、治療自体はしてくれないんですね。
しかも保険診療に該当しないゆえ、結構な診察料もかかるという……。
かといって、今のお医者さんと相性が悪い(不満がある)場合はどうすべきか?
本書によると、まず外来看護師に相談することが勧められています(別の医師に診てもらえる可能性)。
また病院自体に不満がある場合は、別の病院を紹介してもらえることもありますから、最悪そちらも検討すべきでしょう。
逆に、紹介状を持たずにナイショで他の病院に行くと、それまでの経緯が分からないため、同じ治療を再度受けたり、異常がない旨分かっている検査を再度受けることもあるそうですから、これは避けるべきとのこと。
◆一方、第3章では1つの章を丸々使って「がん」についての疑問を解決!
がんというと、よく民間療法等が問題になったりしますが、そもそも病院で行われる「標準治療」が、いかに有効であるかは、上記ポイントの3番目にあるとおりです。
ちなみに、「有効な治療法」の「有効」か否かの根拠には、下記のようなものがあるそうなのですが。
1.ランダム化比較試験(のメタアナリシス)上から信頼度の高い順に並んでおり、「標準治療」はもっとも信頼できる「1」に該当。
2.ランダム割付を伴わないコホート研究
3.ケース・コントロール研究
4.対照群を伴わない研究
5.症例報告
6.専門家の意見
逆に「1000人以上のがん患者を診てきた」専門家でも「6」に該当しますから、知人や家族のアドバイスは、たとえがんの経験があったとしても、それ以下となるのだそうです。
……アドバイスを無視すると気まずくなりそうですが。
さらに、がんを切るか切らないかの基準については、上記ポイントの4番目を参考になさってください(こちらも詳細は本書を)。
◆また、第4章では「緊急時の対応」がテーマで、救急車を呼ぶか否かといった、確かに判断に迷うようなお話も紹介されています。
ちなみに山本さん曰く、「呼ぶかどうか迷う人」は、むしろ「迷わず呼ぶべき」とのこと。
逆に救急車を不必要に(病院へのタクシー代わりに)呼ぶ人は、「迷いなく」呼んでいるのだそうです。
さらには救急外来の意外な事実(「救急専門医ではない」「医療費が高くつく」「薬の処方も少なめ」等々)にも触れられていますから、実際に使うことになる前に、一読しておくべきだと思う次第。
そして最後の第6章では、「家庭の医学」に関するアドバイスがなされています。
上記ポイントの5番目では、この第6章から風邪のお話を取り上げましたが、この件については、こちらの本もかなり詳しいので、未読の方は一読をオススメ。
かぜの科学:もっとも身近な病の生態 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
参考記事:お前らもっと『かぜの科学』の凄さを知るべき(2015年01月21日)
とくにムスコがもうすぐ受験本番なので、家族そろって風邪には気を付けたいと思っております。
次に病院に行く前に、読んでおくべき1冊!
医者が教える 正しい病院のかかり方 (幻冬舎新書)
第1章 病院に行く前に
第2章 医師との関係に悩んだら
第3章 がんについて知っておくべきこと
第4章 いざというとき
第5章 薬の知識
第6章 知っておきたい家庭の医学
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【予防医学】『健康の結論』堀江貴文 予防医療普及協会(2018年08月10日)
【風邪対策】『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?――MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33』裴 英洙(2018年02月24日)
【編集後記】
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